白暮のクロニクル

白暮のクロニクル

ゆうきまさみ初のBL漫画として話題を呼んだ『でぃす×こみ』の直後に始まり、並行連載された作品。また、作者初のミステリー漫画でもある。不老不死の種族「オキナガ」が社会に溶け込んでいる現代の日本が舞台。不老不死のオキナガの雪村魁と、オキナガを管理する厚生労働省夜間衛生管理課の新人、伏木あかりが、オキナガに関する事件を解決していく探偵物語。 小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」2013年39号から2017年26号まで連載。WEST.の神山智洋主演でテレビドラマ化。WOWOWの連続ドラマW-30にて、2024年3月1日より放送。

正式名称
白暮のクロニクル
ふりがな
はくぼのくろにくる
作者
ジャンル
推理・ミステリー
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊11巻
関連商品
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時を超えて生きるオキナガの悲哀

不老不死の種族であるオキナガは、吸血鬼に似ているが、生き血を求めてさまようことはない。いくつかの特殊な性質を除けば普通の人間なのだが、昔から差別を受けている。戦争時は「生きて帰ったら日本国民として大手を振って歩ける」という誘い文句に乗り、特殊部隊に参加した者も多かった。雪村魁がオキナガになったのは、昭和20年、18歳の時。沖縄で被弾し、瀕死のところを、竹之内唯一(現・厚生労働省大臣官房参事)に血を分け与えられ、オキナガになった。終戦後に収容された「国立蘇生症療養所」で、実験材料として麻酔もなしに切り刻まれ、それでも死ねない自分を、バケモノになってしまったと悲観する。オキナガは、現代でも厚労省の保護と管理を受けており、定期検診が義務付けられていたり、転居や転職、旅行なども制限されている。また、不老不死という性質上、人間と恋愛すれば必ず相手を看取ることになり、相応の覚悟が必要となる。本作は、怪事件を描くと同時に、時を超えて生きるオキナガの悲哀と人間ドラマを描いている。

不老不死の犯罪マニア×高身長の公務員

厚生労働省の新人で178センチメートルという長身の伏木あかりは、保健所の研修中、殺人事件の第一発見者になる。その死体は首をかき切られ、胸に杭(くい)を突き立てられた異様なものだった。その後、現場に現れた厚生労働省参事の竹之内唯一によると、被害者は「オキナガ」という不老不死の種族だという。あかりは竹之内の目に止まり、オキナガを管理する組織、夜間衛生管理課へ配属となった。上司の久保園幹也に連れられ、等々力にある私設図書「館按察使文庫」を訪れたあかりは、白髪の生意気な少年、雪村魁を紹介される。魁は実年齢が88歳というオキナガで、館按察使文庫の司書を務める犯罪マニアだという。こうしてあかりは魁の連絡係になり、二人でオキナガに関する事件を捜査することになる。

執念で「羊殺し」を追う魁

魁の最大の目的は、「ひつじ年の殺人者」、通称「羊殺し」を捜し出して殺すことである。「羊殺し」は、12年に1度、ひつじ年になると若い女を殺して、内臓を抜き取っていく猟奇事件とその犯人の総称である。魁は沖縄に行く前、神戸に住んでおり、長尾棗という少女と相思相愛の仲だった。その後、オキナガになった魁は、終戦後東京に連れ帰られる途中、列車から飛び降りて棗の元に向かう。首尾よく棗と再会するも、追手の役人に捕らえられ、「国立蘇生症療養所」に収容された。オキナガについてよく理解していなかった魁は、改めて自分がバケモノになったことを自覚し、棗のことを諦める。それから10年後、棗から連絡があり、魁は彼女と会う。魁が死んだと知らされていた棗は結婚して子供もいた。幸せそうな彼女を見て、今度こそもう合わないと魁は決意した。しかしその翌々日、内臓が抜き取られた遺体となって棗が発見される。魁は犯人である「羊殺し」を必ず見つけることを固く誓った。

登場人物・キャラクター

雪村 魁 (ゆきむら かい)

世田谷区等々力にある私設図書館「按察使文庫」の司書。白髪が特徴。不老不死のオキナガという種族で、見た目は少年だが、実年齢は88歳である。厚生労働省参事、竹之内唯一の依頼を受け、オキナガに関する事件を捜査する。豊富な知識と鋭い思考力を持つ。物覚えも良く、触ったことがなかったパソコンも、ひと月で使い方を覚えている。 非社交的であり、円滑な人間関係を作ろうとしない偏屈な性格だが、新たに連絡係になった伏木あかりとは、案外相性がいい。「按察使文庫」のオーナー、按察使薫子からセクハラを受けてドキマギする、純情な一面もある。オキナガになる前に恋人だった長尾棗が、羊殺しの被害者であり、犯人を捕まえて殺すことを望んでいる。

伏木 あかり (ふせき あかり)

厚生労働省夜間衛生管理課の職員の女性。178センチメートルの長身と立派な眉毛が特徴。父は開業医で、本人も都内の医科大学を卒業している。保健所での研修中にオキナガの殺害事件に出くわし、厚生労働省参事の竹之内唯一に選ばれて夜間衛生管理課へ配属となり、少年にしか見えない88歳のオキナガである雪村魁の連絡係になる。真面目な性格で仕事熱心だが天然なところがある。伏木をもじった「ふしぎ」というあだ名で呼ばれることがある。じつは、魁がかつて愛した長尾棗の孫に当る。

竹之内 唯一 (たけのうち ただひと)

厚生労働省の参事にてして、夜間衛生管理課の責任者。で、少なくとも明治以前から生きているオキナガ。戦争中、瀕死の状態だった雪村魁を見つけ、彼に自らの血を流し込み、オキナガにした。そのことを、恨まれても仕方ないことをしたとして、後悔している。オキナガの社会的地位獲得のために動いている。

久保園 (くぼぞの)

厚生労働省、夜間衛生管理課の係長。ベテランであり、物静かな人物だが、時折冗談を飛ばしたり、ユニークな一面もある。上司として伏木あかりを指導し、暖かく見守っている。竹之内唯一の相談相手でもあり、二人で飲むことも多い。

唐沢 (からさわ)

赤羽署の刑事。ニヤニヤ笑いを常に浮かべている。過激な行動派であり、事件解決の為に荒っぽいことをするのも辞さない。高萩凛子の親が殺害された事件で、雪村魁が犯人と目星を付けて執拗に追いかけた。

高萩 凛子 (たかはぎ りんこ)

女子高生。中学校の修学旅行に行っている間に、家族全員が殺害されており、雪村魁をその犯人だとして殺そうとした。自らの過ちに気がついてからは、反省し、按察使文庫の手伝いをするようになった。

按察使 薫子 (あぜち かおるこ)

按察使文庫の経営者。色気のある、妙齢で女性のオキナガ。発情すると雪村魁にセクハラを行う。かなりの資産を持ち、悠々自適な生活を送っている。オキナガ用に、血の味がするサプリメントの開発している。

長尾 棗 (ながお なつめ)

故人。雪村魁の元恋人であり、伏木あかりの祖母。長い間魁が死亡したと聞かされており、別の男性と結婚もしたが、ある時魁が生きていると知ると、彼に手紙を書き、再開した。しかし、その帰り道羊殺しの被害者となり、死亡してしまう。

村上 淳資 (むらかみ あつし)

オキナガ。「カインの末裔」という、吸血同人サイトを運営している。元は過激な運動家であり、幕末の討幕運動や民権運動、学生運動にも参加していた。オキナガになってしまったことを、不条理に思い、どうやって生きたらいいのかを模索している。

紀 俊基 (きの としき)

夜間衛生管理課課長。真面目な性格だが、嫌味ったらしい所もあり、遠回しな小言が多い。保守的であり、責任を被ることを厭う。竹之内唯一とは相性が悪いらしく、快くはおもっていない。

集団・組織

オキナガ

不老不死の種族。漢字では「息長」と書く。「長命者」や、地方によっては「イワナガ」とも称される。日本には10万人ほど存在するとされるが、定住していない者もいることから実数は不明である。厚生労働省の夜間衛生管理課によって管理されている。老衰や病気で死ぬことがなく治癒力も非常に高い。頭部を吹き飛ばされても生きているが、心臓を破壊されると死亡する。日光に弱かったりと弱点も存在する。血液や生肉を好む。吸血鬼との類似点が多いが、生き血を求めてさまよったり、にんにくや十字架を恐れたりすることはない。

夜間衛生管理課 (やかんえいせいかんりか)

『白暮のクロニクル』に登場する組織。オキナガを管理する、厚生労働省の機関。縮めて「やえいかん」と呼ばれることが多い。オキナガの住居の手配や職業の斡旋なども行う。

場所

按察使書庫 (あぜちしょこ)

『白暮のクロニクル』に登場する施設。殺人事件に関する書籍や記事を多く収集している私設図書館。按察使薫子が館主を務め、雪村魁が司書として働いている。身寄りのないオキナガの遺骨を預かってもいる。

イベント・出来事

羊殺し (ひつじごろし)

『白暮のクロニクル』に登場する事件、並びに犯人の呼称。12年に一度、ひつじ年に起こることからこう呼ばれている。若い女性が殺害され、内臓を抜き取られていく猟奇殺人。70年以上に渡り、定期的に起こっている事件であり、犯人はオキナガなのではないかと目されている。

書誌情報

白暮のクロニクル 11巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2014-01-30発行、 978-4091858474)

第2巻

(2014-04-30発行、 978-4091861641)

第3巻

(2014-07-30発行、 978-4091862891)

第4巻

(2015-01-09発行、 978-4091866608)

第5巻

(2015-04-30発行、 978-4091868794)

第6巻

(2015-08-28発行、 978-4091871749)

第7巻

(2015-12-28発行、 978-4091873651)

第8巻

(2016-04-28発行、 978-4091875969)

第9巻

(2016-08-30発行、 978-4091877369)

第10巻

(2017-01-30発行、 978-4091892614)

第11巻

(2017-06-30発行、 978-4091895356)

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