推しの一挙手一投足を愛でる
経理事務として働いている等々力乙は生真面目な性格で、ふだんはポーカーフェイスでデキる女性に見えるが、実はオタク気質の持ち主。ある日、同僚社員の中に「推し」ができたことをきっかけに、彼らの一挙手一投足を観察しては、ひそかに萌え悶える日々を送るようになる。本作では、そんな乙のギャップありまくりな姿が、ハイテンションに描かれる。
推しの二人はあくまで上司と部下の関係
乙は本郷係長と小川大知を脳内でカップリングし、二人の仕草や言動に対してキュンキュンしながら妄想を爆発させている。実際、本郷係長と大知は公私共に仲がいいが、あくまでそれは上司と部下の関係性によるもので、二人のあいだには恋愛感情はいっさいない。乙は頭ではそれを理解しながらも、二人の言動をあえて深読みし、意図的にカンちがいして自らの萌え欲を満たしている。
物語を彩る個性的な面々
乙は、彼女の萌えの対象である本郷係長と大知を観察し、その萌えを日々の活力にしている。本作には三人のほかにも個性的な人物が多数登場する。本郷係長と大知の関係に興奮を覚える山脇しずくは、同じ趣味を持つ乙と彼らの萌え情報を共有し合う仲で、本郷係長の直属の部下ということもあって二人の萌え情報通。そして、乙の上司で部下思いながら、若い社員たちとのあいだに壁を感じてどこか寂しげな様子の風見係長。また、山脇と旧知で彼女に思いを寄せる鳴戸獅子や、そんな彼らの秘密を知りながらも、まるで父親のように温かく見守る所長など、主人公以外のエピソードも展開される。そんな個性豊かな登場人物はいずれもいい人ということもあり、心温まる群像劇としての一面も楽しめる。
登場人物・キャラクター
等々力 乙 (とどろき おと)
とある会社の北海道胆振営業所で、経理事務として勤務する女性。年齢は30歳。5月26日生まれで血液型はAB型、身長は162センチ。黒髪ロングヘアを一つ結びにして、切れ長の目にクールな雰囲気を漂わせている。実は同じ部署の本郷係長と小川大知が推しメンで、彼らを見ることが日々の活力となっている。また、二人を脳内で勝手にカップリングして、彼らがニアミスした現場を目撃すると、妄想を爆発させて狂喜している。もともと仕事は仕事と割り切っており、職場では馴れ合いの関係を嫌っている。しかし現在は、時に感情をあらわにすることも多く、勘が鋭い一部の人たちからは、その変化には本郷係長や大知がかかわっていることを見抜かれている。ただし、等々力乙にとって本郷係長と大知は、あくまでセットで推すための対象であり、彼らに恋愛感情などはいっさい抱いていない。
本郷係長 (ほんごうかかりちょう)
等々力乙と同じ会社に勤務する男性。係長を務めている。年齢は32歳。本名は「本郷丞」だが、周囲からは「本郷係長」と役職で呼ばれている。10月26日生まれで血液型はO型、身長は185センチ。最近札幌の本所から北海道胆振営業所に異動してきた。少々長めのくせ毛で無精ひげを生やし、眼鏡をかけている。自らの外見にはあまり頓着することなく一見無精だが、乙には、そんなところが「エロい」と評価されており、若手の小川大知とセットで推しの対象になっている。実際、直属の部下である大知とは住んでいる社宅がとなり同士ということもあり、公私共に非常にかわいがっている。そんな姿を恥ずかしげもなく周囲に見せるため、乙による妄想の格好の餌食となっている。なお事実を知る者は少ないが、実は札幌の本所にいる時に離婚しており、バツイチ。胆振営業所に異動してきたのも、その離婚が原因の一端となっている。
小川 大知 (おがわ だいち)
等々力乙と同じ会社に勤務する男性。本郷係長の直属の部下。年齢は25歳。12月31日生まれで血液型はA型、身長は174センチ。清潔感のあるショートヘアで、かわいらしい顔立ちをしている。営業所内の男性社員の中で、一番若手ということもあってフットワークが軽く素直な性格のため、ほかの社員からかわいがられている。そんな姿が乙に気に入られて彼女の推しの第一号となるが、その後に本郷係長が異動してきてからは、彼とセットでさらなる推しの対象となった。公私共に本郷係長に懐いており、そんな彼らのやり取りが、乙による妄想の格好の餌食となっている。
書誌情報
目の毒すぎる職場のふたり 全3巻 オーバーラップ〈クリエコミックス〉
第1巻
(2020-04-15発行、 978-4865546354)
第2巻
(2021-02-15発行、 978-4865548402)
第3巻
(2022-05-15発行、 978-4824001788)