「願いを叶える力」は代償を強いられる
緒方希和には「神様に願うだけで望みが叶う」という特別な力があるが、その願いが成就すると必ずなんらかの代償を強いられる。最初に希和がこの力に気づいたのは小学5年生の時で、運動会の100メートル走で最下位だけは嫌だと願ったことで3位となり、その代償は自転車を盗まれたことだった。また、高校で留年しかけた時、テストの点数アップを願った代償は父親のケガだった。これを機に神の存在を実感することになり、願いの成就には必ず代償を伴うことが怖くなった希和は、神頼みを我慢するようになる。しかし大学に進学し、思いを寄せていた島崎茉洋と付き合いたいと願ってしまう。その時の代償は愛犬の死だった。さらに緑樹出版の就職を願うが、その代償は茉洋の叔父の死だった。希和と茉洋は願いと代償のルール、そして願いを叶えてくれる存在とはいったい何なのか、その真偽を確かめようと奔走する。
願う力に翻弄される主人公たち
希和の「願いを叶える力」は、その願いが成就すると必ず代償を支払わなければいけない危ういものだった。しかし当初、茉洋は願いが叶ったあとに偶然の不幸に見舞われただけだと、聞く耳を持たなかった。だが、希和が神頼みで緑樹出版への就職を決めた際、希和以上に茉洋が彼の就職を強く願っていたため、彼女が大切に思っていた叔父の死という形で代償を支払う結果となる。これを機に茉洋は、希和の願いを叶える神という存在に強く興味を抱くことになる。何かと後ろ向きでネガティブ思考の希和をはた目に、積極的に行動に出る茉洋は、自分の願いを利用して願いの代償となるルールを探ろうとする。
富田と黒髪の女神の関係
希和は緑樹出版に入社し、青年漫画誌「ヤングナイト」の編集部に配属されることになる。そこで大御所漫画家の富田春樹の担当を命じられるが、富田はここ数年ヒットに恵まれず現在も休載中だった。過去には数々の大ヒット作を生み出していた富田だったが、最近執筆した作品は見るに堪えないレベルにまで落ちぶれ、現在はゴミ屋敷と化した広いマンションで酒におぼれていた。そんな富田は、かつての栄光は美しい黒髪の女神に出会ったおかげだと語り、希和に彼女を捜してくれれば再び漫画が描けるようになると彼を刺激する。そして希和は、富田に多大なる影響を与えた黒髪の女神・瀬川恵子を捜し始めるが、苦労して見つけた手がかりは不自然にも一つずつ失うことになり、何か作為的なものを感じ始める。
登場人物・キャラクター
緒方 希和 (おがた きわ)
就職活動中の男子大学生。島崎茉洋の恋人で、年齢は茉洋の一つ下。地味で平凡な人生を歩んできたが、実は「神様に強く願うとその願いが叶う」という特別な能力を持っている。しかし、願いが叶ったあとは何かしらの犠牲を強いられることになり、過去に父親のケガや愛犬の死などを経験している。茉洋と付き合うようになったのも、茉洋が勤務する大手出版社「緑樹出版」に入社できたのも、神頼みで勝ち取ったもの。入社後は、青年誌「ヤングナイト」の編集部に配属され、大御所漫画家・富田春樹の担当となった。願いを叶えてくれる神様が何者なのかわからないことや、願いの成就には必ず代償が伴うことから、不可解に思いながらも神様に願うことは極力避けてきた。そんな特別な能力を持つがゆえに、ネガティブ思考の控えめな性格となり、何事も後ろ向きに考えてしまう。
島崎 茉洋 (しまざき まひろ)
緑樹出版の広告局に勤務する女性。大学時代から緒方希和の恋人で、年齢は希和の一つ上。明るく快活な性格で、コミュニケーション能力にも長けている。就職活動がうまくいかず落ち込んでいた希和から、願いを叶える力の存在を打ち明けられる。最初は半信半疑だったが、実際に希和が神様に願って就職を決め、その代償で島崎茉洋自身の叔父が亡くなったことを目の当たりにして強い興味を持つようになる。そして神様の正体や、願いが叶ったあとに支払われる代償についてのルールを自分なりに考察している。直属の上司に恨みを持っており、希和の力で復讐を果たそうと画策する。だが、願いは成就するものの交通事故に巻き込まれ、その代償を自ら支払うことになる。希和が同じ会社に入社することを、本人よりも強く望んでいた。
クレジット
- 原作
書誌情報
神様のジョーカー 全3巻 講談社〈イブニングKC〉
第1巻
(2015-11-20発行、 978-4063545951)
第2巻
(2016-06-23発行、 978-4063546231)
第3巻
(2017-01-23発行、 978-4063546521)