概要・あらすじ
とある満月の夜、フィービーとタフィの姉弟は、魔法によって願いを叶えてくれる従順な小悪魔を呼び出すという鏡の道の儀式を行い、魔界の王子レジオン(レジー)とその従者マルカムを捕まえる。次の満月の晩まで魔界に帰ることができないレジーとマルカムは、フィービーとタフィ、そして悪魔の存在を知ったマリー・フローレの願いを叶えるための手助けを約束する。しかしレジーは、悪魔でありながら魔法を使うことができなかった。レジーは教育係でもあるマルカムに魔法による助けを求めるが、彼の魔法は王子を守るためにしか使えないという。かくして彼らは、魔法なしで願いを叶えるために奔走することとなる。 マリーの願いは両親の喧嘩をなくすこと、そしてタフィの願いはマリーの元気を取り戻すことであった。タフィとレジー、マルカムの活躍によりこの願いを叶えた彼らは、引き続きフィービーの願いに着手。彼女のかわいくなりたいという願いは、レジー発案の睡眠学習法の応用という手段で、こちらも無事に叶えられる。すべての願いを叶えたレジーとマルカムは、その報酬として得たお菓子を山ほど抱え、次の満月の夜、魔界へと帰っていった。 そしてまた訪れた満月の夜。フィービーとタフィは、謎の生物ポーセットに出会い、いきなり池の中に引きずり込まれてしまう。次に彼女たちが目を覚ましたのは魔界であった。アリスディンの導きによりレジーとマルカムに再会し、人間界と魔界を自由に行き来する手段を手に入れたフィービーたちは、2つの世界での様々な出会いを経て成長していく。そしてそれは、レジーの魔法の力の開花へもつながっていくのだった。
登場人物・キャラクター
タフィ
フィービーの弟。気は弱いが友達想いの心優しい男の子。クラスメイトのマリー・フローレに想いを寄せているが、なかなか自分の気持ちを伝えられずにいる。姉のフィービーにはいつも逆らえない。
フィービー
タフィの姉。気が強く、思ったことは何でも口に出すタイプだが、心根は優しい弟想いの女の子。美形男子に弱く惚れやすいところがある。自分の容姿にコンプレックスを抱いており、恋愛に関してはナイーブな一面を持ち合わせている。
レジオン
魔界の王子。兄6人姉3人の10人兄弟の末っ子で、「レジー」と呼ばれ、みんなからかわいがられている。心優しく、困っている人を放っておけないタイプ。自分だけがいつまでも魔法を使えるようにならないせいで、マルカムに迷惑をかけていることに心を痛めているが、フィービー、タフィと行動を共にしていくうちに、少しずつ魔法を使えるようになっていく。 また、ほかの人にはわからないポーセットの言葉を理解することができる。
マルカム
レジオン(レジー)の教育係兼従者。アリスディンの婚約者でもある。冷たく見えるが忠義に厚く、常に自分のことよりレジーのことを第一に考える。普段はフードに隠れているが、後ろ髪は腰下まであるロングヘアー。驚くとむやみに雷を落とす癖がある。
マリー・フローレ (まりーふろーれ)
タフィのクラスメイトであり、彼がひそかに想いを寄せている少女。レジオンやマルカムの存在を知り、タフィやフィービーと秘密を共有する。両親が喧嘩ばかりしていることに心を痛めている。
アリスディン
レジオンのいとこで、魔界のク・フー峰の向こうにある城の跡取り姫。幼いころに、婚約を意味するトチの実を、何も知らないマルカムに食べさせ、無理やり婚約を成立させた。しかし後にマルカムとは相思相愛になり、本当の意味での婚約者となる。勝気で自信家だが、実際に行動もそれに伴っており、すべてにおいて優秀な人物。 何かと頼りになる存在である。
おばば様 (おばばさま)
北の岩屋に住む長老で、400年生きているとされる。魔界の知恵袋と見なされている存在ではあるが、いたずら好きでその言動には信ぴょう性が伴わない。アリスディンがお気に入りで、よく彼女にいたずらをたしなめられている。
アーティ
フィービーのクラスメイトの美少年。理由あって、母方の祖母の家で犬のパウルと一緒に暮らしている。口が悪くクールで冷めたように見えるが、実は寂しがり屋。レジオンをかまうことで、自分の寂しさを紛らわしている。
タオ
夕暮れの森でフィービーとタフィが出会った少年。その昔、森で自ら命を絶ったために、森から一歩も出られない罰を受けた伝説の子供。100年に1度しか目覚めないとされているが真相は定かではない。目覚めるたびにそれまでの記憶をすべて失っているため、自分が何者なのか分からない。目覚めると、7日間眠らずに森の中を彷徨い歩き、自分を知っている人を探す。
パラド
アリスディンの乗るドラゴン。当時7歳のアリスディンによって捕まえられた。戦いの末、彼女に致命傷を負わせるも、回復してはしつこくやってくるアリスディンに根負けし、とうとう彼女のものになったといわれている。アリスディンがいなければ、ほかの何者をもその背中に乗せることはない。
エリザベス・フィッシャー (えりざべすふぃっしゃー)
マルカムが若いころに出会い、密かに想いを寄せていた人間の女の子。幼いころに母親を亡くし、子煩悩の父親と、犬のワッフルと暮らしていた。マルカムは彼女が大人になるまで、満月の夜ごとに人間界に赴いては共に過ごしていたが、悪魔と人間は時の流れる速さが違うためにこの恋は実らなかった。彼女は後に童話作家となり、マルカムをモデルに絵本「月の船」を執筆する。
ポーセット
花を主食とする生き物で、体の色はピンク色。コミカルな見た目だが、実は竜の一種である。彼らは魔界に自分で池を作り、そこから魔界と人間界を自由に行き来することができる。魔界には何匹ものポーセットがいるが、とりわけレジオンと仲が良く、いつも一緒にいるポーセットは「ンパ」と呼ばれている。
場所
魔界 (まかい)
レジオンやマルカムなどの悪魔が住む世界。その名称とは裏腹に、1年を通して温暖な気候に恵まれた、争いごとのない平和な世界である。
水連沼 (すいれんぬま)
魔界にある沼。フィービーとタフィが初めて魔界を訪れた時はこの沼が出入り口となった。星花が咲き乱れており、ポーセットの生息地となっている。
その他キーワード
悪魔 (あくま)
『真夜中をすぎても』に登場するキーワード。レジオンやマルカムたち、魔界の住人の呼び名。頭には2本の角があり、おしりにはカギ状のしっぽを持つ他、魔法を使うという特徴こそあるが、基本的には人間たちと同様に温厚な種族である。主食はお菓子。人間の3倍、300年近く生きるとされている。成長期を過ぎると体の変化がゆっくりになり、年を取る度合いが人間と著しく異なってくる。
鏡の道 (かがみのみち)
満月の夜、2枚の鏡を向かい合わせて無限に続く鏡の道を作ると、その道を12時ぴったりに悪魔が通る。この方法で呼び出された悪魔は、次の満月の夜、同じ方法でないと魔界に帰ることができない。
星花 (ほしばな)
魔界に咲く星型の花。青色で、風で揺れるとカラカラと音がする。ポーセットの大好物で、ハッカの味がする。
トチの実 (とちのみ)
銀色の実。約束の実とされていて、主にプロポーズの言葉代わりとして用いられる。渡した相手が受け取って食べたら承諾の印となり、婚約が成立する。