BEAT＆MOTION

竜彦は、小学生の頃に受けたアニメーションの課外授業で映画監督の栗田良一から自分の作品を褒められたことがきっかけで、アニメーターを目指して創作活動に励んでいた。しかし、中学時代に練習で描いた絵をクラスメイトにからかわれたことがトラウマとなり、アニメーション制作から遠ざかってしまう。その後、同級生の健介に誘われてバンド「CHIC」を結成し、約4年間音楽活動を続けるが、鳴かず飛ばずのまま解散してしまう。失意の底にいた竜彦は、大学の友人に誘われた飲み会で「夢なんて無意味だ」と自嘲すると、その場にいた一人の女性から「死んだ気でやりたいことをやってみろ」と一喝される。彼女の言葉に心を動かされた竜彦は、あきらめていたアニメーション制作を再開し、完成した作品をSNSで公開すると、大きな反響を呼ぶ。その後、素顔を隠して活動する人気ミュージシャンのニコからプロモーションビデオ制作の依頼が舞い込む。あこがれのニコに認められ、意気揚々と対面場所へ向かう竜彦。しかし、そこに現れたのは、あの夜居酒屋で彼を叱咤した女性だった。打ち合わせを重ねるうちにニコと意気投合した竜彦は、彼女のために最高のプロモーションビデオを作ることを固く誓う。

竜彦がプロモーションビデオの制作を依頼された矢先、ニコは業界最大手のレコード会社「マホロバレコーズ」からメジャーデビューの契約を持ちかけられる。竜彦はニコの成功を心から喜ぶが、アマチュアの自分が彼女の足手まといになることを恐れ、PV制作を辞退する。二人はそれぞれの道で頂点に立って再会することを約束し、竜彦はこれまで以上にアニメーション制作に打ち込む。そんな中、竜彦はマホロバレコーズのトップアーティスト「MIYU」のPVを手掛けた気鋭のクリエイター、赤目と名張が自分と同じ大学の学生であることを知る。竜彦はアドバイスを求めて二人を訪ねると、彼らが自分がベースを担当していたバンド「CHIC」のファンであることが判明する。さらに、偶然再会した元バンドメンバーの健介たちの協力も得て、ニコがインディーズ時代に作詞作曲した「海がみたい」のプロモーションビデオをついに完成させるのだった。

スカウトを受けて大手レコード会社「マホロバレコーズ」に所属したニコは、かつて彼女が動画で発表した楽曲「東京UMA」をデビューシングルとしてリリースする準備を進めていた。しかし、会社の不手際によりデビューが延期されてしまう。そんな中、所属するトップシンガーのMIYUの楽曲コンペに参加したニコは、みごとに採用されるが、顔を合わせたMIYUは、かつて共にプロを目指した親友だった。ニコは数年前、理由を告げずに一方的に音楽を辞め、彼女の前から姿を消していたのだ。突然の失踪を許せずにいたMIYUは、音楽を辞めた理由をニコに問いただす。するとニコは、自分が世界的ミュージシャン、篠原渚の娘であり、自分の言葉が原因で母親を引退させてしまったという自責の念から音楽を辞めた過去を打ち明ける。渚のファンでもあったMIYUは、その告白に驚きながらも「あなたのせいじゃない」とニコを受け入れ、二人は和解を果たす。しかし、ニコの才能に注目するマホロバレコーズの社員、高嶋薫をライバル視する猫田が、薫を失脚させるためにニコと渚の親子関係をマスコミに暴露してしまう。世間から激しい賛否両論を浴びるニコだったが、竜彦やMIYU、渚からの励ましを受け、長年のコンプレックスを乗り越える。そして、渚の娘としてではなく、一人のミュージシャン、柏木ニコとして生きていくことを改めて心に誓うのだった。