概要・あらすじ
漫画家に行き詰まり、カメラ屋、古物商などに手を出しながらも、ことごとく頓挫してしまった中年男・助川助三が、ついには多摩川の川原で拾った石を売る石屋を始める物語。『無能の人』『鳥師』『探石行』『カメラを売る』『蒸発』へと続く、助川を主人公にした連作の端緒となった作品。つげ義春の代表作のひとつ。
登場人物・キャラクター
助川 助三 (すけがわ すけぞう)
口ひげを生やした中年男。漫画家に行き詰まり、カメラ、古物といろんな商売に手を出すが失敗してしまう。元手がかからないという理由で多摩川の石を拾って売り始めるが、本気で商売になるとは考えていない。10年前に廃業した川渡しを自分ができないかなどと夢想するが、渡し場を作る金もない。 ある日、思い余って客をおぶって多摩川を渡し、小銭を稼ぐ。作品中に名前は登場せず、次作『無能の人』で氏名が明らかになる。
妻 (つま)
中年男の妻。生活のためチラシ配りのアルバイトをするが、世間体を気にして早く辞めたいと夫に訴える。漫画や古物商など、職を転々と変えては挫折する夫に愛想をつかしていて、子どもの前でも平気で毒づく。
三助 (さんすけ)
中年男の息子。5歳ぐらいの男の子で喘息もち。母親のチラシ配りを手伝ったり、川原にいる父親を迎えに来るなどよく言うことを聞く。作品中に名前は登場せず、次作『無能の人』で明らかになる。
テキ屋 (てきや)
多摩川の川原でヨーヨーを売るテキ屋。キャップにサングラスをかけている。石屋のような元手のかからない商売を否定するが、売り物の石を見て、少し石に興味をひかれる。
場所
多摩川の川原 (たまがわのかわら)
『石を売る』の舞台となる川原。多摩川の中流に位置する。すぐ近くに競輪場があり、開催日には川の向うから人がやってきて賑わう。10年ほど前は渡し場があったが、現在は貸しボート屋が一軒あるのみ。