概要・あらすじ
川原にある膨大な石くれを何とか金にできないかと、形のよい石を拾い集めていた助川助三は、石の専門誌で石が美術品のように取り引きされていることを知る。以来独学で二年間石を拾い集め、やがて川原に掘立小屋を建て、石屋を始める。ある日雑誌の広告で知った、石のオークション会に家族で参加するがひとつも売れることはなかった。
『石を売る』の続編的な作品で、『鳥師』『探石行』『カメラを売る』『蒸発』と続く、助川を主人公にした連作のひとつ。つげ義春の代表作。
登場人物・キャラクター
助川 助三 (すけがわ すけぞう)
口髭を生やした中年男。漫画家、カメラ屋、古物商と様々な商売に挫折したのち、元手のかからない川原の石を売ることを思いつき、石屋を始める。雑誌で石のオークションが開かれることを知り、主催の美石狂会の会長宅を訪れて参加申し込みをする。オークション当日、家族で参加するが石は一つも売れなかった。
妻 (つま)
助川助三の妻。夫や子供と一緒に石のオークション会場に行くが、主催者の美石狂会会長の妻とそりが合わず、不機嫌になる。オークション終了後、ひとつも売れなかった石を投げ捨て、泣き崩れながら、助川にはマンガしかないのでマンガを描いてくれと懇願する。
三助 (さんすけ)
助川助三の息子。父と一緒に石を探したり、店を手伝ったりする素直な子供。夕刻になると、父を迎えに来る。
石山 石雲 (いしやま せきうん)
石の愛好家が集まる美石狂会の会長。業界の草分け的存在で高齢。アルコール中毒らしく、手の震えが止まらない。新宿H寺で石のオークションを開く。
会長の妻 (かいちょうのつま)
愛石趣味の会長・石山石雲の妻。夫が不能のため、すぐ男性に手を出す。助川助三が石山会長宅を訪ねたとき、パンツを見せて挑発した。また、川原にある助川の店にも現れて誘惑する。
山川 軽石 (やまかわ かるいし)
甲州の採石名人で石山石雲の弟子。ひげ面で四角い顔の中年男。甲州の山奥で湯屋(風呂屋)を経営していた頃、石山に女房を寝取られた過去を持つ。女房を取り返すために石山のもとに通ううち、石のことを教えられたという。