結界師

結界師

烏森学園を舞台に、結界師の家系に生まれた中学2年の少年が、守護する土地を狙うさまざまな存在と戦いを繰り広げる和風バトルファンタジー。第52回小学館漫画賞少年向け部門受賞。

正式名称
結界師
ふりがな
けっかいし
作者
ジャンル
バトル
 
和風ファンタジー
レーベル
少年サンデーコミックス(小学館)
巻数
既刊18巻
関連商品
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登場人物・キャラクター

墨村 良守 (すみむら よしもり)

烏森学園中等部2年の黒髪の少年。結界師・墨村家22代目(予定)。三人兄弟の次男。夜は、同じ結界師である幼なじみの雪村時音とともに、斑尾とコンビを組んで結界師として烏森のパトロールをし、学校ではほとんど昼寝をして過ごす。そのため成績はよくない。結界術の理解度、技術力は時音にかなわないが、パワー、スタミナは良守の方が優れている。 時音に恋心を抱いているが、相手にされていない。家業は好きではないが、時音を守るため、修行には熱心。甘いお菓子とコーヒー牛乳が大好きで、ケーキ作りが趣味。

斑尾 (まだらお)

『結界師』に登場する墨村家付き妖犬。推定約500歳。墨村家の結界師と行動を共にし、嗅覚で妖の位置を探る。昼間は墨村家の犬小屋の中にある石の中に封印されている。オスだがなぜかオカマ言葉で喋る。鋼夜と山で暴れていたところ、退治にきた間時守に一目惚れし、行動を共にする。間時守の死後は間時守の弟子である墨村家に付き、共に烏森を守護している。 良守の才能を高く評価している。雪村家付き妖犬の白尾とはそりが合わない。

墨村 繁守 (すみむら しげもり)

結界師・墨村家第21代当主。63歳。性格は頑固でしつけに厳しい。正統後継者である孫の墨村良守に対して、つねに厳しく指導している。雪村家をライバル視し、どちらが間流結界術の正統後継者か争っている。良守の兄・正守が家を出てしまったことを残念に思っている。正守の才能を高く評価していて、家に戻ってきてほしいと願っている。

雪村 時音 (ゆきむら ときね)

烏森学園高等部1年のロングヘアーの少女。結界師・雪村家22代目(予定)。墨村良守の2歳上。毎晩、良守と同じく、白尾とコンビを組んで結界師として烏森のパトロールをしている。パワーやスタミナは良守にかなわないが、結界術の理解度・技術力は時音の方が優れている。 また、他の術者の術に対して良守より感覚が鋭い。家業に誇りを持ち、頭が良くて気が強いが、本質は優しくてしっかり者。烏森学園の男子生徒の一部から人気がある。良守から好かれているが、彼女としては恋愛対象外。

白尾 (はくび)

『結界師』に登場する雪村家付き妖犬。推定約400歳。雪村家の結界師と行動を共にし、嗅覚で妖の位置を探る。元々間流結界術開祖の間時守の飼い犬だった。間時守の死後は間時守の弟子である雪村家に付き、共に烏森を守護している。時音を「ハニー」、墨村良守を「ヨッシー」と呼んでいる。墨村家付き妖犬の斑尾とはそりが合わない。

雪村 時子 (ゆきむら ときこ)

結界師・雪村家第21代当主。65歳。パワーも技術力もある優秀な結界師。優秀であるがゆえに見切りが早く、まわりの術者に対して厳しく対応しがち。普段は孫の雪村時音の指導をしている。裏会からの評価も高く、時々裏会の仕事もこなしている。墨村家をライバル視し、どちらが間流結界術の正統後継者か争っている。

墨村 修史 (すみむら しゅうじ)

墨村良守たち三兄弟の父親で墨村守美子の夫(婿養子)。優しい性格で、家を出てしまった守美子に代わり、墨村家の家事全般をこなす。小説家だが、それほど稼いでいない。霊感がないので、妖怪も幽霊も見ることができないが、お札やお守りを作るのは得意。結婚前は松戸平介の助手をしていた。

雪村 時雄 (ゆきむら ときお)

雪村時音の父親だが、時音が幼い頃に亡くなっている。方印は出なかったが、家業である烏森の守護と、裏会の仕事を実直にこなしていた。ある日、墨村守美子が不在で、1人で烏森をパトロールしている最中に、何者かにより殺されてしまった。

墨村 守美子 (すみむら すみこ)

墨村良守たち三兄弟の母親で墨村修史の妻。優秀な結界師だが、家業を継がず、全国を放浪している。瀕死の雪村時雄を家まで運んだのは彼女だったが、時雄が謎の言葉を残して亡くなったため、雪村時音からは不信感を抱かれている。

春日 夜未 (かすが よみ)

裏会所属。おかっぱ頭で和装の女性。墨村正守より年上。情報収集能力に長けている。鬼使いの一族出身で「ヨキ」という鬼を従えている。裏会の仕事で、雪村家に逗留中に、烏森で墨村良守と出会う。日本茶が好きで、いつも水筒を持ち歩いている。

墨村 正守 (すみむら まさもり)

墨村家の長男。良守の7つ上。坊主頭にあご髭、額に三日月型の傷がある。頭が良く、能力も高いが、なぜか身体に方印が出なかったため、正統後継者にはなれなかった。正統後継者である良守に対してコンプレックスを抱いているが、時折兄としての気遣いも見せる。現在実家には帰らず、裏会実行部隊・夜行を立ち上げ、頭領として働いている。 面倒見はよく、夜行のメンバーからは信頼され、慕われている。周囲の様子を探るときは、相棒の「黒姫」という黒いコイを呼び出す。良守には使えない絶界という強力な技も持っている。

神田 百合菜 (かんだ ゆりな)

墨村良守のクラスメイト。小柄で長い髪を左右に分けて結わえている女子学生。霊感があり、妖や幽霊が見えるが、生きている人間と霊の区別ができない。友だちには霊感があることを隠しているが、つい霊を普通の人間と思い込み、会話してしまうのが悩み。良守に霊感があるのを知り、よく相談を持ちかける。

間 時守 (はざま ときもり)

400年前に烏森家に仕えていた人物。烏森家の身辺警護と妖怪退治をしていた。異能者で、間流結界術を考案した。弟子の墨村良守の先祖と雪村時音の先祖に間流結界術を伝授し、彼の死後、烏森家の守護を任せた。

鋼夜 (こうや)

『結界師』に登場する妖犬。黒い犬型の妖怪。生前は斑尾と一緒に山で暮らしていたが、人間に住んでいた山を荒らされ、各地を放浪していた時に人間に殺された。その後、妖怪になり、生まれ故郷の山で暴れまわっていたが、間時守に山自体を封じられたため、各地を放浪していた。烏森には偶然やって来たが、斑尾を見つけ、仲間になるよう誘いをかける。

ウロ様 (うろさま)

『結界師』に登場する土地神。身長は墨村良守と同じくらいで、笠をかぶり、着物をきたけむくじゃらの姿をしている。あまりしゃべらない。側近の「豆蔵」と行動を共にし、豆蔵がウロ様の意向を周囲に伝える。良守たちの住む土地一帯の土地神様。普段は、良守の住む町の隣町にある「無色沼(むしきぬま)」の底にある、結界師が作った神の寝床で暮らしている。 100年に一度の周期で寝床が壊れるので、結界師に修復を依頼にくる。甘いお菓子が大好き。

志々尾 限 (ししお げん)

裏会実行部隊・夜行所属構成員。結界師補佐役として派遣された。良守と同い年で、烏森学園に転校生として編入。口ベタで、人付き合いが苦手。妖混じりで、全身を魔物に変化させる「完全変化(へんげ)」ができる。完全変化すると理性がなくなり、周りの者を攻撃してしまうため、胴回りに彫られた炎縄印で完全変化しないように制限をかけている。 普段の戦闘では、手だけを変化させ、大きなツメで相手を攻撃する。動きが素早く、パワーもある。夜行の若手メンバーの中では戦闘能力が高い。

花島 亜十羅 (はなしま あとら)

ウェーブのかかったロングヘアーの快活な女性。志々尾限の10歳上。裏会実行部隊・夜行所属の妖獣使いで、志々尾の指導を担当。普段は雷蔵という妖獣が相棒。雲に乗った雷蔵の上に乗って長距離移動したり、腰につけた「魔耳郎」のコウモリ型の羽根で素早く空中を飛び回ることができる。志々尾のことを家族のように思い、心配している。

影宮 閃 (かげみや せん)

裏会実行部隊・夜行所属構成員。墨村良守と同い年。肩にかかるくらいの髪を一つに束ねた華奢な体躯の少年。中性的な容姿だが「女みたい」といわれるのを極端に嫌う。雰囲気は志々尾限に似ているが、性格は社交的。妖混じりで、相手の心を読んだり、強い妖怪を探し出したりするのが得意。夜行では情報収集を担当している。 墨村良守が3年生になった時、良守を監視するため同じクラスに編入した。

火黒 (かぐろ)

烏森の力を狙う妖の集団「黒芒楼」の戦闘員。昼間行動する時は「黒芒楼」で開発された人の皮をかぶって人間のフリをしている。本来の姿は、全身を包帯で巻き、黒い着物を着た人型の妖怪。戦闘能力の高い相手との戦闘をつねに求めている。会話好きで、妖怪にしてはよくしゃべる。武器は刀で、身体のどこからでも何本も出すことができる。 動きも素早い。志々尾限や墨村良守に目をつけ、戦闘を楽しんでいた。

松戸 平介 (まつど へいすけ)

某有名大学名誉教授で異界愛好家。70歳。「加賀美」という美しい女性の助手を連れている。妖怪・魔術・呪術の研究が趣味。墨村繁守とは古くからの友人で、妖怪関連の物品の分析を請け負っている。烏森の力にも興味を持っているが、墨村繁守に嫌がられるため、手を出していない。

奥久尼 (おくに)

裏会最高幹部「十二人会」第九客。見た目は小さく、尼のような頭巾と着物をまとった人物。知識欲が旺盛で「謎食いの奥久尼」と呼ばれている。裏会奥書院の管理者で、過去の記録をいつでも呼び出すことができる。秩序を重んじる性格で、真実を求めるため、誰にも肩入れしない中立な立場を取っている。裏会の中では信用できる人物。

夕上 清輝 (ゆうがみ きよてる)

裏会検査室特別捜査班捜査員。ウェーブのかかったショートヘアで眼鏡をかけた男性。キザな口調でよくしゃべる。雪村時音を取り調べるため、裏会検査室の断頭島へ連行したが、のちに時音の脱走に協力する。自分の血液で作った「架魅那(かみな)」という8枚羽根を持つ黒い使い魔に乗り、空を飛んで長距離移動することができる。

扇 一郎 (おうぎ いちろう)

裏会最高幹部「十二人会」第八客。風を操る扇一族の出身。巨大な体躯で、頭巾をかぶって素顔を隠している。扇家の正統後継者になれなかったため、自分の能力を上げることに強い関心を持っている。烏森の力にも興味を持つ。墨村正守の幹部入りに不満を持ち、さまざまな手で陥れようとする。

扇 七郎 (おうぎ しちろう)

扇一族本家の次期当主。風使いの扇一族の歴代の正統後継者の中でも抜きん出た才能の持ち主。空を自由に飛び回り、相手をかまいたちで攻撃することができる。イケメンで社交的だが、一方で「死神」の異名をもち、家業の暗殺を淡々とこなしている。墨村良守より2つ上。

扇 六郎 (おうぎ ろくろう)

扇一族本家の六男。兄弟のなかで一番能力が低く、兄にも弟にも劣等感を抱いていた。風使いで空を自由に飛び回り、相手をかまいたちで攻撃することができる。風貌からは年齢不詳だが、墨村正守より年上。

氷浦 蒼士 (ひうら そうじ)

墨村良守と同い年。幼い頃から戦闘要員として育てられたため、表情や感情が乏しい。裏会総本部から烏森に派遣され、墨村家に居候する。自分の呪力を刀にしたり、全身を覆って防御したり、筋力強化にも使って敵と戦う。良守や墨村家の人々と暮らすうち、次第に人間らしい感情が芽生えていく。

結界師 (けっかいし)

『結界師』に登場する術者。結界術を使用することができる才能を持つ異能者で、墨村良守の家業でもある。戦闘時は、立方体の透明な結界で敵の妖怪を囲んで自由を制限し、結界ごと囲んだ部分を破壊してダメージを与えることで、妖怪を退治する。自分を囲んで防御もできる。また、壊れた道具や建物を修復することができる。この他に、神の居場所である異界を人工的に作ったり、出入りの難しい異界への道を作成・封印することができる。 墨村家と雪村家は、この能力を烏森から与えられて、烏森を守護している。空間を操作する能力を持つ者なら誰でも結界師になれるはずだが、この能力を持つ者の存在自体がかなり稀少。

壱号 (いちごう)

逢海月久の直属の部下にあたる青年。もともとは逢海日永にも仕えていたが、日永が出奔した際に置いて行かれたという過去を持つ。536号とは旧知の間柄で、彼からは元の名前である「544号」と呼ばれている。氷浦蒼士同様に身体能力が極めて高く、剣を使った戦いを得意とするほか、巨大な軟体生物のような物質を作り出し、敵の動きを封じたり、押し潰したりする事も可能としている。ミチルとカケルに付き従い、彼女達の烏森襲撃に参加した際に、日永の部下、および墨村良守の戦友として立ちはだかった氷浦と交戦し、その際に、日永に自分が選ばれず、氷浦が選ばれた事に対するコンプレックスをぶつける。そして、氷浦に大きなダメージを与えるが、極限無想を修得した良守の結界によって、拘束されてしまう。さらに、ミチル達の作戦が失敗した際に現れた扇一郎に襲われるが、彼を良守が妨害した事で何とか逃げおおせる。その後はカケルから復讐を持ち掛けられ、それに同調こそしなかったものの、やがて彼女に惹かれていき、裏会奪還作戦後に自ら死を選ぼうとした彼女に、共に生きるように呼び掛けた。

緋田郷の土地神 (ひだごうのとちがみ)

緋田郷と呼ばれる神佑地の土地神。傘を持った地蔵のような形状をしている。妖とは根本的に異なる「生え抜きの土地神」で、本来は自分の土地から離れる事は決してない。しかし、緋田郷が神佑地狩りに遭ったため居場所を失い、烏森の地に現れた。赤い雨を降らせる事で、烏森学園と、そこにいた墨村良守や雪村時音、影宮閃らを沈めようと目論んでいた。土地神殺しは重罪に当たるため、良守達は緋田郷の土地神本体には手出しできず、念糸を使って、雨を降らせていると思しき傘を奪い取る。しかしそれが更なる怒りを買い、良守を凄い勢いで沈めようとしたため、止むなく時音が繰り出した結界術によって滅された。所持していた傘はその場に残されたが、良守が供養のために、緋田郷に返還している。

武光 喜朗 (たけみつ よしろう)

裏会実行部隊・夜行の戦闘班に所属している青年。ロングヘアが特徴で、やや時代がかかった喋り方をする。呪現化能力者で、呪力で作り出した太刀を使って妖と戦う。黒芒楼による2度目の烏森襲撃では、黄道の造り出した炎陽玉を太刀で弾いて敵の妖にぶつけるという戦法を取っていた。また、氷浦蒼士が総本部から派遣された時は、彼の行動を監視するため、巻緒慎也や轟大吾と共に、烏森へ姿を見せた。烏森が暴走した影響で轟が完全変化をしてしまった際には、迷わずみねうちで気絶させるなど、決断力も持ち合わせている。

染木 文弥 (そめぎ ふみや)

裏会実行部隊・夜行のまじない班の主任を務めている少年。年齢は17歳。まじないの設置、解除、破壊などの仕事を遂行するほか、仲間の能力を制御するための文様を身体に彫るといった役割も担当しており、志々尾限の腹部に刻まれた炎縄紋や、刃鳥美希の左腕に彫られた黒い文様などは、染木文弥の手によるものである。さらに、治療班である菊水の手伝いをする事もあるなど、多岐にわたる役割をこなしている。知識、力量共に、並のまじない師を遥かに超越しており、巻緒慎也からは「うちのまじない師の事は10割信頼している」と言われ、自他共に天才と認められるミチルからも、その才能を高く評価されていた。穏やかな性格ながらも、やや自信家な面が見受けられるが、これは自身の実力が伴っているゆえであるほか、仲間を不安にさせないためでもある。逢海月久の手勢が烏森を襲撃した際には、夜行の仲間達や、墨村繁守、雪村時子の力を集結させて、ミチルとカケルの仕掛けたまじないを破壊するための「まじない殺し」を発動し、烏森の街を救っている。

織原 絲 (おりはら いと)

裏会実行部隊・夜行のまじない班に所属している少女。年齢は17歳。可憐な容姿だが引っ込み思案な性格で、白尾からは「シャイガール」と呼ばれて、気に入られている。力を使う時はかわいらしい衣装をした小型の守護霊を召喚し、守護霊が糸をつむぎ、複数の布の帯に変化させるイメージを現出する。そして、複数の帯を飛ばし、敵の設置したまじないに絡みつかせて、引きはがして解除したり、破壊したりする事ができる。染木文弥とは同年齢だが、彼に対しては妹のように懐いており、そばに近寄ったり会話をする事も平気な様子を見せる。

灰泉 (はいぜん)

黒芒楼に所属している妖。人皮を被る事で、スキンヘッドの男性の姿を模している。火黒に率いられて烏森の地に現れ、墨村良守、雪村時音、志々尾限と対峙する。強面な外見とは裏腹に、波緑同様無口でコミュニケーション能力が不足している。しかし、攻撃力は随一で、結界を簡単に溶解する液体を吐き出す事ができる。人皮を脱ぎ捨てた真の姿は、巨大な腕が生えた植物のような形状をしており、この形態になると強酸性の雨を降らす事も可能になる。良守と時音を一方的に倒そうと目論むが、スキを見て時音が展開した結界で突き刺され、茶南に見捨てられたところを、良守の結界で拘束され、滅された。

水龍 (すいりゅう)

烏森の地に突如として落ちて来た巨大な龍。水をあやつる力を持つ。あちこちにダメージを負っているものの、その力は凄まじく、白尾は、水龍が土地神級の力を持っていると推測している。何らかの理由で墨村良守を嫌っており、彼を側に寄せる事を極端に嫌がっている。一方、雪村時音に対しては嫌っている様子はなく、そもそも、烏森の力の事を知る様子を見せる事もまったくなかった。時音は、水龍自らの意思で烏森を訪れたのではなく、何者かの手によって連れてこられたと推測。さらに良守は、その犯人が墨村守美子だと確信し、烏森の力が水龍の治療が終えた際に、結界術で強引に空に押し戻してしまう。その推測は的を射ており、空中で待機していた守美子に対し、自分を利用した怒りをぶつけようとする。しかし、守美子の結界術に簡単に翻弄された事で、彼女に勝てない事を理解し、おとなしく元いた湖へと戻っていった。なお、守美子が水龍を烏森の地に落としたのは、烏森の力の源である宙心丸を喜ばせて、その力を鎮めるためだった。

開眼 (かいげん)

まじない師を生業としている中年の男性。裏会に所属せず、扇一族同様、雇用される事で仕事をこなしている。仕事に対する意識は非常に高く、失敗する可能性が生じた場合、自分や部下の命を犠牲にする覚悟を持っている。また、まじない師としての実力も非常に高く、神佑地狩りで非凡な力を得た逢海日永の精神支配術にこそ屈したものの、裏会奪還作戦においては、染木文弥と協力する事で、日永の精神支配術の媒介となる海蛇を可視化する結界を作り出し、墨村正守達の勝利に貢献している。

紫遠 (しおん)

黒芒楼の実行二部の部隊長を務めている妖。人型の状態の際は、ボーイッシュな女性の姿をしている。火黒や牙銀ほどの戦闘能力は有していないが、糸を使って相手を意のままにあやつるなど、隠密行動に長けているため、白からは拉致や暗殺などの任務を請け負う事が多い。男勝りな性格で、火黒に匹敵する気分屋だが、黒芒の城を居心地よく思っているため、黒芒楼の任務にはある程度積極的。黒芒楼が壊滅した後も生き残り、紫遠を騙そうと近づいて来た碧闇を逆に糸であやつり、崩壊する黒芒の地から脱出に成功した。その後の行方は不明。なお、作中で妖の姿に変化する事はなかった。

黒丸 (こくまる)

烏森を襲撃して来た妖の1体。黒いオットセイのような形状をしており、口から爆発する毬のような物体を吐き出す事ができる。人の手によってあやつられている妖で、ミチルとカケルが烏森に潜入するための目くらましとして白丸と共に投入され、墨村良守と交戦する。口から大量の毬を吐き出して良守をけん制するが、結界術で毬ごと拘束されて、首の部分を滅された事で生命活動を停止した。

氷渡 (ひわたり)

烏森の地を狙う妖の1体。ハリネズミのような形状をしている。氷をあやつる能力を持ち、地中から無数の氷の塊を繰り出して来るほか、尻尾に妖気を凝縮して、氷の弾丸にして撃ち出す事ができる。もともと縄張り意識が強く、攻撃的な性格をしていたが、烏森の力を得る事でそれが悪化しており、撃ち出す氷の弾丸の威力は、墨村良守が展開する結界を貫くほどまで強化されている。烏森学園のプールの中に飛び込み、そこから氷を生み出して良守を倒そうとするが、逆に良守の挑発によってプールからおびき出される。さらに氷の弾丸で良守を倒そうとするが、良守と雪村時音が力を合わせて展開した結界で氷の弾丸を跳ね返され、それが命中する事で滅された。

まほら

覇久魔の地の土地神。ミノムシの蓑のような物体に身を包んだ少女のような外見をしている。長いあいだ眠り続けており、覇久魔の地の力を必要とする雪村時音から、よその土地に移るように説得される。しかし、まほら自身にはそれが聞こえておらず、代わりに眺める者が応対していた。眺める者が時音へ協力する事を決めると、彼の呼びかけを受けて目覚め、よその土地に移ってほしいという頼みを抵抗する事なく受け入れた。のちに嵐座木神社の土地神になるが、扇七郎の事を気に入ったようで、彼のために桜の木に花を咲かせている。

八王子 君也 (はちおうじ きみや)

中央東高校に通っている2年生の少年。容姿端麗で、地元の女子から絶大な人気を誇っている。現在はただの高校生だが、アイドル事務所からスカウトの動きがあるとの噂もある。ある日、雪村時音に誘いをかけて、二人で人気のない場所に行こうとする。時音もそれに平然とついていったが、これは八王子君也本人の意思ではなく、彼に寄生している脳男が、時音に乗り移ろうとするための作戦だった。なお、容姿端麗だが身長が高くないため、時音からはまったく好みのタイプと認識されていない。

月地ヶ岡 真彦 (つきじがおか まさひこ)

烏森の地が持つ力に惹かれてやって来た青年の幽霊。生前はパティシエを務めており、ある時バイク事故に遭った事で命を落としたものの、それに気づかないまま現世にとどまり続けている。烏森学園で墨村良守と出会い、烏森の力で暴走する事を懸念する彼から、成仏するように勧められる。しかしその中で、共通の趣味であるお菓子作りの話題で次第に意気投合し、やがて友人のような関係を築いていく。ある日、相談役として世話になっていた花乃小路夢子の調査で、弟の月地ヶ岡俊彦に対する負い目が、成仏できない理由だと判明する。そして、良守と夢子の尽力で、俊彦の本心に触れる事で現世への未練がなくなり、成仏する事ができた。なお、パティシエを目指した理由は、両親が早逝して寂しがる俊彦のために、ケーキを焼いて慰めたのが始まりとなっている。

雷蔵 (らいぞう)

花島亜十羅が使役している霊獣の1体。巨大なクマのぬいぐるみのような外見をしている。力が強いうえに、雷をあやつる能力を持ち、空に雷雲を呼び出す事すら可能としている。志々尾限とは知り合いで、彼によく懐いている。限も雷蔵を憎からず思っているが、雷蔵の愛情表現が過剰な事には時折うんざりする事もあった。一方で負けず嫌いの面を持っており、限に一度叩かれたら、反撃しようと突っ込んで来る性質を持つ。墨村良守、雪村時音、限が修行を受けた際には、この性質を利用し、限をオトリにして突っ込んで来たところ、良守が結界で殴られた事で気絶した。

竜姫 (たつき)

裏会最高幹部である「十二人会」の第三客。派手な外見と性格が特徴の女性で、墨村正守をからかう事が多い。一方で、裏会における力関係をしっかりと把握しており、夢路久臣(逢海月久)が死亡したと思われ、十二人会が紛糾した際には、先に自ら十二人会を抜けて、独自に逢海日永と戦うために動いている。竜の妖混じりで、強力な雷を使った攻撃を得意とするため、「雷神」と呼ばれており、直接的な戦闘能力は十二人会の中でも最強で、扇七郎に匹敵する。「蛇の目」が解体された際に、生き残りであるサキを保護しており、彼女の予言から日永打倒の方策を編み出し、正守や七郎、銀魅霞玄や鬼童院ぬらなどを招集する。そして、日永に乗っ取られた裏会を奪還する作戦を実行し、見事に成功させた。その後は、裏会を立て直すために奔走しているが、間時守から、「正守は回り道をした方が伸びるタイプ」とアドバイスをされたため、彼を十二人会の末席から再スタートさせている。

夜城 (やしろ)

裏会検察室に所属している女性の能力者。精神を支配する術を得意としており、術を発動する際には、鳥の形をした妖気を放出する。断頭島に捕らえた人間を洗脳する事もある。緋田郷の土地神を滅したために断頭島に連れてこられた雪村時音を、有無を言わさず洗脳しようとしたため、同僚の夕上清輝に疑いの目を向けられる。そして、夕上の手によって時音が逃がされた事を悟ると、夕上を刃物で刺し、炎上寺姉弟を始めとした検察室の職員を駆り出し、時音を捕らえるように指示する。その後、墨村良守、および夕上と合流した時音の前に現れ、良守と対決する。しかし、時音を傷つけられた事で怒る良守の強力な絶界に圧倒されて戦闘不能に陥る。実は夜城は、既に逢海日永の手によって洗脳されており、時音を狙ったのは、神佑地狩りに利用するための結界師を欲するためだった。その証拠を隠滅するためのプログラムが作動した事で急死する。

雪村 静江 (ゆきむら しずえ)

雪村時音の母親。雪村時雄の妻。雪村家の血筋ではないため霊感を持たず、一般人として暮らしている。夫を早くに亡くしているが、結界師である義母の雪村時子や時音を優しく見守っており、二人との仲は良好。主婦としてのスキルが非常に高く、時子と時音が大の苦手にしているゴキブリも平気で、家に出た場合はもっぱら雪村静江が退治している。スーパーマーケットの特売セールの日時も完璧に把握しており、秋津秀が烏森の地に訪れた際には、彼に買い物の心得を説く事もあった。なお、時雄とは見合いで知り合い、結婚している。

カケル

逢海月久の直属の部下にあたる少女。もともとは逢海日永にも仕えていたが、日永が出奔した際に置いて行かれたという過去を持つ。かつて、逢海兄弟のための「人形」として利用するために、どこかから連れ去られてきたが、利用できないと判断され、壱号に殺害される。しかし、3回殺されても生き返った事で、魂蔵を持っている事が判明。ミチルに引き取られ、まじないとしての修業を積み、ミチルを上回る資質を身につける。その過程でミチルに懐いていき、やがて姉のように慕うようになる。しかし、ミチルの献策によって日永が暴走を始め、その事でミチルが強く心を痛めてしまい、さらに、烏森襲撃の際にミチルを失った事で、日永と月久に強い憎しみを抱くようになる。その後、壱号を伴って本拠地である覇久魔の城に戻り、ミチルが残した書物を読み漁った事で、日永に対する憎しみは殺意へと膨れ上がり、ミチルが残した「世界を終わらせるまじない」を使う事で、自分や日永もろとも、世界のすべてを破滅させる事を目論むようになる。裏会奪還作戦の折、月久と相打ちになった日永、および彼と相対していた墨村正守の前に現れ、世界を終わらせるまじないを発動させようとしたが、そこに現れた眺める者によって無効化される。すべてが終わったあとは、覇久魔の城の崩壊に巻き込まれる事で自らの命を終わらせようとするが、カケルに特別な感情を抱いていた壱号から、自らを必要とされている事を説かれ、生きる気力を取り戻した。

536号 (ごひゃくさんじゅうろくごう)

覇久魔の城で生活をしている青年。壱号や氷浦蒼士とは知り合いだが、彼らとは異なり情緒豊かで、やや皮肉屋ながらも明るい性格。しかし、皮肉にもその事がきっかけで、逢海兄弟直属の部下になる機会を逃してしまっている。膨らませたシャボン玉を鳥の形に変化させ、意のままにあやつる能力を持っており、鳥の上に乗って空を飛ぶ事も可能としている。内心では覇久魔の城から出たがっており、まほらを説得するために現れた雪村時音に対して、城の構造を教える代わりに、外に脱出する方法を教えてほしいと懇願。まほらの説得を終えた時音が放った式神の案内を頼りに、城から脱出する事に成功する。

無道 (むどう)

裏会の十二人会に所属していた能力者の男性。かつては墨村正守の上司に近い立ち位置で、行正薫はその時の直属の部下だった。しかしある時乱心し、行正を除く部下を皆殺しにした挙句、姿を消していた。現在は人間ではなく、火黒同様、妖に転生した元人間。人間であった時から、死亡した後に幾度も復活を果たすなど、その生命力は並外れており、その事から「不死身の無道」と呼ばれていた。人を喰った性格の持ち主で、妖となってからはその傾向に拍車がかかっている。現在はさらなる力を得るため、神佑地狩りに手を出しており、淡幽が管理している神佑地を襲撃した際に、正守、および墨村良守と戦闘する。無数の妖気の玉を投げつけたり、妖気をカッター状にして投げつけるなど、さまざまな攻撃で二人を苦しめ、さらに、神佑地の力を得る事で若返っていき、さらに強力な攻撃を繰り出して、正守をあと一歩のところまで追い込むが、良守が無我夢中で繰り出した真界によって攻撃を無効化される。さらに、淡幽が異界を閉じた事で、それに巻き込まれて消滅した。のちに、無道が持つ知識を必要とした正守によって遺髪から再生させられるが、その時は生前、および妖だった時の力は持たないものの、性格は相変わらずのままだった。

加賀美 (かがみ)

松戸平介が使役している悪魔。その姿は、かつて松戸が愛していた加賀美リサをモデルとしている。松戸の手によって偶然ながら召喚され、彼の死後、その魂をもらい受けるという契約で、現在は助手としての役割を果たしている。リサをモデルとしているため、女性だと思われがちで、普段は礼儀正しい女性のように振る舞うよう求められているが、加賀美本人は男性の人格で、時折素の言葉が口を突いて出る事もあるが、そのたびに松戸に注意されている。また、戦闘時は、顔以外を巨大な蜘蛛に変化させて、松戸に仇なす存在を圧倒的な力で蹴散らしていた。松戸が白を倒したあと、彼と共にいずこかへと消え去った。

土蝦蟇 (つちがま)

烏森の地を狙う妖の1体。ガマガエルのような外見で、普段は土の中に潜んでいる。土をあやつる能力を持ち、口の中から無数の弾丸のように撃ち出す。特に古い土を好むが、コンクリートを吸い上げて発射する事もできる。烏森の地から力を得るために墨村良守、および雪村時音と戦闘した際には、弾幕を張る事で敵を寄せ付けない戦法で二人を翻弄する。しかし、良守が捨て身で放った結界術に囚われ、そのまま滅された。

(みさお)

裏会実行部隊・夜行に所属している少女。物体に命を与えて、お願いを聞かせるという能力を持っている。まだ幼いため、正式な役割には就いておらず、普段は人形遊びをしている事が多いが、その一方で、いざという時に備えて、能力を活かして敵から逃れるための訓練を重ねている。物静かなため、墨村正守からはおとなしい少女だと認識されていたが、実際は行動力に富んでいる。扇一郎の依頼を受けた角志野に拉致され、彼の能力である箱の中に閉じ込められるが、拘束してあったロープに命を与える事で自由になり、同じく捕らえられていた明を連れて脱走しようとする。そこを折悪く角志野に発見されてしまったが、彼を罠にはめる形で、明と共に箱から逃げきる事に成功する。

牙銀 (がぎん)

黒芒楼の実行一部の部隊長を務めている妖。人型の状態の際は、大柄な青年の姿をしているが、妖の状態になると、四つの腕と六つの足を持つ半人半馬の姿に変化する。大型な火黒同様に戦闘を楽しむタイプだが、彼とは異なり短気かつ単純な性格で、仲間達からもその性格を度々窘(たしな)められている。自らの妖気を炎に変えて攻撃する戦法を得意としており、墨村良守の結界すら貫通するほどの威力を持つ火炎弾を連射する事ができる。格闘能力も極めて高く、妖混じりの志々尾限がパワー負けしてしまうほど。黒芒楼が烏森を襲撃した際に、特攻隊長として前線に現れ、良守、雪村時音、限の三人と対決する。序盤こそ三人を圧倒するものの、限が完全変化した事によって戦況は逆転。力を集中した炎の弾を良守に弾き返されたうえに、限から上半身を切り裂かれた事で、戦闘不能にまで追い込まれる。しかしその際に、乱入して来た火黒によって限が倒されたため、滅されずに逃げ延びる事ができた。烏森への再襲来の際には、傷を負わされたリベンジを果たすべく再度前線に立つが、墨村正守の絶界を受ける事で、一撃で滅された。

腕団子 (うでだんご)

烏森の地を狙う妖の1体。複数の腕が絡み合った団子のような外見をしており、周りの木や建物などを巻き込みつつ、凄い勢いで転がって来る。烏森学園の見回りをしている墨村良守、および雪村時音と交戦状態になった時は、良守が付け焼刃で展開した絶界を弾き飛ばす。しかし、その横から展開された時音の結界で突き刺され、滅された。

大首車 (おおくびぐるま)

烏森の地を狙う妖の1体。車の軋む音を好む。車輪の中央に本体となる頭が存在し、高速で回転する事で近くにあるものを粉々に破壊する事ができる。さらに、車輪に刃を生やす事で、回転の攻撃力を上昇させられるが、刃を破壊されると、しばらくのあいだ再生できなくなる。黒芒楼と結託しており、彼らの依頼で、結界師である墨村良守と雪村時音を倒すために烏森学園を襲撃する。他の妖と比較しても高いパワーとスピードを誇り、良守の結界術を巧みにかわしながら、組み付いて来た志々尾限に、刃を使った回転で大きなダメージを与える。しかし、限の反撃によってダメージを受けた事で動きが鈍り、大首車の動きを見抜いた事で精度を高めた良守の結界を受け、拘束される。最期は、みっともなく命乞いをしようとするが、良守の手により滅された。

黒須 (くろす)

烏森学園中等部の教師を務めている中年の男性。担当教科は数学で、墨村良守や田畑ヒロム、市ヶ谷友則のクラスの担任を務めている。良守が結界師である事を知らず、当然二重生活を送っている事も知らない。そのため、授業に取り組む態度を問題視しており、時折説教をしている。一方で、授業から離れるとノリのいい一面を持ち、口説く時はまず褒めるべきだと主張する事もある。学校に迷い込んできた黒猫にノワールと名付け、声を掛けたりしていくうちに次第に懐かれる。しかし、ある雨の日にノワールが交通事故で命を落としてしまい、それ以来ノワールの霊に憑かれていた。霊感がないため、その事に気づかないままでいたが、ある時良守からノワールの存在を指摘され、今でも大切に思っているという思いを口にする事で、ノワールを成仏させる事に成功する。

紡岐 一親 (つむぎ かずちか)

裏会最高幹部である「十二人会」の第十客。顔から身体までが髪の毛で覆われており、性別も定かではない。咒宝や腐部骸次と親しい様子を見せるが、墨村正守に対してはつねに疑念を向けている。建築物などに髪の毛を巻き付ける事で、巨大化させたうえで自在にあやつる事ができる。咒宝や腐部同様、味方の被害を顧みない戦いをするため、正守から反感を買っている。裏会総本部が襲撃を受けた際に、逢海日永が上空から展開して来た精神支配術に取り込まれてしまう。裏会奪還作戦では、日永の手駒として参戦。建築物を暴れさせて奪還部隊に対抗したが、鬼童院ぬらの意を受けたギンが落とした特大の氷霜玉を受け、建物ごと凍り付いてしまった。裏会が正常化してからも十二人会には残ったが、半ば強制的に竜姫に従わされている。

淡幽 (たんゆう)

ある神佑地の異界に住む土地神。普段は中性的な人間の姿を取っているが、その正体は鶴のような姿形をしている。土地神ではあるが、その力は非常に弱く、墨村良守の不完全な絶界にすら屈するほど。実は、神佑地狩りを目論む無道の手により滅されかけており、当初は良守を生贄にする事でそれを乗り切ろうとしていた。しかし、襲い掛かって来た無道の手から良守によって守られた事で、神佑地の力を無道に奪われる前に、彼ごと異界を閉じて自ら消えようとしてしまう。

探野 耕造 (たんの こうぞう)

裏会調査室の室長を務めている中年の男性。好奇心は強いが、年のせいか運動神経が鈍く、長歩きなどを嫌がる傾向にある。最近では神佑地における異変に興味を抱いており、北海道の真白湖が神佑地狩りに遭った際には、波平と共に自ら出向き、扇六郎の協力を受けながら現場の検証を行った。謎を感知すると髪の毛が伸びるという特殊体質で、真白湖の異変を人為的なものだと突き止めた。裏会検察室が逢海日永の手によって潰された際には、そこで働いていた甥の夕上清輝に頼まれ、調査室における彼の席を用意している。

三能 たつみ (みのう たつみ)

烏森学園高等部の教師を務めている青年。担当教科は英語で、そのさわやかな風貌から女性生徒の人気を集めている。ある時、雪村時音と親しげに話していた事から、墨村良守からは、時音と心を通わせているのではないかと危機感を抱かれていた。さらに、三能たつみに絡んだ不良生徒が次々に昏倒したといううわさが流れ、心霊関係の能力があるのではないかと疑われる。実は時音もそれを疑っており、良守と時音が直に会いに行った際に、蛇の霊を繰り出して二人に襲い掛かって来る。しかし、実際は蛇の霊に傀儡蟲が寄生された事で、蛇の霊ともどもあやつられており、時音が傀儡蟲を滅した事で正気を取り戻す。本来の三能は、生徒思いの優しい性格だったが、命の恩人である時音に対して、感謝から自分の女神だと宣言し、結局良守からは今まで以上に警戒されてしまう。

箱田 (はこた)

裏会実行部隊・夜行の諜報班に所属している少年。つねに頭に紙袋を被っている。気弱な性格だが、夜行が烏森に移ってからは、母親を守るため前線に残る事を選択するなど、男気を見せる事もある。千里眼と呼ばれる能力を使う事で、敵や目的地の存在する位置を把握できる。蜈蚣と同様に、夜行では無二の能力を持っているため重宝される事が多く、雪村時音が断頭島に連れ去られた時は、墨村良守の協力者として共に行動している。ただし、強力な能力を持つ妖や人間を恐れる傾向があり、扇一郎や炎上寺彩子を覗いた時は、恐怖心を露にしていた。

角志野 礼二 (かくしの れいじ)

「箱使い」として知られる角志野兄弟の一人。角志野の弟で、彼と同じ能力を持つ。扇一郎の依頼を受けて、烏森学園に現れ、妖の入った箱を複数配置し、混乱に陥れる。しかし、奥久尼の口から、角志野が死亡したと聞いて激昂。計画を変更し、自ら妖の入った箱を解き放ち、烏森を襲わせる。だが、妖は墨村良守、雪村時音、刃鳥美希、蜩の四人にことごとく滅され、さらに時音が自ら箱の中に入って来たため、窮地に陥る。破れかぶれで、監視のために受け取っていた繭の封印を解放し、黒兜を目覚めさせ、角志野礼二本人はその場から逃走を図る。しかし、奥久尼の部下の手で拘束され、囚われの身となる。

月地ヶ岡 俊彦 (つきじがおか としひこ)

「月地ヶ岡食品会社」という会社の次期社長に内定している青年。年齢は25歳。両親を失った際に、兄の月地ヶ岡真彦と共に月地ヶ岡食品会社の社長夫妻に引き取られていた。実際は兄の真彦が社長の座を継ぐ予定だったが、彼がパティシエになりたいと言い出した事で、月地ヶ岡俊彦が社長を継ぐ事が決まったため、真彦はその事を俊彦から恨まれていると思い込んでいた。その真相を明らかにするため、墨村良守と花乃小路夢子から真彦について尋ねられるが、俊彦は真彦を恨んでおらず、先に死んでしまった事を寂しがっていたと語る。また、霊感を持たないため、最初は真彦が現世にとどまっている事を信じていなかったが、彼の作ったケーキを見る事で兄がそこにいる事を確信し、最後の別れを告げる事ができた。

邪煉 (じゃれん)

金剛毅が長年追っている妖。ヤマアラシのような形状をしており、三つの目を持つ。霧状に変化する事で拘束から逃れられるほか、弱気になった相手に入り込み、その心を喰らう事で命を奪う事も可能としている。狡猾な性格で頭の回転が速く、かつて邪煉自身を封印しようとした黒鉄に対して、鎖上に対するコンプレックスをうまく煽り、まずは鎖上を殺害。続いて、鎖上を失った事で罪悪感を抱いた黒鉄もその毒牙にかけた。そのため、金剛からは師の仇として憎まれている。烏森の地で墨村良守、および雪村時音と戦った時は、二人が展開した結界を破壊するなどの強力な力を見せつけた。しかし、彼らと金剛の連携によって、封印のための釘を打ち込まれ、大きな傷を負い、その場から撤退した。

魔耳郎 (まじろう)

花島亜十羅が使役している霊獣の1体。コウモリのような外見をしており、三つの瞳を持つ。亜十羅の背中にしがみつく事で、彼女を自由に飛行させる事ができる。さらに、独自のセンサーを備えており、半径100メートル以内に存在する敵の位置を瞬時に把握できるという能力も持つ。ただし、あまりに速すぎる相手に対しては対応できず、扇七郎が飛び去った際には、その動きを捉える事ができなかった。

闇暗行 (やみあんこう)

墨村良守と同行していた豆蔵が、緋田郷の異界で遭遇した妖。アンコウのような形状をしており、光る複数の眼と、無数の脚。そして、粘液に覆われた柔らかい身体が特徴。体を覆う粘液は、異界が及ぼす破壊の気配に対するバリアのような役割を果たしており、結界術を使えない良守を一方的に追い込んでいく。しかし、豆蔵のアドバイスから、身体を物理的に傷つける事で穴を空ければ、そこから破壊の気配に当てられて自壊する可能性を考えた良守が、豆蔵に持ち上げられる事で頭上から木の柱が突き刺さり、滅された。なお、足には操作するための呪具が取り付けられており、豆蔵は、良守が異界で拾った道具を狙って差し向けられたと推測している。

脳男 (のうおとこ)

烏森の地を狙う妖の1体。大首車同様に、黒芒楼とのつながりを持っている。さらに、烏森の地と結界師が注目されている事を利用し、八王子君也に寄生して、雪村時音を誘い出して乗り移ろうとする。しかし、その思惑を見抜いていた時音にあっさりと逆襲され、尋問を受ける羽目になる。その中で、黒芒楼のように、妖として組織だった行動を取るのは極めて異例である事や、人の形を得るための研究を行っている事を語る。そのスキを突いて逃げ出そうとするが、またも簡単に結界で捕らえられてしまい、そのまま時音の手によって滅された。

扇 五郎 (おうぎ ごろう)

扇一郎の弟で、扇六郎、扇七郎の兄。普段はほかの兄弟と融合する事で、扇一郎の肉体の一部を構成している。単体でも動く事が可能で、その際に発揮できる力もかなり強力。一郎の命を受け、裏会実行部隊・夜行と、彼らを率いる墨村正守の評判を落とすために、行正薫と、彼が率いる戦闘班のメンバーが調査に向かった神佑地の土地神を傷つけ、行正達に向けてけしかけた。その結果、行正と八重樫大は重傷を負い、ほかの三人が命を落とす大惨事に発展した。この事は、正守が扇に対して強い怒りを抱く切っ掛けとなった。

碧闇 (へきあん)

黒芒楼の情報部主任を務めている妖。つねに被り物で頭を覆っているため、その素顔を把握する事はできない。白より先に黒芒に滞在している古株の一人で、豊富な知識を持つ。白からの依頼で、烏森のほか、無色沼などの神佑地を調査したり、結界師についての情報を集めたりなど、水面下で暗躍していた。礼儀正しい性格の持ち主と思われていたが、内心では野心を漲らせており、黒芒楼が壊滅した際には、紫遠に対して新たな悪巧みを提案する素振りを見せつつ、彼女をあやつろうとする。しかし、それを見抜いていた紫遠に、逆にあやつられてしまう。なお、作中で妖の姿に変化する事はなかった。

黄道 (おうどう)

大柄な体格を持つ坊主頭の青年。裏会実行部隊・夜行に所属しており、戦闘班の一員として活動している。両手を天に掲げて妖気を凝縮させ、炎の球に変えて飛ばす「黄陽玉」を使いこなす。春日夜未が烏森を襲った際には、裏会総本部の命によって彼女を捕らえるために現れ、白道と二人でヨキを滅する。また、黒芒楼との戦いや、墨村正守が扇一郎の討伐に向かった際も同行している。裏会総本部が逢海日永の勢力に襲撃された時は、夜行本隊から離れて迎撃部隊として参戦するが、日永の精神支配術を受けてあやつられてしまう。しかし、裏会奪還作戦において鬼童院ぬらの率いる鬼に拘束され、元に戻る事ができた。

弓鉄 (ゆみがね)

烏森の地を狙う妖の1体。幼体の頃は、人間の少女のような姿形を取っており、愛玩を誘うような仕草を見せる事で、獲物を騙して捕食するという性質を持つ。しかし、成長すると百足のような巨大な形態に変化し、力任せに人間を襲うようになる。幼体の頃に、烏森の地が持つ力に惹かれてやって来たが、小学生だった頃の良守に見つけられてしまう。しかし、幼体の姿のまま彼を言葉巧みに騙し、さらに烏森の力を得た事で一気に成体となって良守に襲い掛かるが、駆けつけた雪村時音の結界術によって滅された。なお、弓鉄との戦いにおいて、時音は良守をかばって腕を負傷しており、この事が、良守が身の回りの人が傷つく事を恐れる原因の一つとなっている。

刃鳥 美希 (はとり みき)

裏会実行部隊・夜行の副長を務めている女性。年齢は20歳。夜行における運営などを一手に取り仕切っており、彼女がいないと組織が立ち行かなくなるほど。普段は冷静な様子を見せる事が多く、敵対する物には容赦がないが、扇一郎へ怒りを燃やす墨村正守をなだめたり、断頭島に連れ去られた雪村時音を助けようとする墨村良守に助力を惜しまないなど、実際は仲間思いの心優しい性格。一方で、正守と春日夜未の仲をからかうなど、茶目っ気を見せる事もある。左腕には染木文弥によるまじないの刺青が彫られており、この箇所から黒羽と呼ばれる巨大な矢を放つ事ができる。

藍緋 (あいひ)

黒芒楼の研究部の責任者を務めている妖。人型の状態の際は、妙齢の女性の姿をしているが、妖の状態になると、巨大な花のような姿に変化する。はるか昔から生きている妖で、人間を襲って捕食することもあったが、ある時、藍緋を見初めた男性に懇願された事から、興味半分で人間の家で生活するようになる。その際に、男性が見せた生命力と気持ちの関係に興味を抱くと共に、知らず知らずのうちにその男性を愛するようになる。しかし、男性が病気で亡くなると家を離れ、放浪するようになり、のちに白と出会い、黒芒楼に身を投じた。放浪してからは人間を捕食しておらず、その事が戦闘能力の低下にもつながっている。一方で、人間に興味を抱いたことで、妖が人間になるための研究を密かに続けており、それは黒芒楼に参加してからも同様である。

サキ

裏会でも限られた人にしか知られていない「蛇の目」と呼ばれる組織に所属している少女。命を削って予言を行い、それを上司である女性に報告したり、予言に出て来た場所に直接出向き、それを伝える事を任務としている。ある時、烏森に関する予言を伝える任務を負い、従えている幻魔蝶と呼ばれる妖に、それを伝えさせようとした。しかし、通常は無害であるはずの幻魔蝶が烏森の力に当てられて、無数に分裂を始めたうえ、人を傷つける能力を持った事で、昼間の烏森学園をパニックに陥れてしまう。幸い、墨村良守達、四人の正統継承者の活躍で事なきを得たが、惨事を引き起こしてしまった事を深く詫びて、力の源である髪の毛を切り、雪村時子に譲り渡した。さらに、烏森と裏会を中心に、大きな事件が立て続けに起こる事を告げて、帰っていった。のちに、逢海日永に蛇の目を解体させられたあとは、竜姫によって保護され、裏会を立て直すための予言を残す。その中には、日永を倒すのは墨村正守であるという内容のものもあった。

鎖上 (さがみ)

黒鉄の同僚に当たる封魔師の青年。封魔師としての実力は高く、邪煉をあと一息で封印できるところにまで持ち込んでいた。しかし、黒鉄の鎖上に対するコンプレックスを邪煉に利用され、彼にそそのかされた黒鉄が封印を弱めてしまう。さらに、鎖上自身が邪煉に襲われ、彼が、黒鉄が裏切ったとうそぶいた事で生じた動揺を突かれ、心を浸食されて命を落としてしまう。鎖上の死は、黒鉄の心に大きな影を落とし、彼が邪煉に倒される原因にもなっている。

茶南 (さなん)

黒芒楼に所属している妖。人皮を被る事で、ヒゲの生えた男性の姿を模している。火黒に率いられて烏森の地に現れ、墨村良守、雪村時音、志々尾限と対峙する。一見すると紳士的な物腰で、火黒が交渉を試みていた際は、人間を好んでいると発言する。しかし良守達を自分の思い通りにさせるために、結界を封じるフィールドに誘い込んだうえでいたぶろうとしたり、灰泉が時音の結界でダメージを受けると簡単に見捨てるなど、その性根は悪辣。人皮を脱ぎ捨てた真の姿は、コウモリのような形をしており、襲撃班の中では唯一飛行が可能。自分が劣勢に陥ると時音を人質に取ろうとするなど、卑劣な様子を多く見せたため、見限った火黒によって斬殺された。

夜一 (やいち)

花島亜十羅が使役している霊獣の1体。黒い一角獣のような姿をしており、10個もの瞳を持っている。やや直情的な性格をしており、月之丞にからかわれると機嫌を損ねる事もある。身体を砂状に変化させる能力を持ち、その状態のまま相手にまとわりついたり、一部だけを元に戻す事で敵を締め上げたりする戦法を得意とする。黒芒楼による2度目の烏森襲撃や、裏会実行部隊・夜行が扇一郎を捕縛する際の作戦に投入された。

村上 正直 (むらかみ まさなお)

烏森の地が持つ力に惹かれてやって来た中年男性の幽霊。かつては大手文具メーカーに勤務していたが、突然リストラを宣告される。さらに、その事実にショックを受け、呆然と街をさまよっていた際に、交通事故に巻き込まれて命を落としてしまう。月地ヶ岡真彦と異なり、自分が霊になっている事を自覚しているが、リストラから首を切られる事を強く想像した結果、右手が首を斬るための巨大なハサミに変貌し、烏森の力を受ける事で半ば暴走状態に陥ってしまう。しかし、墨村良守と雪村時音の手によって暴走は鎮められ、正気を取り戻す。良守からは、その後ろ向きな姿をかつての自分に重ねられたため、その場で滅される事なく、花乃小路夢子を紹介されると、彼女のもとに向かって行った。

宙心丸 (ちゅうしんまる)

烏森に封印されていた大いなる力の正体。少年の姿のまま時を止められており、烏森城の中で暮らし続けて来た。面白いものを好んでおり、烏森を訪れる妖に力を与えるのも興味本位によるもの。最近では、墨村良守の破天荒な行動に特に興味を抱いており、彼に力を貸す事もあった。しかし、自分が世界を容易にひっくり返す力を持っているという自覚がなく、危うい状態にある。その正体は、間時守と月影のあいだに生まれた子供で、世間を憎んでいた時守のたくらみによって、生まれる前に過剰な力を注がれる。その結果、身の回りの生命をことごとく殺しつくす存在として生まれてしまい、その事を後悔した時守の手によって、烏森の奥深くに封印されていた。しかし、封印は限界を迎えつつあり、良守の真界で、完全なる封印を施す事が求められている。宙心丸自身は、多少わがままな面こそあるものの心優しい性格で、後に良守から、自身にとてつもない力が眠っていると聞かされた時は、自分の力で他者を不幸にさせたくないと願っていた。裏会奪還作戦が終わり、まほらが嵐座木神社に移ったあと、良守の手によって覇久魔の地に封印された。

水月 (すいげつ)

逢海日永の傍らに控えている女性。800年の長きにわたって生きながらえて来た龍の妖混じりで、日永のかつての妻でもあった。しかし、400年ほど前、日永と共に各地を巡っていたところ、逢海月久の手によって日永と引き離されてしまう。それからは、裏会の記録係と呼ばれる部署で働いており、長らくお互いが夫婦である事を忘れていたが、ある時偶然日永と再会した事で、二人が夫婦であった事を思い出し、覇久魔の城へと戻って来た。日永の事を今でも愛しており、それだけに、彼が月久への復讐のため、数々の凶行に手を染めている事を嘆いている。また、氷浦蒼士に対してはつねに母親のように愛情を注いでおり、「氷浦蒼士」と言う名前も、水月が付けたものである。

逢海 月久 (おうみ つきひさ)

逢海日永の弟。彼と共に裏会を作り上げた人物。兄と同様、異なる男性の身体に精神体で侵入する事で半永久的に生きながらえる能力を持っており、現在は植物操作能力を持つ青年の身体に乗り移っている。普段は、裏会最高幹部である「十二人会」の第一客「夢路久臣」として活動しており、権力欲のない兄に変わって裏会を思うままに動かして来た。しかし実際は、日永とは兄弟ではなく、彼の記憶を奪う事で自分を弟だと思いこませ、さんざん利用して来た。さらに、彼の妻だった水月をも奪っており、現在はそれを知った日永から復讐相手として強く憎まれている。間時守は、かつて裏会を設立するにあたって力を貸してもらっているものの、「食えない男」と表現するなど、あまり信用していない。冷徹で欲が深い一方、用心深い面が目立つ。ミチルや壱号など、覇久魔の城における部下からは「玉様」と呼ばれているが、日永と比較すると部下から信頼は得られておらず、逢海月久自身も、部下を信用していない。日永の依頼を受けた零の攻撃によって、現在の身体を破壊される。しかし、実際は零に乗り移っており、日永が竜姫や墨村正守に倒され、彼らが裏会を再建したら、その中心人物に再度乗り移り、再び裏会を思い通りにしようと企んでいた。正守達が裏会奪還作戦を遂行している最中、零のふりをして日永に近づき、重傷を負わせる。しかし、最後の力を振り絞った日永の攻撃で返り討ちに遭い、今度こそ死亡した。なお、乗り移りを繰り返す事で記憶が変質しており、日永を本当の兄だと思い込んでいた。

逢海 日永 (おうみ にちなが)

裏会の総帥。異なる男性の身体に精神体で侵入する事で、半永久的に生きながらえる能力を持っており、現在は少年の姿をしている。弟の逢海月久と共に裏会を作り上げた創始者の一人でもあり、以来、総帥として君臨している。その気になれば独裁すら可能とするほどの、絶大な権限を持つが、逢海日永自身は権力を求める事はいっさいなく、実質的に月久が組織を運営している状態で、自分の代わりに裏会を取り仕切っている月久を働き者と呼んで、感謝していた。しかし実際は、月久は弟などではなく、妻の水月と共に偶然遭遇した際に記憶を操作されて、自分を月久の兄だと思いこまされ、水月を奪われた挙句、月久の都合のいいように利用されていた。ある時、偶然水月を発見した事から、失っていた記憶が一部蘇り、さらにミチルから提案されたプランを実行する事で、自分を利用して来た月久に対して復讐する事を決意する。本来の日永は、自分に自信が持てない反面、部下や仲間に対して優しい性格で、かつて裏会の創設を手伝ってもらった間時守や、その子孫である墨村正守に対しても仲間意識を持っていた。しかし、復讐を決意するにあたって、月久本人のみならず、彼と共に作り上げて来た裏会を、構成員ごと消滅させようとしたり、神佑地狩りを行う事で世間を混乱に巻き込んだり、いずれは水月や自分自身すら無に帰すつもりでいる事を語るなど、冷酷な性格に変貌してしまう。一方で、駒として利用して来た氷浦蒼士がケガをした際には手厚く治療させたりと、部下に対する情は捨てきれておらず、その事からミチルからは思いを寄せられており、零からも友人として好かれている。扇七郎に依頼して、十二人会の扇一郎、奥久尼、狐ノ塚奇平を殺害し、ついには怨敵である月久も零の手で殺害されたため、復讐は完遂したかに見えた。しかし、最終的には、大きな力によって、世界もろとも自分が消え去る事を望むようになる。ついには裏会のすべてを掌握するに至るが、竜姫率いる総帥討伐部隊を迎え撃っている最中に、零に乗り移っていた月久の手で重傷を負う。最期の力を振り絞って月久を倒したあと、現れた正守と水月に対して自らの行いを懺悔し、乗っ取っていた身体から分離した精神体で正守の絶界に自ら飛び込み、消滅した。なお、部下からは「王様」と呼ばれている。

銀魅 霞玄 (しろみ かげん)

裏会最高幹部である「十二人会」の第六客。落ち着いた雰囲気を持つ中年の男性で、卓越した剣の腕を持つ。愛刀である「黒雨」の頭身から無数の刃らしき妖気を伸ばし、それを敵に絡みつかせて寸断するという戦法を得意とする。入り婿で、妻が竜姫と仲がいいため、二人の頼みをつい聞いてしまう事が多い。嵐座木神社が逢海日永の手に落ちた翌日、竜姫の誘いを受けて十二人会を抜けて、独自に総帥討伐のための準備を進めていた。そして、総本部が乗っ取られたあと、鬼童院ぬらや扇七郎、墨村正守らと共に、総帥討伐部隊に参加する。裏会奪還作戦では、冥暗が作り上げた黒兜を、黒雨を振るう事で破壊する。そのスキを突いたもう1体の黒兜から、日永の精神支配術を移されかけるが、七郎に救われて事なきを得た。

市ヶ谷 友則 (いちがや とものり)

烏森学園中等部に通っている2年生の少年。墨村良守や田畑ヒロムとは同じクラスで、友人の間柄だが、霊感はなく、良守が結界師である事も知らない。二人と比較すると地味な容貌をしており、性格も落ち着いている。しかし、人を見る目は確かで、ヒロムが良守の行動に疑問を抱いていた時も、シンプルな行動理念を持っていると、良守を理解する意図を示していた。

秋津 秀 (あきつ しゅう)

裏会実行部隊・夜行の戦闘班に所属している少年。のちに影宮閃と共に諜報班へと転属になる。統合型の妖混じりで、背中に翼を生やして空を飛んだり、デビルイヤーと呼ばれる能力を使って、はるか遠くの物音を聞く事ができる。穏やかな性格で、親友である閃を上手くフォローしている。また、料理が得意なため、食料調達班と調理班も兼任しており、夜行における食事の用意をする事も多い。一方、完全変化をすると、一転して狂暴な性格の吸血鬼になり、うら若き乙女を襲って血を吸おうとするようになってしまう。ただし、乙女の血しか吸えないわけではなく、烏森の力に当てられて暴走した時は、氷浦蒼士の血を吸った事もあった。

腐部 骸次 (くさりべ がいじ)

裏会最高幹部である「十二人会」の第五客。強面の男性で、言動にも粗野な部分が多く見られる。咒宝や紡岐一親と親しい様子を見せるが、墨村正守に対してはつねに疑念を向けている。人間の遺体を意のままにあやつる能力を持ち、骨と化した状態でも有効。そのため、できるだけ犠牲を出さないようにと求める正守に対して、むしろ犠牲が出た方が都合がいいと言い放ち、反感を買っている。裏会総本部が襲撃を受けた際に、逢海日永が上空から展開して来た精神支配術に取り込まれてしまう。裏会奪還作戦では、日永の手駒として正守達に対抗し、多数の遺体をあやつって奪還部隊を迎撃しようとするが、スキを突いて近づいた扇七郎の手により、一撃で気絶させられた。裏会が正常化してからも十二人会には残ったが、半ば強制的に竜姫に従わされている。

紫島 (しじま)

扇一族の使用人の青年。扇七郎が7歳の誕生日を迎えた際に、専属のお付きとして扇二蔵から差し向けられた。まじめな性格で、それゆえに七郎の奔放な行動に振り回される事が多い。しかし、七郎からは信頼されており、嵐座木神社が逢海日永に襲撃されて、扇一族の使用人がさらわれた際には、ほかの使用人を二蔵に返すのは構わないが、紫島は自分のもとに残したいと明かしている。

田畑 ヒロム (たばた ひろむ)

烏森学園中等部に通っている2年生の少年。墨村良守や市ヶ谷友則とは同じクラスで、友人の間柄だが、霊感はなく、良守が結界師である事も知らない。烏森学園における有名人や、名物などの調査を趣味としており、「情報の魔導師」、および「烏森のデータバンク」を自称しているが、良守と市ヶ谷からは、その髪型から「おばさんパーマ」と呼ばれている。良守が雪村時音と知り合いである事を知ると、俄然その事に興味を持ち、彼女の趣味などを聞いて来る。その際に、時音が烏森学園の男子や教師から人気を集めている事を良守に話したところ、思い切り危機感を抱かれてしまい、さらにデリカシーのない奴は嫌いだと非難されてしまう事があった。しかし、データバンクとして有効に活用されている節があり、田畑ヒロムの情報が、妖に対抗するための役に立った事もある。

波平 (なみひら)

裏会調査室に所属している青年。その名前から、探野耕造からは「なみへい」と呼び間違えられた事がある。探野と共に、北海道の真白湖にある神佑地の調査を行うが、その際に墨村守美子の痕跡があった事を知り、扇六郎と共に墨村家を訪ねる。その際に、守美子についての情報を得ようとするが、墨村良守や墨村修史から怪しまれたうえに、六郎が挑発してしまったため、情報を得られる事なく良守に追い出されてしまう。さらに六郎から攻撃を受けた事で傷を受けてしまう。実は奥久尼の部下で、その事を伏せて裏会調査室に参加していたが、扇一族が強硬的な手段を目論んでいる事を知らせるため、調査室を抜け、奥久尼のもとに戻る。しかし、奥久尼が殺害されると、彼女の遺志を受けて裏会における異変の真相解明を望み、再び調査室に戻る事になった。

三毛野 (みけの)

雪村家の結界師に対して修行をつけるため、間時守の手によって生み出されたメスの妖。その名前の通り三毛猫のような姿をしている。縞野と比べるとやや皮肉屋な性格で、力任せな結界術は墨村家に任せておけばいいとこぼした事もある。「波同部屋」と呼ばれる部屋で、雪村時音に対して修行をつけて、どんな外的要因もすり抜ける事で無効化させるという「空身」を修得させた。

冥安 (めいあん)

裏会最高幹部である「十二人会」の第四客。陰気な雰囲気を持つ老年の男性だが、十二人会の中でも強硬派と知られており、行動力に優れている。一方で、裏では非道な人体実験などを繰り返しているため、竜姫からは嫌われている。夢路久臣(逢海月久)が死亡したと思われたあと、裏会の新たなまとめ役として就任し、墨村正守が動きやすくなるよう便宜を図った。逢海日永の手勢が裏会総本部を襲撃した際には、2体の黒兜を目覚めさせて日永を仕留めようとするが、逆に精神支配術を受けて、黒兜もろとも洗脳されてしまう。後に裏会奪還作戦が実行された時は、そのまま日永の戦力として戦うが、竜姫の依頼を受けた扇七郎の手によって殺害された。

白道 (はくどう)

やや小柄な体格の坊主頭の青年。裏会実行部隊・夜行に所属しており、戦闘班の一員として活動している。手のひらに練り上げた気を刃の形に変えて、敵に向けて発射する「月刃」という能力を得意とする。春日夜未が烏森を襲った際には、裏会総本部の命によって彼女を捕らえるために現れ、黄道と二人でヨキを滅する。また、黒芒楼との戦いや、墨村正守が扇一郎の討伐に向かった際も同行している。裏会総本部が逢海日永の勢力に襲撃された時は、夜行本隊から離れて迎撃部隊として参戦するが、日永の精神支配術を受けてあやつられてしまう。しかし、裏会奪還作戦において鬼童院ぬらの率いる鬼に拘束され、元に戻る事ができた。

黒兜 (くろかぶと)

巨大な人造の妖。烏森学園の校舎を上回る全長を誇る。人と、人が作り出したものを破壊するようにプログラムされており、不完全な状態ですら、周囲の人間や妖を寄せ付けないほどのパワーを発揮する。角志野礼二が扇一郎の兄弟から預かっており、本来は戦線に投入するつもりはなかったが、兄を失った事で自暴自棄になった礼二によって起動する。墨村良守が戦っていた妖を喰らう事で成長し、さらに良守に襲い掛かり、彼の結界と一進一退の攻防を繰り広げる。しかし、黒兜を面白がった烏森の地が力を注ぐ事で完全体となり、良守ですら手が付けられなくなる。完全体になった黒兜は良守を放置し、烏森の地に攻撃を仕掛けるが、それが烏森の怒りを買い、過剰に力を注ぎこまれる事で自壊した。後に冥安が別の黒兜を2体作っており、烏森を襲ったものより巨大かつ強力な仕上がりになっていたが、こちらは裏会総本部を襲撃した逢海日永に支配され、彼の手駒として利用される。しかし、裏会奪還作戦において、片方は銀魅霞玄に、もう片方は扇七郎に、それぞれ破壊された。

翡葉 京一 (ひば きょういち)

裏会実行部隊・夜行に所属する青年。寄生型の妖混じりで、左腕に寄生している植物型の妖を操作する事ができる。志々尾限の上官に当たり、妖混じりの彼が暴走した際には、傷つけてでもそれを止める役割を負っている。翡葉京一自身が妖混じりである事もあり、力を制御できない妖混じりを信用しておらず、中でも限に対しては、彼が暴走した時に腕に大ケガを負った事もあり、辛辣な言動を行う事が多い。しかし、根から嫌っているわけではなく、限が火黒の手によって殺害された時は、悲しむ様子を見せていた。黒芒楼との戦いが終わったあとは、仲間達と共に烏森の地から去って行ったが、神佑地狩りや裏会の異変などの影響で、夜行の増員が決まった際には、巻緒慎也達と共に烏森の地に戻って来ている。

咒宝 (じゅほう)

裏会最高幹部である「十二人会」の第十二客。黒い覆面で顔の下半分を覆った青年で、腐部骸次、および紡岐一親とは親しい様子を見せるが、墨村正守に対しては常に疑念を向けている。大地を巡っている「龍穴」と呼ばれる地点に気を集め、「気柱」と呼ばれるエネルギーの柱を地面から空中へ雷のように走らせる能力を持つ。高位の神佑地であればあるほど力を発揮し、裏会総本部では特に強力な気柱を放つ事ができる。プライドが高いうえに冷酷な性格で、味方にいくら被害が出ようと気にする素振りを見せなかったため、正守からは「最低だ」と罵られても、まったく意に介さなかった。しかし、裏会総本部が襲撃を受けた際に、逢海日永が上空から展開して来た精神支配術に取り込まれてしまう。裏会奪還作戦では、日永の手駒として正守達に対抗し、気柱を使って鬼童院ぬらを窮地に追い込むが、駆けつけた扇七郎と交戦し、気絶させられた。裏会が正常化してからも十二人会には残ったが、半ば強制的に竜姫に従わされている。

ウホ助 (うほすけ)

鋼夜の部下を務めている妖の1体。大柄な猿のような形状をしている。力は強いが、「ウホ」としか喋る事ができない。骨太郎が墨村良守の念糸に捕らわれたところを狙って攻撃を仕掛けるが、良守の結界術によってあっさりと拘束されてしまう。ボスである鋼夜に対する信頼は厚く、邪険にされても付き従っており、彼が最期を迎えた時は深く悲しんでいた。

志々尾 涼 (ししお りょう)

志々尾限の姉。弟の限をいつも思いやっていたが、それゆえに、彼が周りから心無い仕打ちを受けていた事に頭を悩ませていた。また、妖混じりである限が暴走しないようにと願っていたが、父親から、裏会に預けた方がいいのではないかと持ち掛けられた時は、その方が彼の幸せになると信じて賛成してしまう。しかし限は、その事で涼からも疎まれていると誤解してしまい、この事が、限が完全変化を行う原因となってしまい、志々尾涼も傷つけられてしまう。裏会の治療班の尽力で一命を取り留めるが、その時は既に限は裏会に行ってしまった後だったため、強い責任を感じてしまう。限が命を落とした際には、悲しみのあまり裏会実行部隊・夜行の墨村正守に怒りをぶつけてしまう。しかしその際に、同行していた墨村良守が限を慮る発言をした事で、限に友達ができたと認識し、わずかに救いを得た。

金剛 毅 (こんごう たけし)

封魔師を名乗っている少年。年齢は17歳。師匠と仰ぐ黒鉄を殺害した妖の邪煉を追って、烏森の地にやって来た。そこで、墨村良守、および雪村時音と出会うが、自分の身を顧みず封印のみに集中していたため身体がボロボロになっている。狡猾な邪煉の戦術に翻弄され続けており、烏森の地でも彼と対峙する事になり、その際に必ず封印しようと気負っていたが、良守との共闘の際に、その気負いや、師匠の仇を取るという負の感情こそが邪煉の栄養源である事に気づき、二人でポジティブな思考を絶やさないよう振る舞う事で、邪煉に一矢報いる事に成功する。邪煉が逃亡したあとは烏森から離れるが、後に裏会と接触したようで、裏会奪還作戦にも参加している。

江朱 (こうしゅ)

黒芒楼の総務部主任を務めている妖。人型の状態の際は、小柄な中年男性の姿をしているが、妖の状態になると、タコのような姿に変化する。黒芒楼の幹部の中では姫に次ぐ古株で、主に黒芒の城を維持する役割を担っている。最近になって姫の体調が悪化し、それに伴って黒芒の城が崩壊しかかっているため、苦労している。そのため、結界師である墨村良守が乗り込んで来た際には、彼に対して城を修復するよう脅しをかけた。しかし、戦闘能力は大した事がなく、良守の展開した結界によってあっけなく滅された。

骨太郎 (ほねたろう)

鋼夜の部下を務めている妖の1体。小柄な人間の少年のような形状をしている。自意識過剰な性格で、烏森の地に現れた際は「魔界のプリンス」を自称し、墨村良守に挑みかかる。しかし実力がまったくともなっておらず、良守の結界術によって右足を失ってしまう。一方で、仲間であるウホ助や長尾を守るために、自分一人を滅してほしいと懇願するなど仲間思いな一面を持ち合わせている。また、ボスである鋼夜への信頼は厚く、どれだけ邪険にされても付き従っていた。最終的には、良守のはなった念糸に捕獲されるが、特に脅威ではないと判断された事で見逃される。

蛇の霊 (へびのれい)

三能たつみが使役している蛇の形をした霊。別の意識を持つ3匹が絡み合うように展開されており、三能本人から、それぞれ「ロクサーヌ」「シモーヌ」「ジョセイフィーヌ」と名付けられている。墨村良守は、最初妖と勘違いしていたが、実際は三能を守護するために存在しており、彼にもほかの人物にも、基本的に害を及ぼす事はない。しかし、ある時傀儡蟲に寄生され、三能とまとめてあやつられてしまう。事件が解決してからしばらく経ったあと、烏森の地が及ぼす力の影響で喋る事ができるようになった。

九門 (くもん)

間時守に付き従っている妖。猿のような姿をしている。陽気かつ好戦的な性格で、時守が墨村良守の力を試すために差し向けられた。空間に扉を作り出す能力を持っており、一度扉の中に入れば、九門自身が開き直すまで中から出られない仕組みになっている。しかし、良守を扉の中に閉じ込めた際には、彼が極限無想を発動して強化された結界の力で、強引にこじ開けられてしまった。斑尾とは旧知の仲だが、文字通りの「犬猿の仲」である。

しぐま

墨村良守が極限無想を使う際に呼び出される、「管理者」と呼ばれる存在。良守に似た人格を持っており、彼が極限無想を使ったうえで結界術を使用する際に、良守と会話を交わす。その身体は白と黒の縞模様で、音符や蛇、道化師など、良守の意思一つでさまざまな姿を取る事が可能。

サンディー・ブラックマン

アメリカから留学している少女。年齢は19歳。日本文化が好きな努力家で、夜はバイトに明け暮れている。片言ながらも自由に日本語をしゃべる事ができ、その朗らかな性格から近所の人達からも好かれている。大天狗の黒雲斎からも気に入られているが、最近になって彼に付きまとわれている事に気づき、知り合った紫堂に対して、彼がストーカーであると涙ながらに訴えてしまう。

加賀美 リサ (かがみ りさ)

白の人間時代における妻。松戸平介の思い人でもあった女性。美しい外見を持っているが、いつかその美しさが衰える事を厭い、夫である白に対して、不老不死になれるようお願いした事があった。白はこの事で、自分のために夫を利用する冷血な女性だと思うようになるが、実際は白を愛するが故に、自分から離れないように美しさを保っていたいという願いから出たものだった。結局不老不死は失敗し、その挙句醜い容姿に変貌した事で自ら死を選び、その際に松戸に対し、白を助けてほしいと懇願する。しかし、加賀美リサの死をきっかけとして、白と松戸は対立する事になってしまう。

細波 慧 (さざなみ けい)

裏会実行部隊・夜行の諜報部の主任を務めている男性。実質的に夜行のNo.3の立場にいるが、細波慧自身は密かに扇一郎と通じており、黒芒楼に情報が漏れていた遠因となっていた。墨村正守もそれを知りつつ泳がせていたが、正守から呼び戻された際に、敵か味方かというシンプルな質問を投げかけられると共に、凄まじい殺気を向けられる。その圧力に恐怖し、扇一族と手を切り、夜行のメンバーとして活動する事を決めた。周囲には、細波慧自身を催眠・洗脳術師と偽っているが、本領は読心術で、この事は影宮閃以外には知られていない。また、かつて扇と通じていた伝を活かし、彼を陥れる際には奥久尼と共に活躍した。

赤亜 (せきあ)

黒芒楼に所属している妖。人皮を被る事で、金髪の男性の姿を模している。火黒に率いられて烏森の地に現れ、墨村良守、雪村時音、志々尾限と対峙する。ハイテンションで考えが浅く、火黒に幾度も反抗するなど自分本位な様子が目立つ。人皮を脱ぎ捨てた真の姿は、軟体動物のような形をしており、波緑と灰泉が滅され、窮地に陥ったところを茶南に救われる。しかしその見返りとして、時音を人質にとる手伝いをさせられ、その手段を醜く感じた火黒の手によって茶南もろとも寸断され、滅された。

炎上寺 彩覚 (えんじょうじ さいかく)

裏会検察室に所属している男性の能力者。炎上寺彩子の弟。強面で体格も大柄だが、姉とは異なり冷静な性格の持ち主。彩子の命によって墨村良守と刃鳥美希を迎え撃ち、多数の式神を使って同時に制圧しようとするが、返り討ちに遭う。夜城の動きに不信感を抱いており、彼女が彩子を気絶させた事で彼女に協力する気をなくしてしまう。夜城が倒れた際には、彼女の暴走が原因であると正式に認めて、雪村時音の罪を帳消しにした。また、のちに逢海日永の手勢によって裏会検察室が壊滅させられた時は、自ら墨村正守のもとを訪れて協力する姿勢を明かし、自分が知り得る限りの情報を提供している。

黒鉄 (くろがね)

金剛毅が師匠と仰いでいる封魔師の青年。金剛が邪煉に襲われている最中、駆けつけて金剛を救った事で慕われるようになる。その場で弟子にして欲しいと金剛に懇願されるが、返答を保留したまま彼のもとを去る。同僚の鎖上に対してコンプレックスを抱いており、そこを邪煉に付け込まれた結果、鎖上が命を落とす遠因を作ってしまう。黒鉄自身もそれに対して深い罪悪感を抱き、邪煉の付け入るスキを作った結果、心を浸食されて瀕死の重傷を負う。そして、その際に偶然再会した金剛の前で息を引き取った。黒鉄自身は知る由もないが、彼の死後、残された封魔師としての道具を金剛が受け継いだ。

謎の男 (なぞのおとこ)

烏森の地に3匹の白羽児をけしかけ、墨村良守、および雪村時音との戦いを観察していた男性。当初は、烏森の地が白羽児に力を与えた事で勝利を確信していたが、彼らが良守と時音の連携の前に敗れ去ると、結界師と烏森の地についての情報を、所属している組織に報告するため逃亡しようとするが、良守に見つかってしまう。その正体は人間ではなく、人皮と呼ばれる特殊な装備を身に着ける事で自らを人間に見せかけた妖。良守と正面切って戦おうとはせず、人皮の一部を脱ぎ捨てると、本来の巨大な腕を振り回し、森の木をバリケード代わりにして何とか逃げおおせる事ができた。そして、主である白に一部始終を報告しようとするが、白からは既に見捨てられており、頭の中に入れられていた蟲を回収された挙句、命を奪われた。

縞野 (しまの)

無想部屋で修業していた墨村良守の前に突然現れたオスの妖。その名前の通り、縞模様の猫のような形状をしている。その正体は、結界師に修業を課させるために、間時守の手によって生み出された存在で、良守と烏森(宙心丸)の相性が最良だと判断した事で、彼を烏森封印のための「共鳴者」にするため、極限無想の修業を執り行う。尻尾を分裂させ、そこから電流らしき気を流し込む事で、その相手の神経を活発化させ、より深く集中させられるようになるという能力を持っている。時守の手によって作られたため、墨村繁守など代々の結界師とも知り合いで、良守の事を「22代目」と呼んでいる。

八重樫 大 (やえがし だい)

裏会実行部隊・夜行の戦闘班に所属している少年。志々尾限が倒され、夜行が黒芒楼と本格的に争う形になった際に、影宮閃、秋津秀と共に先んじて墨村良守と接触している。自らの分身を生み出し、敵の目を欺く事を得意としている。のちに、行正薫や、戦闘班の仲間と共にある神佑地の調査に赴くが、扇五郎の陰謀によって土地神からの襲撃を受けて、八重樫大本人は助かるものの、仲間を失ってしまう。

扇 二蔵 (おうぎ にぞう)

扇一郎、扇五郎、扇六郎、扇七郎の父親。年齢は82歳。物静かで厳格な性格の持ち主で、力のない存在は容赦なく切り捨てられると認識していたり、雇い主の希望があれば、たとえ実の息子でも殺害するなど、冷徹な面を多く見せる。しかし、情がないわけではなく、自分に近しい存在のために、あえて悪役を演じる事もある。かつて竜姫とは知り合いで、互いを風神、雷神と呼び合って暴れていた時期があった。また、竜姫によると、若い頃は六郎に性格が似ており、扇家の中でも苦労して来たという。逢海日永に嵐座木神社を襲撃された際には、先んじて墨村正守から情報を得ていた六郎に救出されたため、洗脳されずに済んでいる。

ミチル

逢海月久の直属の部下にあたる女性。もともとは逢海日永にも仕えていたが、日永が出奔した際、カケルのために自ら月久のもとに残ったという過去を持つ。幼い頃から天才的な資質をもっているまじない師で、周りの環境が良くなかった事もあり、自分の研究のためなら何を犠牲にしてもいいという、歪んだ考えに取りつかれていた。カケルの事も、逢海兄弟のために利用する「人形」としか考えておらず、使えないと判断した際には、容赦なく壱号に対して彼女の殺害を命じるほどだった。しかし、ある時出会った日永の優しさに触れ、さらにカケルに慕われる事で、かつての自分がいかに悪辣だったかを思い知らされる。それからは、冷酷だった性格が徐々に変化していき、さらに日永に思いを寄せるようになる。しかしある時、日永が月久に騙され続けて来た事で絶望しきってしまったため、彼を思うあまり、復讐のために神佑地狩りを利用する事を提案してしまう。自分の言動によって、世界を脅かす惨事に発展した事を強く後悔し、月久のもとに戻る事を選択。最後に、カケルに烏森の力を得させるために襲撃を試みるが、墨村良守達によって阻止され、拘束される。そのままおとなしく裁きを受けようとしていたところを、突如現れた扇七郎によって殺害された。

月之丞 (つきのじょう)

花島亜十羅が使役している霊獣の1体。巨大な鳥のような姿をしている。亜十羅を乗せて自由に飛行できるほか、尻尾を変形させて、妖を容易に寸断できる切れ味を持つ刃を作り上げる事が可能。ややシニカルな性格で、夜一をからかって楽しむ事もある。黒芒楼による2度目の烏森襲撃や、裏会実行部隊・夜行が扇一郎を捕縛する際の作戦に投入された。

長尾 (ながお)

鋼夜の部下を務めている妖の1体。鳥の姿をしており、空を自在に飛び回れるが、「アホンダラー」としか喋る事ができない。骨太郎とウホ助を捕らえた墨村良守に対して、空から奇襲を仕掛けるが、それを見越していた雪村時音の結界術に簡単に拘束されてしまう。ボスである鋼夜が斑尾との戦いで命を落とすと、それを見届けて、骨太郎やウホ助と共に烏森から去って行った。

眺める者 (ながめるもの)

覇久魔の地に潜んでいる謎の存在。姿はまほらに似ているが、人格は男性のものである。本来、人の前に現れる事はほとんどなく、間時守ですらその存在を知らなかった。土地神すら圧倒するほどの強大な力の持ち主で、カケルが作り上げた「世界を終わらせるまじない」を簡単に破壊している。まほらを説得するため訪れた雪村時音に対し、攻撃を加えるが、時音は「空身」を使っているため攻撃が通じず、やがて彼女の言い分を認めて、宙心丸を封印するために力を貸す。眠っているまほらを呼び起こす事ができるなど、彼女から信頼されている様子を見せる。また、眺める者は1体だけではなく、東北などを始め、さまざまな地方に存在しているという。まほら同様、扇七郎の事を気に入ったようで、宙心丸の封印が終わってからは、嵐座木神社に滞在している。

キヨコさん

烏森学園で都市伝説となっている存在。数年に1度現れるという謎の少女で、漆黒の髪に真っ赤な唇、そして、長く白い着物が特徴とされている。その正体は、はるか昔から全国各地を渡り歩いている浮遊霊で、都市伝説通り、数年に1度現れては、学園の生徒や教師に対して同じトレンドが流行するよう洗脳するという悪戯を仕掛けている。結界師である墨村良守には洗脳が聞かないため、その状況を不審がられていたが、偶然ながら屋上で発見される。その際に追いかけっこなどの騒動を巻き起こすが、その中で烏森が良守を気に入っている事に気づき、去り際に彼に対して、烏森はいずれ目覚めるという予言を残して、去って行った。

繭香 (まゆか)

嵐座木神社の土地神。高貴な雰囲気をまとう女性で、扇二蔵や扇七郎など、優れた容姿を持つ男性を気に入っている。また、間時守と知り合いであるという様子も見せていた。性格はわがままそのもので、七郎を可愛がる素振りを見せるが、機嫌が悪くなると七郎すら始末しようとするほどの激情家でもある。また、そのわがままから扇一族に不自由を強いており、七郎からは内心で疎まれていた。のちに、墨村守美子の依頼で、土地神の交代を承った七郎の手により殺害され、彼女の扇一族に対する支配は終わりを告げた。

蜈蚣 (むかで)

裏会実行部隊・夜行の運送班の主任を務めている青年。ムカデのような形状をした、空を飛ぶ乗り物を作り出す能力を持ち、これを使って夜行のメンバーを目的地まで運ぶ任を受けている。一度に大勢の人員を運送できる能力を持つのは、夜行の中では蜈蚣だけなので、重宝されており、活躍の機会も多い。ただし、運送の際には相応の力を消費するため、疲れていたところを墨村良守に心配された事もある。

(ひめ)

黒芒の土地神。妙齢の女性のような外見をしており、豆蔵からは「黒芒の化け狐」と呼ばれている。黒芒楼のトップに立つ人物だが、組織運営に口を出す事はいっさいせず、興味すら抱いていない。非凡な力を持っており、かつて自身に挑んで来た白を簡単に叩き伏せつつ、彼の持つ迷いを見抜いた事で、忠誠を誓われる。姫自身も、白にわがままを言いながらも、次第に彼に特別な感情を抱いていた。最近になって力が弱まっていき、このままでは黒芒の地ごと崩壊してしまう可能性が懸念されている。黒芒楼が烏森の地を狙うのは、烏森の力を姫に与える事で、力を回復させるためである。しかし姫自身はこれ以上生きながらえる事に飽きてしまっており、偶然遭遇した墨村良守に残された力のほとんどを与え、さらに、良守と火黒の戦いが終わったあと、事切れていた白を最後の力で蘇生させると、そのまま息を引き取った。

白羽児 (しらはご)

謎の男と共に烏森の地を襲撃し、墨村良守、および雪村時音と交戦した妖。小柄な老人のような姿をしている。三位一体の存在で、それぞれ互いを「一月」「二月」「三月」と呼び合っている。全身を小さな羽に変化させてあやつる能力を持ち、変化した羽を一点に集中させる事で、結界を破壊するほどの攻撃力を発揮する事ができる。さらに、3体が合体する事で巨大な鳥の姿を取る事も可能で、合体後は烏森から得た力も使って、両腕の翼から無数の羽を発射して良守達を追い込んでいく。さらに、良守が反撃のために展開した結界に拘束されると、それを力任せに破壊しようとするが、そこに、時音が展開した結界を突き刺した事で力を失い、そのまま良守に滅された。

角志野 (かくしの)

「箱使い」として知られる角志野兄弟の一人。角志野礼二の兄だが、本名は明かされていない。目的のためなら、女性や子供すら平気で殺害する冷酷な性格の持ち主。扇一郎の依頼を受けて、裏会実行部隊・夜行の本部に現れ、妖の入った箱を複数配置し、混乱に陥れる。さらに、明と操を拉致して箱の中に拉致するが、スキを突いて逃げられてしまう。彼らが中心部に入ったところで追いつくが、妖を封印してある印を解除された混乱を突いて再度逃げられ、さらに封印を解かれた妖に襲われ、命を落とす。

(ぜろ)

逢海日永の直属の部下にあたる青年。「零号」と呼ばれる事もある。最高レベルの呪現化能力者で、飛行する物体を自在にあやつるほか、巨大な剣を作り上げて、雨あられのように降らせる事を可能としている。日永や逢海月久は上司にあたるが、零自身は彼らを呼び捨てにしており、敬語を使う事もない。しかし、日永に対しては友人として接しており、彼の望みを叶えたいという思いは強い。月久の部下達が烏森を襲撃し、さらに月久自身が足止めのため、屋敷に墨村正守を呼び出していた際に姿を現し、月久を襲撃。さらに、正守との腹の探り合いに集中していたスキを突いて、月久を殺害する事に成功する。しかし、殺害された身体から脱出していた精神体に乗っ取られ、月久の新たな身体として利用されてしまう。

炎上寺 彩子 (えんじょうじ さいこ)

裏会検察室に所属している女性の能力者。炎上寺彩覚の姉。断頭島の受付を務めているが、正式な文書で雪村時音の返還を要求する刃鳥美希に対して、若い女性が気に食わないという理由から攻撃を仕掛ける。さらに、時音が脱走したという知らせが入ると、自分の手で抹殺するため、刃鳥や同行していた墨村良守の相手を弟に任せて、自らは時音のもとへと向かう。夕上清輝の手によって行動を妨害された事を激怒し、時音に追いつくと二人まとめて始末しようとするが、駆けつけた良守の手によって阻止され、さらに仲間であるはずの夜城の手によって気絶させられる。のちに逢海日永の手勢によって裏会検察室が壊滅させられた時は、島を守れなかった事を、泣きながら彩覚に詫びていた。

巻緒 慎也 (まきお しんや)

裏会実行部隊・夜行の戦闘班主任を務めている青年。自分の影を自在にあやつり、敵を攻撃したり拘束する戦法を得意としている。状況把握力に長けており、戦闘においては、仲間を援護しつつ的確な指示を下す事から、仲間達にも頼られている。裏会総本部から、烏森の地に氷浦蒼士を派遣された際に、烏森には十分な戦力が揃っているとアピールする事により、氷浦を追い返すという作戦を立てていた。そういう経緯もあって、氷浦の事を最初は信用していなかったが、墨村良守の約束があったとはいえ、仲間のために必死に戦う彼を見て、徐々に考えを改めていく。黒芒楼との戦いや、扇一郎の討伐、裏会奪還作戦など、重要な戦いに参戦し、仲間を失わずに勝ち抜いた。

花乃小路 夢子 (はなのこうじ ゆめこ)

霊能力を持つ中年の女性。「ニコニコ心霊相談所」と呼ばれる相談所を主宰しており、現世に留まる霊の悩みを解決して成仏させる役割を果たしている。墨村良守とは知り合いの間柄で、彼からは「マザーさん」と呼ばれている。良守に月地ヶ岡真彦を紹介されてからは、彼の人となりを調べており、やがて彼の弟である月地ヶ岡俊彦の所在を知ると、良守と共に真彦と俊彦の仲を取り持ち、真彦を無事に成仏させる事ができた。

行正 薫 (ゆきまさ かおる)

裏会実行部隊・夜行の戦闘班に所属している青年。かつては無道の部下で、彼が暴走した時は別の場所における任務に就いていたため殺されずに済んだが、現在でも彼の事を強く恐れている。呪現化能力者で、戦闘時には所持している棒に妖気をまとわせて攻撃を仕掛ける。その戦闘能力は高く、黒芒楼による2度目の烏森襲撃では妖の大軍を正面から蹴散らし、神佑地狩りに遭った土地の調査を任されるなど、墨村正守の信頼も確か。しかし、土地調査の任務において、扇五郎の仕掛けた罠にはまり、2体の土地神と戦う事になった挙句、部下を失ってしまう。

傀儡蟲 (くぐつちゅう)

烏森の地を狙う妖の1体。見た目は小さな虫で、傀儡蟲単独では大した行動を起こす事はできない。しかし、ほかの霊に寄生するという特質を持ち、寄生した霊から養分を奪いつつ、その霊を使役者ごとあやつる事ができる。烏森学園を訪れた際に、三能たつみが使役する蛇の霊に目を付け、寄生して思うがままにあやつっていた。しかしその事が、墨村良守、および雪村時音によって発覚し、最期は時音の結界術によって滅された。

鬼童院 ぬら (きどういん ぬら)

裏会最高幹部である「十二人会」の第二客。鬼使いとして知られる鬼童院家の出身の女性で、春日夜未の親族でもある。その強力な力とは裏腹に、穏やかで心優しい性格の持ち主。一方で人見知りが激しく、竜姫と打ち解ける事に50年かかったという。裏会総本部が逢海日永の手に落ちた際に、墨村正守から協力を求められたが、一度は拒絶してしまう。しかし、のちに竜姫から総帥討伐部隊に誘われた事で、自らも戦線に立つ事を決める。竜姫からは「超自然支配能力者」と呼ばれており、鬼童院ぬらがその場に存在するだけで、鬼達が喜んで付き従い、どのような命令も遂行する。しかし、ぬら自身の優しさから、無茶な命令を下される可能性は皆無で、それどころか少しでも傷ついたらすぐに逃げるよう指示するほどである。力の強い鬼使いが、従えた鬼を手荒く扱う事を悲しんでおり、夜未の事は、契約した鬼であるヨキを大切に扱っている事から、高く評価している。

(びゃく)

黒芒楼の組織統括を務めている男性。頭の中に無数の蟲を飼い慣らしており、それを他者の脳に入れる事で、ある程度行動を制限する事ができる。非情な性格の持ち主で、作戦に失敗した部下などに対して、制裁こそ加えないものの、助ける事もしないが、黒芒楼の主である姫に対する忠誠心は高い。また、人皮を着けていないにもかかわらず人間の姿を取っているが、かつては白沼という名前の人間の男性で、松戸平介とは研究仲間で、加賀美リサを巡るライバルでもあった。やがてリサと夫婦関係になるが、彼女が不老不死を望むようになったため、その研究を行ううちにリサを自分本位の人間だと疑うようになっていき、松戸との関係も悪化する。結局、リサを不老不死にする事に失敗したばかりか、副作用でリサの身をおぞましい姿にしてしまい、リサは自殺。絶望して家を飛び出し、妖となって各地を放浪していた。その先で黒芒楼の姫と出会い、彼女のために力を振う事を選択する。悪化しつつある姫の体調を回復させるため、烏森の地を制圧しようと企んでいた。さらに、黒芒楼を調査していた松戸を紫遠に始末させようとするが失敗し、黒芒の城に乗り込んで来た彼、および加賀美と戦い、敗れる。そこで松戸によって命を奪われるが、後に姫の手によって蘇生する。崩壊する黒芒の城で、彼女と運命を共にする道を選ぶ。周囲からは妖に転生していたと思われていたが、実際はまだ人間で、今際の際に、自分が本当の意味で人間になりたがっていた事を理解した。

墨村 利守 (すみむら としもり)

墨村良守の弟。小学4年生の少年。墨村家の血筋だが、霊感こそあるものの正統継承者ではないため、現在は特に結界術の修業をしておらず、一般人として生活している。年の割にしっかりとした性格で、家では父親である墨村修史の家事をよく手伝っており、学校では図書委員会に所属している。文才に秀でており、作文を誉められた事を墨村守美子に伝えた際には、小説家である修史に似たのだと評されていた。また、斑尾に餌をあげる役割を担っており、斑尾からも懐かれている。良守の事は、普段は頼りない兄と考えているが、やる時はやる人である事を理解しており、いざという時には頼りにしている。人と打ち解け合うのも得意で、氷浦蒼士が家に滞在した時は、将棋などの遊び相手になっていた。

(ひぐらし)

刃鳥美希に付き従っている青年。呪現化能力者で、妖気で身の回りにマントのような物質を構成し、それを自在にあやつる事ができる。任務の際には裏会実行部隊・夜行と連携して、彼女のサポートとして活躍する事が多い。また、妖気のマントを広げる事で飛行する事も可能で、角志野礼二が烏森の地に妖を解き放った時は、刃鳥を背中に乗せて飛行し、彼女が妖を滅する助けとなった。また、飛行が可能である事を活かして、夜行の運送班である蜈蚣を手伝う事もある。

ギン

鬼童院家に仕える鬼の男性。見た目はほぼ人間と変わらず、細かな作業などを得意とする事から重宝されており、鬼童院ぬらの側近に抜擢されている。また、戦闘能力も非常に高く、超巨大な氷霜の玉を作り出して、地面に降らせる事ができ、仲間の鬼からも恐れられるほど。裏会奪還作戦では、ぬらと共に戦線に立ち、洗脳された紡岐一親を一撃で気絶させるなどの活躍を見せた。

紫堂 (しどう)

相羽山に住んでいる烏天狗。大天狗の黒雲斎に仕えているが、彼の女好きに辟易している。さらに、世継ぎを残すための山籠もりを黒雲斎に進言しているが、黒雲斎は女性を追いかける事に夢中なため、まったく聞き入れてもらえずにいる。そこで、黒雲斎を無理やり山に縛り付けるため、墨村良守に結界術で黒雲斎を拘束してほしいと依頼する。礼儀正しい性格だが、物事を強引に進める傾向があり、良守への依頼も、有無を言わさず引き受けさせたきらいがある。ただし、義理堅い性格でもあり、良守が事件を解決した際は、周囲のカラスに命令を聞かせられる特殊な羽をプレゼントしている。なお、人間に化ける事が可能だが、その時の姿は非常に男前の青年で、良守に褒められたほか、サンディー・ブラックマンからも好印象を抱かれている。

白丸 (はくまる)

烏森を襲撃して来た妖の1体。白いオットセイのような形状をしており、口から爆発する毬のような物体を吐き出す事ができる。人の手によってあやつられている妖で、ミチルとカケルが烏森に潜入するための目くらましとして黒丸と共に投入され、雪村時音、および氷浦蒼士と交戦する。氷浦目がけて大量の毬を吐き出して仕留めようとするが、すべて防がれたうえに、時音の結界術で口を封じられる。そのスキを突いた氷浦によって、上空から斬撃を受ける事で、真っ二つに切断された。

ヨキ

春日夜未と契約している男性の鬼。性格は無邪気そのもので、夜未とはお互いに信頼しあっており、「ヨキ」と言う名前も夜未によって名付けられたものである。巨大な身体つきをしており、それに見合った強力な力を持つが、思考能力に乏しく、のろまな一面があったため、ほかの鬼からバカにされていた。それを改善するため、夜未の提案によって烏森の地が持つ力を奪い取ろうとする。夜未が墨村良守と雪村時音を拘束し、烏森の力を得る事に成功するが、性格まで豹変してしまい、夜未に大して牙を剝くまでに至る。しかし、拘束から脱出した良守と戦い、敗北。さらに、夜未を捕らえるために派遣された裏会実行部隊・夜行の白道、黄道の手で滅されてしまう。しかし角が残されており、良守の厚意によって角から再生する事ができ、性格も元のヨキのものに戻っていた。

月影 (つきかげ)

400年前に烏森の城の姫だった女性。おっとりとした性格で身体が弱いが、霊感が強く、面白いものを好むがゆえに、密かに妖を呼び寄せていた。のちに間時守が護衛として彼女につくが、当初は単なる金儲けの手段としか思われていなかった。しかし、彼の悲しみを理解する素振りを見せた事で、やがて互いに惹かれ合い、二人の息子である宙心丸を身籠る。しかし、それを怒った月影の父親に仲を裂かれてしまい、さらに、時守の野望によって生まれて来る前の宙心丸に過剰な力が注がれた結果、宙心丸は無差別に周囲の命を奪う存在となり、出産直後、月影自身もそれに巻き込まれて命を落としてしまう。

六本木 樹里亜 (ろっぽんぎ じゅりあ)

烏森学園高等部に通っている1年生の少女。見た目は可愛らしいと言われるが、その実態は、男殺しと評される強引な恋愛手段から「烏森の女豹」、あるいは「ラブ・ギャング」の異名を持つ超危険人物。屋上から落下したところを墨村良守の結界術によって助けられた事で彼に一目惚れしてしまい、しつこく付きまとって来る。その強引さから、恋愛沙汰に関してまったく不慣れな良守には恐怖心を抱かれ、さらに、六本木樹里亜の噂を聞きつけた雪村時音を、良守を狙うライバルと誤解する。しかし、良守が逃げ回る中で無我夢中で時音の式神を使い、さらに本物の時音が現れた事で、時音を分身の術の使い手と考え、混乱のあまり意識を失う。その際に、良守が誤魔化すために使った式神に介抱された事でその式神に一目惚れし、なし崩し的に良守は振られる形となった。

(あきら)

裏会実行部隊・夜行に所属している少年。物体を透明にする能力を持っており、操が命を与えた物体に対しても効果を発揮する。扇一郎の依頼を受けた角志野に拉致され、彼の能力である箱の中に閉じ込められるが、操によって助け出される。脱走している最中に角志野に発見されてしまうが、操が命を与えたロープを透明にする事で、角志野の動きを妨害し、彼を罠にはめる形で、操と共に箱から逃げきる事に成功する。

黒雲斎 (こくうんさい)

相羽山の土地神を務めている大天狗。非常に強力な力を持ち、墨村良守は、彼を一目見るなりまったく歯が立たないと思いこむほど。部下からは、山籠もりをして世継ぎを残す事を勧められているが、黒雲斎本人は女性を追いかける事に夢中で、まったく山籠もりをする気がない。そのため、紫堂の依頼によって現れた良守の結界術で拘束されてしまう。しかし、すぐに拘束を無理やり解除して、現在お気に入りであるサンディー・ブラックマンのもとに向かってしまう。しかしサンディーからは、ストーカーと認識されてしまっており、それに気づくと涙ながらに彼女のもとを立ち去った。そして、サンディーと同行していた紫堂から、慰めの言葉を掛けられつつも、うまい具合に山籠もりをするよう誘導されて、そのまま世継ぎを残すための修業に入った。なお、世継ぎは妖力を集中させる事によって、本体から分裂する形で生まれるが、その時に念じた思いが強く反映される。そのため、できるだけ雑念を込めずに集中する必要があるが、山籠もり中に、偶然雪村時音が相羽山に侵入したため、それを感知した黒雲斎から一気に雑念が生まれ、その結果、生まれた世継ぎに女好きを継承してしまう。なお、人間に化ける事が可能だが、あまりに雑念が多すぎるため、紫堂と比較すると可哀想になるくらいの、小汚い外見になってしまう。

豆蔵 (まめぞう)

ウロ様のお付きを務めている小型の妖。妖としては上位に位置しており、人間に対してはやや偉そうな態度を取るが、ウロ様に対する忠誠心は非常に高い。葉っぱのような形状の頭を持ち、そこから蔓を伸ばして移動や攻撃などを行う事も可能。墨村良守とは、ウロ様の寝床である無色沼を修復する際に知り合い、それからは時折交流を重ねている。緋田郷が神佑地狩りに遭った時は、緋田郷の土地神の境遇を憐れみつつ、良守を緋田郷に案内して、異界における戦いを共に生き抜いた。

弐号 (にごう)

逢海月久の直属の部下にあたる少年。統合型の妖混じりで、腕や足を鳥の姿に変化させて、空中を自由に高速で飛び回る事ができる。さらに、自らの羽をむしって飛ばす事で黒い炎に変化させる事も可能で、その威力は墨村良守の組み上げた結界を破壊するほど。好戦的かつ狂暴な性格で、ミチル達からの指示もないまま、良守や、氷浦蒼士に攻撃を仕掛けて来る。スピードこそ優れているが、力や戦闘のセンスは氷浦に及んでおらず、やがて追い込まれる。しかし、完全変化を果たす事で、壱号からのダメージを引きずった彼を圧倒するようになる。だが、氷浦を守りたいという思いから極限無想を修得した良守の結界で拘束され、手も足も出せなくなる。最期は、後始末のために現れた扇七郎の手によって殺害された。

波緑 (はろく)

黒芒楼に所属している妖。人皮を被る事で、ロングヘアーの男性の姿を模している。火黒に率いられて烏森の地に現れ、墨村良守、雪村時音、志々尾限と対峙する。無口だが乱暴な性格で、火黒が交渉を試みていた際も、戦闘に入った際も一言もしゃべらず、力任せに攻撃を仕掛けて来る。人皮を脱ぎ捨てた真の姿は、複数の腕を持つ人型の巨人で、力は強力だがスピードはさほどでもなく、ほかのメンバーと比べると目立った活躍もないまま、良守の結界に拘束され、そのまま滅された。

茶野 元晴 (さの もとはる)

烏森学園中等部で教師を務めている中年の男性。社会科を担当している。生徒思いの優しい先生で、墨村良守からも慕われており、穏やかな笑顔が一部の生徒の人気を集めている。しかし、良守がキヨコさんを追い回す中で、撃ち出した念糸が偶然頭に当たり、カツラである事が発覚してしまう。良守はこの事を強く後悔するが、その意思を汲んだキヨコさんの力によって、良守以外の生徒からカツラである記憶が抜け落ち、人気を失わずに済んだ。

狐ノ塚 奇平 (このづか きへい)

裏会最高幹部である「十二人会」の第十一客。つねに狐のような面をかぶっている大柄な男性。独自の情報網を持っているようで、扇一郎と奥久尼が殺害された際には、墨村正守が奥久尼と結託して扇の悪事を明るみに出すための罠を仕掛けている事を知っており、二人を殺害した犯人として正守を疑っていた。しかし、次の日の夜、逢海日永からの依頼を受けた扇七郎によって殺害された。

集団・組織

裏会 (うらかい)

『結界師』に登場する団体。異能者の異能者による異能者のための自治組織。地域ごとの異能者の取りまとめ、妖怪や霊の起こす闇の事件の取り扱いを行う。異能者本人に裏会への所属の意思がなくても、居住地域の裏会の名簿に記載され、存在を把握されている。闇の事件を実際に取り扱う実行部隊は、夜行と呼ばれている。墨村良守など正統後継者は、家業を優先するため、裏会とは距離を置いている。

裏会実行部隊・夜行 (うらかいじっこうぶたい・やぎょう)

『結界師』に登場する集団。裏会が扱う事件の調査・解決を実行するために、異能者を集めた実行部隊。主に戦闘能力、情報収集・分析能力、治癒能力のある異能者をメンバーとする。墨村正守が創設し、現在頭領として働いている。志々尾限や影宮閃はここに所属している。

黒芒楼 (こくぼうろう)

黒芒の城を本拠地とした妖の集団。姫と呼ばれる土地神が形式上のトップに立っているが、組織としての運営は白にほぼ一任されている。姫の体調が日に日に悪化していき、黒芒の城も崩壊しかかっているため、彼女を回復させるため、烏森の地の制圧を目論んでいる。当初は慎重に計画を進める様子が見られたが、姫の体調悪化が深刻だったため、2度にわたって烏森に総攻撃を行う。しかし、裏会実行部隊・夜行や、墨村良守達結界師の抵抗に遭い、襲撃作戦は失敗。統括者である白が倒され、姫の命も尽きた事で黒芒の城は崩壊し、これに伴い黒芒楼も壊滅した。

十二人会 (じゅうににんかい)

裏会の最高幹部である十二人の総称。裏会の上層部の推薦によって選出される事が多く、墨村正守は、前任者である無道が、裏会の総帥である逢海日永に依頼した結果、日永の推薦を得た事で十二人会に昇格している。いずれも強力な力を持つ能力者達だが、それだけに幹部達の我が強く、結束はほぼないに等しい。

場所

烏森 (からすもり)

『結界師』に登場する墨村良守たちが守護する土地。400年前、妖怪を引き寄せてしまう体質だった烏森家の魂を地下に封じたと伝えられている。現代においても、妖怪や霊からすると、この土地に居るだけでエネルギーを与えられるので、魅力的な土地に見えてしまう。墨村・雪村両家の結界師は、この土地で妖怪が力を得て問題を起こさないように、常に警戒し、侵入する妖怪を退治している。 また、烏森に選ばれた正統後継者は、烏森の地ではめったに死なないといわれている。現在、烏森の土地には、良守や雪村時音の通う烏森学園中等部・高等部が建っている。

その他キーワード

結界術 (けっかいじゅつ)

『結界師』に登場する術。結界師の才能を持つ術師が使用することができる。墨村良守たちの使う結界術は間時守が考案した間流(はざまりゅう)。戦闘時は、立方体の透明な結界で敵の妖怪を囲んで自由を制限し、結界ごと囲んだ部分を破壊してダメージを与えることで、妖怪を退治する。自分を囲んで防御もできる。また、壊れた道具や建物を修復することができる。 この他に、神の居場所である異界を人工的に作ったり、出入りの難しい異界への道を作成・封印することができる。墨村家と雪村家は、この能力を烏森から与えられて、烏森を守護している。墨村家・雪村家の他に、烏森とゆかりのない結界師の才能を持つ者はいるが、その存在はかなり稀少。

念糸 (ねんし)

『結界師』に登場する結界術の技の一つ。手のひらから糸状の結界を出し、相手を縛ったり、空間のほころびを閉じたり、支えたりすることができる。伸縮自在。ただ標的に正確に当てるコントロール力が必要。墨村家の妖犬斑尾や雪村家の妖犬白尾の首輪の球は念糸で束ねられている。

絶界 (ぜっかい)

『結界師』に登場する結界術の技の一つ。墨村良守の兄正守が使う高等な技。黒い球体状の結界で自分を包み、触れるもの全てを粉々に粉砕する。防御にも攻撃にも使える便利な技。自分以外の存在を拒絶する負の感情が発動条件。良守も練習しているが、強度も形状も正守の域には届いていない。良守の使う不完全な絶界を、本人は「インチキ絶界」と呼び、防御の技として使っている。

アニメ

結界師

妖の力を高める不思議な土地、烏森。この力を欲して集まる妖を退治する使命を帯びた墨村家、雪村家は、400年の間対抗しながら烏森を護ってきた。墨村家の正式継承者である墨村良守は、同じく雪村家の継承者で幼馴... 関連ページ:結界師

書誌情報

結界師 完全版 18巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉

第1巻

(2020-06-18発行、 978-4098501526)

第2巻

(2020-06-18発行、 978-4098501564)

第3巻

(2020-07-17発行、 978-4098502288)

第4巻

(2020-07-17発行、 978-4098502295)

第5巻

(2020-08-18発行、 978-4098502516)

第6巻

(2020-08-18発行、 978-4098502523)

第7巻

(2020-09-18発行、 978-4098503094)

第8巻

(2020-09-18発行、 978-4098503100)

第9巻

(2020-10-16発行、 978-4098503148)

第10巻

(2020-10-16発行、 978-4098503155)

第11巻

(2020-11-18発行、 978-4098503506)

第12巻

(2020-11-18発行、 978-4098503513)

第13巻

(2020-12-18発行、 978-4098504060)

第14巻

(2020-12-18発行、 978-4098504077)

第15巻

(2021-01-18発行、 978-4098504084)

第16巻

(2021-01-18発行、 978-4098504091)

第17巻

(2021-02-18発行、 978-4098504879)

第18巻

(2021-02-18発行、 978-4098504886)

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