結界師

烏森学園を舞台に、結界師の家系に生まれた中学2年の少年が、守護する土地を狙うさまざまな存在と戦いを繰り広げる和風バトルファンタジー。第52回小学館漫画賞少年向け部門受賞。

正式名称
結界師
ふりがな
けっかいし
作者
ジャンル
バトル
 
和風ファンタジー
レーベル
少年サンデーコミックス(小学館)
巻数
全35巻
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良守と時音(第1巻)

間時守を開祖に持つ結界師の一族である墨村家と雪村家の両家は、多くの妖を引き寄せる烏森の地を、400年ものあいだ維持・管理し続けてきた。墨村家の正統継承者である墨村良守も、幼い頃から結界術を駆使して妖退治に勤しんでいた。しかし、妖を滅するための結界術の修業を、来る日も来る日も強いられる事、そして家同士の仲が悪いため、密かに思いを寄せる幼なじみであり、雪村家の正統継承者でもある雪村時音ともなかよくできない現状に、良守は嫌気がさしていき、次第に修行に身が入らなくなってしまう。小学3年生のある夜、良守は相棒である妖犬の斑尾と共に、いつものように烏森のパトロールを行っていると、現れた妖・弓鉄の姦計にはめられ、窮地に陥ってしまう。そこに時音が割って入り、弓鉄は滅され、良守も事なきを得るが、その際に時音が負傷してしまい、その傷がもとでしばらくの間寝込んでしまう。自らの認識の甘さを痛感した良守は、二度と時音が傷つかないように、強くなる事を決意する。それから5年後、中学2年生になった良守は、まじめに修業を積んだ結果、時音をてこずらせた妖・土蝦蟇を強力な結界術で滅するなど、着実に実力を伸ばしていく。

人間霊(第1巻)

墨村良守には、雪村時音を守る以外に、自分の作ったお菓子を素材としたお城を建てるという、もう一つの大きな目標があった。墨村繁守からはその行いを「西洋かぶれ」と強く批判されて取り付く島もない。そんなある朝、良守は烏森学園に登校した際に、大人の姿をした人間の霊である、月地ヶ岡真彦を発見する。良守は、真彦が烏森の力で暴走してしまう事を危惧し、自分が死んだ事すら気づいていない真彦が円滑に成仏できるよう、花乃小路夢子を紹介する。そして放課後、再び真彦と遭遇した良守は、自らが死んだという事実を知ったものの、現世に対して、真彦自身も覚えていない何らかの未練がある事と、彼が生前パティシエだった事を語る。良守と真彦はお菓子作りという共通の趣味を語る事で意気投合するが、そこに時音が現れ、烏森に近づけば、真彦もいずれ凶悪な妖になると忠告する。そして夜。烏森に危険な妖が現れた事を聞いた良守は、真彦が暴走した可能性を危惧し、急いで烏森学園へと向かう。しかし、そこで猛威を振るっていたのは真彦ではなく、生前にリストラされた過去を持つ村上正直だった。時音は早々に村上を消滅するべきだと主張するが、良守は村上を結界術でけん制しつつも、自ら成仏させようと説得を試みる。

異能者・三能たつみ(第1巻)

墨村良守は、雪村時音に対して密かに思いを寄せているものの、彼女からは相変わらず鬱陶しく思われていた。さらに良守は、クラスメイトである田畑ヒロムから、時音が男性、とりわけ男性教師から人気を集めている事を聞かされ、激しく狼狽する。警戒心から、時音が通っている高等部に顔を出した良守は、さっそく、英語教師である三能たつみが時音と楽しそうに語り合っている場面を目撃する。やきもちを焼いた良守は、いたずらとして結界術を使い、三能を転ばせようとするが、触れる事で結界術を解除するなど、明らかにおかしい様子を見せる。さらに三能は、裏で何人もの生徒達を意識不明の状態にしていた。良守は何とか時音に、三能が危険だと訴えようとする。しかし時音は、既に三能が怪しい事に感づいており、語り合っていたのも監視のためだった。そして夜。烏森学園に向かった良守と時音は、蛇の霊を従えた三能と遭遇するも、彼は二人を何らかの「養分」にしようと襲い掛かって来る。良守達は結界術で応戦するが、その中で時音は、三能は自らの意思で攻撃を仕掛けているわけではなく、蛇の霊に寄生した傀儡蟲のしわざである事に気づく。そして、良守の攻撃が動物霊の動きを止めると、その隙をついて時音の結界が傀儡蟲を滅する。傀儡蟲の支配から解き放たれた三能は二人に謝罪するが、助けてくれた時音を気に入ってしまい、結局、良守にとっては頭痛の種が増える結果となるのだった。

鬼使い・春日夜未(第2巻)

雪村家に、裏会に所属しているという春日夜未が訪れた。夜未は、裏会から烏森の調査任務を受けた事を告げ、そのあいだ雪村家に滞在する事になる。そして、友好的な態度を崩さないまま、かつて雪村時音の父親である雪村時雄に世話になったと語るが、かつて目の前で尊敬する時雄を失った時音は、それに対して複雑な表情を浮かべる。そして、そんな時音の過去を知る墨村良守も、夜未に対して時雄の話をしないように求めるのだった。しかし、夜未の本当の目的は烏森の調査ではなく、烏森の力を使い魔の鬼であるヨキに注いで、二人で烏森の地を支配する事にあった。友好的な仕草も二人を油断させるための演技でしかなく、夜未は、時音を落とし穴に封じて、良守には薬を盛って眠らせる事で、二人の動きを封じる事に成功する。そして、ヨキを召喚して烏森の力で強化しようとするが、そこに結界術で穴を開けて脱出に成功した時音が立ちはだかる。夜未は、時雄を愚弄しながら、ヨキに時音を始末させようとするが、目覚めた良守が割って入り、夜未とヨキは追い詰められていく。さらに、烏森からの力が過剰に流れ込んだ影響で、ヨキは夜未を邪魔者とみなし、彼女に対して攻撃を仕掛ける。良守は、呆然とする夜未の前に立ち、巨大化したヨキに立ち向かう。

良守VSヨキ(第2巻)

烏森に力を与えられ、狂暴化したヨキは、主である春日夜未の制御を外れて、立ちはだかった墨村良守に襲い掛かる。夜未は、自分が要らなくなるほど強くなれば、もう心配はいらないとヨキへの愛情をあらわにし、それを感じた良守は、何とかヨキの命を奪わずに止めようと考え、自らをおとりにしながらヨキの巨体をまるまる覆うほどの巨大な結界を展開し、拘束しようと試みる。ヨキは烏森の力を振り絞って結界を無理やり破ろうとするが、そこに裏会実行部隊・夜行のメンバーである、白道と黄道が現れる。二人は裏会を欺いた夜未を捕らえるために派遣されたと語り、月刃や炎陽玉などの大技を使い、たちまちのうちにヨキを滅してしまう。そして、ヨキを失った悲しみに暮れる夜未を拘束し、連行しようとするが、そこに良守が滅されたヨキの角の欠片を拾い上げ、小さなヨキを再生して見せる。ヨキを完全に失わずに済んだ事に安堵した夜未は、雪村時音に対して、雪村時雄の弱さを自分と重ね合わせていた事を告白し、愚弄した事を遠まわしに詫びる。一方、白道と黄道は裏会もまた烏森に強い興味を抱いている事を明かし、その場を去って行くのだった。

寒桜(第2巻)

墨村良守の同級生である神田百合菜は、霊の姿を視認できるという秘密を抱えていた。烏森学園では、冬だというのに満開の花を咲かせる狂い桜が見どころの一つとして知られていたが、百合菜は霊が集まりやすいそのスポットを明らかに異常なものだと考えていた。しかし寒桜の木の下にいた霊を、良守が連れ出すところを目撃した事で、百合菜の興味は良守へと移り、さらに、霊を成仏させるためなら手荒な言動も辞さない良守を見て、彼は人間ではないのかもしれないと訝しむようになる。そんな中、百合菜はクラスメイト達から、夜にこっそり狂い桜を見ようと誘われ、さらにそれを聞いていた良守から即刻中止するよう釘を刺されてしまう。百合菜は悩んだ挙句、夜に烏森学園を訪れるが、そこでは良守と雪村時音が狂い桜目当てに大軍で襲来してきた妖を退治しようとしている最中だった。百合菜を霊感のない一般人であると考えた良守は、彼女を結界で守りつつ、時音と共に妖を殲滅していく。すべてが終わったあと、百合菜が霊を見えると知った良守は怖がらせてしまった事を詫びるが、百合菜は良守に礼を言うと共に、自分以外にも霊を目視できる人間がいる事を密かに喜ぶのだった。

良守の日々(第3巻)

烏森の力を得たヨキとの戦いを経た墨村良守は、より強力な結界術を使えるようになる必要性を感じ、改めて修行に身を入れていた。そして、巨大な岩を結界で破壊するという修行に励んでいたが、その岩の中には、墨村繁守が密かに鉄の球を入れており、ちょっとやそっとの衝撃では破壊できないものだった。そしてそれは、既に良守が繁守や斑尾が舌を巻くほどの強力な結界を作れる事を意味していた。そんな中、良守と雪村時音は、いつものように烏森の地に惹かれた妖を退治するため、烏森学園へ向かう。そこに姿を現した妖・氷渡は、氷のつららを飛ばす事で、良守の作り上げた結界に穴を開けるほどの攻撃力を発揮。この事が良守の負けず嫌いな心に火をつけ、氷渡に追いすがっていく。しかし氷渡も無策ではなく、武器である氷を作るために適したプールへと良守を誘い込む。そして、さらに強力な氷の弾丸で良守を攻撃しようとするが、そこに時音が、良守と力を合わせて結界を張る事で弾丸をそのまま跳ね返し、氷渡を撃破する。良守と時音は、互いに自分の弱点を実感しつつ、さらに強くなる事を決意するのだった。

銀露と鋼夜(第3巻)

ある夜、烏森学園に骨太郎と名乗る小さな人型の妖が現れた。さらに、骨太郎の仲間であるウホ助と長尾も参戦するが、いずれも墨村良守の敵ではなく、簡単に結界術で捕縛されてしまう。しかし、そこに三匹のボスであるという妖犬・鋼夜が姿を現す。鋼夜は斑尾の事を「銀露」と呼び、因縁があるような素振りを見せ、斑尾もまた、良守に対して鋼夜が生前の仲間であった事を語る。しかし鋼夜は人間を憎んでおり、人間と共に生きる斑尾に対して良守や墨村家と手を切るように迫るのだった。斑尾はこれを一蹴し、良守も鋼夜を止めるために戦う決意を固める。だが斑尾は、今の良守では絶対に鋼夜には勝てないと忠告し、彼と決着をつけるために、斑尾の力を封じている首輪を外すように求める。良守は、かつて墨村繁守から首輪を外さないよう言い聞かせられていたが、斑尾の思いを察して迷わず首輪を外し、強大な力を持った妖犬同士の戦いが幕を開ける。戦いから離れていた斑尾は、能力を解放してもなお圧倒されてしまうものの、刺し違える覚悟を持って鋼夜に挑む。しかし、良守の生意気ながらも真摯な様子を見る事で考えを改め、良守の結界術で動きを鈍らせた隙を突いて尻尾の毒針を突き刺し、鋼夜を戦闘不能に追い込む。鋼夜は骨太郎達に別れを告げ、斑尾に対して自らを介錯するよう懇願。斑尾もこれを受け入れ、苦しまないようにとどめを刺し、互いに別れの言葉を交わし合うのだった。これにて一件落着と思われたが、首輪の封印が解かれた事で、斑尾が暴走してしまう。良守は、雪村時音白尾の協力を受けつつ、再封印を施すべく斑尾に立ち向かう。

残響(第4巻)

ある日の放課後。下校途中の墨村良守の前に、花乃小路夢子が現れる。夢子は、良守の知り合いでもあるパティシエの霊・月地ヶ岡真彦が、彼の弟であり、現在は食品会社の社長を務めている月地ヶ岡俊彦が気になるあまり成仏できないでいるという。さらに真彦は、まじめな彼に社長を押し付けてしまったと考えており、その事を恨まれているかもしれないと意気消沈していた。真彦のために一肌脱ぐ事を決意した良守は、その翌日、夢子と共に真彦を連れて、支社の視察に訪れた俊彦のもとへ向かい、真彦が事故で命を落とした現場で彼と遭遇する。しかし霊を見られない俊彦からは、真彦の事を信じてもらえず、さらに夢子に対して真彦の事を恨んでいると語る。一方で何か思うところがあったのか、翌日までに証拠となるものを持って来てくれれば改めて話を聞くと告げるのだった。俊彦の悲しげな様子から、本当に恨んでいるとは思えなかった良守は、真彦を説得して証拠となるケーキを二人で作る事を決意。かつて両親を失って落ち込んでいた俊彦の笑顔を、ケーキを焼く事で取り戻した事を思い出し、やがて真彦の思いがこもったケーキが焼きあがる。そして翌日、ケーキを受け取った俊彦は、真彦の存在を信じると共に、先日恨んでいると言った理由は、自分を置いていってしまったためで、現在も見守ってくれている事に満面の笑みで感謝を示す。真彦もまた、もう俊彦の心配をする必要はないと悟り、幸せな気持ちのまま天に召されるのだった。

墨村正守(第4巻)

墨村家の長兄であり、裏会実行部隊・夜行の頭領でもある墨村正守が顔を見せに訪れた。正守は先んじて烏森学園に向かい、墨村良守雪村時音と交戦していた妖・蠍鎌を一蹴し、二人の前に顔を見せると、その足で実家である墨村家へ向かう。墨村繁守墨村修史、墨村利守が歓迎する中、兄に苦手意識を持っている良守は渋い顔を作っていた。さらに、蠍鎌の戦術に苦戦を強いられた事や、烏森の正統継承者として、情に流されがちな点を説教されてしまい、良守はますます不機嫌になってしまう。そして翌日の夜。良守と時音は、いつもながらの烏森のパトロールに出向くが、そこで斑尾が、妙な匂いがすると言い出す。これを聞いた良守は警戒しつつ烏森に向かうが、そこに突然、巨大な森が茂り始める。これは、良守の適性を確認するための正守による仕掛けだったが、これに対して良守は、森全体を覆うほどの巨大な結界を展開し、中の森だけを焼却するという荒業で対応。正守は驚くと共に、良守の持つ資質を改めて認めるに至る。さらに正守は、使い魔である黒姫の力を使う事で、烏森を偵察する何者かの存在を察知するが、そこに良守が現れ、烏森の封印を宣言する。正守は良守の背中を押しつつも、烏森の持つ途方もない力に対して油断をしないよう警告。家をあとにし、夜行の仕事へと戻るのだった。

ウロ様の寝床(第5巻)

烏森の封印を決意した墨村良守は、そもそも烏森の地とは何かという疑問に対して思案を巡らせていた。そんな中、烏森学園のあちこちで植物が生い茂るという事件が発生する。霊的なものだと一目で確信した良守と雪村時音は、やがてその張本人と思われるウロ様を発見する。しかし、その側近の豆蔵が言うには、ウロ様に悪気はなく、ある目的のために結界師を探しているのだという。墨村家に連れられて行ったウロ様は、墨村繁守から歓待を受け、繁守は良守に対して、ウロ様がとある神佑地の土地神である事、そして「ウロ様の寝床」と呼ばれるその神佑地が50年に一度傷むので、その都度間流の結界師が修復している事を聞かされる。良守は、土地神なら何か知っているかもしれないと推測し、ウロ様に対して烏森の地について尋ねる。すると、ウロ様はかつて烏森の地を自身の神佑地としていたが、間時守の頼みによって、無式沼に神佑地を移したと告げるのだった。翌日、良守と繁守は、ウロ様の寝床を修復するために無式沼へと向かう。修復作業は良守一人で行う事が決まり、良守はこれを好機に、ウロ様に色々と聞きだそうと考え、単身無式沼から通じるウロ様の寝床へ飛び込む。良守は、修復自体は烏森学園で毎日のように行っていたため、いかに神佑地といえど、そう苦労する事はないと考えていた。しかし、その場において良守は「異物」と判断されてしまい、精神に攻撃らしき介入を受けてしまう。良守は、薄れゆく意識の中で、昔時音に助けられた事が頭をよぎり、半ば反射的に手を伸ばしたところ、待機していた繁守に助けられる。良守は烏森の事を聞きだせなかったものの、繁守はウロ様の寝床の修復を無事に成し遂げた良守の成長を認めるのだった。

利守の日々(第5巻)

墨村利守は、霊能力者として抜きんでた実力を持つ二人の兄に、僅かながらコンプレックスを抱いていた。そんな中、学業優秀な利守は、友人達に宿題を教えてほしいと頼み込まれ、彼らを墨村家に招く事になる。そこでは墨村良守がケーキでお城を作っており、利守の友人達は宿題も忘れてそれに夢中になり、さらに良守の勧めによってそれを食べると、家の探検まで始めてしまい、宿題は一向に進まない。これを不満に思った利守は、騒ぎ出した友人達につい結界術を使うが、ケガにはならなかったもののショックで気を失わせてしまい、強い自己嫌悪に襲われる。しかし良守は利守を優しく諭し、利守も僅かながら良守を見直すのだった。

白羽児と謎の男(第5巻)

ある夜、烏森の地に、黒服をまとった謎の男と、彼に率いられるように三匹の妖が現れる。白羽児と呼ばれるその妖は、男の立てた作戦に従い、地上、地中、空中の三方向から烏森学園に迫る。いつものように待ち構えていた墨村良守雪村時音は、白羽児に対応すべく動き出し、良守は空中から現れた白羽児の一体に向けて、結界術を駆使して追い詰めようとする。しかし、白羽児は無数の羽に化ける能力を駆使し、良守が結界を形成するより早く逃げおおせてしまう。時音もまた、素早く結界を形成する事で地上にいた白羽児を追い詰めようとしたが、白羽児は羽根に変化し、一転突破する事で逃げてしまう。二人はてこずりながらも、白羽児が防戦一方である事を訝しむが、そこに謎の男が信号弾らしきものを打ち上げ、本格的に攻撃を仕掛けて来る。しかし、良守達も次第に敵の攻撃パターンを把握し、結界術を駆使して大きなダメージを与える事に成功する。業を煮やした白羽児達は、合体する事で巨大なフクロウのような姿の妖に変化。大量の羽を飛ばす事で一気に決着をつけようとする。これに対して良守は自らの結界でしのぎ切り、さらに時音の前に出て彼女への攻撃も防ぐ。二人は質の違う結界で同時に攻撃する事で、合体した白羽児を追い詰め、ついに撃破する事に成功する。

人皮を被った監視者(第6巻)

墨村良守雪村時音の攻撃によって、烏森を襲撃した白羽児は倒された。白羽児と同行し、彼らに指令を下していた謎の男は、烏森の力と良守達の予想外の健闘に警戒心を募らせ、即座に撤退しようとする。しかしその存在を良守にかぎつけられ、さらに顔にまとっていた人皮の一部が溶け出してしまう。男は自ら腕の人皮を切り離し、その中から現れた人間のものではない腕を伸ばし、烏森学園から逃亡を図る。良守もこれに必死に追いすがり、結界を展開する事で男を捕らえようとするが、男はなりふり構わない動きで周囲の木々を薙ぎ払い、それに紛れて逃亡してしまう。仕方なく学園に戻った良守は、男が切り離した人皮に注目。これに対して白尾は、自分達妖犬の鼻から逃れるために人皮を用いていたと推測する。良守と時音は、烏森を狙う妖が徒党を組んでいる可能性を考え、今後ますます規模の大きい襲撃が行われる事を予感していた。一方、良守から逃げおおせた男は、その先で上司と思しき存在である白と出会う。しかし、白は男のまとっていた人皮だけを回収すると、そのまま息絶えた男の記憶を蟲を使う事で読み取り、帰還してしまう。

志々尾限(第6巻)

烏森学園の中等部に、志々尾限という少年が転校して来た。限は危険な雰囲気をまとっており、神田百合菜からは血の匂いがすると警戒され、霊の匂いがするという理由で三能たつみを襲うなど、明らかにおかしな行動をとっており、さらに校舎に巨大な爪痕が残されていた事から、墨村良守雪村時音は、限が人間ではない可能性を疑い、追い詰めようとする。しかし限は、良守の結界をたやすく切り裂くと、自らが裏会実行部隊・夜行から派遣されてきた事を語り、ひとまずその場は収まる。だが限は、夜行の頭領である墨村正守の事を尊敬しつつも、良守を甘いと断じてその力をなかなか認めようとせず、時音に対してもつねにぶっきらぼうに接するため、二人から不興を買っていた。さらに、裏会が限を派遣した真意がわからないため、墨村繁守も歓迎する様子を見せない。とりわけ良守は、限が良守自身を正守と比較する事が気に入らず、彼の不満は募るばかりだった。斑尾は良守に対し、限のようなタイプの人間には、自分の実力をはっきり思い知らせるよう助言する。一方限は、正守に状況の報告をし、そのついでとして、何故自身を烏森に派遣したかを尋ねるが、これに対して正守は、良守と相性がよさそうだからと答える。その意外な返答に、限は困惑するのだった。

大首車(第6巻)

烏森学園に、妖である大首車が現れた。墨村良守雪村時音、そして志々尾限は、烏森の地を守るべく大首車に挑む。しかし大首車は、烏森そのものや限には興味を示さず、良守だけに狙いを定めて攻撃を仕掛けて来る。限は、大首車の回転スピードを見切り、彼を押さえつける事に成功する。しかしその瞬間、大首車の身体から発生したとげによって吹き飛ばされ、大きな痛手を負ってしまう。時音は限のもとに駆け寄るが、肩から腹部にかけて受けていた負傷が瞬時に消え失せており、これによって斑尾白尾は、限が妖混じりである事を確信する。良守は大首車を警戒しつつも結界術で追撃し、限は良守の動きのよさを見て、戦いの中で成長するタイプである事を認める。そして良守は、限が大首車を蹴り飛ばしたタイミングを見計らって、とげ付き車輪で破壊されないよう、顔の部分を結界で囲み、そのまま滅する事に成功する。この戦いで、良守達と限は互いの実力を認め合い、僅かながら歩み寄る事ができた。しかし良守は、大首車が戦いの中で発した「結界師に賞金がかかっている」という言葉に、強い引っ掛かりを覚えるのだった。

中高のプリンス(第7巻)

墨村良守志々尾限は、表面上は憎まれ口を叩き合いながらも、次第に協力的になりつつあった。しかしある日、良守は雪村時音に思いを寄せている事を限に感づかれてしまう。さらに良守は、「中高のプリンス」の異名を持つ女性に人気の高校生・八王子君也が、琴音と仲よさそうに歩いているところを目撃し、ショックを受けつつ限と共に後を追う。君也は、人気のない廃ビルに時音を連れ込むと、唐突に自分自身の首筋にナイフを突きつける。君也には妖・脳男が寄生しており、宿主の君也を人質にして結界師である時音に乗り移ろうとしていたのである。時音は隙を伺いつつ、脳男が結界師を狙う理由と、何故結界師の中でも時音を狙ったのかを尋ねる。すると脳男は、黒芒楼という妖の組織が烏森を狙っており、邪魔な結界師を排除するために妖に情報を流している事、そして時音が結界師の中で一番弱そうだから狙ったと答える。この愚弄に怒った時音は、瞬時に結界を展開すると君也ごと弾き飛ばし、首筋に突き付けられていたナイフを奪い取る。そして、ここぞとばかりに知っている事を教えるよう迫り、黒芒楼は妖の集団でありながら人間のような思想で活動している事や、烏森の力を人間に対抗するために用いようとしている事を聞きだす。時音は脳男を滅すると、密かについて来ていた良守達と共に、戦うべき敵について思案を巡らせるのだった。

十二人会(第7巻)

墨村正守は、裏会の最高幹部である十二人会の第七客に所属する事が決まった。それにあたって正守は、裏会実行部隊・夜行に迎え入れた春日夜未に、ほかの幹部に関して探りを入れるように依頼する。そして就任当日、正守は挨拶に出向き、ほかの幹部と顔を合わせる。しかし彼を歓迎する声は少なく、特に第八客の扇一郎は、露骨に見下すような態度を取り、辛辣な言葉を浴びせて来る。正守もまた、ほかの幹部達に気を許す事はなく、烏森や夜行のため、己にできる事を迷わず実行していく決意を固めるのだった。一方、墨村繁守は、かつての友人で、墨村修史のかつての上司でもあった松戸平介の家に呼ばれていた。平介は、以前墨村良守が回収した人皮のサンプルを預かっており、その研究過程や考察を繁守に語る。それによると、かつて人皮が開発された理由は、烏森襲撃の際に障害になるであろう斑尾達妖犬の鼻を欺くためと推察されていたが、松戸によるとそれは正しいとは言えず、黒芒楼の妖達は人間になりたいと思っている者が多く、人皮はそのために開発されたものだという。さらに墨村家に、正守や良守の母親である墨村守美子から式神が届けられ、大きな敵が烏森に迫ると忠告。誰もがみな、黒芒楼との戦いを予感するのだった。

黒芒楼からの刺客(第7巻~第8巻)

烏森学園に、黒いスーツを着た怪しげな男達が押しかけて来る。彼らは放送室を占拠すると、校内放送を使って自ら黒芒楼と名乗り、結界師である墨村良守雪村時音を挑発し、夜に烏森学園で待っていると言い残した。そして夜、良守、時音、志々尾限の三人と、斑尾白尾は、学園へと足を踏み入れる。そこではリーダー格の火黒と、その部下と思しき、波緑、茶南、赤亜、灰泉が待ち構えていた。さっそく臨戦態勢を取る良守達だが、黒芒楼のメンバー達は話し合いで解決したいと言い、単刀直入に烏森の地を明け渡すように要求する。良守は当然のように拒絶する。限は、火黒がほかの四人とは次元の違う戦闘力を持っている事に気づき、良守達に危害が及ばぬよう動くが、その動きを読んだ火黒に斬られ、その場に倒れこむ。火黒はさらに斑尾、白尾を一撃で戦闘不能に追い込むと、すぐに戦線離脱を宣言し、ほかの四人に任務を任せてしまう。波緑達は倒れた限を担ぐと、さながら彼を人質にするかのように良守達を森の奥へと誘い込む。そして、結界術を展開できない特殊な呪印を仕掛けた場所におびき出し、改めて降伏を迫るが、ある程度の高さまで上昇すれば術を展開できる事を見抜いた二人の手によって、呪印は解除される。黒芒楼の四人は実力行使を決意し人皮を捨て、妖としての姿を現して良守と時音に襲い掛かる。しかし、妖との戦闘に慣れている二人は、まずは攻撃の要となる灰泉を撃破。続いて、スピードに劣る波緑を良守の結界が捉え、そのまま滅してしまう。進退窮まった茶南は、赤亜と結託して時音を人質に取り、良守に降伏を迫る。時音を危機にさらされた事で激しい怒りを抱いた良守は、自分自身でも気づかないうちに、新たな結界である絶界を発動しかける。しかしその前に、あまりに見苦しい戦いをしたという理由で、火黒が茶南と灰泉を討ち取る。絶界に興味を抱いた火黒は、良守達のさらなる成長を期待して、その場を去って行くのだった。一方、火黒に傷を負わされ倒れていた限は、身体の中に眠る妖混じりの激しい衝動に突き動かされ、裏会実行部隊・夜行で禁止されていた完全変化を半ば無意識のうちに実行してしまう。そこに、密かに彼を監視していた翡葉京一が現れ、麻酔のかかった短刀を突き刺す事でその動きを拘束する。そして、限本人と駆けつけた良守達に対して、完全変化を行った罰として、限を烏森における任務から外す事を宣言するのだった。

4年前(第8巻)

墨村良守は、先日の黒芒楼との戦いで結果的に助けられ、距離も縮まりつつあった志々尾限裏会に戻ってしまうかもしれないと聞き、動揺する。そこで、限が所属している裏会実行部隊・夜行の頭領である墨村正守を頼ろうと電話を掛けるが、折り悪く正守は留守だった。一方限は、夜行に所属するきっかけとなった4年前の出来事を思い出していた。その頃の限は、三人の兄に疎まれており、ひどいいじめを受けていた。さらに、近所の意地悪な少年から嫌がらせも受けており、その度に姉・志々尾涼に守ってもらっていたのである。しかしある時、嫌がらせが涼にも及ぶようになり、その事が限の怒りに火をつけ、初となる完全変化を実行してしまう。限は闘争本能に動かされるがままに、兄や意地悪な少年を次々に傷つけていき、止めようとした涼までもを傷つけてしまう。そして、駆けつけた翡葉京一に一撃で重傷を与えるなど、被害を広げていく。翡葉の連絡を受けた正守は、限を押さえつけて変身を解除させるが、今のままでは限が元の家で暮らす事が難しいと判断し、彼を夜行の一員として迎え入れ、限も自分と同じ境遇の仲間達に恵まれるようになるのだった。そして現在。良守は連絡がついた正守に、限が烏森から外されないように頼み、限本人に対しても素直でないながらも去ってほしくない事を伝える。そして、現れた京一から、限が烏森の任務を継続できる事を聞かされるのだった。

花島亜十羅の修業(第9巻)

黒芒楼との戦いからしばらく経ち、墨村良守志々尾限は、自作のケーキを振る舞うようになるなど、徐々に良好な関係を築きつつあった。そんなある日、良守と食事をしていた限の部屋に、彼の教育係だったという花島亜十羅が現れる。良守は、いつもクールな限が明らかに取り乱している様子を目の当たりにするが、亜十羅はそのマイペースな振る舞いで、途端に限を振り回し始める。さらに、亜十羅に連れられた雪村時音も合流すると、亜十羅は良守、時音、限の連携を強化するために、修行をつけるという。黒芒楼との戦いが激化する事を予感していた三人もそれを望み、さっそく修行が開始される。その内容は、亜十羅が使役している妖獣である雷蔵と魔耳郎の妨害をはねのけ、1時間以内に亜十羅を捕まえるというものだった。三人の連携を円滑にするチャンスと考えた時音は、まずは雷蔵を攻略するにあたって、限を動きやすくするために良守と二人で裏方に徹しようとする。しかし限は、雷蔵が最も注目している自分がおとりになり、良守が攻撃を仕掛ける事を提案。その作戦は功を奏し、限めがけて突撃する雷蔵に、良守の結界による一撃が炸裂する。雷蔵が倒された事を悟った亜十羅は、魔耳郎を肩に憑依させる事で、超高速で飛行しながら逃げきろうとする。良守と時音は、これに対抗すべく空間に足場となる結界を多数展開し、限はそれを使って亜十羅を追い詰めようとする。亜十羅はこれを紙一重でかわし続けるが、限は飛びながた、抱えていた良守を亜十羅目掛けて投げつけ、ついに亜十羅に接触する事に成功する。厳密には接触する直前に時間切れになっていたが、三人が信頼しあっている事を実感した亜十羅は、修行の完成を宣言。限に友達ができた事を喜びつつ、雷蔵達と共に去って行くのだった。

無色沼蒸発(第9巻)

黒芒楼は烏森について調査を進め、その一環として、構成員である牙銀と碧闇を、かつて烏森の主だったウロ様の寝床へ通じる無色沼へと派遣する。牙銀は、沼の水をすべて飲み込むと、炎の力を使って体内で蒸発させるという荒業を使い、たちまちのうちに沼の水を干上がらせる。しかし、物理的に通じているわけではないウロ様の寝床へ侵入する事はできず、やむなく撤退する。無色沼が干上がったという情報は瞬く間に墨村良守達にも届き、良守はさっそく、雪村時音志々尾限を伴って無色沼へと向かう。そこでは豆蔵が待っており、ウロ様の寝床への影響はないものの、放っておけば土地の力が弱ってしまう事、そして黒芒楼の頭目が、黒芒の化け狐である可能性が高い事を聞かされる。

松戸邸襲撃(第9巻)

墨村家の現当主である墨村繁守は、再び旧友である松戸平介のもとに向かっていた。平介は繁守に対し、黒芒楼が焦りを見せ始めている事と、その本拠地である黒芒の城の所在地に当たりがついた事、そして平介自らの命が、黒芒楼に狙われている事を語る。一方、黒芒楼の統括者である白は、密かに結託している扇一郎と会見し、さらに、黒芒楼の事をかぎまわっている松戸を暗殺するため、刺客として紫遠を差し向ける。紫遠は、手下の傀儡と共に、松戸の親衛隊となった妖達を退け、彼を追い詰める。これに対して松戸は、妖を確実に仕留められる特別製の銃を用意して待ち構えていたが、紫遠は念糸を使って彼をあやつり、その銃を自分のこめかみに向けて撃たせる。倒れ込む松戸を見る事で仕留めたと確信した紫遠は、追手が来る前に松戸邸をあとにし、黒芒の城へと帰還する。松戸の危機を知った繁守は、墨村修史を伴って再度松戸邸に乗り込むが、中で倒れ伏していた松戸を見て愕然とする。しかし、襲撃された松戸は、死を偽装するために人皮で作られた偽物で、本物の松戸は加賀美と共に逃げ出したあとだった。一方、火黒は、秘密裏に志々尾限と接触し、彼に親近感を感じている事を告げると共に、手を組む事を持ち掛け、さらに彼自身に本当の気持ちを確かめさせるため、自身の心を映した蟲が生まれるという、謎の卵を手渡すのだった。

黒芒楼襲来(第10巻)

黒芒楼では、長である姫の体力が限界を迎えつつあり、それに呼応するように本拠地の一部が崩壊を始めていた。研究員を務めている藍緋は、白に対して、一度姫を烏森の地へ連れて行ってみてはどうかと提案する。白はその提案を受け入れ、手勢を率いて自ら烏森へ出陣する事を決意。協力者である扇一郎を介して墨村正守裏会実行部隊・夜行の精鋭を東北の地に追いやり、さらに雪村時子が黒芒楼への道を開いているため不在という最悪のタイミングで、ついに大規模な襲撃を開始する。紫遠は墨村繁守の足止めのために、部下の傀儡達に墨村家を襲撃させ、墨村良守雪村時音志々尾限が待ち構える烏森学園には、牙銀率いる妖の大部隊が襲い掛かって来る。白や火黒、紫遠、牙銀などは、はるか上空で飛行型の妖に乗って待機していたが、末端の妖には牙銀の統率が行き届いておらず、烏森の力だけを得たら即座に撤退したがるなど士気が低いため、良守、時音の結界術や、限の攻撃の前に次々に散っていく。業を煮やした牙銀は、部下を燃やしつつ自ら地面に降り立ち、一人で良守達の相手をすると宣言する。牙銀の放つ炎は圧倒的攻撃力を発揮するが、良守達も結界を張る事で炎の球を弾くなど善戦する。牙銀は彼らの力量を認め、手早く片付けるために人皮を捨てて本来の姿を現す。

完全変化(第10巻)

人皮を捨てて本来の力を発揮した牙銀の強さは、墨村良守達を遥かに上回るものであった。放たれた炎の一撃は、良守の結界術をもってしても完全に相殺する事はできず、そのスピードやパワーは志々尾限すら凌駕していた。さらに、炎の翼を生やして飛行すら可能にするなどの多彩な能力を駆使する事で、たちまちのうちに良守達は圧倒され、追い詰められてしまう。このままでは全員がやられてしまうと考えた限は、禁を犯してでも良守達を守ろうと、自らの意思で完全変化する事を決意する。限はこの決断に「化け物を倒すために『バケモノ』になる」と後ろ向きな姿勢を示していたが、それに対して良守は「誰かを守る決断をできる奴がバケモノであるはずがない」と言い切り、その言葉が限の勇気を奮い起こし、完全変化しながらもまったく理性を失わず、自らの意思でその強大な力を制御できるようになる。さらに、火黒から渡された卵が今になって孵化するが、孵った蟲を見ても何の不安も抱かず、良守と共に牙銀に挑む。先程まで圧倒されていたのが嘘のように、限の爪は牙銀に有効打を与え、さらに牙銀が放った超巨大な火炎弾も、良守の渾身の結界で跳ね返される。その隙を突き、限は牙銀にとどめを刺そうとするが、その瞬間、背後から火黒が現れ、限は2本の刀で切り裂かれてしまう。

限の最期(第10巻~第11巻)

完全変化した志々尾限の攻撃によって、牙銀は深い傷を負い、さらに黒芒楼の姫が、烏森の力を受ける事で逆に容体が悪化したため、白はこれ以上の攻撃を無意味と判断。黒芒楼は撤退し、烏森の地は守られた。しかし限は、完全変化する事で肉体に強いダメージが残ったうえに、火黒の手による刀傷が傷の再生を阻んでしまい、虫の息となっていた。墨村良守雪村時音は、必死に限に呼びかけるが、限は自らの生に満足した事で、まるで烏森に連れていかれるかのように息を引き取ってしまう。良守は、墨村正守に同行する形で、限の葬式に出向き、限の死を悲しむ志々尾涼から感情的な言葉をぶつけられてしまいながらも、友達として限を悼む。良守や時音、正守のみならず、花島亜十羅を始めとした裏会実行部隊・夜行の面々も、限の死を深く悲しむ。良守は黒芒楼、ひいては致命傷を与えた火黒を討つ事を決意。正守の指揮下に入り、反撃の時を窺う事になるのだった。

裏会実行部隊・夜行(第11巻)

志々尾限を失った墨村良守は、悲しみに暮れながらも、より強くなる決意を固めて、修行に励んでいた。そんなある夜、黒芒楼に備えて見回りを強化していた良守と雪村時音は、烏森学園で多数の気配を感じる。二人は、黒芒楼が再び攻めて来た可能性も考えて身構えるが、現れたのは裏会実行部隊・夜行のメンバー達だった。彼らは、頭領である墨村正守の指示によって、烏森を黒芒楼から守るために集結して来たのだという。仲間だった限の弔い合戦を前に、夜行の面々は高い士気を見せ、黒芒楼を待ち受けるが、しばらく墨村家に滞在する事になったため、良守は多少居心地の悪さも感じていた。そんな中、良守の前に、彼や時音と同年代の構成員である秋津秀、影宮閃、八重樫大が現れる。手合わせをしたいという彼らに対して、良守もこれを受ける。良守は、三対一であるにもかかわらず善戦するが、限が亡くなったにもかかわらず、力比べに集中しているように見えた三人に対し、強い憤りを見せる。しかし、彼らもまた限を失った事を深く悲しんでいる様子を見せ、特に閃は、限に借りを作ったまま亡くしてしまった事もあり、良守をまっすぐに見据えていた。良守は非礼を詫びると共に、改めて限の仇を討つ事を誓う。閃は依然もやもやとした気持ちを引きずりつつも、良守に興味を抱き始めるのだった。

黒芒楼再来(第11巻)

黒芒楼は、志々尾限を倒したものの、未だ姫の回復方法が見当たらず、構成員達は焦りを募らせていた。統括者である白は、烏森襲撃に関して失敗とみなされたのか、扇一郎からつながりを断たれてしまう。そんな中、碧闇は烏森の地を現在の形に整えた人物が結界師である事を突き止め、結界師を捕らえてアジトである黒芒を修復させてはどうかと提案する。墨村良守達に手痛いダメージを負わされた牙銀は、借りを返すためにも再び前線に立つ事を望み、第2次烏森襲撃の時を今か今かと待ち続ける。一方、裏会実行部隊・夜行のメンバー達も、雪村時子が黒芒の場所を把握した事で、攻め入る準備を整えており、中でも限を失って悲しみに暮れていた花島亜十羅は、雷蔵、魔耳郎、そして夜一、月之丞を従えて、限の仇である黒芒楼への敵意を漲らせていた。数日後の夜。烏森学園を警護していた良守、雪村時音、そして夜行のメンバー達は、黒芒楼を見張っていた諜報班から連絡を受けると同時に、上空に黒芒楼の大軍を発見する。こうして黒芒楼と夜行の戦いが幕を開ける。あとがない黒芒楼は、以前の襲撃とは異なり最初から全軍を投入して来るが、妖との戦いに慣れた人員を多数擁する夜行のメンバー達の攻撃は強力だった。白道や黄道は、月刃や炎陽玉を撃ち込み、格闘戦に特化した行正薫や武光喜朗は、巨大な刀を振るって妖達を蹴散らしていく。亜十羅もまた、夜一や月之丞に連携をさせる事で多数の妖を滅していき、リベンジを期して、人皮を着けずに最初から全力で向かって来た牙銀も、正守の絶界によって一撃で倒される。一方、良守は、限の命を奪った火黒を探し、戦場を探りまわっていた。すると、火黒らしき人皮を被った妖が現れる。良守はすかさずその妖を狙うが、その正体は火黒ではなく紫遠だった。彼女は、結界師である良守をおびき出すため、火黒の人皮を着けていたのである。紫遠は、そのまま良守を拉致しようと部下の傀儡と共に攻撃しようとするが、逆に良守の方から、火黒に会うために黒芒の城に連れていけと言われる。黒芒楼は、その戦力のほとんどを失うものの、結界師の確保という目的を果たす事に成功するのだった。

黒芒の城(第11巻~第12巻)

墨村良守は紫遠によって黒芒の城に連れていかれるが、彼女の糸によって身動きを封じられてしまう。さらに紫遠は、その糸で良守をあやつり、黒芒の城を修復させようとするが、これは結界術による抵抗で跳ねのけられてしまい、互いに埒が明かないまま時間が過ぎていく。そこに白が、妖に捕らえられた影宮閃を伴って現れる。良守の動きが気になった閃は、密かに彼を追っていたのだが、彼が黒芒の城に連れられる事が判明すると動揺してしまい、それを黒芒楼に見つかって捕らえられてしまったのである。白は閃を人質に、黒芒の修復を迫るが、良守が激昂すると逆に黒芒の城の崩壊が早まってしまったため強硬策を断念。紫遠に拷問を兼ねた説得を命じると、閃を牢屋へと閉じ込めるのだった。紫遠は良守に対し、黒芒に愛着を抱いている事を語るが、火黒と閃で頭がいっぱいの良守はそれどころではなく、鉄球を用いた拷問も結界術の前では意味をなさなかった。またも無駄な時間が流れると思われたが、そんな中、二人がいた部屋の天井が割れて、そこから松戸平介と加賀美が現れるのだった。

良守と江朱と姫(第12巻)

黒芒の城で拘束されていた墨村良守の前に現れた松戸平介と加賀美は、紫遠を含めた妖を軽く追い払うと、良守に対して、すぐに元の空間に帰るように迫る。松戸はかつての友人であり、思い人加賀美リサの夫でもあった「白沼」こと白と決着をつける必要があり、それを良守に阻まれたくなかったのである。しかし、良守が狙っているのが白ではなく火黒だとわかると、彼の拘束を解き、互いの目標を仕留める事を約束させ、その場を去っていく。良守は火黒と決着をつける前に、囚われた影宮閃を救出するために動きだす。良守はその道中で、黒芒楼の一員である江朱と出会い、城の崩壊を促進したとして彼に襲撃を受けるが、結界術で瞬殺し、さらに奥へと進み、黒芒の主である姫と出会う。彼女が主だと気づかない良守は姫を見逃そうとするが、姫は自らの維持に嫌気がさしており、あえて黒芒を破壊するため、良守に自らの力を分け与える。良守はそれに気づかないまま姫と別れ、地下牢に囚われていた閃を無事に救出するのだった。

松戸VS白(第12巻)

松戸平介は因縁の相手である白を発見し、加賀美と共に彼に戦いを挑む。松戸は、変わり果ててしまった白を非難するが、白もまた、松戸がかつての妻だった加賀美リサの姿を使い魔に使わせた事と、リサは自分を愛してなどおらず、不老不死を得るために白沼自身を利用していた事を指摘。両者はリサへの思いを胸に、一進一退の攻防を繰り広げる。そんな中、白は一計を弄して、松戸に蟲を入れようとする。松戸は白の奸計にはまる事で窮地に陥るが、その際に生じた一瞬の隙を突いた加賀美が白に決定的な一撃を加え、彼を戦闘不能に追い込む。松戸は、リサが心から白沼を愛していた事を語り、白もまたリサを愛していたのだろうと指摘する。しかし白はこれを否定し、あえて松戸の一撃を受け、事切れる。松戸は、白沼を救えなかった事を悔いながらも、自らの気持ちに決着をつけた事で、加賀美と共にいずこかへと去っていくのだった。

哀しき妖花・藍緋(第12巻)

白が倒された事で、黒芒楼のメンバーの自由を奪っていた蟲は消滅した。もとから城から逃げ出す隙を窺っていた藍緋はこれを好機に動き出そうとするが、それを遮るように火黒が立ちはだかり、藍緋がかつて人間を愛した事を指摘する。藍緋は、人を喰う事もある巨大な花の妖だったが、ある日一人の青年に見初められ、興味本位から共に暮らし始める。青年は身体が弱く死を待つばかりで、その暮らしも瞬く間に終わるかに見えたが、青年が兄を失い、家を継ぐ事になってからは、たちまち生命力を取り戻し、それは藍緋にとって不可思議な事として映る。やがて藍緋は青年に惹かれていくが、成すべき事を果たした青年は最期を迎え、それ以降藍緋は人を喰えなくなったという。仲間を求める姿勢を強く嫌悪する火黒は、そのまま藍緋に向けて攻撃を開始する。藍緋もまた、人皮を捨てて本来の姿を現し、無数の蔓や身体の自由を奪う花粉、破裂する事でダメージを与える種などを繰り出して攻撃を仕掛けるが、火黒の持つ禍々しい力によって敗れ去ってしまう。火黒は影宮閃を救出した墨村良守を発見し、次の目標を彼に定めるのだった。

良守VS火黒(第12巻~第13巻)

墨村良守影宮閃が、黒芒の城に連れ去られた事を受け、墨村繁守墨村正守は、裏会実行部隊・夜行のメンバーを募り、彼らを救出するために出撃する。一方良守は、火黒を発見し、志々尾限の弔い戦を開始する。火黒はその尋常ならざるスピードで良守の形成する結界術を避けつつ、刀に強い妖気を乗せて攻撃を仕掛ける。しかし良守の結界もこれを辛うじて受け止め、戦況は膠着状態に陥る。火黒はさらに、結界師は至近距離からの攻撃に弱い事を指摘し、結界を避けつつ、刀による攻撃を仕掛けるために再び懐へ飛び込む。だが良守は修得しつつあった絶界を発動し、火黒の刀をへし折る。絶界を目の当たりにした火黒は、良守も限と同様に自分に近いと考え、火黒もかつては人間だった事や、人間の時も、妖になってからも、つねに不自由を感じており、真の自由を求めている事を語る。そして改めて、自分と同じ道を歩むように誘うが、良守は全力でこれを拒絶。絶界の出力を上げて、再び火黒と切り結ぼうとするが、そこに閃が躍り出て、良守が力を収束するまで、火黒を阻止しようとする。閃の危機を予感した良守は、その瞬間に無意識のうちに姫から与えられた力のすべてを解放し、良守はおろか、墨村家や雪村家にすら知られていない結界術と思われる真界を発動。これに飲まれた火黒は、何故かその瞬間に自分の敗北を悟り、妖になってからずっと欲していた「刹那の感覚」を得る事で、満たされた気持ちのまま消滅するのだった。

黒芒楼の終焉(第13巻)

墨村良守火黒との決着をつけた頃、既に自分が長くないと悟った姫は、自分にとって特別な存在となっていた白を蘇生させ、崩壊する黒芒の城から逃げるように促す。しかし白は、黒芒の地で姫と運命を共にする事を選択する。良守と火黒の戦いを見届けた紫遠は、自分をあやつろうとした碧闇を逆に傀儡にして、彼に出口を案内させる事で黒芒からの脱出を試みる。また、火黒に致命傷を負わされた藍緋は、自らの種を綿帽子に乗せて空に飛ばして力尽き、その一つを受け取った紫遠はそれを髪に飾り、藍緋と黒芒に別れを告げるのだった。一方、黒芒の城に突入した墨村繁守墨村正守、そして、蜈蚣や箱田などの裏会実行部隊・夜行のメンバー達は、良守と影宮閃を発見する。しかし良守は、真界を展開した副作用によって意識を失っており、さらに真界が解除されず、その場から動けずにいた。正守は絶界を使う事でそこに穴を開け、良守に刺激を与える事で目覚めさせようとするが、なかなかうまくいかずに難儀していたところ、閃が爪を伸ばして良守の額を刺す事で良守の結界は解除され、二人は無事に保護される。崩壊した黒芒の城は、姫の最期の力によって一面の芒野原に姿を変え、良守達は無事に烏森の地に帰還する。雪村時音も良守の帰還を喜び、結界師と黒芒楼の長い戦いは、こうして幕を閉じたのだった。

キヨコさん(第13巻)

黒芒楼との戦いから数か月が経過し、烏森の地にも春が訪れつつあった。そんな中、烏森学園は、七十七不思議の一つだというキヨコさんの話題で持ちきりだった。キヨコさんは、数年に一度現れて、烏森学園に何らかの災いをもたらすという。墨村良守は、キヨコさんらしい霊を目撃する事はなかったが、念のために霊を視認できる神田百合菜に、キヨコさんに対して尋ねる。すると神田はそれに対して、キヨコさんは真実を告げに来ると忠告する。結局キヨコさんは見つからなかったため、屋上で寝る事にするが、その際に「今日のトレンドは七三」という少女の声を聞く。そして校舎に戻って来てみると、何故か市ヶ谷友則や田畑ヒロムの髪型が七三分けになっていた。さらに、教師である黒須を含む学校の全員が七三分けになっており、そのうえ全員が妙なマフラーを巻いたり、所かまわずコーヒー牛乳を飲むようになる。さすがにおかしいと感じた良守はようやくキヨコさんを探し当て、彼女の思い通りの格好や行動をさせている事を悟る。そして、見つけ出したキヨコさんにそれをやめさせようとするが、キヨコさんは良守をバカにした挙句、校舎の中に逃げ込んでしまう。良守は何としてもキヨコさんを捕まえようと念糸を飛ばすが、人気教師である茶野元晴のカツラに命中し、それをはぎ取ってしまう。良守はキヨコさんを捕らえるものの、茶野に悪い事をしたと落ち込む。心を動かされたキヨコさんは良守の思いに報いるため、烏森学園中等部の生徒からカツラの記憶を消したうえですべてを元通りにし、「烏森はいずれ目覚める」と予言を与えて去って行くのだった。

封魔師・金剛毅(第13巻)

墨村良守は、烏森の持つ力性質について理解しつつも、その力の源については依然わからないままだった。ある夜、烏森学園に、その力を狙う妖が現れるが、良守と雪村時音が駆けつけた際には、謎の巨大な釘が既に妖を滅していた。それと同時に、空から一人の青年が降り立った。青年は自身を封魔師の金剛毅と名乗るが、その直後、毅は突然その場に倒れ込んでしまう。良守は毅を家に連れ帰り、食事をご馳走して傷の手当をするが、墨村繁守の見立てでは、全身がボロボロで、一度きちんとした治療が必要だといわれる。にもかかわらず、毅はその翌朝に既に姿を消すが、良守が先んじて毅の武器である釘を取っておいたため、さっそく墨村家に戻って来るのだった。毅は良守達に乗せられる形で墨村家に滞在し、次第に傷や疲労を回復させていくが、そんな中、良守は毅に、烏森の封印を目指している事を明かしたうえで、実際に土地を封印する方法を尋ねようとする。しかし毅は、正式な封魔師ではないため、土地の封印への知識は持たないという。毅は12歳の時、邪煉と呼ばれる、妖とは異なる魔物に襲われており、それを黒鉄という封魔師に助けられた事で、その場で弟子入りを志願する。しかしその場で断られ、以降3年に渡って会えずにいた。毅は15歳になって黒鉄と再会するが、その時の黒鉄は明らかに弱った様子を見せており、さらにその3日後、邪煉と戦って命を落としたという。毅は黒鉄の後を継いで封魔師となり、2年ものあいだ、邪煉を封印するため追い続けていたのである。

黒鉄と鎖上(第14巻)

烏森学園に、金剛毅と因縁を持つ魔物・邪煉が現れた。毅は、今度こそ邪煉を封印しようと意気込みつつ烏森へと向かい、墨村良守雪村時音もそのあとを追う。邪煉には、黒鉄や毅が打ち込んだとみられる複数の釘が刺さっており、これが封印の足掛かりとなっていたのだが、邪煉は烏森の力を得る事で、刺さっていたすべての釘を排除してしまう。良守達も、結界術を駆使して邪煉に対抗するが、結界に閉じ込めても滅する事ができないどころか、簡単に溶かされてしまうなど、苦戦を強いられる。さらに毅の口から、邪煉は言葉巧みに相手の動揺を誘い、心が弱ったところを狙う性質がある事が明かされる。かつて、毅が弟子入りを志願していた黒鉄は、兄弟子の鎖上と共に邪煉を封じるために戦っていた。しかし邪煉は、黒鉄の心の中に巣食うコンプレックスを巧みにあぶり出し、このまま邪煉を封印しても鎖上の手柄になるだけだとうそぶく。その言葉に精神を疲弊させた黒鉄は、邪煉の誘いに屈して、鎖上が打ち込んだ釘を外してしまい、結果鎖上は邪煉の手により命を落としてしまう。そして疲弊した黒鉄もまた邪煉の餌食となり、奇しくもそれが、毅が封魔師を継ぐきっかけとなったのである。良守もまた、自分が正統継承者である事や、正守に対するコンプレックスを邪煉に指摘されるが、毅の呼びかけによって踏みとどまり、結界師と封魔師のタッグで邪煉を封じる決意を固める。

金剛毅VS邪煉(第14巻)

墨村良守雪村時音は、封魔師である金剛毅と協力し、邪煉を封じる作戦に着手する。邪煉を封じるには、手始めに釘を刺しつつ、刺した封魔師に邪煉をひざまずかせる必要があり、その後に釘を何本も打ち付ける事で弱らせる事により、初めて封印できるようになるという。また、邪煉の放つ邪気に対抗するには、つねに強気である必要があるため、良守と毅は、傍から見ると面白いと思えるほどに高いテンションを保ち、邪煉の邪気に屈せず連携して攻撃を仕掛けていく。しかし、邪煉に物理攻撃はほぼ効かないため、良守の結界術とは相性が悪く、足止め程度の効果しか発揮できなかった。邪煉は口汚く黒鉄を罵る発言を繰り返し、執拗に毅を挑発するが、毅は良守の一言からヒントを得る事で、邪煉が放つ言葉を頭ごなしに否定するのではなく、受け入れたうえでそれを克服する必要があると悟る。そして、良守の結界術で足を止められた邪煉に真っ向から向かい合い、強い意志をまっすぐにぶつける事で、釘を打ち付ける事に成功する。邪煉はその場から逃げ去るが、毅は改めて彼を追う事を決意。良守と時音に礼を言いつつ、再会を期して意気揚々と烏森を去って行くのだった。

良守の結界(第14巻)

墨村良守は、封魔師の金剛毅が語っていた、揺るぎない思いこそが力になるという言葉が気にかかっていた。そして、試しに強い思いを秘めながら絶界を展開しようとするが、途中で絶界が消滅してしまう。そこで良守は、火黒を倒した結界術を思い出し、影宮閃と連絡を取る事で、その時の状況を再現しようとするが、結局のところ、絶界とは異なる能力である可能性が高い事が判明するのみにとどまった。そして夜。良守は烏森の見回りに向かう際に、邪煉と戦った際に行っていたポジティブシンキングで結界術の威力をあげようと考え、烏森学園に現れた妖・腕団子を相手に、自らを奮い立たせながら絶界を展開して仕留めようとする。しかし、逆に腕団子に絶界ごと吹き飛ばされ、失敗に終わってしまう。良守は、自分自身と絶界の相性が良くない事を自覚し、別の方向に力を突き詰める事で強くなる事を目指すのだった。

会羽山の大天狗(第14巻)

墨村家に、会羽山からやって来たという烏天狗の紫堂が訪れる。紫堂は、会羽山の土地神であり、紫堂自身の主人でもある大天狗・黒雲斎に、世継ぎとなる分身を生み出すために山籠もりをしてほしいと常々思っているのだが、肝心の黒雲斎は、人間の女性にうつつを抜かしており、このままでは山籠もりどころではないという。そこで紫堂は、結界師である墨村良守に、結界術を使って黒雲斎を会羽山に拘束してほしいと頼み込む。烏森を封印する方法を求める良守は、黒雲斎情報を得るためにこれを承諾し、紫堂に連れられて会羽山へと向かう。しかし、実際に対面した黒雲斎は、良守の数倍の巨体から凄まじい威圧感を放っており、いつも強気なはずの良守すら、無理だと言い切り依頼を放棄しようとする。これに対して紫堂は、良守を客人とみるか侵入者と見るかは黒雲斎次第と半ば脅してくる。良守は、恐る恐るながらうまく話を合わせつつ、山の烏天狗の力を借りる事で巨大な結界を形成し、何とか黒雲斎を封じる事に成功する。良守はさらに、黒雲斎が夢中になっているという女性サンディー・ブラックマンに魔よけをかける事で、黒雲斎が近寄れなくするように頼まれる。良守はサンディーを発見するが、満足に事情を説明できず、仕方なく紫堂が人間に変化して説明を行う。幸い、飲み込みが早いサンディーは、紫堂の言葉を全面的に信用するが、そこに結界を破った黒雲斎が、人間の姿で現れる。しかしサンディーは、黒雲斎を自身に付きまとっているストーカーだと弾劾し、その言葉にショックを受けた黒雲斎はその場から逃げ去ってしまう。良守は何とか黒雲斎を慰めようとするが、サンディーと話を着けた紫堂が、女性に怖がられるのは現在の見た目が原因で、若返るために山籠もりをするべきだと主張し、黒雲斎もあっさりとそれを受け入れ、事態は解決する。結局良守は大して役に立たなかったものの、依頼を完遂した事になり、紫堂から烏を呼び寄せる羽をプレゼントされたのだった。

黒い箱と角志野兄弟(第14巻~第15巻)

烏森の地は、裏会からも長らく特異な土地と認識されてきたが、黒芒楼の一件によって、本格的に危険地域とみなされつつあった。墨村正守の排除を目論む扇一郎は、ここぞとばかりに烏森の危険性を主張し、これを受けた裏会は、査察のために第九客の奥久尼を派遣する事を決定する。正守はこの決定を受けて裏会実行部隊・夜行のメンバーに、烏森の警護を万全にするよう求める。そして奥久尼が烏森の地に到着するが、時を同じくして、夜行の本拠地に出自不明の黒い箱が届けられ、さらにその箱に、夜行に所属する子供である操が取り込まれてしまう。さらに夜行の本拠地や烏森学園で、同じ黒い箱が複数発見され、その中から妖が現れたり、さらに夜行では明も箱の中に消えるなど、騒ぎは大きくなる一方だった。奥久尼は、これを正守や奥久尼自身に対する挑戦と考え、箱の詳細や、それを設置した理由を推理し始め、その結果、箱は異なる空間同士をつなぐ出入口であると判明する。一方、箱の中に閉じ込められた操は、術を使う事で自分を縛っていたロープに命を吹き込み、あやつる事で自由の身になる。さらに、箱の中の空間を渡り歩いて囚われていた明も助け出すが、夜行の本拠地に箱を設置した角志野に見つかってしまう。操達は必死に逃げつつ、角志野を足止めするために封じられていた妖を解放する。しかしそれは、操達はおろか、角志野すら手に負えない強力な妖で、角志野は妖に飲まれて消え去ってしまう。捕えていた角志野が死亡した事で、操と明は箱の外への脱出に成功し、夜行の本拠地に仕掛けてあった箱も無害なものとなるが、烏森に仕掛けられた箱の機能は依然として失われていなかった。箱の能力は、角志野とその弟である角志野礼二の二人よって制御されていたのである。兄を殺された事で怒り心頭の礼二は、扇から受けていた、朝まで烏森と夜行を混乱させるという依頼を反故にして、烏森の箱をすべて解放し、妖を呼び出して墨村良守や奥久尼達を一掃しようとする。

巨大な妖・黒兜(第15巻~第16巻)

角志野礼二は兄を失った無念を晴らすべく、黒い箱から四体の妖を呼び出し、烏森を襲わせる。墨村良守雪村時音は、奥久尼を迎えるために裏会実行部隊・夜行から烏森に派遣されていた刃鳥美希と蜩と連携して、妖を滅するために動き出す。四体のうち三体は、それぞれ、良守、時音、刃鳥によって滅されたが、残る一体は、烏森の力を受ける事で強力になり、良守達をてこずらせる。一方、礼二を発見した時音は、彼を追って物体をすり抜ける能力を使い、箱の中の空間に潜入していたが、空間の勝手を知る礼二に撒かれ、扉のない部屋の中に閉じ込められてしまう。さらに礼二は、何者かから受け取ったという妖の繭を解放し、巨大な妖である黒兜を烏森の地に解き放つ。黒兜の状態は完全ではなく、上半身のみの姿だったが、良守や刃鳥と戦っていた妖を捕らえて体内に取り込んだり、烏森の力を吸収する事で、徐々に身体を形成していく。良守はこれを阻止するため立ち向かい、結界術で攻撃を仕掛けるが、なかなか有効打を与えられずにいた。黒兜が完全体になれば、街全体が危機にさらされると知った良守は、街や仲間達を守ろうという強い意志から、より強力な結界術を放つが、善戦虚しく黒兜は完全体になってしまう。奥久尼は、完全体になった黒兜は、人と人の作りし物を破壊するために動き出すというが、黒兜は何故か、攻撃目標を烏森に選定し、妖気の刀を生み出して地面に大きな穴を空けようとする。すると、烏森から力が逆流し、それに飲まれた黒兜は自壊する。時音もまた、礼二を逃したものの、自力で箱の中から脱出し、夜行の本拠地と烏森の地は、箱の脅威から守られるのだった。烏森の査察を済ませた奥久尼は、裏会に現状維持を進言するとともに、逃げだした礼二を部下に拘束させ、首謀者の扇一郎こそが真に危険な存在だと認識するのだった。

六本木樹里亜(第16巻)

墨村良守は、烏森学園の屋上から落下して来た少女を、反射的に結界術を使って助ける。しかし助けられた六本木樹里亜は、結界にこそ気づかなかったものの、命の恩人である良守に恋心を抱き、しつこく付きまとうようになる。樹里亜は、一度見初めた相手は手段をえらばずに追い詰める事から、「烏森の女豹」および「ラブ・ギャング」といった通り名を持つ危険人物だったのである。良守は雪村時音一筋ではあるものの、女性への免疫がまるでないため、その強引な手段で次第に追い詰められていく。さらに樹里亜は、良守と仲がいいとされる時音にも釘を刺すなど、その行動をますますエスカレートさせていく。進退窮まった良守は、無我夢中で式神を使うが、誤って時音の姿に変えてしまい、それを見た本物の時音が式神を止めるために現れる。それを見た樹里亜は時音がした分裂と思い込み、その場に昏倒してしまう。良守達は樹里亜を別の式神に任せて退散するが、樹里亜はその式神に惚れてしまい、早々に良守の事を忘れるのだった。

水龍と守美子(第16巻)

墨村良守は、黒兜との戦いにおいて烏森の力を目視できたが、それ以来まったく見る事ができずにいた。そんなある夜、突如空から巨大な水龍が舞い降りて来る。普段の妖とは次元の違う力を持つ存在の襲来に、良守と雪村時音は、大いに驚く。しかし、水龍は既にあちこちが傷ついており、何故か良守に向けて怒りを抱きつつも、二人に襲い掛かる様子は見せなかった。そこで時音は水流に対して、烏森の力で傷を癒したら、穏便に立ち去ってもらおうと説得する。一方良守は、この事件を仕掛けた人物が、良守自身の母親である墨村守美子である可能性を指摘。さらに、恐らく近くで見ているのだろうと考えた良守は、水龍の真下に巨大な結界を展開し、空高く持ち上げるのだった。良守は、いたずらを仕掛けられた事以上に、守美子が家に帰って来てくれない事に不満をもらし、時音はそんな良守を微笑ましく見守るのだった。一方、守美子も単にいたずらで水龍を烏森に誘導したわけではなく、烏森の地を一時的に鎮めるという目的があった。

土地神・淡幽と不死身の無道(第16巻~第17巻)

墨村良守は、2学年を終えて春休みを迎えるが、唐突に兄である墨村正守から電話を受けて、ある神佑地における仕事を手伝ってほしいと頼まれる。良守は未だに、多少ながら正守に対して苦手意識を持っていたが、これも修行と割り切りその依頼を引き受ける。依頼自体は、神佑地の入り口を見張って、中から出てくるものを逃がさないようにするという単純なものだった。そのうえで正守は、中にいるのは自分の獲物だと言いながら神佑地に向かっていくが、良守は正守の狙いがわからない事と、いつになく真剣に良守を頼っている事に、引っかかりを覚えていた。そこで、境内なら入った事にならないと考えて、中の様子をうかがう。すると、井戸から出てきた手によって、良守は内部の空間に引きずり込まれてしまう。良守を引きずり込んだ人型の存在は、そのまま身体を乗っ取ろうとするが、良守は絶界を展開し、これをたやすく退ける。良守は彼こそが正守の狙っている妖だと考えるが、二人の前に少女らしき妖が現れ、良守を引き込んだのはこの土地の主である淡幽であり、さらにこの土地と淡幽が何者かに脅かされている事を語る。一方、正守は顔なじみの人物である無道と遭遇する。無道はかつて裏会の十二人会に所属しており、正守の前任となる第七客だったが、ある時裏会の訓練施設を襲撃して所属していた人々を皆殺しにし、さらには人の姿を捨てて妖となり果てた凶悪極まりない存在で、彼こそが正守の狙っていた「獲物」であった。無道は、人間の時から幾度死んでも蘇る事から「不死身の無道」と恐れられていたのである。

正守VS無道(第17巻~第18巻)

元人間の妖・無道が神佑地に現れた目的は、神佑地の力を主である淡幽ごと奪い、大きな力を得る事だった。彼は淡幽の所在を察すると墨村正守の前から姿を消し、淡幽と、共にいた墨村良守に襲い掛かる。良守は、想像を絶する無道の力に追い込まれていき、淡幽も無道から力を奪われてしまう。そこに無道を追ってきた正守も合流するが、無道は淡幽から奪った力を体内に取り込み、青年の身体に若返る。そして正守に対して、他者から奪った力を使う事で生まれ変わる事こそが真の目的であると告げると、先ほどよりさらに強い力を振って正守を圧倒していく。正守は良守に逃げるよう促すが、良守はそれに納得がいかず二人は言い合いになってしまう。それを見ていた無道は、正守に対してどちらか片方だけを助ける事を宣言。正守は、あえて良守に自分を見捨てさせ、さらに正守への憎しみによって良守の絶界を完成させるために、自分だけを助けてほしいと嘆願する。無道はそれを無視して、正守へトドメを刺そうとするが、良守は正守を守るために、無我夢中で真界を発動し、無道に大きなダメージを与えると共に正守への攻撃も相殺する。淡幽は、九死に一生を得た正守に、自らの土地を一度封印し、無道ごと消滅させる事を提案し、正守達に異界から逃げるよう呼びかける。しかし正守は無道と決着をつける事を望み、気を失った良守を淡幽に任せると、単身で無道を追う。無道はさらに若返って正守を迎え撃つが、取り込んだ力が異界の崩壊に伴って消失していき、ついに正守に倒される。無道は散り際に、裏会の最深部には、無道ですら敵わない圧倒的な存在がある事、そして無道のほかにも、神佑地の力を得るために暗躍している存在がある事を明かし、消滅していく。正守もまた、異界の崩壊に巻き込まれそうになるが、良守の必死の呼びかけによって脱出する事に成功したのだった。

細波慧と影宮閃(第18巻)

裏会実行部隊・夜行に、諜報班の主任であり、組織のNo.3でもある細波慧が帰って来た。彼はかつて、外部に夜行の情報を売り渡した事があり、現在も、夜行に所属し続けるか、ほかに移ろうかと迷っている最中だった。しかし、頭領である墨村正守に呼び出され、このまま夜行に残るなら、よそに情報を漏らした事は問わないが、もし今後同じ事をしようとするなら、確実な制裁を下す事を宣言する。その迫力に恐れをなした細波は、夜行に残る事を選択し、そのうえで現在戦闘班に所属している影宮閃を、諜報班の部下として迎える事を進言する。正守もそれを承諾し、閃と彼の友人である秋津秀を諜報班に転属させ、新学期を迎えた烏森学園にこっそりと入学させる。秀は1年に、閃は3年の、墨村良守のクラスに所属する事になるが、転属してからの閃の初任務は、烏森と、烏森の核心に最も近い人間、すなわち、良守の監視だったのである。

黒い蝶(第18巻)

諜報班に転属した影宮閃は、墨村良守の監視を続けていたが、当の良守本人には緊張感がまったくなく、閃はいささか拍子抜けな日々を過ごしていた。そんな中、烏森の地に、笠をかぶった和装の少女が現れる。彼女は胸に提げた勾玉を光らせると、そこから黒い蝶の妖・幻魔蝶を呼び出し、烏森学園に向けて飛ばすのだった。良守は幻魔蝶が烏森学園に侵入した事を察知するが、昼間で生徒も多数おり、幻魔蝶からも大した力は感じられなかったため、目立つ事を避けるために式神を使って退治させようとする。幻魔蝶は生徒に危害を加えようとはしなかったが、何やらメッセージらしきものを呟き続けており、妖の姿が見える神田百合菜は、良守が何とかしてくれると信じつつも、おびえてしまう。雪村時音もその侵入に気づくと、仕方なく授業を抜け出し、あちこちに現れた幻魔蝶を退治し続ける。しかし幻魔蝶は、退治を遥かに上回るペースで分裂を繰り返してその数を瞬く間に増やしていき、さらに羽に刃が形成されて生徒を傷つけだすなど明らかに危険な存在となっていき、笠をかぶった少女もそれが想定外であるとばかりに、呆然と烏森学園を見続ける。良守はこの緊急事態に立ち上がり、生徒を守るために学校そのものを結界で包み、中にいる幻魔蝶をすべて滅する事を決める。しかしそこに雪村時子が現れ、良守の結界術を妨害してしまう。

四師方陣(第18巻~第19巻)

墨村良守は、学校を覆いつくすばかりに増え続ける幻魔蝶をまとめて滅するために学校全域を結界で覆うが、雪村時子は、今の良守の精度では、中にいる生徒にも危険が及ぶと判断して結界術を解除させてしまう。学校が心配なあまり焦る良守は時子を非難するものの、影宮閃や時子本人から助言を受ける事で冷静さを取り戻す。さらに墨村繁守も駆けつけて、正統継承者の四人がここに集結する。時子は自分一人で何とかしてみせると言うが、繁守はこれに反対し、四人の力を合わせて四師方陣を展開する事を提案し、雪村時音や良守も、学校や教師、生徒達の安全をより確実に守れるのなら、そうするべきだと繁守に追随する。時子もその案を受け入れるが、チャンスは一度で、失敗すると学校の安全も保障できないと言う。四人は意識を集中して力を練り上げ、学校をまるごと覆う巨大な結界を作り上げる。出来上がった結界は不安定で、わずかなほころびが崩壊を招くほどだったが、四人の力が奇跡的に調和した事で、ようやく安定。中に閉じ込められた無数の幻魔蝶を滅するのだった。

巫女サキ(第19巻)

学校に大量に発生した幻魔蝶は、墨村良守墨村繁守雪村時音雪村時子の、四人の結界師によって滅された。繁守と時子は、すぐに幻魔蝶の術者であるサキを発見し、その身柄を結界術で拘束する。サキは即座に謝罪すると共に、本来無害であるはずの幻魔蝶が、何らかの作用によって暴走を起こした事と、主であるノゾミの命令によって、警告のために烏森の地を訪れた事を語る。それによると、今後立て続けに神佑地で事件が起こり、裏会の内部も混乱に陥るのだという。時子や影宮閃は、それをにわかに信じられずに、身元を明かすように要求するが、サキは主を守るために、身元を明かす代わりに自らの力の源であるという髪の毛を切り、時子へと手渡す。時子はひとまず納得してサキを解放するが、閃は去り際にサキの思考を覗き、その脳裏から烏森が壊滅するイメージを読み取ってしまう。閃はさっそく、この結果を上司である細波慧に報告するものの、慧はその事を誰にも言わないようにと釘を刺すのだった。

会羽山訪問(第19巻)

墨村良守影宮閃は、烏森を取り巻く状況が悪化しつつある事を懸念しつつも、どう動けばいいのか決められずにいた。とりわけ閃は、サキから読み取ったイメージを他言する事を禁じられていた事もあり、今後どういった事態が訪れるのか、独り不安を抱えていた。そんな中、良守はほかの神佑地からアドバイスを受ける事を提案。かつて依頼を受けた紫堂から受け取った黒い羽を使う事で、紫堂の部下である烏天狗達の協力を取りつけ、閃と雪村時音を伴い、紫堂や大天狗・黒雲斎が管理している神佑地である会羽山を訪問する。その頃、会羽山では、黒雲斎が世継ぎを生み出すための山籠もりに入っていた。しかし、女性である時音が会羽山に進入したために、それを感知した黒雲斎の煩悩が暴走した事で巨大な風を巻き起こし、天狗達が暮らす屋敷に甚大な被害を与えてしまう。来て早々に大災害に見舞われて、良守達はもちろん、彼らを招いた烏天狗達や紫堂も混乱の極みに陥るが、その煩悩によって世継ぎを生み出す過程が大幅に短縮され、黒雲斎の世継ぎである飛丸がここに誕生する。飛丸を伴って屋敷に戻って来た黒雲斎は、飛丸の誕生を祝うパーティの開催を宣言し、良守達を強引に参加させる。良守達はその中で黒雲斎と飛丸に振り回され、アドバイスを受けるどころではなくなってしまう。

裏会調査室(第19巻)

真白湖と呼ばれる地方の神佑地の力が、一晩にして完全に消失するという事件が発生した裏会調査室の室長である探野耕造は、部下である波平と無償で協力するという扇六郎と共に真白湖を調査していたが、その結果、神佑地の力は自然に消滅したのではなく、何者かの手によって奪われた可能性が極めて高い事が判明する。そしてその翌日、墨村家に波平と六郎が来訪。墨村繁守墨村修史墨村良守らに対して真白湖における神佑地が空間ごと破壊されていた事を説明し、神佑地狩りに結界師がかかわっている可能性を示唆してくる。繁守達はそれを否定するが、波平はそれを見越していたかのように一枚の写真を取り出す。そこには、神佑地の力を失った真白湖と、そこに悠然とたたずむ墨村守美子の姿があった。波平は守美子に関する情報を得ようとするが、そこで六郎が彼女を侮辱するような発言をし、修史と良守を激怒させる。良守は結界術を展開し、修史を害そうとした六郎を拘束するが、六郎は風の力で結界術を強引に解除させ、そのまま波平を伴って姿を消してしまう。波平は六郎の無礼を咎めるが、これに対して六郎は聞く耳を持たないまま波平を傷つけ、兄である扇一郎のもとへ帰還する。波平もまた、事の一部始終を報告するため、本来の主である奥久尼のもとへ向かうのだった。

扇一郎の野望(第19巻~第20巻)

真白湖の神佑地狩り事件は、裏会の最高幹部会合である十二人会でも問題になっていた。会合のとりまとめ役である、第一客の夢路久臣は、真白湖のほかにも、一夜にして神佑地の力が消失したという事件が発生したと発言。扇一郎は、敵視している墨村正守に対してここぞとばかりに、彼の母親である墨村守美子と、正守本人を犯人だと決めつける発言を繰り返して挑発する。一方、波平から事のあらましを聞いていた奥久尼は、現時点における情報が少ない事を指摘し、自身の抱える機関を使って調査を行うので、憶測で下手な行動をとる事を控えるようにと、ほかの幹部に対して釘を刺す。これに対する反対意見はなく、ひとまずその場は収まったかに見えた。しかし、扇が易々と引き下がるはずもなかった。彼は、もとより犯人の正体になど興味はなく、それどころか自身も神佑地狩りを行って、さらに強力な存在になろうと目論んでいたのである。さらに扇は、弟である扇五郎に、裏会実行部隊・夜行の任務を妨害する事を指示。五郎は、ある神佑地の調査に赴いていた行正薫ら五人の構成員に対して、その神佑地の土地神を傷つけて襲うように誘導する。その結果、行正と、八重樫大以外の三人が命を落としてしまう。何とか生き延びた行正からその状況を聞いた正守は、この惨劇が扇の差し金である事を確信。志々尾限に続いて仲間を失う事で怒りを爆発させた正守は、扇との直接対決を決意する。

正守VS扇一郎(第20巻)

扇一郎との対決に踏み切る事を決めた墨村正守に、細波慧から連絡が入る。それによると、奥久尼から情報交換の申し入れがあり、現時点で正守が知りたい事をほぼ無制限に明かす代わりに、間流結界術、および結界師の力についての詳細、さらに両家の中でも最も強い力を持つ墨村守美子についての情報を求めるという。正守は、家族を売るに等しいこの取引をわずかにためらうものの、扇を倒すためには手段を選んでいられないと思い直し、奥久尼との情報交換に応じる。その中で奥久尼は、扇もまた神佑地狩りを目論んでいる事と、近いうちにその悪行を告発する用意がある事を明かすが、扇との対決を望む正守はそれを待つつもりはないと返し、単身で扇の屋敷に乗り込む。扇もこれを正面から迎え撃ち、十二人会の幹部同士の戦いが、ここに幕を開ける。扇は、自分の部下をおとりや盾として使うなど、非情な手段で正守を追い詰めようと猛攻を加えて来るが、正守も絶界を展開する事で、この難局を乗り切ろうとする。これに対して扇も、絶界を活かした接近戦を避けるべく、風をあやつって真空の刃や竜巻を生み出し、遠距離から正守を仕留めようと立ち回る。正守は、絶界で身を守りつつも次第にダメージが蓄積していき窮地に陥るが、勝利を確信した扇を欺くべく、自分そっくりの式神を展開する事で隙を作り、結界を突き刺して大きな痛手を与える。正守はそのままとどめを刺すべく絶界を食らわせようとするが、攻撃が達する直前で、扇の身体がバラバラに飛び散ってしまう。扇一郎の身体は、実際は兄弟六人による融合体で、受けた傷を扇六郎に押しつける事で難を逃れたのである。正守は、部下のみならず、弟までをも道具として使う扇に戦慄しつつも、利用された六郎をこのまま死なせる事が我慢できず、彼の治療を求めるべく奥久尼のもとに向かう。そこには、奥久尼から情報交換を持ちかけられていた墨村良守がいた。

土地神襲来(第21巻)

各地で続発している神佑地狩りの影響は、烏森の地にも及びつつあった。ある夜、墨村良守雪村時音は、影宮閃や秋津秀を伴い、いつものように烏森学園の見回りの任務に就いていた。するとそこに、傘を持った地蔵らしき何者かが姿を現す。良守達は、妖特有の気配を感じさせないその存在の正体を測りかねていたが、その地蔵が手にした傘をかざすと、不意に空に、地蔵が持っていた傘を巨大化させたような物体が現れ、そこから血のような赤い雨が降り注ぎ始める。その地蔵の正体は、神佑地狩りに遭った緋田郷の土地神で、治めていた土地を失い、さまよっていたところ、烏森の力に惹かれてやって来たのである。土地神を殺す事は裏会によって重罪に定められているため、緋田郷の土地神に手出しをできないで良守達は、結界を展開する事で赤い雨を止めようとする。しかし、赤い雨は無尽蔵に降り注ぐため防ぎきれず、次第に烏森学園の校庭に溜まっていき、さらに校舎が雨の中に徐々に沈んでいってしまう。雨の勢いがさらに増していく中、良守達は、このままでは烏森学園のみならず、町全体が沈んでしまう可能性を危惧し、雨を降らせている巨大な傘の破壊を画策。結界術で傘を滅するが、緋田郷の土地神が持つ傘を振り回すだけで再生してしまう。そこで良守は、持っていた傘を奪い取るが、逆に逆鱗に触れ、良守に赤い雨が集中。閃が引き上げようとするも、身体が沈んでいってしまう。あわやという時、突如緋田郷の土地神の身体が結界に包まれ、消滅する。良守の危機を救うため、時音が緋田郷の土地神を滅したのである。かくして危機は去ったが、時音は土地神を殺した事で、裏会に目をつけられてしまう。

緋田郷へ(第21巻)

墨村良守の前に、緋田郷の土地神が滅された事を聞きつけた豆蔵が現れた。彼は、緋田郷の土地神の消滅以上に、神佑地を奪われた事を憐れみ、それを聞いた良守も、人と神の価値観の違いを思い知る。そんな中、良守は供養のために緋田郷の土地神が残した傘を返しに行くため、豆蔵の案内のもと、緋田郷へと向かう。実際に訪れてみた先は、土地のあちこちが荒れており、豆蔵はこれを土地神の加護が切れた影響だと語る。良守達が進んだ先には雪村時子がおり、神佑地狩りによって開かれた空間を閉じる作業を行っていた。時子は、孫娘である雪村時音が緋田郷の主を滅したため、せめてその後始末を担うつもりになったと言い、責任を感じていた良守も、時子の作業への協力を申し出る。良守は豆蔵と共に、現在時子が閉じている場所以外の空間の裂け目を探すため、開かれた空間に飛び込む事で異界に潜入する。良守は緋田郷の土地神が住んでいた社に傘を供えて、さらにそこで天穴に似た道具を発見するが、そこに妖・闇暗行が襲い掛かって来る。良守はさっそく結界術を使って対応しようとするが、異界の中では結界が安定しないため、闇暗行に対して決定打を与える事ができず、防戦一方の状態が続く。しかし豆蔵のヒントから、闇暗行の身体に傷をつけて、そこから異界特有の崩壊エネルギーを流し込む事で撃破に成功する。良守と豆蔵も、異界の崩壊に巻き込まれそうになるが、そこに偶然、もう一つの開かれた空間を発見し、元の世界に帰還する。危機一髪ながらも、良守達は目的を果たした事で安堵するが、そこに、天穴に似た道具を狙って謎の少年の襲撃を受ける。腕や足に刃のような気を形成して攻撃を仕掛ける少年に、良守も絶界を展開して対抗。善戦するものの、絶界が少年の命を奪いそうになったため、良守は知らない相手とはいえ無意味に殺害する事を嫌い、絶界を解除。その隙を突いた少年に道具を奪われてしまう。

断頭島(第22巻)

緋田郷の空間を安定させた墨村良守は、その帰り際に、土地神の殺しの嫌疑をかけられた雪村時音が、裏会検察室の夜城と夕上清輝に捕らえられた事を知る。良守は、彼女が土地神を殺したのは自分を助けるためだと考えていたため、何とかして彼女が連行された断頭島へ渡ろうと手段を考える。その意図を汲んだ影宮閃は、細波慧を介して墨村正守奥久尼を通じた根回しを行い、裏会実行部隊・夜行として時音を連れ戻すための要請を行うよう手配。良守は閃に深く感謝しつつ、彼や刃鳥美希、秋津秀らと共に、断頭島へと向かう。一方、捕えられた時音は、夜城と夕神からきつい取り調べを受けており、さらに夜城は、時音を洗脳するための準備に取り掛かる。しかし、夕神は時音に対する扱いに、神佑地狩りを行っている者達の陰謀がかかわっていることを疑っており、彼女に対して夜城が戻ってくる前に逃げるよう促す。時音は、夕神の使役している霊獣である架魅那に乗り、断頭島からの脱出を測るが、夕神が夜城に背後から刺された事で気を失い、それに伴い架魅那の形が崩れてしまったため、脱出に失敗してしまう。時音は、結界を使って泳ぎつつ島を脱出しようと考えるが、海の上に満身創痍の夕神が漂っているのを発見する。さらに、時音の逃亡が明るみに出た事で、管理者である炎上寺彩子が島の総力を挙げての追跡を宣言。時音と夕神は、隠れながら二人で逃げ延びる事を決意する。

時音と夕上の逃避行(第22巻~第23巻)

墨村良守と刃鳥美希、影宮閃は、裏会実行部隊・夜行の代表として、断頭島の管理者である炎上寺彩子に対し雪村時音の引き渡しを要求する。しかし、彩子はそれを聞き入れるつもりなどなく、それどころか、彼らに対して攻撃を仕掛ける。さらに、夜城から時音が夕上清輝と共に逃亡した事を聞きつけ、弟である炎上寺彩覚に良守達の相手を任せると、時音と夕神を仕留めるために動き出す。彩覚は多数の式神を使って数に任せた攻撃を仕掛けて来るが、良守は刃鳥と共にこれらを退けていき、閃が感じ取った気配をもとに時音を助けるために動く。一方時音と夕神は、架魅那を失ったために空からの脱出をあきらめ、地下に存在するといわれている霊的な抜け道を通る事で追手を欺くために行動を開始する。夕神は、かく乱のために他の囚人を外に放ったり、事務員を買収したりと、あらゆる手段を用いて、彩子や夜城から逃れようとするが、断頭島の囚人が掘った物理的な抜け道を通っているうちに、ついに彩子に追いつかれてしまう。この危機を前に、夕神は時音に対して自分を置いて逃げるように言うが、時音は彼を守るために彩子に挑む。鎌による強力な攻撃に加えて、ほぼ不死身の身体を持つ彩子の前に、時音は次第に劣勢に追い込まれるが、そこに良守が現れ、結界術で彩子を足止めする。三人はこの隙を突き、抜け道まで走るが、そこに夜城が立ちはだかり、彼らを追いかけて来た彩子を一撃で行動不能にしつつ、良守達に襲い掛かる。夕神は、姿の見えない攻撃を仕掛ける夜城の実力に驚愕するが、良守は時音を傷つけられた怒りから絶界を強化し、逆に夜城を圧倒。夜城に対して、時音を洗脳しようとした理由を問いただそうとする。しかし次の瞬間、夜城の動きが止まり、そのまま命を落としてしまう。実は夜城も、神佑地狩りを行っている何者かの洗脳を受けていたのである。良守は、夜城の様子が、先日緋田郷で襲撃して来た謎の少年に似ているように感じ、戦慄を覚えるのだった。

氷浦蒼士(第23巻)

雪村時音にかけられていた、土地神殺しの疑いは、夜城の暴走もあって不問となった。墨村良守が時音に好意を抱いている事を察した夕上清輝は、時音に対して良守に頼るよう助言し、良守を応援する姿勢を見せつつ、断頭島から去っていった。それから数日後、東北の中心に位置する大首山が神佑地狩りに遭う。この事を影宮閃から聞いた良守と時音は、いよいよ烏森の地に危機が迫る事を予感していた。そんな中、裏会総本部から、急遽烏森の地に助っ人を派遣するという話が持ち上がる。突然の決定にきな臭さを覚えていた裏会実行部隊・夜行のメンバーは、良守達結界師と連携する事でその力を見せつけ、既に十分な戦力が揃っているという理由で総本部からの助っ人を追い出す作戦を立てて、良守達もそれに協力する姿勢を見せる。かくして烏森の地に、夜行の戦闘班である巻緒慎也、轟大吾、武光喜朗が集い、良守達は不測の事態に備える準備を整える。するとそこに、烏森の力を狙う妖が姿を現す。良守と時音は、妖を片付けようとするが、その前に別の人物の手によって妖がバラバラに寸断されて滅される。そこに降り立った少年は氷浦蒼士と名乗り、裏会総本部から結界師をサポートするために派遣されたと語る。しかし氷浦こそが、かつて緋田郷で良守を襲撃した張本人だった。

白丸と黒丸(第23巻~第24巻)

墨村良守は、かつて緋田郷で襲って来た氷浦蒼士に強い猜疑心を向けていた。氷浦は、任務の際に雪村家に逗留する予定だったが、良守が監視をするため、墨村家で過ごすよう言い渡される。そして、二人きりになった際に、緋田郷で襲撃して来た事を問いただすが、氷浦は誤魔化そうとする素振りも、良守に対する敵意もまったく見せる事なく、ただ、結界師の命令に従う事だけを告げる。そもそも感情がないようにも見える氷浦に、良守は不信感を拭えないものの、その極端ともいえる様子を不思議がる。翌日、良守は学校に行きながらも氷浦を警戒していたが、家族に害を及ぼす様子も見せず、墨村修史に至っては、すっかり氷浦を気に入っている始末。その夜、烏森学園に白丸と黒丸という、アシカのような形状を持つ二匹の妖が侵入する。良守は、これをある種の好機と捉えて、氷浦に共に戦うよう要請。影宮閃ら、裏会実行部隊・夜行の面々が遠くから監視する中で、良守は黒丸と、氷浦は白丸と、それぞれ対決する。良守の結界術はますます磨きがかかっており、労せずに黒丸を倒す事に成功。一方氷浦は、上空から白丸を両断するため、雪村時音に対して、結界術で足場を作るように依頼。初めて共に戦うにもかかわらず抜群のコンビネーションを披露し、氷浦もまた、白丸を打ち倒すのだった。一方、良守達と白丸、黒丸が戦っている最中、三人の人物が烏森学園に侵入していた。その中で、互いをミチル、カケルと呼び合う二人の女性が、烏森学園の校庭に謎の呪具を埋め込み、残りの一人を置き去りにして姿をくらませる。白丸の遺骸から、妖を操作する呪具を発見した氷浦は、置き去りにされた男を捕らえる事に成功するが、彼はただ雇われただけで、二人については何も知らないという。夜行のメンバー達は、その二人と氷浦に何らかのかかわりがある事を疑い、良守は、その二人が烏森の地に何かを仕掛けたのではないかと訝しむのだった。

無想箱(第24巻)

墨村良守は、裏会総本部から派遣されて来た氷浦蒼士が、命令を聞く事しか知らないらしい事に感づき、氷浦が悪いのではなく、利用されているのではないかと考えるようになる。任務第一の姿勢を崩さない氷浦に、かつて失った親友である志々尾限を重ねた良守は、かつてのように突っかかる事を避けるため、烏森や良守の身の回りの人間を傷つけないように約束を交わし、二人の絆は深まる。影宮閃は、良守が氷浦に甘いと考えて釘を刺そうとするが、逆に烏森の地に仕掛けられたと思われる呪具を取り外すための人員を招集するように頼まれ、承諾する。良守はさらに、神佑地狩りを目論む何者かに烏森を好きにさせないために、より一層強くなる必要性を感じ、墨村繁守に対して結界師の真髄に迫るための修業を求めたところ、心を無にして力を行使する重要性を説かれると共に、彼から新たな修行用の道具である無想箱を受け取る。

烏森、暴走(第24巻)

墨村良守は、無想箱の修行や、烏森の地を取り巻く異変、氷浦蒼士への対応など、さまざまな問題を抱えていたが、それでもやれる事をやるというスタンスを崩さず、前向きに励み続けていた。そんな中、良守と雪村時音がお役目のために烏森学園を訪れると、先日侵入して来た人物達の仕掛けを暴くために、裏会実行部隊・夜行から、まじないの専門家である染木文弥と織原絲が派遣されていた。二人は力を合わせて、地中に封じてあった呪具を取り除こうとする。しかしこの呪具は、烏森の力を抑えつけるための杭のような役割を担っており、染木達がこれを引き抜こうとした事で、烏森の力が暴走を始めてしまう。その際に良守は、どこからともなく「ここにいるのはもう嫌だ」という声を聞き、無意識のうちに烏森そのものが、土地を荒らされる事を怒っているのではなく、封印からの解放を望んでいるのだと認識。語り掛けて来る思念に対して、自分が面白い所へ連れていくと返すと、暴走寸前だった気配が収まり、一件落着したかに見えた。しかし、あふれ出した妖気が、妖混じりの轟大吾や秋津秀の変化を促してしまう。轟は武光喜朗が気絶させるが、吸血鬼の本性を現した秀が周囲に被害を及ぼしかねない事を巻緒慎也から聞いた良守、時音、氷浦は、秀を傷つけないように拘束するため動き出す。秀は、高速で飛び回る秀の捕捉すらままならない時音に襲い掛かろうとするが、氷浦は秀を上回るスピードを発揮して拘束に成功する。秀は巻緒の能力によって自由を奪われるが、暴走は収まらず、巻緒の拘束を振り払うと、目の前の氷浦に襲い掛かる。氷浦はすかさず、秀を迎撃しようと構えるが、身の回りの存在を傷つけてはならないという良守との約束を思い出し、抵抗せずに首筋を噛まれてしまう。幸い、氷浦の傷は深くなく、染木の治療を受ける事で事なきを得る。一部始終を把握した良守は、氷浦自身も仲間の一人なので、傷ついてはいけないと釘を刺すのだった。

無想部屋の縞野(第25巻)

墨村良守は、無想箱を使った修行がなかなかうまくいかず、難儀していた。無想箱を滅するには、心を無にした状態で結界を形成する必要があるのだが、感情の起伏が激しい良守は、その方法がまったく思い浮かばなかったのである。そこで、感情を表に出す事がほとんどない氷浦蒼士に相談したところ、氷浦は普段から、力を振う際には何も考えておらず、強いて言うなら時間を止めているような感覚で臨んでいる事を明かす。この事からヒントを得た良守は、うまく心を無にする事で無想箱の修業を見事にクリアする。墨村繁守は、わずかな時間で修行を達成した良守に驚きつつ、次なる修行として、墨村家の井戸から通じている無想部屋へと案内し、そこで無想箱を滅したような無心の境地に入るよう言い渡す。良守はさっそく、無想部屋の中で修業に入るが、中では妖の幻影がひっきりなしに現れたり、突然水滴が落ちてきたりとさまざまな事が起こり、とても心を鎮めるどころではない。さらに、無想部屋は、入った術者のエネルギーによって動くため、修行を中断する際には決まって疲労感に襲われていた。良守は無想箱と同様に、苦労しながらも修行を重ねていたが、そんな中、猫の姿をした妖である縞野が、突如として現れる。縞野は、烏森の地における力の源が、意図的に良守に力を与えている事を告げて、それがエスカレートすると、良守が烏森ごと暴走する危険性がある事を示唆する。そのうえで、良守が烏森からの影響を受けずに抑えるための手段として、無想と呼ばれる状態を維持する事が必須だと明かし、これを修得するための修業を課すのだった。

扇一郎討伐(第25巻)

墨村正守のもとに、扇一郎に関する情報を共有していた奥久尼から情報が入る。奥久尼は、とある神佑地の存在を、かつて内通していた細波慧を通じて扇にリークし、あえて神佑地狩りをさせる事で、それを告発するという罠を仕掛けており、扇は見事にそれにはまったという。奥久尼は正守に対して、扇を捕らえるか、場合によっては処断する事を依頼。正守は、黒芒楼と裏で通じ、裏会実行部隊・夜行の仲間を殺害し、烏森に大きな被害を与えた扇を許す事はできず、静かな怒りを胸に、対決に備える。夜行の副長である刃鳥美希は、正守の危うさを嗜めつつも、扇を許せないのは自分も同じだと言い、夜行の一員として共に戦う事を志願する。さらに、扇五郎の陰謀で直属の部下を失った行正薫や、烏森に出向していた巻緒慎也達、さらに、花島亜十羅、黄道、白道などが集い、扇の潜伏先である風源寺への襲撃作戦が始まった。夜行の面々は、扇の部下達を圧倒的な力で次々に退けていき、正守もまた、怒る心を具現化させたような高出力の絶界をまとい、扇のもとを目指す。そして、今度こそ自らの手で仕留めようと、潜伏していると思しき社の中へと踏み入る。しかしそこにあったのは、無残な遺体だけだった。正守が正面から向かっている間に、別の人間が潜入し、融合体となっていた兄弟を殺害していたのである。そして、手を下した人物こそ、扇一族の次期正統継承者として目されている少年・扇七郎だった。時を同じくして、墨村良守達の前から氷浦蒼士が姿を消す。さらに同日、奥久尼までもが何者かの手によって殺害されていた。

裏会総帥・逢海日永(第26巻)

扇一郎奥久尼が殺害されたという情報は、その日のうちに裏会を駆け巡った。さっそく、十二人会による緊急会合が開かれるが、第十一客である狐ノ塚奇平は、墨村正守と奥久尼が共謀して扇を罠にかけた事を知っており、扇と奥久尼を殺害した黒幕として、正守を疑っていた。しかし次の夜、当の狐ノ塚が扇七郎に暗殺されてしまう。一方、奥久尼を殺した犯人が氷浦蒼士ではないかと疑う影宮閃は、細波慧から、扇を殺害した犯人が七郎である事と、かつて烏森に予言を授けた巫女サキが所属する組織・蛇ノ目が解体した事を告げられる。主と組織を失ったサキが烏森の地に現れ、今後烏森の地と裏会に次々と異変が発生し、墨村良守こそが烏森における運命を左右する人物になると告げて、姿を消す。状況が目まぐるしく変化する中、正守は、蛇ノ目が、裏会の総帥お抱えの組織である事に着目し、それを解体できる人物こそが異変の中心に立っている事を推測する。それはまさしく的を射ており、裏会の総帥である逢海日永こそが、一連の神佑地狩りの黒幕であり、七郎に対して幹部の暗殺を依頼した張本人だったのである。

死神・扇七郎(第26巻)

縞野との修行で、無想のコツを掴みつつあった墨村良守は、ついに無想の完成形である極限無想の修得に取り掛かる事となった。縞野は、極限無想が完成する事で本来の力を発揮できるようになり、烏森の安定に大きく近づけるのだと言う。さらに、雪村時子の前に縞野の同族と思しき猫の妖・三毛野が現れ、雪村時音に対して修行をつける事を宣言する。二人の修業は順調に進んでいたが、そんな中、良守と時音達は、夜の見回りで烏森学園を訪れた際に、扇七郎と遭遇する。烏森の力に興味があるという七郎に対して、良守は不信感を募らせ、すぐに出ていくように警告するも、結界術にも興味を持っていた七郎は、彼らの力を試すために自らの風の力を振う。その様子を陰で見ていた影宮閃は、精度に優れる時音の結界術ですら捉えられない七郎のスピードに、改めて脅威を覚えるが、無想の力を身に着けた良守は、結界で七郎を閉じ込める事に成功。そのまま滅してしまおうとするが、七郎は真空の刃で簡単に結界を破壊し、悠然とその場から飛び去る。一方、墨村正守は、密かに仲間に加えていた鋼夜を伴い、十二人会のトップである夢路のもとを訪れていた。そのうえで、今回の件と、総帥である逢海日永の関係をそれとなく探ろうとしていたが、夢路ははぐらかすばかりで有益な情報を提供しようとしなかった。正守は、夢路と日永のあいだには何らかの繋がりがあると睨み、現状を打破すべく調査を再開するのだった。

氷浦の疑惑(第26巻)

墨村良守が励んでいる極限無想の修業も、いよいよ大詰めを迎えつつあった。極限無想を行使するために必要となる管理者という存在を具現化する事に成功し、あと一息と言うところまで漕ぎ着ける。しかしその翌日、殺害された奥久尼の部下であった波平が良守の前に現れ、殺害現場に落ちていたというシャープペンシルを手渡す。それが、かつて自身が氷浦蒼士にプレゼントしたシャープペンシルである事を悟った良守は、氷浦本人に対して、奥久尼が殺された日の夜、何をしていたのか問いただすが、明確な回答を得る事ができなかった。そのうえで、たとえ命令された結果だとしても、人を殺すような真似をして欲しくない事を打ち明け、誰かを殺す命令を受けた際には、その前に良守自身を殺しに来るように約束を交わす。しかし、心の整理がそう簡単につくはずもなく、氷浦に関する心境の乱れは、極限無想の修業にも支障を及ぼしてしまう。一方、裏会実行部隊・夜行では、度重なる異変に対抗するため、戦闘力に乏しい人達を安全なところに避難させ、強力な構成員のみを烏森の地に残す事が決定する。影宮閃は、わずかの間身の振り方に悩むものの、良守を放っておく事ができないため、残る事を決意。さらに、烏森の地が持つ特徴や、現時点における良守とのかかわりを自分なりにまとめ上げて、墨村正守に報告する。正守は、閃こそが、現在の烏森の核心に最も近づいていると考え、引き続き烏森についての調査を任せるのだった。

烏森襲撃(第27巻)

烏森学園を見回っていた墨村良守雪村時音氷浦蒼士影宮閃の前に、以前呪具を仕込んだ張本人であるミチルとカケルが現れた。ピエロに扮装したカケルは、怪しげな術を展開する事で、学園の敷地全体を宙に浮かせるという非常識な芸当を見せ、さらに街全体に大掛かりなまじないを発現させ、自分の意思で街を破壊する事ができると豪語する。良守は結界術でカケルを止めようとするが、そこに壱号と呼ばれる青年が現れ、刀で結界を寸断してしまう。さらにカケルは氷浦の顔を見るなり、彼の事を「参号」と呼び、同志であるような素振りを見せるが、一方で氷浦は、彼らを敵だと言い切り、対決の姿勢を崩そうとしない。時音は、カケルおよび壱号と氷浦の言動の不一致を訝しむが、良守はシンプルに、烏森を守るという思いが嘘でないなら氷浦を信じる事を表明する。しかし、街にはまじないが仕掛られており、カケルの意思一つで壊滅状態に陥るという最悪の状況で、さらに妖混じりの戦闘員である弐号が、壱号の味方として参戦する。氷浦は弐号の攻撃を跳ね除けながら壱号と激しく切り結び、その中で壱号は氷浦に対して、なぜ総帥は自分達を捨てて参号を選んだのかと問いただし、弐号を結界で狙いながらもそれを聞いていた時音は、現在烏森を襲撃しているのは逢海日永の手勢ではなく、彼とかかわりのある対抗組織によるものだと理解する。一方良守は、氷浦を信じると言ったものの、彼を取り巻く状況を完全に把握しきれておらず、街が人質に取られている事もあり、彼らしくもなく弱気になっていた。しかし氷浦が、襲い掛かってきた弐号を返り討ちにしたものの、とどめを刺す寸前で「誰かを殺さなければならなくなったら俺を殺しに来い」という良守の言葉を思い出し、うろたえている所を見て、自分の言葉が届いていないわけではなかった事を理解する。氷浦はさらに、「自分の周りの人を傷つけるな」という言いつけを守るかのように、窮地に陥った閃をかばい、氷浦自身もケガをしてはいけないという言いつけを守ろうと、負傷を隠して戦い続ける。閃はこれを見て、氷浦が悪い存在ではないと理解し、良守に彼を助けるよう懇願。これによって迷いを吹っ切った良守は、氷浦を助けたいという一念だけを、深く静かに激しく思い、ついに極限無想を完成させる。

逢海兄弟(第27巻)

烏森の地が、ミチル、カケル達に襲撃されている最中、墨村正守は、十二人会の第一客である夢路久臣に呼び出されていた。夢路は、神佑地狩りが逢海日永の差し金である事を現在でも疑っている正守に呆れた様子を見せつつも、裏会を立て直す中心の一人になってほしいと依頼するが、正守はそんな彼に対して、3つほど確認したい事があると言う。夢路は、最初の質問である、総帥の側に天才的なまじない師がいる事と、続けて問われた、かつて氷浦蒼士が総帥直属の兵士であった事を肯定するが、氷浦が現在、烏森の地に派遣された事は知らないと発言。そのうえで、正守にさらなる力を得るための用意がある事を告げるが、正守はそれに答える前に、霊体となってこの世に留まっていた奥久尼と共に、最後の質問として裏会の設立の経緯について語り始める。裏会は、今から400年前、逢海日永と逢海月久の兄弟によって設立されており、夢路こそ、弟の月久本人である事と、月久はずっと兄である日永を見下し続けていたが、何らかの理由で日永が神佑地狩りを始め、裏会を破壊しはじめた事、を指摘。そのうえで正守は、現在の悲劇は、身勝手な兄弟喧嘩が引き起こしたものだと断じて、逢海兄弟を激しく非難する。その時、空から無数の剣が降り注ぎ、正守達が会談をしていた社が、一瞬にして破壊される。正守は絶界で自らの身を守るものの、気が付けば月久の姿は見えなくなっていた。さらに、空から謎の青年が舞い降りる。彼は正守に対して、自らを零と名乗るのだった。

月久との探り合い(第28巻)

墨村正守の前に現れた零は、自分が奥久尼を殺害した事と、現在、烏森の地を逢海月久の手勢が襲撃しており、そもそも正守が月久に呼び出されたのは、連絡手段を封じるために、電波などをいっさい遮断する結界の中に誘い込むためだった事を告げる。これを聞いた正守は、鋼夜と共に結界の外に脱出するが、上空に待機していたとみられる奥久尼の部下だったはずの人員は、何故か零に従えられていた。零は、彼らの能力を利用して烏森学園の現状を示す映像を空に投影し、月久に対して逢海日永からの伝言を伝える。日永は、自らが行動を起こせば、自尊心の高い月久なら対抗心から必ず同じ事に手を出すと確信しており、零と参号、水月以外の部下を置いていったのも、月久が神佑地狩りの手駒として利用する事を想定しての事であった。さらに、月久に対する復讐が完遂したら、その報いを受ける事を公言する。正守は、日永が月久を強く憎む理由こそわからなかったが、復讐のために裏会そのものを破壊するつもりならこのまま彼の思い通りにしてはいけないと考える。そして、鋼夜の助けを借りて、姿を消した月久に追いつくと、烏森を襲撃した事を見逃す代わりに、総帥を止めるために共闘しようと持ち掛ける。月久は、日永と和解する可能性は全くない事を前置きしつつも、正守の手で日永と一対一の状態で引き合わせれば、確実に殺す自信があると豪語。さらに、逢海兄弟は裏会設立時に間時守の協力を受けており、日永は時守と彼の面影を残す正守を気に入っていると語る。日永を止める事が最優先と考える正守はその申し出の受け入れを表明するが、実は月久は精神支配能力を隠し持っており、あろう事か正守を洗脳して意のままにあやつろうと画策していた。絶界によって月久の精神操作能力に気づいた正守は、奥久尼の部下や夜城が洗脳されていた事から、日永もまた同じ能力を持っている事を突き止める。そして、自分ごと月久を結界に閉じ込め、手を結ぶか共に散るかの選択を迫る。しかし次の瞬間、零が不意打ちを仕掛け、その一撃で月久は命を落としてしまう。正守は、烏森の地へ急いで戻ろうとするが、そんな中、霊体の奥久尼は、烏森の地の力の源は生きた人間である事を正守に伝えて成仏する。

極限無想(第28巻~第29巻)

墨村良守は、壱号および弐号との戦いで満身創痍になった氷浦蒼士を救いたい一心で、ついに極限無想の境地に至り、管理者であるしぐまの召喚にも成功する。極限無想の状態における良守の結界の強度は凄まじく、壱号や弐号の動きを完全に封じ、さらにミチルとカケルの仕掛けたまじないを複数の結界で覆うと、まるでまじないに鍵がかかったかのように動かなくなる。一方、地上では、裏会実行部隊・夜行のまじない班主任である染木文弥が、巻緒慎也達戦闘班や、騒ぎを聞いて駆けつけた墨村繁守雪村時子の力を借りて、カケルのまじないを破壊する事を提案する。極限無想によって、結界も壱号達も動けないまま、まじないを破壊するためのまじないである「まじない殺し」が発動。龍の姿を模したエネルギーの奔流が伸びて、カケルの作ったまじないの源を喰らいつくしていき、空に浮いていた烏森学園も元通りになる。ミチルとカケルも良守の結界で拘束され、戦いは終わったかに見えた。しかしそこに、日永に雇われた身としてすべてを見届けていた扇七郎が空から舞い降り、真空の刃で良守の結界ごと弐号とミチル、カケルに致命傷を負わせ、壱号を負傷させる。突然乱入して来た七郎に対し、良守は攻撃を仕掛けるが、七郎の力は別次元のように高く、極限無想で強化された結界すらも容易く切り裂かれてしまう。そして七郎は、日永からの依頼通りに、すべての遺体を塵に返そうとするが、傷が浅かった壱号を逃がしたうえに、誤って日永の配下だった氷浦に重傷を負わせてしまう。これに激怒した良守は、感情の揺らぎから極限無想を解いてしまい、さらに、以前声をかけてきた烏森の地の誘いを無意識に受ける形で、以前より強力な真界を発動。七郎と壱号は間一髪のところで逃れるものの、既に事切れていたミチルとカケル、弐号は、遺体ごと跡形もなく消滅してしまう。雪村時音は、初めて見る得体の知れない力に戦慄するも、必死に良守に呼びかける事で真界は解除される。こうして良守達は、月久の配下達の襲撃を辛くも乗り越えるが、良守自身は氷浦の命が脅かされた事を、かつて志々尾限を失った事と重ねて消沈してしまう。一方、魂蔵の力で一人復活を果たしたカケルは、壱号に保護されてその場を去るが、大切な人であったミチルを失った憎しみから、日永への復讐を決意するのだった。

正守の暗躍(第29巻)

烏森の地に帰って来た墨村正守は、裏会実行部隊・夜行の仲間達や墨村良守を気遣いつつ、影宮閃からの報告から現状を把握する。そんな中、先ほど烏森に乱入して来た扇七郎が現れ、氷浦蒼士を傷つけた事を謝罪し、扇一族の総力を挙げて彼の治療を行おうと申し出る。良守は、氷浦を傷つけた本人である七郎に憤りを見せるが、彼の見せた真摯な様子から、わずかながらわだかまりを解く。正守は、思ったより氷浦の傷は浅かったため、夜行の治療班である白菊と菊水に任せても問題がない事を七郎に伝えるが、七郎はさらに、以前兄である扇六郎を助けてくれた恩返しとして、正守に自分を一度だけ雇えるよう便宜を図ると、その場から飛び去った。しかし、氷浦を傷つけてしまった咎で、逢海日永は七郎を解雇し、七郎もこの失態を重く受け止める。一方、十二人会では、ついにまとめ役である夢路久臣(逢海月久)を失い、混乱の極みにあった。正守は事の一部始終を明かし、日永こそが騒動の黒幕である事を明かすが、またも会議は紛糾してしまう。第二客である鬼童院ぬらはその控えめな性格からまとめ役を自ら固辞し、第三客の竜姫は、この期に及んでも責任のなすり合いを行う幹部達に嫌気がさし、十二人会を辞任する姿勢を示す。その結果、新たなまとめ役として選ばれた第四客の冥安は、現状を改革するためとして、正守を今回の件における特務役に任命する。裏会における大きな権限を手に入れた正守は、日永に近づくため、かつて彼に洗脳されていた人達を集め、可能な限りの情報を得るために動き出す。一方、墨村家には、長らく各地を放浪していた墨村守美子が突如として帰還。さらに、烏森の地を正式に封印するために、良守を伴って別の土地に移る事を宣言する。

烏森城の宙心丸(第30巻)

突然烏森の地に帰って来た墨村守美子は、墨村良守雪村時音を伴い、烏森学園の校庭を訪れる。そして、墨村正守を遥かに超える精度の探査術を使い、地下深くに眠っていた楔を解除すると、校庭から和風の城が浮かび上がってくる。守美子は、これは城の姿を模した異界で、中に烏森の力の源であるという「お殿様」が潜んでおり、正統継承者である良守と時音なら彼を見つけ出せるはずだと言う。良守達はさっそく、異界の中に潜入し、お殿様を探すために城の中を巡る。しかし、城の中は外から見るよりはるかに広く、さらに奇妙な妖や人型の霊らしき存在が多数徘徊しており、良守達はお殿様を一向に発見する事ができない。時音は、良守と別行動を取った際に、守美子に対して父親である雪村時雄の死について何らかの事実を知っているのではないかと問いただす。守美子はその真相を語り、その内容には不審な点がまるで見受けられなかったため、時音は、簡単に割り切る事こそできなかったものの、一応の納得を見せるのだった。一方、良守は、戦いの中で聞いた烏森の声から、お殿様が小さな子供である事を推測し、どこへともなく「いっしょに遊ぼう」と呼びかける。もともと良守を気に入っていたお殿様はその様子に強い興味を抱き、良守に対して自分を捕まえてみろと言い出す。時音も合流し、彼女はお殿様を追う際に、三毛野との修行で身につけた新しい結界を披露し、良守を驚かせる。尽力の末にお殿様を発見した良守に、お殿様は宙心丸という名前を自ら明かす。そこに守美子が現れ、宝玉のような呪具を用いて宙心丸を封印し、烏森の城の外へと連れ出すのだった。宙心丸を封印するために、守美子と共に他所の土地に移る事になった良守は、時音を始めとした仲間達にしばしの別れを告げて、烏森の地を発つのだった。

新たな土地で(第30巻~第31巻)

墨村良守斑尾、そして、墨村守美子は、宙心丸が封印されている宝玉を持ち、烏森から離れた地へ居を移していた。しかし、烏森の力の源であった宙心丸がいる関係上、大量の妖が毎晩襲来しており、それを退治する良守の役割は依然続いていた。そんな中、謎めいた一人の男と、彼に付き従う九門という妖が良守に興味を向け、その様子を観察していた。そして数日後、男の指示によって九門が良守達の家を襲撃する。戦力が良守と守美子だけである事を知る謎の男は、まずは二人を引き離すように指示し、九門は良守を誘い込むために、空中に巨大な扉を形成する。良守はそれに不審さを覚えるものの、自分一人で始末をつけるため、屋根に上って周囲を警戒する。すると8つの扉が現れて、さらにその一つの扉の前に、それを仕掛けた九門本人が姿を現す。良守はそれを見逃さず、九門を結界術で拘束すると、自ら扉の中に飛び込む。九門はこれに対して、扉は中からは決して開けられないと勝利を確信するが、良守は極限無想で強化した結界を使って、内側から無理やり扉をこじ開ける。しかし、分断するという目的は既に果たされており良守がいないあいだに、謎の男は既に家の中を訪れており、戻って来た良守に対してその正体を明かす。彼こそが、間流結界術の開祖・間時守なのであった。

開祖・間時守(第31巻)

墨村良守の前に現れた間時守は、彼を試すために九門と共に一芝居打った事を明かし、良守の、自分の周りの人を守るために全てを投げ打つ気質を高く評価しながらも、大局を見て行動する事の重要さを明かしたうえで、宙心丸を封印する際には、真界を完成させる事が不可欠だと説く。良守は、過去に3回、土地神の力を受ける事で無意識に真界を発動していたが、それらは未完成のものに過ぎず、完成した真界は、限定された空間の中に自分の思い描く世界を作り上げられるいう。良守は、時守の指導の下で、真界を作り上げるための修業に明け暮れる事となる。一方、宙心丸が離れた事で烏森の地における任を解かれた雪村時音は、三毛野から最上位の土地神と渡り合う事になると聞かされ、その際に必須となる抜け師になるための修業を受ける事になり、逢海日永への対抗策を求める墨村正守は、かつて日永と長きにわたって対立していた無道を、意識体として呼び戻す事を決めていた。そんな中、修行を進めていた良守の前に、影宮閃と秋津秀が現れ、烏森の地に平穏が戻った事と、今後異変が起こると思われる場所が、扇一族の本拠地である嵐座木神社と、裏会の総本部がある覇久魔の地に限定された事を伝えてくる。さらに、この事態に対して扇一族はどう動くのかを確かめるために、三人は扇七郎と対面する。七郎は、最近になって時守から協力を求められており、彼の知り合いであるという良守に対し、時守が信用に値するかを尋ねる。良守はこれに対し、何かを隠している節はあるものの、目的に対しては一生懸命な人だと返し、七郎はこれを参考に、協力する事に前向きな姿勢を示すようになるのだった。

復讐への道筋(第31巻)

仲間と主を失ったカケルと壱号は、逢海日永と逢海月久のかつての本拠地である、覇久魔の地に隠された異界に戻って来ていた。ミチルの残した資料を読み解いていたカケルは、日永が凶行に手を染めた原因を突き止める。逢海兄弟は、他者の身体に乗り移る能力を持っており、それを利用して400年以上の長きに渡って生き残ってきた。かつて日永は、強大な力を持ちながら心優しい性格で、直属の部下達も、彼の人柄に惹かれて助力を惜しまない者が大勢いた。日永は、裏会を盛り立てるために努力を惜しまない月久に全幅の信頼を寄せていたが、実際は、月久は日永を利用しているだけに過ぎず、裏会を自らの私兵に仕立て上げようとする冷酷な本性を隠し持っており、遥か昔に、日永にとって何より大切なものを奪っていた事が判明する。騙されていた事に気づいた日永は絶望のあまり引きこもってしまい、無気力な日々を過ごしていたが、そこに日永に思いを寄せていたミチルが、月久を追い落とすための策を献上する。それこそが神佑地狩りであり、ミチルは当初、神佑地狩りに不可欠となる空間支配能力者の子供を集め、神佑地狩りで得た力をカケルの持つ魂蔵に貯蔵し、月久を打倒するためのまじないを発動させようと考えていた。しかし、集めてきた子供の中に、偶然ながらカケルを超える規模の魂蔵を持つ遥という少女がおり、日永は遥の兄である遠に乗り移る事で、神佑地狩りで奪った力を遥から譲り受け、月久を越える力を得ていたのである。カケルは、結果的にとはいえミチルを利用した日永に改めて怒りを覚え、彼に報いを与える事を改めて決意。覇久魔の地ごと日永達を滅するため、最強のまじないを作り上げる準備に着手するのだった。

嵐座木神社襲撃(第32巻)

扇七郎は、嵐座木神社が逢海日永の神佑地狩りの標的になった事を察し、彼を迎え撃つ備えをしていた。そんな中、嵐座木神社の付近にある廃工場から、突如火の手が上がる。七郎は、これを日永による攻撃の合図だと考え、単身で彼を止めるために動き出すが、それは日永による陽動だった。七郎と側近の紫島は、まじない師である開眼の力を借りて、あらかじめ部下達に精神支配への耐性を着けさせていたが、遥と二人だけで嵐座木神社に現れた日永は、遥の持つ魂蔵の力を利用する事で、防御手段をたやすく打ち破るほどの凄まじい勢いで、精神支配術の媒介となる海蛇を放出。七郎の部下達を次々に洗脳していき、味方につけながら中心部へと迫っていく。陽動に気づいた七郎はすぐに嵐座木神社の中心である魍魎桜へと戻るが、既にほとんどの部下が日永の手に落ちてしまい、神佑地狩りも時間の問題と思われた。しかしその時、魍魎桜の上空から墨村良守と宙心丸が舞い降りる。良守は宙心丸から力を借りて真界を発動し、魍魎桜周辺における、日永の精神支配術を強制的に消滅させる。これで神佑地狩りは阻止されたと思われたが、日永の目的は神佑地狩りではなく、扇一族の部下達を洗脳し、自らの配下に加える事で、それを悟った七郎は、近いうちに日永が裏会総本部に戦争を仕掛ける事を確信すると共に、連れ去られた部下達を必ず取り戻そうと決意する。一方、良守は大規模な戦争が発生する事を強く懸念するが、同行していた間時守から、宙心丸の封印以外に心を注いではならないと、強く念を押されるのだった。

総本部、陥落(第32巻)

嵐座木神社が陥落した翌朝、招集された十二人会もまた混乱の極みにあった。第六客の銀魅霞玄は脱退を表明し、第二客の鬼童院ぬらも、戦になる事を嫌って十二人会を欠席していた。こうして残り5人となった中で、現時点における取りまとめ役の冥安は、ここで逢海日永の攻撃を受けて総本部を制圧されれば、裏会は完全に壊滅するため、なんとしても守り抜かなければならないとほかの四人に強く促す。しかしそこに、急襲してきた零が剣の雨を降らせる攻撃を仕掛け、さらに洗脳された扇一族の部下達が、総本部の守備隊に攻撃を仕掛けてくる。これに対抗するため、第十二客の咒宝、第五客の腐部骸次、第十客の紡岐一親は、それぞれ異能力を使って日永の軍勢に対抗する。しかし墨村正守は、彼らの身勝手な態度と、周りの被害を顧みず、さらに味方まで巻き込もうするやり方に、だんだんと嫌気がさしていく。さらに冥安は、黒兜を新たに二体作り上げており、日永や遥、氷浦蒼士の乗った妖の円盤を破壊するためにこれを起動させる。しかし、日永の精神支配術は、人造の妖にすら効果を及ぼすもので、黒兜すらたやすく制御下に置いてしまう。さらに、絶界で身を守った正守以外の全員が、瞬時に影響を受け、総本部はいとも簡単に制圧されてしまう。一人残された正守は、ただ己の無力さに打ちひしがれるのだった。

時守と宙心丸(第32巻~第33巻)

裏会総本部が逢海日永の手に落ちたという話は、墨村良守の耳にも入っていた。良守は、裏会実行部隊・夜行にいる墨村正守影宮閃達の事が気になっていたが、間時守は変わらず、宙心丸の封印だけに全力を注いでほしいと釘を刺す。時守が宙心丸の父親だと見抜いていた良守は、宙心丸を封印せずに済む方法もあるのではないかと問いかけるが、これに対して時守は、封印を決意した経緯について話し始める。400年ほど前、幼い頃から霊感が強かった時守は、周囲からの理解を得られる事なく、孤立した日々を過ごしていた。そんな中、時守が偶然訪れた烏森の地では、その姫君である月影が妖に狙われており、主君の頭痛の種となっていた。妖退治に秀でた時守は、月影の護衛を引き受けるが、実際は、霊感に優れた月影が、珍しいもの見たさに妖を呼び寄せていた。他者を信用できなくなっていた時守はこれを好機と見て、適当な妖を結界術で従わせ、月影を利用して金儲けを企む。しかし月影は、実際は時守が人とのつながりを求めている事を見抜いており、やがて二人は惹かれ合う事になる。そして、月影は宙心丸を身籠るが、これを怒った烏森の主君は二人の仲を裂き、時守は追放されてしまう。月影以外の人を信用できないままであった時守は、宙心丸を地域一帯の支配者になるよう望み、生まれて来る前の彼に術をかけ、超人的な能力を得られるように目論む。しかしその結果、生まれて来た宙心丸は、妖や霊能力を持つ人間に際限なく力を与え、霊感を持たない人間が近寄るだけで、力を吸いつくして殺してしまうような恐ろしい存在となってしまう。時守は、最愛の妻である月影や、仲間の妖を大勢失い、さらに自分の息子を不幸にしてしまった事で、己の所業を深く悔やむ。そして、宙心丸の時を止めて子供のままの姿にとどめ、時守自身は宙心丸に仕える家来として付き従い、長きに渡って彼を封印できる環境と術者を探し求めていたのである。すべてを聞いた良守は、ある意味で元凶とも言える時守に対して、その所業に怒りを見せつつも、宙心丸に対する彼の思いを理解する。そして、時守のためでなく、宙心丸と、墨村家、雪村家のために彼を封印する事を決意すると、さらに熱心に真界の修業に打ち込むのだった。

総帥討伐会議(第33巻)

カケルは、逢海日永を滅するためのまじないを完成させるが、その影響で力が落ちていた。そんな中、彼女や壱号がいた覇久魔の城に、日永本人が、水月や零、氷浦蒼士などの仲間を連れて戻って来る。そして、間髪入れずに精神支配能力でカケルを昏倒させると、近いうちに圧倒的な力がこの地に集う事を見抜き、その時を待つ事を決める。一方、裏会を制圧された墨村正守は、日永に対抗できる仲間を求めてあちこちを奔走していた。そんな中、彼の前に間時守が現れ、かつて十二人会を脱退していた竜姫もまた、日永を打倒するための計画を立てている事を明かす。正守は、以前貰った連絡先から扇七郎に渡りをつけて、彼の紹介から竜姫の住処である龍仙境を訪れる。竜姫は、早いうちから日永に対抗する策を構築していたものの、十二人会ではそれが不可能であると見切りをつけていた。しかし、現在かくまっている予言者のサキから、日永を討つのは正守であるという予言を聞かされており、彼を中心に総帥討伐のための部隊が結成される。その中には、部下を日永に奪われた七郎や、竜姫同様に十二人会から離脱していた銀魅霞玄や鬼童院ぬらもおり、会議の結果、日永ですらあやつる隙のない鬼をもあやつる事ができる鬼童院が、日永へ向かう道を開き、七郎と銀魅が直接戦闘を行いこれをサポート。そして正守が日永と対決するという流れで戦う事が決まる。日永を倒さない限り覇久魔の地を自由に使えず、宙心丸の封印も行えないため、いつもの裏会実行部隊・夜行の任務とは桁違いの危険度と重要性を持つものとなるが、正守は自分が中心となる事に高揚感を隠せない事を自嘲しつつも、この任務を必ずやり遂げる事を心の中で誓う。一方、墨村良守雪村時音も、正守達の裏会奪還作戦と合わせて動く事が決まり、二人は最後の任務を前に、互いにエールを送り合うのだった。

覇久魔の地(第33巻~第34巻)

間時守は、宙心丸の封印に覇久魔の地を使う事を決めていたが、そのためには、覇久魔の地の土地神であるまほらに他所の土地に移ってもらう必要があった。墨村正守達が、逢海日永を討伐するために裏会総本部の前で待機していた頃、雪村時音は先んじて、覇久魔の地に潜入していた。彼女は、日永が手を出す事すらためらわれるほどの強力な神であるまほらを説得する任を受け、三毛野から身につけた最終奥義の一つ「空身」を駆使して地中を進み、覇久魔の地の奥深くに眠っているまほらと向き合う。そして、人間の勝手な事情で出すぎた事をしていると自覚しながら、話を聞いてもらえるよう懇願するが、まほらは眠りを妨げられた事で怒りを見せ、無慈悲に攻撃を仕掛けてくる。時音は空身でそれらを無効化しながらも説得を続けるが、空身を発動し続ける事で神経をすり減らしていき、徐々に消耗していく。一方、水月は、日永が自身を葬るために強大な力ですべてを巻き込もうとしている事を知り、苦悩していた。そこに零が現れ、自分を手伝うように求める。さらに零は、氷浦蒼士に対しても協力を要請しつつ、クーデターを企む様子を見せるなど、不穏な言動を見せ始めていた。水月は、零の様子に不穏なものを感じ取りながらも、主である日永がこれ以上凶行に手を染めないために、零の言いつけ通り、遥やカケルを伴って隠し部屋に自ら閉じこもる事を選択するのだった。

裏会奪還作戦(第34巻)

竜姫、扇七郎、銀魅霞玄、鬼童院ぬらと、ギンを始めとした配下の鬼達、そして墨村正守裏会実行部隊・夜行の精鋭達が、逢海日永を討伐して裏会を奪還するため、覇久魔の地に集う。さらに、開眼が染木文弥と協力する事で開発した新たなまじないによって、日永の精神支配術に対する備えも盤石となる中、ついに裏会奪還作戦が開始される。日永に支配された扇一族の部下や、冥安、腐部骸次、咒宝、紡岐一親、さらに二体の黒兜が反撃のために彼らに迫るが、七郎は、竜姫からの依頼によって冥安の命を奪い、黒兜の一つを破壊しつつ、腐部を気絶させる。銀魅もまた、愛刀である黒雨を振い、もう一つの黒兜を打ち倒す。さらに、鬼童院の傍らに控えるギンは、特大の氷の塊を上空から降らせて、紡岐を一撃のもとに凍り付かせるなど、戦況は奪還部隊が優位のまま進んでいた。しかし、咒宝が発射した妖気の雷が、鬼童院を乗せた飛行型の妖に命中し、墜落に巻き込まれた鬼童院は気を失い、日永の精神支配術を具現化した蛇に侵入されてしまう。これによって彼女の使役していた鬼達も統率を乱されて、奪還部隊は一転して劣勢に立たされ、戦局の打開は、正守と日永の直接対決に委ねられたかに見えた。一方、日永も、力の源である遥が、零や氷浦蒼士、水月と共に姿を消した事で焦りを見せていた。日永は、ただ一人残った壱号を連れて、水月らの所在を探るために動いていたが、そこに突然氷浦が現れて、壱号と交戦状態に入る。さらに、壱号と離れた日永の前に零が姿を見せ、不意打ちを食らわせる。重傷を負った日永は、予期せぬ零の裏切りに驚愕するが、零の瞳と彼の言葉から、すべてを理解する。零の身体は、彼が殺害したはずの逢海月久に乗り移られていたのである。

日永VS月久(第34巻~第35巻)

零に乗り移った逢海月久は、重傷を負わせた逢海日永に対して、彼の遺体を手土産に奪還部隊に投降するつもりである事と、竜姫や墨村正守が立てなおした裏会を再び乗っ取ろうとしている事を明かす。遥がいないため、回復もままならない日永は、月久の悪辣な態度に強い怒りを見せ、自分の身を犠牲にしてでも差し違える決意を固める。一方で、月久も力が完全に回復しておらず、空から剣の雨を降らせて日永を仕留めようとするが、日永は支配していた人間や妖達から集めた海蛇を使って集中攻撃を行い、月久に致命傷を負わせる。その場に駆けつけた正守は、自分が手を下す前に全てが終わっていた事に愕然とする。その一方で、重傷を負いつつ意識を保っていた日永は、最後に正守の手で散る事を望み、彼に対して月久との関係を語り始める。かつて日永は、自らの持つ能力に苦しんでいたが、竜仙境で水月と出会い、やがて惹かれ合い、夫婦となった。しかし、ある時偶然月久と出会うと、彼の精神支配術を受け、兄弟に仕立て上げられたうえに、最愛の水月を奪われてしまったという。正守は、彼の境遇と行動に理解を示しつつも、そのために多くの人が不幸になった事を指摘するが、そこに水月が、遥やカケルを伴って現れる。日永は、正守や水月に対して、自分が許されない罪を犯したと懺悔するが、絶望しきっていたカケルは、日永への復讐ではなく、ミチルの残した力で自分を終わらせるために、世界を終わらせるまじないを起動する。これによって覇久魔の地は存亡の危機にさらされるが、まじないは発動しないまま破壊される。そこに姿を見せたのは、雪村時音と、土地神のまほらと思しき妖だった。

日永・水月の最期(第35巻)

雪村時音と共に現れた妖は、世界を終わらせるまじないを破壊し、その力の源を吸収する。さらに、日永の神佑地狩りを咎めるため、遥の身体から魂蔵を抜き取り、彼女の命を奪ってしまう。自分の罪深さを改めて自覚した日永は、自分を裁く代わりに遥を助けてほしいと懇願するが、取り付く島もない。しかし、水月が、自分の命と力を捧げようとすると、妖は、800年生きてきた水月の持つ記憶を得る事を条件に、遥を蘇生させる。日永は、自らの失った記憶を月久の遺体から探ろうとするが、結局記憶が戻る事はなかった。それどころか、幾度も身体を乗り換えてきた副作用から、月久は日永の事を本当の兄だと思い込んでいたという。正守は日永に対して、全てを話して審判を受けるよう勧めるが、日永は、現在乗っ取っている身体を、本来の持ち主である遠に戻す事を希望し、遠の身体から抜け出して、正守の絶界に飛び込み、自らを裁く。愛する夫の最期を前に悲痛な表情を浮かべる水月の前に氷浦蒼士が現れ、自らの意思で命令を破り、壱号との戦いを止めてきた事を告げる。水月は氷浦が自分の考えで物事を決められるようになった事を喜ぶと、正守に対して氷浦と遠、遥を託す。そして、氷浦に最後の別れを告げると、妖に自らの身を捧げるのだった。

眺める者(第35巻)

雪村時音墨村正守、そして、水月との別れを終えた氷浦蒼士の前に、墨村良守が宙心丸と共に現れる。覇久魔の地を使って、宙心丸を封印するという良守に対して、時音と共にいた、まほらだと思われていた妖は自らを眺める者と名乗り、覇久魔の土地神である本物のまほらを召喚する。扇七郎の協力によって、嵐座木神社の土地神にまほらを据える事になり、後顧の憂いがなくなると、良守はいよいよ、封印のために動き出す事を宣言する。時音と正守、氷浦は良守の健闘を祈り、遠と遥を伴ってその場から去る。そして良守は、最後の務めを果たすために、覇久魔の地の中心へ飛び込んでいくのだった。

封印、そして創造(第35巻)

墨村良守は、墨村、雪村代々の真の役目であり、最後の任務でもある烏森の封印に着手する。宙心丸からの力をダイレクトに受け、それを極限無想で練り上げた良守は、ついに完成形となった真界を展開。間時守の言うとおり、空間の中に世界を自由に作れるようになる。何でも思うがままの世界を用意するという良守に対し、宙心丸はまず、大きな城を立ててほしいとねだる。さらに、遊び相手になってくれる妖を作ってほしいという求めに応じて、良守は、巨大な城を作り出すと、碧闇、姫、火黒といった黒芒楼の面々や、黒兜、無道、緋田郷の土地神など、かつてかかわって来た妖を作り出し、さらに、良守自身と志々尾限の分身を召喚。限に最後の別れを告げるとともに、彼に宙心丸を託すのだった。宙心丸は、面白い世界を作ってくれた良守に心からの感謝を示すが、現実の世界で宙心丸と共に暮らす事を願っていた良守の表情は浮かなかった。さらに、良守の展開した真界は、墨村守美子の手によって安定している状態であり、この世界と外界を遮断するには、守美子が残る必要がある事を本人から聞かされる。ようやく家族として暮らせると考えていた良守は、守美子との別れを激しく拒絶するが、彼女が残らない解決策を見いだせないまま、別れの時は訪れる。帰り際に時守と出会った良守は、彼が多くの悲劇を生み出しつつも、終始宙心丸を思って行動していた事を鑑み、真界の中で活動できるよう人間としての身体を与えたうえで、全力で殴り飛ばす。そして、今度こそ父親として宙心丸を守り抜くように求めるのだった。

エピローグ(第35巻)

墨村良守が宙心丸の力を封印し、墨村守美子と別れてから、幾ばくかの時が流れた。正統継承者としての役割を終えた良守と雪村時音は、いつもと変わらない学園生活を過ごし、その騒がしくも穏やかな日々が帰って来た事に、安堵と達成感を抱いていた。逢海日永の支配から解き放たれた嵐座木神社では、扇七郎が扇二蔵より正式に家督を譲り受け、一族から多くの期待を背負うが、七郎本人は奔放な姿勢を崩さず、扇六郎や紫島を呆れさせる。裏会実行部隊・夜行では、新たに加入した氷浦蒼士の高い家事スキルを狙って、女性陣による取り合いが発生しつつも、氷浦本人は、影宮閃を通じて良守から新しいシャープペンシルをプレゼントされた事で、満面の笑みを浮かべていた。墨村正守も、新たに裏会を取りまとめる事になった竜姫や鬼童院ぬらから、若者代表として高い期待をかけられる。そんな中、良守と時音は、お互いの今後について語り始める。良守は変わらず、お菓子のお城を作るという夢のために邁進していたが、建築家としてやっていくのも面白いと発言。それに対して時音は、建築の際には数学を学ぶ必要があると説き、さらに将来、数学教師になりたいという思いを口にする。全く予想外であった時音の言葉に対して、良守は驚愕。烏森の地が静まった今も、それぞれの騒がしい日々は続いていくのだった。

登場人物・キャラクター

主人公

烏森学園中等部2年の黒髪の少年。結界師・墨村家22代目(予定)。三人兄弟の次男。夜は、同じ結界師である幼なじみの雪村時音とともに、斑尾とコンビを組んで結界師として烏森のパトロールをし、学校ではほとんど... 関連ページ:墨村 良守

『結界師』に登場する墨村家付き妖犬。推定約500歳。墨村家の結界師と行動を共にし、嗅覚で妖の位置を探る。昼間は墨村家の犬小屋の中にある石の中に封印されている。オスだがなぜかオカマ言葉で喋る。鋼夜と山で... 関連ページ:斑尾

結界師・墨村家第21代当主。63歳。性格は頑固でしつけに厳しい。正統後継者である孫の墨村良守に対して、つねに厳しく指導している。雪村家をライバル視し、どちらが間流結界術の正統後継者か争っている。良守の... 関連ページ:墨村 繁守

烏森学園高等部1年のロングヘアーの少女。結界師・雪村家22代目(予定)。墨村良守の2歳上。毎晩、良守と同じく、白尾とコンビを組んで結界師として烏森のパトロールをしている。パワーやスタミナは良守にかなわ... 関連ページ:雪村 時音

『結界師』に登場する雪村家付き妖犬。推定約400歳。雪村家の結界師と行動を共にし、嗅覚で妖の位置を探る。元々間流結界術開祖の間時守の飼い犬だった。間時守の死後は間時守の弟子である雪村家に付き、共に烏森... 関連ページ:白尾

雪村 時子

結界師・雪村家第21代当主。65歳。パワーも技術力もある優秀な結界師。優秀であるがゆえに見切りが早く、まわりの術者に対して厳しく対応しがち。普段は孫の雪村時音の指導をしている。裏会からの評価も高く、時々裏会の仕事もこなしている。墨村家をライバル視し、どちらが間流結界術の正統後継者か争っている。

墨村 修史

墨村良守たち三兄弟の父親で墨村守美子の夫(婿養子)。優しい性格で、家を出てしまった守美子に代わり、墨村家の家事全般をこなす。小説家だが、それほど稼いでいない。霊感がないので、妖怪も幽霊も見ることができないが、お札やお守りを作るのは得意。結婚前は松戸平介の助手をしていた。

雪村 時雄

雪村時音の父親だが、時音が幼い頃に亡くなっている。方印は出なかったが、家業である烏森の守護と、裏会の仕事を実直にこなしていた。ある日、墨村守美子が不在で、1人で烏森をパトロールしている最中に、何者かにより殺されてしまった。

墨村 守美子

墨村良守たち三兄弟の母親で墨村修史の妻。優秀な結界師だが、家業を継がず、全国を放浪している。瀕死の雪村時雄を家まで運んだのは彼女だったが、時雄が謎の言葉を残して亡くなったため、雪村時音からは不信感を抱かれている。

春日 夜未

裏会所属。おかっぱ頭で和装の女性。墨村正守より年上。情報収集能力に長けている。鬼使いの一族出身で「ヨキ」という鬼を従えている。裏会の仕事で、雪村家に逗留中に、烏森で墨村良守と出会う。日本茶が好きで、いつも水筒を持ち歩いている。

墨村家の長男。良守の7つ上。坊主頭にあご髭、額に三日月型の傷がある。頭が良く、能力も高いが、なぜか身体に方印が出なかったため、正統後継者にはなれなかった。正統後継者である良守に対してコンプレックスを抱... 関連ページ:墨村 正守

神田 百合菜

墨村良守のクラスメイト。小柄で長い髪を左右に分けて結わえている女子学生。霊感があり、妖や幽霊が見えるが、生きている人間と霊の区別ができない。友だちには霊感があることを隠しているが、つい霊を普通の人間と思い込み、会話してしまうのが悩み。良守に霊感があるのを知り、よく相談を持ちかける。

間 時守

400年前に烏森家に仕えていた人物。烏森家の身辺警護と妖怪退治をしていた。異能者で、間流結界術を考案した。弟子の墨村良守の先祖と雪村時音の先祖に間流結界術を伝授し、彼の死後、烏森家の守護を任せた。

『結界師』に登場する妖犬。黒い犬型の妖怪。生前は斑尾と一緒に山で暮らしていたが、人間に住んでいた山を荒らされ、各地を放浪していた時に人間に殺された。その後、妖怪になり、生まれ故郷の山で暴れまわっていた... 関連ページ:鋼夜

『結界師』に登場する土地神。身長は墨村良守と同じくらいで、笠をかぶり、着物をきたけむくじゃらの姿をしている。あまりしゃべらない。側近の「豆蔵」と行動を共にし、豆蔵がウロ様の意向を周囲に伝える。良守たち... 関連ページ:ウロ様

裏会実行部隊・夜行所属構成員。結界師補佐役として派遣された。良守と同い年で、烏森学園に転校生として編入。口ベタで、人付き合いが苦手。妖混じりで、全身を魔物に変化させる「完全変化(へんげ)」ができる。完... 関連ページ:志々尾 限

ウェーブのかかったロングヘアーの快活な女性。志々尾限の10歳上。裏会実行部隊・夜行所属の妖獣使いで、志々尾の指導を担当。普段は雷蔵という妖獣が相棒。雲に乗った雷蔵の上に乗って長距離移動したり、腰につけ... 関連ページ:花島 亜十羅

裏会実行部隊・夜行所属構成員。墨村良守と同い年。肩にかかるくらいの髪を一つに束ねた華奢な体躯の少年。中性的な容姿だが「女みたい」といわれるのを極端に嫌う。雰囲気は志々尾限に似ているが、性格は社交的。妖... 関連ページ:影宮 閃

烏森の力を狙う妖の集団「黒芒楼」の戦闘員。昼間行動する時は「黒芒楼」で開発された人の皮をかぶって人間のフリをしている。本来の姿は、全身を包帯で巻き、黒い着物を着た人型の妖怪。戦闘能力の高い相手との戦闘... 関連ページ:火黒

松戸 平介

某有名大学名誉教授で異界愛好家。70歳。「加賀美」という美しい女性の助手を連れている。妖怪・魔術・呪術の研究が趣味。墨村繁守とは古くからの友人で、妖怪関連の物品の分析を請け負っている。烏森の力にも興味を持っているが、墨村繁守に嫌がられるため、手を出していない。

裏会最高幹部「十二人会」第九客。見た目は小さく、尼のような頭巾と着物をまとった人物。知識欲が旺盛で「謎食いの奥久尼」と呼ばれている。裏会奥書院の管理者で、過去の記録をいつでも呼び出すことができる。秩序... 関連ページ:奥久尼

裏会検査室特別捜査班捜査員。ウェーブのかかったショートヘアで眼鏡をかけた男性。キザな口調でよくしゃべる。雪村時音を取り調べるため、裏会検査室の断頭島へ連行したが、のちに時音の脱走に協力する。自分の血液... 関連ページ:夕上 清輝

扇 一郎

裏会最高幹部「十二人会」第八客。風を操る扇一族の出身。巨大な体躯で、頭巾をかぶって素顔を隠している。扇家の正統後継者になれなかったため、自分の能力を上げることに強い関心を持っている。烏森の力にも興味を持つ。墨村正守の幹部入りに不満を持ち、さまざまな手で陥れようとする。

扇 七郎

扇一族本家の次期当主。風使いの扇一族の歴代の正統後継者の中でも抜きん出た才能の持ち主。空を自由に飛び回り、相手をかまいたちで攻撃することができる。イケメンで社交的だが、一方で「死神」の異名をもち、家業の暗殺を淡々とこなしている。墨村良守より2つ上。

扇 六郎

扇一族本家の六男。兄弟のなかで一番能力が低く、兄にも弟にも劣等感を抱いていた。風使いで空を自由に飛び回り、相手をかまいたちで攻撃することができる。風貌からは年齢不詳だが、墨村正守より年上。

氷浦 蒼士

墨村良守と同い年。幼い頃から戦闘要員として育てられたため、表情や感情が乏しい。裏会総本部から烏森に派遣され、墨村家に居候する。自分の呪力を刀にしたり、全身を覆って防御したり、筋力強化にも使って敵と戦う。良守や墨村家の人々と暮らすうち、次第に人間らしい感情が芽生えていく。

『結界師』に登場する術者。結界術を使用することができる才能を持つ異能者で、墨村良守の家業でもある。戦闘時は、立方体の透明な結界で敵の妖怪を囲んで自由を制限し、結界ごと囲んだ部分を破壊してダメージを与え... 関連ページ:結界師

集団・組織

裏会

『結界師』に登場する団体。異能者の異能者による異能者のための自治組織。地域ごとの異能者の取りまとめ、妖怪や霊の起こす闇の事件の取り扱いを行う。異能者本人に裏会への所属の意思がなくても、居住地域の裏会の... 関連ページ:裏会

裏会実行部隊・夜行

『結界師』に登場する集団。裏会が扱う事件の調査・解決を実行するために、異能者を集めた実行部隊。主に戦闘能力、情報収集・分析能力、治癒能力のある異能者をメンバーとする。墨村正守が創設し、現在頭領として働いている。志々尾限や影宮閃はここに所属している。

場所

烏森

『結界師』に登場する墨村良守たちが守護する土地。400年前、妖怪を引き寄せてしまう体質だった烏森家の魂を地下に封じたと伝えられている。現代においても、妖怪や霊からすると、この土地に居るだけでエネルギー... 関連ページ:烏森

その他キーワード

結界術

『結界師』に登場する術。結界師の才能を持つ術師が使用することができる。墨村良守たちの使う結界術は間時守が考案した間流(はざまりゅう)。戦闘時は、立方体の透明な結界で敵の妖怪を囲んで自由を制限し、結界ご... 関連ページ:結界術

念糸

『結界師』に登場する結界術の技の一つ。手のひらから糸状の結界を出し、相手を縛ったり、空間のほころびを閉じたり、支えたりすることができる。伸縮自在。ただ標的に正確に当てるコントロール力が必要。墨村家の妖犬斑尾や雪村家の妖犬白尾の首輪の球は念糸で束ねられている。

絶界

『結界師』に登場する結界術の技の一つ。墨村良守の兄正守が使う高等な技。黒い球体状の結界で自分を包み、触れるもの全てを粉々に粉砕する。防御にも攻撃にも使える便利な技。自分以外の存在を拒絶する負の感情が発... 関連ページ:絶界

アニメ

結界師

妖の力を高める不思議な土地、烏森。この力を欲して集まる妖を退治する使命を帯びた墨村家、雪村家は、400年の間対抗しながら烏森を護ってきた。墨村家の正式継承者である墨村良守は、同じく雪村家の継承者で幼馴... 関連ページ:結界師

書誌情報

結界師 全35巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉 完結

第1巻

(2004年3月発行、 978-4091270610)

第2巻

(2004年5月発行、 978-4091270627)

第3巻

(2004年7月発行、 978-4091270634)

第4巻

(2004年10月発行、 978-4091270641)

第5巻

(2004年12月発行、 978-4091270658)

第6巻

(2005年3月発行、 978-4091270665)

第7巻

(2005年6月発行、 978-4091270672)

第8巻

(2005年8月発行、 978-4091270689)

第9巻

(2005年10月発行、 978-4091270696)

第10巻

(2006年1月発行、 978-4091270702)

第11巻

(2006年3月発行、 978-4091201072)

第12巻

(2006年6月発行、 978-4091203786)

第13巻

(2006年10月発行、 978-4091206305)

第14巻

(2006年11月発行、 978-4091206503)

第15巻

(2007年2月発行、 978-4091208781)

第16巻

(2007年4月発行、 978-4091210289)

第17巻

(2007年7月発行、 978-4091211507)

第18巻

(2007年10月発行、 978-4091212054)

第19巻

(2008年1月発行、 978-4091212658)

第20巻

(2008年4月発行、 978-4091213488)

第21巻

(2008年7月発行、 978-4091214294)

第22巻

(2008年10月発行、 978-4091214966)

第23巻

(2009年1月発行、 978-4091215659)

第24巻

(2009年4月発行、 978-4091218940)

第25巻

(2009年6月発行、 978-4091220158)

第26巻

(2009年9月発行、 978-4091217448)

第27巻

(2009年12月発行、 978-4091220271)

第28巻

(2010年2月発行、 978-4091221858)

第29巻

(2010年5月発行、 978-4091222961)

第30巻

(2010年8月発行、 978-4091225078)

第31巻

(2010年10月発行、 978-4091226266)

第32巻

(2010年12月発行、 978-4091227171)

第33巻

(2011年2月発行、 978-4091227836)

第34巻

(2011年5月発行、 978-4091228734)

第35巻

(2011年8月発行、 978-4091232168)

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