あらすじ
第1巻
さまざまな動物たちが通っている私立シートン学園で、数少ない人間の生徒である間様人(ジン)は、過去に起こった事件により、大の動物嫌いとなっていた。唯一の人間の友達である牝野瞳の存在に救われつつも、本能のままに生きるさまざまな動物や、威圧感たっぷりな恐竜の教師たちに囲まれる日常に、心が休まるヒマもない。そんな中、ジンは昼食の最中に大狼ランカと遭遇する。骨付き肉を見て目を光らせるランカを面倒に思ったジンは、食べようとしていた骨付き肉を差し出して追い払おうとする。それをなかよくなりたいとカン違いしたランカはジンを気に入り、自らの率いる群れに入るよう誘ってくる。しかし学園生活の障害になると考えたジンは一度はこれを突っぱねるものの、種族の垣根を越えた交流を望み、ボスとしての矜持を見せるランカを動物でありながら嫌いになれず、思わず群れに入ってもいいと答えてしまう。するとランカは、群れへの加入を歓迎する挨拶としてジンの口元を舐めまわし、それを目撃した瞳に誤解を与えてしまう。だが、なんとか誤解を解いたジンは、瞳と共に料理部を立ち上げて、彼女との充実した学園生活を過ごすようになるのだった。さらに調理部にランカが加入したことで、なし崩し的に彼女の群れとして認識されながらも、子守ユカリや獣生ミユビ、猫米クルミを部員として招き入れ、ジンにとっては不本意ながらも調理部は賑やかさを増していく。そんなある日、ランカの姉である大狼フェリルが、群れの仲間を従えてシートン学園を訪れる。大のシスターコンプレックスであるフェリルは、ランカの陰口を叩いていたコディアックヒグマを一掃すると、料理部の部室へと進入して、ランカとの久しぶりの再会を喜ぶ。だが、フェリルの目的は、ランカをシートン学園から実家に連れ戻すことで、ジンたちといっしょにいることを望むランカと言い争いになる。一歩も引かないランカの覚悟を知ったフェリルは、しばらく彼女の様子を見ることを決め、群れと共に料理部の部室に居座るのだった。
第2巻
私立シートン学園では、学園長である天野カロリスの意向により、シートン学園体育祭が開催されていた。学園の生徒たちは、自分の群れを優勝に導くためにやる気を漲らせていた。アジアノロバを率いる馬縞クロエや、料理部を自分の群れと考える大狼ランカも例外ではなかったが、クロエの率いる群れは定員の五人に満たないため参加できずにいた。料理部は、やる気のない間様人(ジン)や、動物たちの異様な熱気を恐れる牝野瞳、運動が苦手な子守ユカリが体育祭への参加に消極的なため、早くも優勝の可能性が薄れつつあった。それでもランカは、人一倍の意欲を見せて徒競走に参加するが、バイクを使った猿原パンに敗れてしまう。道具を使うことを反則だと主張するジンに対して、猿原は「チンパンジーとしての知能を駆使しただけ」と悪びれず、実際に失格にはならなかった。こうしてランカは得意の徒競走で敗れ、ほかの部員たちも相性の悪さから一勝もできずに午前の部は幕を閉じる。もともと勝つことに興味のないジンは、特に悔しがることなく昼食の時間を迎えていたが、そこに猿原が現れ、「人間も動物と変わらない」と挑発してくる。その言葉にジンは我慢ならず、やる気のなかった様子を一変させて料理部の優勝を目指して動き始める。そして午後の部を迎えると、50メートル崖下り走に、高い場所から飛び降りても平気な猫米クルミを参加させ、みごとに勝利を収める。最終種目では、クロエたちに協力を要請して雪山コースをアジアノロバたちに踏破させ、続く砂漠コースはジン自らが出走し、フラフラになりながらもなんとか完走する。次の湖コースでは、中学時代水泳部だった瞳が出場するはずだったが、猿原たちの策略によって中継地点に向かう前に眠らされてしまったため、本人たっての希望で獣生ミユビが出場することになる。シートン学園の生徒は、誰もがナマケモノのミユビが湖を泳ぎ切れるわけがないと考えていたが、ミユビは料理部の役に立ちたい一心で、あきらめることなく最後まで泳ぎ切る。そして最後の森林コースでは、ミユビの健闘に奮起したランカが、猿原の仕掛けた罠をものともせず走り抜き、ついにトップを独走する。こうして料理部は、シートン学園体育祭で初の優勝を飾るのだった。
第3巻
私立シートン学園の生徒会長である肌野ミキは、複数の種族の生徒が所属する料理部の存在を危険視していた。そして、部下の防衛部隊に料理部の部員たちの調査を命じ、間様人(ジン)こそが料理部の中心人物であると認識する。さらに大狼フェリルの証言から、彼が異種族ハーレムを作ろうとしているとカン違いしてしまう。しかし、牝野瞳に思いを寄せているうえに、そもそも動物が嫌いなジンは、ハーレムを作る考えなどまったくなかった。だが、面倒見のよさから斑刃イエナや愛島ユビルの悩みを解決し、これが売名行為だと考えたミキは、ますますジンに警戒心を募らせる。そして、防衛部隊の隊長であるデバ夫にジンを呼び出させるが、動物に呼び出されることなど論外と考えるジンは頑なに応じず、やむなくミキ自身が料理部の部室を訪れる。瞳と二人きりの時間を楽しんでいたジンは邪魔が入ったことにガッカリするが、ミキはそんな様子を気にすることなく、唐突に料理部の廃部を言い渡す。その横暴かつ唐突な宣言にジンと瞳は反発するが、そこに現れた大狼ランカが、ケガをしていた防衛部隊のメンバーを手厚く保護したことが判明すると、ミキはランカに免じて料理部の存続を認めるのだった。こうして廃部の危機は免れるが、瞳と二人きりの時間を邪魔されたジンは喜ぶに喜べずなかった。さらに、同性愛者である長鹿ネクに追い回されるなど、心が休まらない日々が続く。しかし、たとえ同性愛者だとしても、秘めたる思いを口にできる存在を尊敬できるという瞳に対して、ジンはとうとうその思いを打ち明ける。しかし瞳は、ジンの気持ちに応えれば、料理部の仲間たちとの関係が壊れかねないと考え、さらにジンはランカが好きだと思い込んでいることから、彼の告白を断ってしまう。
第4巻
私立シートン学園に、中国からの留学生としてパンダの苺苺(メイメイ)が転入して来る。シートン学園の生徒たちは、動物たちの中でも屈指の人気を誇るパンダに強く心を躍らせていた。学園長の天野カロリスも、メイメイが入ってきたことでシートン学園の知名度が上昇すると意気込んでいたが、メイメイは食事に好物である華桔竹がないから帰国しようとしたり、眠くなるとすぐに寝床を用意してもらわないと気が済まないという、とんでもなくわがままな性格だった。メイメイは、肌野ミキの学園案内を退屈に感じると一人で単独行動を始め、伊原シホとデートをしていた獅子野キングからタテガミを切り取ったりして、自由に見学を続ける。そんな中、メイメイは料理部の部室からおいしそうな匂いを嗅ぐと部室に侵入して、間様人(ジン)が作ったパンダ団子を発見する。そして、無断でそれを平らげるとその味に満足して、ジンにもっと作るよう催促する。しかし、ジンの動物嫌いはパンダも例外ではなく、彼女の要求を無視して部室の外に放り出してしまう。メイメイはこの態度に我慢できず、料理部の部員たちを買収し、さらに料理部をメイメイ公式サークルとして惜しみないバックアップを行うことを約束する。ジンは仕方なくメイメイにパンダ団子を作ることを了承するが、メイメイも調理に参加するよう要求する。メイメイはこの要求を当初は不満を覚えつつも、自らが調理に携わったパンダ団子が先日以上においしく感じていた。そして、自分を特別扱いせずにほかの動物たちと同じように扱うジンに強い興味を持ち、惹かれていく。また、傍若無人なジンの扱いに次第に快感を覚えるようになり、ついには自らがマゾヒストであることを自覚してしまうのだった。
第5巻
私立シートン学園の料理部では、自らを群れのボスだと主張している大狼ランカの影が薄れつつあった。さらにランカは、それを間様人に指摘され、強いショックを受ける。そして、落ち込んだままシートン学園の敷地内を放浪するが、そこでワラルーの跳袋ミドルがオオカンガルーたちに因縁をつけられているところを目撃する。ミドルは、ワラルーボクシング部を立ち上げていたが、より強力なカンガルーボクシング部の部員たちによって部室を奪われていたのだ。そこでランカは、ワラルーボクシング部とカンガルーボクシング部の代表選手で試合を行い、勝利した方が部室の使用権を得ることを提案し、ミドルたちもこれを了承する。ミドルの気概に心を打たれたランカは、興味本位でついてきた苺苺と共に、カンガルーボクシング部の代表選手である赤袋スグルに勝てるようにと思いつく限りの特訓を施す。しかし、そもそも動物としての体格差は如何ともしがたく、さらにミドルが危険な目に遭って欲しくないという理由から、ワラルーボクシング部の部員たちもその場を去ってしまう。ランカは、勝てばまたすべてがもとに戻ると主張し、ミドルも改めて赤袋に勝つために意欲を燃やす。そして当日、馬縞クロエが審判を、アジアノロバが実況を務める中、ミドルと赤袋の試合のゴングが鳴らされる。ミドルは、猫米クルミとの特訓で得た敏捷性で、赤袋の攻撃をすべて紙一重で避けて見せる。しかし、試合を長引かせることをよしとしない赤袋は、キックを交えたコンボでミドルを攻撃し、反撃の間を与えないまま勝ちを収めようとする。ミドルもまた、クロエの動きに巻き込まれて赤袋が腕の骨を折るという幸運もあったが、決定打を与えられずにいた。そこにワラルーボクシング部のメンバーが現れ、本心ではミドルといっしょにボクシングを続けたいことを告げられる。これに奮起したミドルは、尻尾の力を用いて赤袋のストレートに耐え抜き、その力を利用したカウンターを撃ち込む。この一撃で赤袋はついにダウンし、試合はミドルが勝利を収める。ミドルと赤袋は互いを認め合い、さらにランカの提案によって、ワラルーボクシング部とカンガルーボクシング部が合併され活動することになる。
第6巻
季節は夏を迎え、私立シートン学園では臨海学校が始まる。私立シー学園を訪れることになった生徒たちは、まだ見ぬ土地や、シー学園の生徒たちとの出会いに胸を躍らせる。一方、間様人(ジン)は、海だろうと動物の集う学園にまったく興味が湧かず、牝野瞳と距離を縮めることだけを考えていた。そしてシー学園に到着した生徒たちは、白海カナから歓迎のショーを披露される。しかしショーは、ただひたすらカナがバブリングを行うだけで、シートン学園の生徒たちから不評を買ってしまう。これを見た大狼ランカは、なんとかしてカナの力になってあげたいと思う。ジンも、ランカに付きまとわれたくないためにカナの相談に乗るようにそそのかし、体よくランカを追い払う。苺苺も、面白そうだとランカに助力し、二人で万人に受けるショーを演出させようと励む。カナは、シンクロ部といっしょに練習を重ねればきっと満足のいくショーを行えると考えていたが、シンクロ部の坂東ルカは、種族としての身体能力の問題と、かつていっしょにショーを行った時にうまくいかなかったことから、カナといっしょにショーに出ることを認めようとせず、カナは意気消沈する。そこに瞳から協力するようにうながされたジンが現れ、ランカの提案もあり、臨海学校の最終日に料理部の部員たちの泳ぎに合わせてカナが歌うショーを開催することが決まる。ジンは、瞳と二人きりになれないことをもどかしく思いつつもカナにアドバイスを重ねて、その結果、カナは喉ではなく前頭部にあるメロン体で歌うことを覚える。臨海学校も最終日を迎え、いよいよカナと料理部の部員たちによる合同ショーが始まる。料理部の泳ぎは、シー学園の生徒たちから見ればお世辞にも出来のいいものではなかったが、カナの歌は練習の時とは比較にならないほど透き通っており、シートン学園の生徒のみならず、シー学園の仲間たちをも魅了する。そして、ルカもカナの歌に合わせて泳ぎたいという衝動に駆られ、二人は即席ながら、息ぴったりのショーを披露する。これによって、カナとルカのわだかまりは完全に氷解し、シー学園に最高のコンビが誕生することとなる。
作風
本作『群れなせ!シートン学園』の登場人物は、間様人と牝野瞳を除いて全員動物、あるいは恐竜となっている。男性は、衣服を着て二足歩行で動物の姿に近いが、女性は、耳や尻尾以外は人間の姿に近いものとなっている。この点から、男性か女性かを判別することが容易で、本作独自のギャグとしても昇華されている。
関連作品
本作『群れなせ!シートン学園』の続編に、『群れなせ!シートン学園 -Animal Academy-』がある。物語の舞台は引き続き私立シートン学園で、間様人や牝野瞳たち料理部のメンバーが主役を務める。さらに、ネアンデルタール人の「姉谷アン」やマンモスの「氷下マン」、チスイコウモリの「吸森チイ」など、新しいキャラクターも多数登場する。また、教師である寺野ギガスの学生時代のエピソードも収録されている。
メディアミックス
TVアニメ
本作『群れなせ!シートン学園』のTVアニメ版『群れなせ!シートン学園』が、2020年1月6日から3月24日にかけて、TOKYO MX、サンテレビ、KBS京都、BS11、アニマックスで放送された。製作会社はStudio五組で、監督は博史池畠、脚本・シリーズ構成は村越繁が担当している。間様人役を石谷春貴、牝野瞳役を宮本侑芽、大狼ランカ役を木野日菜が演じている。そのほか、ナレーションを玄田哲章が、コディアックヒグマやアジアノロバなど、多くのオスの動物の声を津田健次郎が担当している。またTVアニメ版には「姉谷アン」をはじめとする、本作の続編『群れなせ!シートン学園 -Animal Academy-』のキャラクターも一部登場する。
登場人物・キャラクター
間様 人 (まざま じん)
私立シートン学園の高等部に通う人間の男子。料理部のメンバーをはじめとした、親しい仲間たちからは「ジン」と呼ばれている。幼い頃にコディアックヒグマたちにひどい目に遭わされたトラウマから、動物を強く嫌っている。そのため、シートン学園に通っている唯一の人間の女性で、思いを寄せている相手でもある牝野瞳に対しては温厚かつ紳士的に接するが、動物に対する態度は傍若無人そのもので、男女問わずぞんざいに扱っているが、動物たちからは半ばしょうがないとあきらめられている。人気アイドルの苺苺が相手であっても特別扱いをしないことから、マゾヒストの彼女からは逆にその対応を喜ばれている。ボスとしての誇りを持ち何事にも筋を通そうとする大狼ランカを嫌いになれずにいるが、これがランカに思いを寄せていると瞳からカン違いされる一因となり、困惑している。のちにあるきっかけから瞳に思いを告白したが、ランカへの誤解と料理部の部員たちとの関係を壊したくないという理由で断られる。それからは、なんとか誤解を解こうとするも、瞳がランカのことも大切に思っていることから、中々言い出せずにいる。また、動物に対する警戒心から、生態などの知識も豊富。瞳と同様に料理が得意であるほか、動物たちに対しても憎まれ口を叩きつつも面倒見がよく、間様人自身に危機が迫らない限りは、彼らの相談にも気軽に乗っている。リーダーシップや決断力にも優れ、いざという時は頼りになるため、シートン学園の教師や生徒からは料理部の中心人物として認識されている。非常に頭がよく、物事の本質を見抜く力に優れるため、無理だと感じたことは早々にあきらめてしまうドライな一面があるが、ランカの最後までやりぬこうとする様子を何度も見せられたことから、やや改善されつつある。なお、幼い頃にランカと出会っているが、ランカからは忘れられている。
牝野 瞳 (ひの ひとみ)
私立シートン学園の高等部に通う人間の女子。同じクラスの間様人(ジン)とは対照的に、誰にでも優しく接するおしとやかな性格の持ち主。シートン学園の中でも屈指の良識派で、成績優秀で無遅刻無欠席を貫くなど授業態度も非常にまじめなため、生徒会長の肌野ミキからも模範生として高い評価を受けている。学園唯一の人間の女子であることから、群れ単位で動くことが多いシートン学園では孤立することも少なくない。しかし、一人で花壇にある草花をスマートフォンで撮影して楽しむなど、一人でいることにさほどの抵抗は感じていない。また料理が大の得意で、動物嫌いのジンとも仲がよく、彼からは学園唯一の清涼剤として認識されているほか、思いを寄せられている。牝野瞳自身も、数少ない人間の友達であるジンといっしょに過ごすことを楽しく思っており、のちに料理部を立ち上げると彼を部員に誘った。ジンを気に入って群れに引き入れた大狼ランカからは、出会った時こそ嫉妬心を抱かれていたが、すぐに打ち解けてなかよくなる。さらに、子守ユカリや獣生ミユビ、猫米クルミをはじめ、個性的な生徒たちが入部するにつれて、部員たちと共に過ごす日々を心から楽しむようになる。ジンと同じく、ランカのひたむきな性格に好感を抱いており、臨海学校では瞳と二人で過ごしたいと考えるジンに対して、白海カナのショーを成功させようとするランカを手伝うよううながす。中学時代は水泳部に所属していたことから、現在も水泳が得意で、シートン学園体育祭では最終種目の湖コースに出場する予定だったが、猿原パンに薬草で眠らされたことで、辞退を余儀なくされる。料理部の女子が跳袋ミドルと赤袋スグルの試合のラウンドガールを引き受けると、部員に交じって当日着用する衣装を考えるが、何故かお色気をメインとしたものを提出してしまう。これをきっかけに、一部ではエッチな女の子と誤解されるようになり、ホシバナモグラなどから言及されては、そのたびに迷惑がっている。
大狼 ランカ (おおかみ らんか)
私立シートン学園の高等部に通うオオカミの女子。大狼フェリルの妹。フェリルから大狼ランカ自身の群れを作ることを猛反対され、ケンカ同然に家を飛び出してシートン学園に通うことになった。小柄ながら身体能力が高く、森の中や高緯度などの涼しい場所では、時速30キロの速度で24時間走り続けることもできる。また、北国育ちであるため寒さに強く、マイナス20度という環境の中でも平気で暮らすことができる。魚が大好物で、中でも鮭のルイベ漬けを好んで食べる。種族単位で群れを作る動物が多いシートン学園の中にありながら、種族にとらわれない大きな群れのボスになることを夢見ている。しかし、ほかの種族と群れたがる動物が中々存在せず、ようやく群れの候補となるウサギと出会うものの、彼女と共にコディアックヒグマの群れに因縁をつけられてしまう。そこに現れた間様人(ジン)になし崩し的に助けられ、たちまち彼を気に入り自分の群れに引き入れる。それからは、ジンを自分のつがいと認識し、彼に対して強い愛情を向けるようになるが、ジンからは、牝野瞳の誤解を招いていることもあって迷惑がられている。しかし誇り高い性格や、何事もあきらめない姿勢は高く評価されており、動物嫌いのジンからもランカだけは嫌いになれないと言われている。群れの挨拶として相手の口元を舐める癖があり、それは人間であるジンや瞳であろうと例外ではなく、瞳の口元を舐めたことで料理部に入部し、結果的に種族にとらわれない活動をすることになる。つねに料理部のボスは自分だと主張するが、ジンからは部長の瞳に従うよう釘を刺されている。困っている人や動物を放っておけず、跳袋ミドルや白海カナなど、種族の差によって打ちひしがれた動物に対しては、率先して力になろうとする。なお、幼い頃にジンと出会っており、コディアックヒグマから守ってもらったことがあったが、ランカ本人はこのことを覚えていない。
ウサギ
私立シートン学園の高等部に通うウサギの女子。校内の群れの中で暮らしているが、ある日大狼ランカから連れ出され、種族の垣根を越えた群れに入らないかと勧誘される。突然のことで戸惑っていると、ランカと共にコディアックヒグマに絡まれてしまうが、そこに現れた間様人によって助けられる。ランカからは仲間として認識され、「絶対に見捨てない」とまで言われるが、結局現在所属する群れが恋しくなったため、彼女の勧誘に応じることはなかった。その後はもとの群れの中で活動していたが、部室に現れた子守ユカリから、排泄物から栄養を摂取する同士として、時おり食事を共にしないかと持ち掛けられる。交流を申し出てくれたこと自体は嬉しかったものの、コンプレックスを刺激されたため、喜ぶに喜べなかった。
コディアックヒグマ
私立シートン学園の高等部に通うコディアックヒグマの男子。3メートルの身長と500キロの体重、犬の5倍の嗅覚と時速50キロで走る俊敏さを持つ。また、車と正面衝突した時には車の方を大破させるほどの非常に強力な体力を誇り、「最強の肉食獣」の異名を持つ。しかし、叔父であるアルクトテリウム・アングスティデンスや、恐竜である教師陣には敵わず、中でもティラノサウルスの寺野ギガスを極端に恐れている。子供の頃から素行が悪く、かつて間様人(ジン)をいじめたことで彼が動物嫌いになった原因を作った。現在は粗暴な性格がさらに荒れており、大狼ランカが種族の垣根を越えた群れを作ろうとしていることを馬鹿にしたうえに、同行していたウサギをいじめようとして、助けに入ったジンとランカを返り討ちにしてしまう。その後も学校の中でハチミツを食べるなどの狼藉を働いては寺野に追い回されるなど、不良としての生活を満喫している。のちに校内でランカに暴言を吐き、それを聞いた大狼フェリルに制裁を受ける。
寺野 ギガス (てらの ぎがす)
私立シートン学園の高等部で教師を務めるティラノサウルスの男性。年齢は123歳。間様人や牝野瞳が所属するクラスの担任で、教科は歴史を担当している。生徒を指導する際に「絶滅したいか?」と物騒な発言をする。13メートルの身長と4トンもの体重、そして8トンもの咬合(こうごう)力を持つ。さらに、足の骨格は「アークトメタターサル」と呼ばれる構造で、時速50キロ以上で走り回ることができる。シートン学園屈指の戦闘力を誇ることから、生徒の誰もが寺野ギガスに逆らうことはできない。動いているものが見えづらいと考えられているが、実際は恐竜の中でも数少ない立体視が可能な眼を持ち、さらに鼻が利くために気づかれずにやり過ごすことは困難を極める。そのため、問題児のコディアックヒグマですら、目をつけられると逃げることしかできない。一方で、植物を愛でる優しい一面があり、専用の花壇でアーケアンサスと呼ばれる花を育てている。その様子を見た大狼フェリルからあこがれを抱かれるようになるが、フェリルに思いを寄せる黒森ウルフからは嫉妬交じりの感情を向けられている。また夏休み前には、さまざまな動物が落とした大量の体毛を三角先生と共に掃除して回っている。
馬縞 クロエ (ましま くろえ)
私立シートン学園の高等部に通うシマウマの女子。大狼ランカのクラスメート。学園の中では唯一のシマウマで、馬の群れのリーダーを務める。言葉遣いこそ丁寧なものの、性格は尊大そのもので、群れの仲間ができず独りぼっちのランカを見下している。また、人間をまったく信用しておらず、ランカが間様人(ジン)を群れに引き入れたと聞いた時も、いいように利用されているだけだと信じて疑わなかった。高笑いをしては群れの仲間にすらドン引きされているが、実はシマウマが馬ではなくロバであることに強いコンプレックスを抱いており、偉そうな振る舞いもそれを隠すためのポーズに過ぎず、根は誠実で生真面目。ランカを助けようとするジンから、生徒たちの前でシマウマがロバであることを暴露されると、馬の群れにいられなくなって生徒たちの前から姿を消してしまう。失意の中でアジアノロバに声を掛けられ、彼らと共にマジック・ザ・ドンキーズで遊ぶようになり、特訓の末に世界大会のチャンピオンにまで上り詰める。さらに、意趣返しの意味も込めてジンにマジック・ザ・ドンキーズで勝負を挑んで勝利を収めると、本来の自信を取り戻す。その後、馬の群れたちから戻ってくるように誘われるが、アジアノロバたちを大切に思うことからこれを断り、ランカの計らいで料理部の部室を使わせてもらうことになる。それからは、率先して部室の掃除に励むなど、本来の努力家らしい一面を見せるようになり、料理部の部員たちからも友好的な関係を築く。特に以前に馬縞クロエ自身が見下していたランカが、自分を受け入れてくれたことには深く感謝している。一方で、ジンとは根本的に相性が悪く、現在もいがみ合うことが多い。跳袋ミドルと赤袋スグルのボクシングの試合では審判を務めたが、ゴングに気づかない二人を止めようと蹴りを放ったところ、赤袋が骨を折ってしまう。
子守 ユカリ (こもり ゆかり)
私立シートン学園の高等部に通うコアラの女子。小柄ながら尋常ならざる握力を誇り、ゴリラと腕相撲をしても圧勝するほど。人懐っこい性格で、思ったことをズバズバと口にするために相手を困惑させることも多い。嗅覚が非常に優れており、数百種類ものユーカリを匂いで嗅ぎ分けられる。一方で滑舌が悪く、「です」を「れす」と発音する。これまでユーカリの葉のみを食べて過ごしてきたが、それ以外のものが食べられないわけではない。物心つく前にユーカリ以外の幻の料理を食べた記憶があり、それを再び味わうことを願っている。そのヒントを探るべく料理部への入部を目指し、入部テストでみごとな料理の腕を披露する。しかし、子守ユカリの入部に反対していた間様人によって、入部の条件として大狼ランカが作ったランカの愛を食べさせられる。いかにも危険そうな見た目に戦慄するが、同時になぜか懐かしさを覚えて思い切って食べてみたところ、幼い頃に味わった幻の料理と瓜二つであることを確信する。同時に幻の料理の正体が、「パップ」と呼ばれる母親の排せつ物であることが判明し、しばし放心していた。幻の料理が判明してからも、居心地のよさから料理部へ留まり、やがて部の板長として認定される。仲のよいユカリの祖父が家に来た時は、料理部の活動を早めに切り上げるため、料理部の部員たちからは彼氏ができたとカン違いされてしまう。
獣生 ミユビ (ししお みゆび)
私立シートン学園の高等部に通うナマケモノの女子。頭の上にコケが生えており、お腹が空いた時に非常食として食べることがある。ほかの動物と比較して筋肉量が半分ほどしかないため、動きは時速180メートルと、カメやカブトムシより遅い。また、食事量も少なく、1日に5グラム程度しか口にしない。さらに、哺乳類でありながら変温動物であるため、獣生ミユビ本人にとって激しい運動をしたり、風呂に入るなど、体温を急激に変化させる行動を取るとすぐに死にかけてしまう。そんな度が過ぎるほどの虚弱体質でありながらスポーツが大好きで、寮にさまざまなスポーツ用品を揃えている。特に水泳が得意で、ある程度冷たい水の中なら自由に泳げる。「手の遅い大会荒らし」と呼ばれるほどカードゲームの知識が豊富で、マジック・ザ・ドンキーズの腕前は世界チャンピオンの馬縞クロエより優れている。放課後に教室の中で死にかけた際に大狼ランカとなかよくなり、彼女から新しい料理部の部員として勧誘される。間様人からは、ロクに食事もできないナマケモノを入れてもしょうがないと言われるものの、最終的に牝野瞳や子守ユカリから賛同されたことで、晴れて料理部に迎え入れられる。物静かながら心優しい性格で、仲間を思う気持ちが非常に強い。シートン学園体育祭では、猿原パンの策略により出場できなくなった瞳に代わって、料理部の役に立ちたい一心で湖コースを一人で泳ぎ切る。さらに、本能から自殺をしたがる鏡マナコに対して、粘り強く説得して自殺を思い留まらせた。
荒本先生 (あらもとせんせい)
私立シートン学園の高等部で教師を務めるアラモサウルスの男性。獣生ミユビが所属するクラスの担任をしている。恐竜ばかりの教師の中でも史上最大の大きさを誇るといわれており、身長は実に30メートルを超える。そのため、校舎の外にいても、首を伸ばすだけで3階にいる動物と会話ができる。ミユビが放課後も寮に戻らず教室に残り続けることに困り果てており、彼女を料理部の新メンバーに勧誘しようとする大狼ランカと間様人(ジン)に対して、寮に連れていくよう依頼する。ジンからは一度断られるが、「踏みつぶされたいのかな?」と脅しをかけ、否応なしに従わせた。
猫米 クルミ (ねこまい くるみ)
私立シートン学園の高等部に通うネコの女子。品種はラグドールで、中等部時代に3年連続でミスコンテストの優勝を勝ち取った美貌を誇る。おねだり上手で、喉を鳴らすことであらゆる動物に言うことを聞かせることができる。ただし、筋金入りの動物嫌いである間様人(ジン)にはまったく通用しない。活動中の料理部にいつの間にか現れて、見学をしたいと申し出て、その愛らしさと料理を作る手際のよさから、牝野瞳や子守ユカリからさっそく気に入られ、大狼ランカからは自分よりもボスっぽいという理由から警戒される。そして、料理部を解散してお昼寝部を作ろうと言い出し、これを断られるとプライドを傷つけられたとして立ち去ろうとする。しかし、尻尾の動きを見抜いたジンから本当は寂しがり屋であることを指摘され、改めて料理部の一員として迎えられる。ただし、ボスであることにこだわるランカからは、その後も時々勝負に付き合わされる。料理部に入部したあとは、部室を縄張りの一種である「ホームテリトリー」と認識するようになるが、新入部員の苺苺が現れると、彼女をよそ者と見なして強い敵愾心を抱いてしまう。しかし、料理部に対する思い入れの深さを聞くことで心を許し、やがて友達になった。
園芸部長 (えんげいぶちょう)
私立シートン学園の高等部に通うイノシシの男子。園芸部の部長を務めており、料理部に食材となる野菜をお裾分けしている。体格に優れている一方で、視力が極端に悪いため、部員の仲間たちに収穫した野菜を盗まれていることにまったく気づいていない。料理部の部員たちが野菜を盗んだと疑い、提供を取りやめようとするが、猫米クルミが喉を鳴らしたところ、部員たちが盗んだ野菜を提供しようとしたことで彼らの犯行に気づく。そして、部員たちにきついお仕置きを行い、料理部に対しては引き続き野菜を提供するようになった。
大狼 フェリル (おおかみ ふぇりる)
オオカミの群れを率いている女性。大狼ランカの姉。極端なまでのシスターコンプレックスで、つねにランカのことを考えている。その入れ込みようは、自分の率いる群れにランカ以外のメスは要らないと考えるほどで、この影響から、大狼フェリルの群れには女性が一人もいない。また、ランカに少しでも危害を加えようとしている動物がいれば、迷わず制裁を加える。かつて北国の雪山で家族と共に暮らしており、特に気温が低い時は身につけている防寒着をランカに着せて、フェリル自身は薄着で我慢することもあった。その結果、ベルクマンの法則によって身体が加速度的に大きくなり、現在は身長が4メートルを超えている。かつては、身体の大きさに対して密かにコンプレックスを抱いていたが、間様人からランカのために大きくなったことを指摘されると、一転してプライドを持つようになる。ランカとは対照的に力が極めて強く、一人で複数の肉食獣を軽々と蹴散らせるほど。その力強さと迫力から、黒森ウルフをはじめ群れのオオカミから強く慕われている。好みのタイプは強いオスだが、フェリル自身より強い生物と長らく出会ったことがなかった。しかし、ランカの様子を見るために私立シートン学園を訪れた際、明らかに強そうな寺野ギガスと出会い、今までにないときめきを覚える。さらに彼が花を愛でていることを知ると、共に話し込むことが多くなり、今までとは一転して女性らしい仕草を見せるようになった。
黒森 ウルフ (くろもり うるふ)
シンリンオオカミの青年。大狼フェリルの群れに所属している。年齢は20歳だが、留年を繰り返しているため、現在も高校生のままでいる。子供の頃からケンカに明け暮れていたが、15歳の時にうっかり大狼ランカとぶつかってしまい、それを見ていたフェリルに一撃で倒され、その強さに惚れこむようになる。それからは、フェリルの率いる群れに加入し、彼女の右腕として活躍している。そして、フェリルがランカの様子を見るために私立シートン学園に残ることを決めると、彼女に付き従って滞在する。フェリルがランカを気にするあまりシートン学園に赴いた際も、仲間を率いて彼女に同行した。厳つい見た目に違わず腕っぷしが強く、フェリル以外の狼はもちろん、コディアックヒグマにすら余裕で勝利するほど。やがてフェリルに思いを寄せるようになるが、フェリルはほぼランカのことしか考えていないため、黒森ウルフの気持ちについてはまったく気づかれていない。さらに、フェリルが寺野ギガスに魅力を感じるようになってからは、危機感を覚えつつも、フェリルが幸せならそれでいいと半ばあきらめかけてしまう。一方で、群れのオオカミたちからは慕われており、フェリルとうまくいくように応援されている。のちに、偶然知り合った穴蜜テルに懐かれて、彼女を舎弟の一人としてかわいがるようになる。また、かつて倒したコディアックヒグマが、アルクトテリウム・アングスティデンスと共に復讐を試みた時は、テルの身体を武器として利用したラーテルハンマーを振るい、コディアックヒグマごと返り討ちにする。
アジアノロバ
私立シートン学園の高等部に通うアジアノロバの二人組の男子。マジック・ザ・ドンキーズを好んでおり、よく二人で練習に明け暮れている。華々しいウマの群れを遠巻きに見ては羨ましがっていたが、ある時、間様人(ジン)によって馬縞クロエがウマではなくロバの一種であることが明るみにされた際に親近感を覚え、ウマの群れに戻れないまま失意に明け暮れる彼女に声を掛け、共にマジック・ザ・ドンキーズで遊ぶようにうながす。その結果、クロエを瞬く間にマジック・ザ・ドンキーズの魅力にはまらせ、ついには彼女を世界大会のチャンピオンまで押し上げることに成功する。のちに、大狼ランカの厚意によって料理部の部室を使わせてもらえることになり、マジック・ザ・ドンキーズの練習のために使用していたが、あまりにうるさいために、料理部の部員たちから苦情を出されていた。また、シートン学園体育祭では、クロエと共に実況に勤しんでいたが、ジンの依頼によって最終種目のレースで雪山コースを走らされることになる。そして、チンパンジーの群れによる妨害にも屈せず走り切り、料理部が優勝する一助となる。さらに、走り切った直後に実況に戻るというタフネスぶりも見せつけた。また、跳袋ミドルと赤袋スグルのボクシングの試合でも実況を務め、解説の風風や特別ゲストのサムさんと共に、キレのある会話の応酬で試合を盛り上げた。
天野 カロリス (あまの かろりす)
私立シートン学園の高等部の学園長を務めるアノマロカリスの男性。水棲生物であることからつねに水槽の中で生活しており、生徒たちの前に出る際には、ほかの教師に水槽ごと運んでもらっている。あらゆる動物が生活するために何が必要かを考えており、勉学に励むあまり運動がおろそかになることを懸念してシートン学園体育祭を開催する。また、中国政府と交渉して、中国で英雄的な人気を誇るパンダの苺苺を留学させるなど、学園の拡張にも力を入れている。
猿原 パン (さるはら ぱん)
私立シートン学園の高等部に通うチンパンジーの女子。バイクやジェットスキー、スノーモービルなど、あらゆる道具を使いこなすことから、群れのチンパンジーたちのみならず、シートン学園の動物たちから一目置かれている。過程より結果を重視するタイプで、勝つためならいかなる卑怯な手段もいとわず、味方のチンパンジーたちからも恐れられている。間様人(ジン)に匹敵する傲慢な性格の持ち主で、チンパンジー以外の動物を見下している。中でも人間が特に気に入らず、シートン学園体育祭では、ジンを散々に煽り立てたうえに幼体成熟の例を挙げて、人間がチンパンジーより劣っていると言い放つ。これが動物嫌いのジンの逆鱗に触れ、やる気のなかった彼が本気で優勝を狙うきっかけを作った。また用心深いところがあり、猿原パン自身やチンパンジーが優れていると思っているものの、対戦相手を過小評価することはない。そのため、午後になって追い上げてきた料理部を警戒し、最終種目の湖コースに出るはずの牝野瞳を催眠効果のある薬草を使って眠らせて、出場できなくなるように仕向けた。しかし、瞳の代わりに出場した獣生ミユビが予想外の活躍を見せたことで目論見が外れ、ラストの森林コースで大狼ランカに追いつかれる。さらにスキを突いてスタンガンで妨害しようとするも失敗し、料理部に優勝を奪われる結果となった。
獅子野 キング (ししの きんぐ)
私立シートン学園の高等部に通うライオンの男子。かつて強い叔父がいたが、キリンとの戦いで命を落としている。誇り高い性格で、正々堂々とした戦いを好む。また、立派なたてがみを持つことからメスのライオンから多大な人気があり、巨大ハーレムを作り上げた。ライオンの生態から、狩りなどはハーレムのメスたちに任せている。ある日、陸上部で練習する伊原シホに一目惚れをしてしまい、なんとかして彼女となかよくなりたいと願うようになる。そんな中、間様人(ジン)と大狼ランカが異種族のカップルになったとの噂を聞き付け、異種族であるシホに近づくためにはどうすればいいか、ジンに尋ねる。当初、動物嫌いであるジンからは、特に肉食獣と草食獣では話すきっかけすら与えられないだろうとすげなくあしらわれる。そこに獅子野キングが率いるハーレムを横取りしようと目論むライオンが現れ、シホを人質にハーレムの座から退くように強要され、さらにオスのライオンの群れから暴行を受ける。しかし、そのことでハーレムやライオンとしての誇りよりもシホの方が大切だと気づき、自らたてがみを切り落としてハーレムから去った。すると、助けてくれたお礼としてシホから声を掛けられ、交流を始めることになる。その後、種族としての違いや、シホが発情期を迎えていないことなどが理由で、しばらくのあいだ付かず離れずの状態が続いていたが、徐々に関係が進展していく。また、まっすぐな性格や強敵にも臆せず立ち向かう態度が斑刃イエナから気に入られ、臨海学校では彼女と共に、シホを付け狙うオタリアに立ち向かった。
桑野先生 (くわのせんせい)
私立シートン学園の高等部で保険医を務めるイグアノドンの男性。校則違反者を追いかけ回す寺野ギガスや荒本先生と比べると穏やかな性格で、物騒なことを言ったり、生徒を脅すようなことはしない。シートン学園体育祭で、砂漠コースを走り続けて倒れた間様人や、猿原パンに従うチンパンジーに眠り薬を嗅がされた牝野瞳を処置する時も、終始和やかな様子を見せていた。しかし、体育祭の特別プログラムである教職員・保護者による棒倒しに参加した際は、いつもの穏やかな性格がウソのように暴れ回った。
伊原 シホ (いはら しほ)
私立シートン学園の高等部に通うインパラの女子。陸上部に所属している。やや控えめな性格ながら努力家で、群れの仲間からも好かれている。跳躍力に優れており、高さ3メートル、幅12メートルもの距離を飛び越えることができる。練習中に獅子野キングに一目惚れされるが、話しかけるために近づいてきたキングを本能的に恐れ、思わずその場から逃げ出す。さらに、キングからハーレムを奪い取ろうと目論むライオンに囚われて人質にされてしまう。しかし、ハーレムより伊原シホの方が大切だと言い切るキングが自らハーレムを去ることを知り、彼に惹かれるようになる。それからは、友達以上恋人未満といった関係となり、互いに意識し合っているものの、しばらくのあいだすれ違いからなかなか発展しなかった。しかし、臨海学校でオタリアに襲われた際に、自分の身を顧みず斑刃イエナと共に助けにきてくれたキングのひたむきな様子に心を打たれ、急接近を果たす。
デバ夫 (でばお)
私立シートン学園の高等部に通うハダカデバネズミの男子。生徒会長である肌野ミキの率いる群れに所属しており、防衛部隊の隊長を務めている。勤勉な性格でミキに対する忠誠心も高く、言いつけに従ってシートン学園体育祭の会場設営や、ミキが危険視する料理部の偵察など、さまざまな任務を部下と共に遂行している。また、ミキが見当はずれな発言をした際は異議を申し立てたり、助けてくれた大狼ランカのために料理部の廃部を思い留まらせようとするなど、良識のある一面を見せる。しかし有能な一方で運が非常に悪く、ランカといっしょに二人三脚の練習を行う途中で、倒れ込んできた獣生ミユビに押しつぶされる災難に見舞われる。
肌野 ミキ (はだの みき)
私立シートン学園の高等部で生徒会長を務めるハダカデバネズミの女子。極めて有能に職務をこなし、部下の防衛部隊からの忠誠心が高いほか、肌野ミキ自身も群れの仲間を大切に思っている。裸の状態が当たり前の種族であることから、衣服を着れば着るほど恥ずかしさを覚えるという、奇妙な性質を持つ。そのため、全校集会などの公の場では、生徒会長としての立場を崩さないために渋々ながら制服を着ているが、プライベートの場では下着姿で行動することが多い。また、本来なら下着すら脱ぎ去りたいと考えているが、それは地上のモラルや本作『群れなせ!シートン学園』の編集部が許さないだろうということで、なんとか思い留まっている。違う種類の動物同士で群れを作ることを不自然であるという理由で嫌っており、生徒会長の方針として「不自然異種族交友」の廃止を掲げる。しかし、シートン学園体育祭で優勝した料理部が、人間を含めた複数の種類の動物で構成されていることを知って危機感を抱き、部下のデバ夫と、彼の率いる防衛部隊に対して料理部のメンバーたちの調査を命じる。その結果、間様人が異種族ハーレムを作ろうとしているとカン違いし、彼に変態の烙印を押して一方的に危険視するようになる。ついには自ら料理部の部室に出向き、ロクに説明もしないまま、料理部の廃部を言い渡そうとする。しかし、大狼ランカが猫米クルミに襲われていた防衛部隊を助けていたことを知ると、彼女に免じて廃部を取りやめる。なお、生徒会長に就任する前はさらに衣服に抵抗を持っており、デバ夫たちの提案で後ろ半分だけ裸になって演説を行うことを考えたが、後ろから見ていた寺野ギガスに気づかれ、禁止されてしまう。
斑刃 イエナ (まだらば いえな)
私立シートン学園の高等部に通うハイエナの女子。兄と漫画家の父親がおり、母親は既に他界している。ケンカがめっぽう強く、男気あふれる性格から同族のハイエナの人気を集めている。死んだ母親のためにも強いハイエナになることを志し、小さい頃から兄のお下がりの服ばかり着ており、周囲からはオスらしく振る舞っていると思われていた。しかし斑刃イエナ自身は、自分を本当にオスだと長らく思い込んでおり、周囲からメスだと指摘されてもまったく聞く耳を持つことなく現在に至る。このカン違いは、ハイエナの生殖器周りがオスとメスで酷似していることが原因だったが、間様人からそのことを指摘されると家族に真相を尋ね、ようやく自分がメスだということに気づく。それからは、メスらしく振る舞うことも考えて、理想的なメスの牝野瞳を観察し、彼女を真似ようと努力を重ねる。しかし、うまくいかないままの状態で悩んでいたが、苺苺から「オスでもメスでも、好きなように生きるべき」と諭され、改めてオスらしく振る舞うことを決意する。ハイエナなのでライオンとは相性がよくなかったが、臨海学校で伊原シホを守るためにオタリアに挑みかかる獅子野キングを見た時は、その漢気(おとこぎ)に感じ入って彼に助太刀した。
愛島 ユビル (あいしま ゆびる)
私立シートン学園の高等部に通うアイアイの男子。間様人(ジン)や牝野瞳と同じクラスで、黒魔術部に所属している。手先の形状が禍々(まがまが)しく、かつての生息地では「悪魔の使い」と揶揄(やゆ)されて忌み嫌われていたため、そのことにコンプレックスを抱いている。陰気な性格で、クラスではほかの群れの仲間がいないこともあって、孤立している。しかし、体育教師の命令でしぶしぶながらも自分とチームを組んでくれたうえに、コンプレックスになっている手をためらいなく握ってくれたことから、ジンに好感を抱くようになる。恩返しをするために、テストの答えが書かれた紙をジンの机に投げ込むが、運悪く寺野ギガスに見つかり、ジンがカンニングの容疑を着せられ、逆に彼を怒らせてしまう。それでも、お礼をしたかったことを打ち明けると誤解も解け、オスでありながらジンに愛情を抱くようになる。ただし、人間以外の種族では同性愛も珍しくないため、ジン以外からは特に問題視されておらず、料理部の部員たちからは好意的に見られている。また長鹿ネクと異なり、表立って彼に対して好意を示してはいないため、ジンからもぞんざいに扱われているものの、危険視はされていない。ジンの貞操を狙っているネクを敵視しており、ネクの毒牙からジンを守ろうとすることもあるが、あまりに力の差がありすぎて、ネクからは存在そのものに気づかれていない。
長鹿 キリ (ながしか きり)
私立シートン学園の高等部に通うキリンの女子。長鹿ネクの妹。いわゆる「腐女子」で、オスによる同性愛に対して多大な興味を抱いている。ネクが男女問わずモテることから、彼をうまく利用してオス同士の恋愛を観察してはその様子を楽しんでいた。そんな中、ネクが間様人(ジン)に一目惚れをしたことを面白がり、彼をうまく煽ってネクに近づけようと目論む。しかし、人間であるゆえにまず同性愛という概念に抵抗があるうえ、そもそも動物に対して抵抗のあるジンからは、非常に迷惑がられている。なお、ふだんは強気なネクが、傍若無人な性格であるジンの前ではおとなしくなっていることを不満に思っている。
長鹿 ネク (ながしか ねく)
私立シートン学園の高等部に通うキリンの男子。長鹿キリの兄。草食動物でありながら、並の肉食動物をはるかに上回る体軀と身体能力を誇り、ケンカ慣れしている獅子野キングからも警戒されているほど。また、身長が高いためによく落雷に遭うが、雷に身を貫かれても平然としている。社交性が高く、表向きは紳士的な性格であることから、妹のキリをはじめ多くの動物たちから好かれている。男女問わずモテるが、長鹿ネク自身はオス同士の恋愛を好んでおり、やや強引ながらも包容力にあふれた立ち振る舞いで、多くのオスを夢中にさせている。また同性愛を好むキリからは、その強引なやり方を尊敬されており、彼女の妄想を助長する一助となっている。ある時、間様人(ジン)に一目惚れをしてしまい、彼の傍若無人な態度に惹かれたことでおとなしい性格へと変貌する。しかし、思いを遂げようとする欲求が強すぎる余り、浴室で彼に迫ろうとする。そればかりか、なんら言葉を飾ることなく「性欲」と言い切り、ジンをドン引きさせる。さらに、料理部の部員たちは同性愛が当たり前のため、まったく問題視されておらず、ますますジンを苦悩させる結果となる。しかし同性同士でありつつも、自らの好意を臆せず告げたため牝野瞳の共感を誘い、ジンが瞳に思いを打ち明けるきっかけとなる。
ミッちゃん
子守ユカリの中学時代の親友で、フクロミツスイの少女。哺乳類の中で唯一、花の蜜と果汁のみを糧として生きている。ユーカリしか食べられないことに不満を抱くユカリとは対照的に、蜜ばかりの生活になんら不自由はないと言い切る。ユーカリ以外の食べ物を欲し、さまざまな動物が通う私立シートン学園に入りたいと語るユカリに、コアラでありながら自分となかよくなれたから、きっとシートン学園でもうまくやっていけると優しく背中を押して、彼女に入学を決断させた。
ズキンアザラシ
私立シートン学園の高等部に通うズキンアザラシの男子。哺乳類から本能的にかわいいと思われる「ベビーシェマ」と呼ばれる、外見的な特徴を持つ。授乳期間が極端に短く、生まれてからわずか4日で独り立ちする。それからは、ほかの動物から母乳をもらって生きることを余儀なくされるため、女性の胸に並みならぬ執着を見せるようになる。料理部には胸の大きな女子が多くいることを聞き付けて部室に進入するが、そこに居合わせた間様人(ジン)に、その目的を看破される。しかしそれでも図太く居座り、持ち前の愛らしい外見を活かして女子たちから注目を浴びる。のちにジンの策略によってその正体が露見するが、素直に反省して寂しかったことを告白すると、料理部のメンバーからは改めて受け入れられた。
穴蜜 テル (あなみつ てる)
私立シートン学園の高等部に通うラーテルの女子。シートン学園随一の怖いもの知らずな性格で、ライオンやハイエナの牙が通らないほどの分厚い毛皮に覆われていることから、鉄壁の防御を誇る。そのため、どんな強力な打撃を受けてもほとんど痛みを感じず、黒森ウルフから殴られた時も平然としていた。ウルフの真意を知らないまま、構ってもらえたと誤解し、彼に親愛の情を覚える。そして、ウルフと同じように大狼フェリルの群れに入れてもらおうとするが、大狼ランカ以外のメスを入れるつもりがない彼女から断られてしまう。すると、ランカを倒せば群れに入れてもらえるとカン違いし、お尻の近くにある嗅腺に溜めていた強烈な臭いのする液体を振りまき、彼女を気絶させる。これがフェリルの逆鱗に触れて一触即発の状態になるが、目を覚ましたランカが、穴蜜テルがフェリルの群れに入ったとカン違いして喜んだため、ランカの気を引きたいフェリルから群れへの加入を許可される。それからは、ウルフと共に行動をすることが多くなり、彼がコディアックヒグマとアルクトテリウム・アングスティデンスに襲撃された時は、自らの身体を武器にしたラーテルハンマーを使うようにうながし、撃退の手助けとなった。
苺苺 (めいめい)
中国から私立シートン学園の高等部に編入してきたパンダの女子。中国では英雄的な人気を誇っており、実に13億匹ものファンがいる。その人気から極めて甘やかされて育ったため、非常にわがままな性格をしている。シートン学園に入ってからもその人気とわがままぶりは健在で、学園が用意した竹が好物の「華桔竹」ではないと文句を言ったり、学園長の天野カロリスとの面談中に眠くなったから寝ようとするなど、やりたい放題している。そんな中、料理部から漂うおいしそうな匂いに誘われて、堂々と部室に進入した。そして、パンダ団子を勝手に食べた挙句、料理部の部員を買収してさらにパンダ団子を作らせようとした。しかし、動物嫌いの間様人からぞんざいに扱われたことで、自分でも気づかなかったマゾヒスティックな感覚を刺激され、今までにない感覚を覚える。そして、その感覚に惹かれるままに料理部に入部し、部員の仲間たちからは「メイメイ」と呼ばれるようになる。それからは、わがままな性格がすっかり鳴りを潜めて、猫米クルミとなかよくなれるよう辛抱強く行動したり、鏡マナコの自殺癖を止めようとしたりと、料理部のメンバーや学園の動物たちに溶け込むため努力を続けている。その甲斐もあり、すっかり料理部の一員として認められると共に、学園内からさらなる人気を獲得した。しかし、臨海学校から帰る際に中国政府から連絡を受け、シートン学園の留学を終えて中国に戻るよう要請されてしまう。ふだんは日本語をしゃべるが、興奮した時やびっくりした時など、感情が昂ぶると中国語で感嘆する癖がある。
風風 (ふぉんふぉん)
中国から私立シートン学園の高等部に編入してきたレッサーパンダの男子。苺苺(メイメイ)のマネージャー役を務めており、わがままな彼女がシートン学園でトラブルを起こさないように監視している。レッサーパンダは蔑称に当たるため、風風自身は「レッドパンダ」と呼んで欲しがっているが、中々定着しない。メイメイの性格や習性を熟知していることから、彼女からも一定の信頼を得ている。メイメイ同様に愛らしい外見をしているが、中国政府とメイメイとの軋轢に悩まされてきたため、ドライな一面を見せることも少なくない。また、嫉妬深いところがあり、獅子野キングと伊原シホのデートを目撃した時は、苛立ちから立ち上がって両手を大きく広げる威嚇のポーズを見せつけた。しかし、そのポーズ自体があまりにかわいいため、苛立っていることが誰にも気づかれなかった。跳袋ミドルと赤袋スグルのボクシングの試合では解説を務め、実況のアジアノロバや特別ゲストのサムさんと共に試合を大いに盛り上げた。
鏡 マナコ (かがみ まなこ)
私立シートン学園の高等部に通うメガネザルの女子。跳躍力に優れており、自らの身長の25倍の距離を飛ぶことができる。非常に繊細な性格で、ストレスを感じたり羞恥心を強く抱くと、所構わず頭を打ち付けて自殺しようとするやっかいな癖を持つ。料理部の前を通りがかった苺苺(メイメイ)を見るなり、自殺しようとしたために当初は彼女のわがままな性格がストレスのもとになったと思われていた。しかし実際は彼女の大ファンで、ストレスを感じていた訳ではなく、嬉しさと恥ずかしさによる行動だったことがのちに判明する。間様人にわがままだけな性格ではないと見返そうとするメイメイから、友達になろうと働きかけられるが、本能には抗えずに何度も自殺を試みようとした。しかし、メイメイが辛抱強く接してくれたことで、彼女には恥ずかしさを感じないようになる。のちにメイメイによって料理部の部室に連れられ、部員からも温かく迎えられたことで幸せを感じるが、皮肉にも嬉しすぎるあまり、床に頭を打ち付けて自殺しようと目論む。
跳袋 ミドル (とぶくろ みどる)
私立シートン学園の高等部に通うワラルーの男子。ワラルーボクシング部の部長を務めており、ワラルーの仲間と共に部室で日々練習に明け暮れている。強靭なアキレス腱と太い尻尾を持ち、これを活用することで長時間跳躍し続けることができる。また、パンチ力だけではなく脚力も卓越しており、尻尾で身体を支えつつ繰り出すキックは、並の大型動物をも上回る威力を発揮する。前向きで勝気な性格で、ワラルーでも努力すれば大きなカンガルーにも勝てると信じている。身体が小さいにもかかわらず、ボクシング部の部長としての誇りを持っており、似た境遇の大狼ランカとは何かと気が合う。ある時、練習中にカンガルーボクシング部の部員たちが押し掛け、弱いワラルーより強いカンガルーこそが部室を使うべきだと難癖をつけられて部室を奪われてしまう。そして後日、部室を取り戻すために単身乗り込もうとするも、そこに現れたランカからワラルーボクシング部とカンガルーボクシング部の部長同士で試合を行い、勝った方が部室の使用権を獲得するのはどうかと提案される。当初はカンガルーボクシング部の赤袋スグルからも見下されており、パンチのみで勝利すると宣言される。さらに、ワラルーボクシング部の部員たちからも、跳袋ミドルが負けても傷つかないようにと、部活をやめると告げられる。そして、ランカや苺苺と特訓を重ね、万全の状態で試合に臨む。試合本戦では、赤袋が宣言に反して蹴りを主体とした攻撃を繰り出されることで危機に陥るが、ワラルーボクシング部の部員たちからの声援で奮起。さらに、トラブルで赤袋の腕が骨折するという幸運に恵まれ、尻尾の反動を活かしたアッパーによってみごと勝利を収める。そして試合終了後に、ランカの仲介によってワラルーボクシング部とカンガルーボクシング部を合併することに同意する。さらに赤袋からは、健闘を称えて「ボス」と呼ばれるようになる。
赤袋 スグル (あかぶくろ すぐる)
私立シートン学園の高等部に通うアカカンガルーの男子。カンガルーボクシング部の部長を務めており、ワラルーやカンガルーを問わず、同族を「ルー」と呼ぶ癖がある。部員たちとは比較にならないほどの逞しい身体つきを誇り、自らの身体に絶大な自信を持ち、筋肉の動きから過去の出来事を思い出したり、物事の先を読んだりすることができる。また、鍛え抜かれた身体から繰り出される打撃は、壁を破壊するほどの威力を誇る。仲間思いな性格で、カンガルーボクシング部の部員たちからも慕われている。大狼ランカの提案によって、部室を賭けてワラルーボクシング部とカンガルーボクシング部の試合が行われることを知ると、自ら代表となりパンチだけで相手することを宣言する。試合では、宣言通りパンチのみで闘いを挑むが跳袋ミドルの思わぬ敏捷性に翻弄され、宣言を反故にして蹴りを織り交ぜた戦いぶりを見せる。しかし、大歓声でゴングの音がかき消され、レフェリーの馬縞クロエが二人を止めるために繰り出した蹴りに巻き込まれ、腕の骨を折ってしまう。それでも圧倒的な体格差を覆すまでには至らず、徐々に追い詰めていくが、ワラルーボクシング部の声援に奮起したミドルの渾身の一撃がクリーンヒットして敗れてしまう。試合後も気力を振り絞って立ち上がり、カンガルーボクシング部の部員のためにもあきらめるわけにはいかないと訴え、ミドルに再度対戦するよう求める。しかし、ランカからワラルーボクシング部とカンガルーボクシング部を合併してはどうかと提案され、ミドルと共に同意した。さらにミドルの健闘を称えて、彼を「ボス」と呼ぶようになる。
サムさん
私立シートン学園の高等部に通うオポッサムの男子。オポッサムは、有胎盤類の出現に脅かされながらも、現在も生息域を広げている唯一の有袋類ということもあり、子守ユカリなどの有袋類からはカリスマのように崇められている。ストレスを感じると死んだふりをして、死臭まで放つ。跳袋ミドルと赤袋スグルの試合に特別ゲストとして招かれ、実況のアジアノロバや解説の風風から試合の盛り上げを期待されていた。しかし、「妊娠期間がたったの12日」「オポッサムの種類は有袋類最多の60種類」など、試合のことをそっちのけでオポッサムがどれだけ凄いかを延々と語り続け、アジアノロバを驚かせるものの、試合の盛り上げにはまったく寄与せずに終わる。そんな中、ミドルと赤袋の応酬からは目を離さずにいると、ミドルが打撃を食らってボロボロになった様子を目の当たりにし、痛々しさによってストレスを感じ、死んだふりをしてしまう。
ユカリの祖父 (ゆかりのそふ)
子守ユカリの祖父にあたるディプロトドンの男性。身長はユカリの2倍近くもある。サングラスをかけている時は渋い顔つきながら、外すと優しげな目元があらわになる。ユカリとは仲がよく、彼女の家に滞在しているあいだは、自家用車を使って私立シートン学園への送迎を行っている。牝野瞳や大狼ランカ、苺苺(メイメイ)から年の離れたユカリの彼氏と疑われたことで、ユカリの祖父自身が知らないところであらぬ噂を立てられ、メイメイからは「キモい」と言われてしまう。だが、それを誤解だと考えた間様人の尽力により、ユカリの口から改めて素性が語られ、誤解を解くことに成功する。料理部についてはユカリからいつも聞いており、ユカリとなかよくしてくれている彼らに感謝の気持ちを抱いていることを明かす。さらに、いつもユカリが世話になっているお礼に瞳とメイメイを夕食へと招待するが、メニューの内容はユカリの好むゲテモノばかりであった。
アルクトテリウム・アングスティデンス
コディアックヒグマの叔父のクマ。かつて私立シートン学園に通っていた。しかし、相変わらず小さい学校だと発言するなど、明らかにシートン学園を見下している。史上最大最強のクマで、3.5メートルの身長と1.5トンの体重を誇る。手足が長く動きも俊敏で、コディアックヒグマとは比較にならないほどの戦闘力を持つ。大狼フェリルと彼女の率いる群れたちによって幾度も敗北を重ねたコディアックヒグマから、メンツを保つために呼び出され、共にフェリルを倒そうと目論む。そして、コディアックヒグマと共にシートン学園に侵入するが、フェリルの手を煩わせたくないと考える黒森ウルフに行く手を遮られる。コディアックヒグマをあしらうほどの力を持つウルフを苦戦させ、一度は膝をつかせる。しかし、救援に訪れた穴蜜テルを利用したラーテルハンマーを振るわれ、コディアックヒグマもろともノックダウンされる。
三角先生 (みかどせんせい)
私立シートン学園の高等部で教師を務めるトリケラトプスの男性。寺野ギガスや荒本先生に比べると小柄な体型ながら、2本の鋭い角を備えて迫力は決して劣らない。シートン学園の学生寮を管理する役割も担っており、天候の変化などが不安視される場合は、その対策に駆り出されることもある。大雨が降り、肌野ミキやデバ夫、ホシバナモグラなど、地下に住処のある生徒たちの部屋が水没した際は、地上に住む生徒とルームシェアをすることを求めた。一部の生徒からは反対され、「家に帰せばいいだろう」と反発されるが、鋭い角で「串刺しの方がいいか?」と脅し、有無を言わせず従わせた。
ホシバナモグラ
私立シートン学園の高等部に通うホシバナモグラの女子。ふだんは地下の寮で暮らしているが、大雨によって寮が水没したため、牝野瞳の部屋でルームシェアすることになる。そして、瞳の案内で寮に向かうが、その途中で瞳がエッチな女性だと聞いていたことを明かし、全力で否定される。ルームシェア開始当初は瞳と二人で生活するが、間様人とルームシェアをしていた肌野ミキがトラブルを起こしたため瞳に引き取られ、改めて三人でしばらく暮らすことになる。さらに、ミキの羞恥心を刺激しないように脱衣せざるを得なくなるなど、災難に見舞われる。
白海 カナ (しらうみ かな)
私立シー学園に通っているシロイルカの女子。坂東ルカの後輩。つねに笑っているような表情をしていることから、見た目からは感情が読み取りづらい。頭部にメロン体と呼ばれる器官を備えており、感動するとその箇所が震えるため、頭から潮を吹く。また、鼻の奥で発生させた音をメロン体に収束することで、「海のカナリア」と呼ばれるほどの美しい声で歌うことができる。いつも笑っているような顔つきで、落ち込んでる時もその表情を崩さないため、度々誤解されている。シー学園に入学する際に、ルカをはじめとしたシンクロ部のショーを見て、たちまちその虜になる。それからはルカに強くあこがれるようになり、彼女のように芸を披露して周囲を喜ばせたいと願うようになるが、ルカからシンクロ部への入部を断られてしまう。私立シートン学園の生徒たちが臨海学校のためにシー学園に訪れると、彼らを歓迎するためにバブリングを用いた芸を披露する。しかし、あまりに地味だったためにブーイングを浴びせられる。様子が気になった大狼ランカと苺苺から、再度ショーを行うようにうながされるが、そこに現れたルカから「シロイルカであるカナは、生態からしてバンドウイルカについていくことは不可能」と断言され、笑顔のまま落ち込んでしまう。しかし、牝野瞳にうながされた間様人(ジン)から、泳ぎでは到底バンドウイルカに敵わないから、シロイルカの持ち味である歌で対抗するべきと助言を受ける。そして、臨海学校の最終日にジンを除いた料理部のメンバーが白海カナの歌に合わせた泳ぐショーの開催を計画し、特訓に明け暮れる。当初はメロン体を利用して歌うことを知らなかったため、酷い歌声だった。しかし、ジンからアドバイスを受けることで歌い方のコツをつかみ、「海のカナリア」の呼び名に恥じない歌唱力を身につける。そして迎えたショーの本番で、料理部の泳ぎに合わせて歌を披露すると、その綺麗な歌声でルカの心をつかみ、彼女からシンクロ部への入部を認められる。
坂東 ルカ (ばんどう るか)
私立シー学園に通うバンドウイルカの女子。白海カナの先輩。半球睡眠と呼ばれる睡眠法を取ることで、24時間休まずに行動することができる。主に左脳で考えて行動しており、凛々しくも厳しい態度を取ることが多い。一方、半球睡眠で左脳のみが眠っている時は、ふだんの性格がウソのように泣き虫な性格となる。シンクロ部の部長を務めており、シー学園でもトップレベルの泳ぎを見せることから「泳ぎの達人」と呼ばれるほか、学園のアイドルとして広く慕われている。カナも例外ではなく、彼女がシー学園に入学した時にシンクロ部によるダンスショーを披露し、彼女が本格的に人前でショーを行いたいと考えるきっかけとなる。その一方で、かつてシンクロ部が別なシロイルカの歌と合わせたショーを計画したところ、そのことごとくが失敗に終わり、シロイルカとバンドウイルカが共演することは不可能であると判断するに至る。その影響から、カナがシンクロ部に入部することも認めなかったが、その真意はカナに足を引っ張られることを厭うわけではなく、いくら努力を重ねても種族の差という大きな壁に絶望して欲しくないという考えからである。私立シートン学園が修学旅行のためにシー学園に訪れた際に、カナが料理部のメンバーと合同ショーを行おうとしていることを知ると、右脳だけが目覚めている状態の時に、ジンに対してこれ以上カナに下手に希望を持たせないように彼女にショーを止めさせるように懇願した。しかし、ショーは予定通り行われ、その中でカナがどのシロイルカよりも優れた歌声を披露したことで強く心を揺さぶられ、思わず彼女の歌に合わせた泳ぎを披露し、シートン学園とシー学園の両方の生徒たちから絶賛される。そして、シロイルカの歌に合わせた泳ぎを実現できると思い直し、カナをシンクロ部に迎え入れることを決意する。
大場 ニア (おおば にあ)
私立シー学園で学園長を務めるオパビニアの男性。五つの目と先端が歯のような形状の鼻を備えており、鼻の先で物を持つこともできる。ノリのいい陽気な性格で、私立シートン学園の動物たちが臨海学校に訪れた時は、最終日に挨拶を行い、白海カナや料理部のメンバーたちが参加した合同ショーの司会も務めた。
オタリア
私立シー学園に通うオタリアの男子。アシカの一種ではあるが、立派なたてがみを持ち、複数のメスを囲んでハーレムを作るなど、獅子野キングに似た習性を持つ。つねに群れを成して行動しており、キングと距離が空いてしまった伊原シホに目をつけ、彼女をハーレムに迎え入れようと襲い掛かる。しかし、どうしてもシホを忘れられなかったキングに妨害されて激昂し、群れの仲間たちと共にキングを寄ってたかって暴行した。しかし、斑刃イエナがキングの救援に現れると形勢が逆転し、二人の前に仲間もろとも打ち倒される。
集団・組織
料理部 (りょうりぶ)
私立シートン学園の高等部に存在する部活の一つ。牝野瞳が部長、間様人(ジン)が副部長を務めている。人間の憩いの場として瞳が計画し、本来は人間だけの部として活動する予定だった。しかし、ジンを気に入った大狼ランカが半ば無理やり部に加わろうとし、反対するジンをよそに瞳がランカを入部させた。さらに、子守ユカリや獣生ミユビ、猫米クルミが加入してジンには不本意ながらも、シートン学園では珍しい異種族同士が交流する部活となった。当初はまったく知名度はなかったが、シートン学園体育祭で優勝を獲得したことで、さまざまな生徒たちから注目されるようになる。しかし、シートン学園の生徒会長である肌野ミキから危険視され、一時は廃部も懸念された。だが、ランカがミキの手下である防衛部隊を救助したことで、ミキからも存在を認められるようになる。のちに絶大な人気を誇る苺苺が入部し、シートン学園の中でも屈指の勢力を持つ部活として認知されるようになった。
ライオンのハーレム
獅子野キングが率いているメスのライオンたち。キングの食事を用意する役割を担う。キングに絶対の忠誠を誓っており、構成員同士の結束も固い。ただし、全員がキングに対して恋愛感情を抱いているわけではなく、キングが伊原シホに一目惚れをした際は、二人の仲を取り持つために団結し、異種族同士のカップルになったという噂の間様人から情報を聞き出そうと、彼を無理やり拉致してキングのもとへと連れて行った。ハーレムを結成した理由は、彼に立派なたてがみが生えているためで、怖がるシホのためにキングが自らたてがみを剃り落とすと、とたんに興味を失って解散してしまう。
防衛部隊 (えくすぺんだぶるず)
生徒会長の肌野ミキを守るために結成されたハダカデバネズミの集団。デバ夫が隊長を務めている。ミキとは違って小動物程度の身長しかなく、服を着ることを嫌うミキの心情を重要視することから、デバ夫を含めて全員がパンツ一丁の姿をしている。隊員たちは例外なくミキを崇拝しており、彼女のためならいかなる労力も惜しまない。ミキからも信頼されており、シートン学園体育祭の会場設営やミキが危険視する料理部の調査など、さまざまな任務をこなしている。一方で、ランカと獣生ミユビの二人三脚の練習に巻き込まれ、ミユビの身体に押しつぶされたり、料理部を調査する最中に猫米クルミから獲物として追い立てられたりと、ひどい目に遭わされることも少なくない。しかし、事あるごとに大狼ランカに助けられており、彼女をミキと並んで尊敬するようになったほか、ミキが料理部の存続を認めるきっかけになる。
黒魔術部 (くろまじゅつぶ)
私立シートン学園の高等部に存在する部活の一つ。アイアイの群れによって構成され、愛島ユビルも黒魔術部に所属している。ユビル同様に陰気な部員が多く、日々怪しい儀式に興じているため、生徒たちからは恐れられている。複数の種族が所属する料理部を見習って、ヤギを部員として勧誘しようとするが、生贄としての役割を強いたために全力で断られる。
ワラルーボクシング部 (わらるーぼくしんぐぶ)
私立シートン学園の高等部に存在する部活の一つ。ワラルーの群れによって構成され、跳袋ミドルが部長を務める。部員たちは強さと前向きな性格のミドルを尊敬しており、共に高みを目指して練習に励んでいる。しかしある時、カンガルーボクシング部の部員たちによって部室を奪われ、練習ができなくなってしまう。大狼ランカによってワラルーボクシング部とカンガルーボクシング部の代表の試合が組まれ、勝てば部室を取り戻せることになるが、ワラルーがカンガルーに勝てるわけがないというあきらめムードが蔓延し、ミドル以外の部員たちも去ってしまう。しかし、彼らが部を去ったのは、ミドルが無理をして傷ついて欲しくないという思いからくるもので、試合本番でミドルが赤袋に善戦していることを知ると、ミドルの勝利を願って会場に駆けつけて全力でエールを送り、彼が勝利する助けとなった。二人の試合が終わったあとは、ランカの提案でカンガルーボクシング部と合併することになり、より大きな部活動として再始動する。
カンガルーボクシング部 (かんがるーぼくしんぐぶ)
私立シートン学園の高等部に存在する部活の一つ。カンガルーの群れによって構成されて、赤袋スグルが部長を務める。部員たちはカンガルーがワラルーより強いという自負を持ち、ワラルーボクシング部を見下している。当初は専用の部室を持っていなかったが、のちにワラルーボクシング部に押し入り、強引に部室を押さえてしまう。さらに、ワラルーボクシング部の部長である跳袋ミドルが部室を返すよう求めた時も一蹴しようとするが、そこに現れた大狼ランカから、ワラルーボクシング部とカンガルーボクシング部の代表が試合を行い、勝った方が部室を使用できるようにすることを提案される。そして、この条件を飲むと部長の赤袋が代表となり、ミドルと対決することが決まる。しかしミドルに赤袋が敗れ、再度部室を手放す事態に直面するが、ランカの提案からワラルーボクシング部と合併することになる。その後はショー形式の練習試合を組んだり、猫米クルミや斑刃イエナなど、多くの女子をラウンドガールとして招き、種族を問わない幅広い活動を行うようになる。
シンクロ部 (しんくろぶ)
私立シー学園の高等部に存在する部活の一つ。バンドウイルカの群れによって構成され、坂東ルカが部長を務める。泳ぎが達者な生徒たちが所属しており、入学式などの重要イベントで演じられるシンクロナイズドスイミングは、多くの生徒を魅了し、毎年多くの入部志望者が集う。白海カナもその一人だが、かつてシロイルカとバンドウイルカの連携に幾度も失敗しているため、ルカの意向からシロイルカであるカナの入部を認めていない。泳ぎがうまいことに誇りを持っているが、ルカ以外の部員は自分たちほどに泳げない生徒たちを見下す発言をすることもある。特にカナの歌に合わせて泳ぐことになった私立シートン学園の料理部の部員たちのことは殊更に下に見ており、陸に住む動物が海に適応していない理由がわかったと分析された。しかし、臨海学校の最終日に披露されたカナの歌声がルカを大いに感動させ、歌に合わせて泳ぎたいと考えるようになり、カナを新たな部員として迎え入れることとなった。
場所
私立シートン学園 (しりつしーとんがくえん)
陸上で生活するさまざまな種類の動物たちが生徒として通っている野性味あふれる学園。「サイコミ地方」と呼ばれる地域に存在し、天野カロリスが学園長を務める。全寮制ながら、週末には家に帰ることもできる。肉食動物から草食動物まで集っているため、トラブルが度々発生することもあるが、寺野ギガスをはじめとした恐竜の教師には誰も敵わないため、学園全体の秩序は保たれている。文武両道を是としており、あらゆる動物たちが勉学に励んでいる。部活動も盛んで、大小さまざまな部活が存在しているが、そのほとんどが同じ動物の群れであることが多く、異種族同士の交流はあまり行われていない。しかし、牝野瞳や間様人によって立ち上げられた料理部が、大狼ランカの意向によってさまざまな種族の動物が集うようになり、やがて大きな注目を浴びるようになる。そして、獅子野キングと伊原シホなど、異種族同士が思いを寄せ合うケースも増えてきている。
私立シー学園 (しりつしーがくえん)
私立シートン学園の姉妹校の一つ。大場ニアが学園長を務めている。イルカやアザラシ、ペンギンなど、多種多様な水棲生物が通っている。学園の敷地は一面の海に囲まれており、周囲には観光名所も多く存在しているため、シートン学園の生徒たちも臨海学校の際に利用している。学園の性質上、泳ぎがうまい生徒が多く、中でも坂東ルカが率いるシンクロ部は非常に優れたショーを見せることで有名で、内外問わずファンも多い。一方で、オタリアが臨海学校で訪れたシートン学園の生徒にちょっかいを出すなど、治安があまりよくない。
その他キーワード
クマよけスプレー
間様人(ジン)がつねに持ち歩いている護身用のスプレー。催涙効果があり、文字通りクマに対して絶大な効果を発揮する。ジンが子供の頃に、コディアックヒグマから酷い目に合わされたことをきっかけに、携帯するようになった。高等部に通うようになってからも携帯しており、大狼ランカやウサギに絡んでいるコディアックヒグマに対して使用され、一度は追い払うことに成功する。しかし、水道で簡単に洗い落とされてしまい、ジンが期待するほどの効果は見込めなかった。
ランカの愛 (らんかのあい)
大狼ランカに対して「料理は愛情」と焚き付けて好き勝手に作らせた料理らしきもの。子守ユカリの入部を阻止するために間様人(ジン)が、入部条件として部員が作った料理を完食するという条件を出してユカリに食べさせた。ランカ自身が料理に関して素人であることから、食材と調味料を適当に混ぜ込んだもので、とても料理とは呼べる代物ではない。ジンは、これでユカリも入部をあきらめるだろうと高をくくっていたが、予想に反してユカリの口に合っていたため、結局彼女の入部を認める羽目になった。さらに、ランカの手によって無理やり口の中に入れられ、あまりのまずさに卒倒してしまう。
パンダ団子 (ぱんだだんご)
間様人(ジン)が料理部で作ったお菓子の一つ。パンダのために開発されたといわれるとうもろこし粉で作られた蒸し団子。苺苺(メイメイ)が学園内でパンダブームを巻き起こしたことをきっかけに、子守ユカリがジンに頼んで作らせたが、ジンからは「取りたてて美味しいものではない」と言われ、それを聞いたユカリも「味は二の次」と評するなど、パンダ以外の動物からの受けはあまりよくない。しかし、匂いを嗅ぎつけたメイメイが勝手に料理部の部室に侵入し、断りもなく平らげてしまう。メイメイが料理部に入部してからは、彼女の好物の一つとして定期的に作られるようになる。
アーケアンサス
私立シートン学園の花壇で栽培されている植物。「最初の花」の異名を持ち、その名のとおり恐竜が席巻していた時代から咲き続けている。綺麗な花を咲かせることから、大狼フェリルや黒森ウルフなど、シートン学園を訪れる多くの動物たちから好まれている。花壇はみごとに手入れされており、それが高じて多くのアーケアンサスが花を咲かせている。フェリルの率いる群れでは、どんな動物が育てたのかが話題となる。そして、のちに育てたのが寺野ギガスであることが判明すると、そのギャップからフェリルがますます寺尾を気に入り、ウルフが消沈する原因となってしまう。
ラーテルハンマー
黒森ウルフが即席で作り上げた武器。穴蜜テルが鎖につかまり、身体を丸めることでモーニングスターのような形状になり、それを振り回すことで周囲に攻撃を仕掛ける。大狼フェリルを倒すべく、私立シートン学園に侵入したアルクトテリウム・アングスティデンスとコディアックヒグマに対して使用され、彼らを一網打尽にした。
ベルクマンの法則 (べるくまんのほうそく)
一部の恒温動物に見られる法則。寒冷地に住んでいる恒温動物ほど、体温を維持するために身体が大きくなるというもの。表面積に対して体積が大きくなるほど熱を保ちやすいという考えから生まれ、寒冷地に生息するホッキョクグマが温暖な地方に生息するマレーグマの2倍以上の大きさだったり、カナダのマニトバ州で規格外の大きさのハイイロオオカミが捕獲されているなど、実例も数多い。大狼フェリルは、大狼ランカの3倍以上の体長を誇り、間様人はフェリルがつねに寒い地方で暮らしていることに加えて、シスコンが高じるあまり、自分の分の防寒着をランカに貸し与えことでベルクマンの法則が働いたためだと推測する。実在の理論、「ベルクマンの法則」がモデル。
幼体成熟 (ねおてにー)
生物学の用語の一つ。身体や脳が子供のままで性的に成熟することを指し、成虫になる前に交尾を行うミノムシや、成長しても幼少期のエラが付いたままのウーパールーパーが代表例として挙げられる。また人間は、薄い体毛や平坦な顔、耳の位置など、チンパンジーの子供と共通する特徴が多く、手や足の形も同じであることから、幼体成熟を果たしたチンパンジーの個体が進化した種という説がある。猿原パンはこの説を支持しており、シートン学園体育祭の中で、露骨に人間を見下す発言を行う。そして、そのことが間様人の逆鱗に触れ、彼が本腰を入れて体育祭に優勝しようと目論むきっかけとなる。実在の現象、「ネオテニー」がモデル。
マジック・ザ・ドンキーズ
アジアノロバをはじめ、多くの動物たちのあいだで流行している遊戯の一つ。「ブレーメンキマイラ」や「ロバボール」など、多くのカードが使用される対戦型のカードゲームで、世界大会が行われるほどの盛り上がりを見せている。ほかのカードゲームにない特徴として、「ダイレクトアタック」と叫んで相手のプレイヤーを蹴ると、そのダメージに応じて蹴った方が有利になるという、格闘技を彷彿とさせる要素が含まれている。のちに馬縞クロエがアジアノロバから紹介され、世界チャンピオンにまで上り詰めた。なお、獣生ミユビもかつてマジック・ザ・ドンキーズを嗜んでおり、クロエすら上回る実力から「手の遅い大会荒らし」と呼ばれるほどだったが、カードが重いという理由で辞めてしまっている。実在のカードゲーム、「マジック:ザ・ギャザリング」がモデル。
半球睡眠 (はんきゅうすいみん)
一部のイルカやクジラ、渡り鳥などが持つ能力の一つ。右脳と左脳を交互に眠らせることで、24時間活動し続けることができるようになる。私立シー学園では、坂東ルカがこの能力を所有しているが、左脳と右脳のどちらが目覚めているかで性格が大きく変わる。ふだんは厳しくも凛々しい性格だが、右脳が眠っているあいだは内気で泣き虫な性格へと変貌してしまう。
バブリング
シロイルカである白海カナが得意としている技術。柔軟性のある唇をひょっとこのように突き出して、水中で泡のリングを作る。臨海学校のために私立シー学園を訪れた、私立シートン学園の生徒たちに対して披露される。見栄えは決して悪くなかったものの、ひたすら地味だったうえに、最後は苦しくなって中途半端に終わったことで、シートン学園の生徒たちからブーイングを浴びせられてしまう。ただし大狼ランカには好評だったようで、喝采を浴びていた。
シートン学園体育祭 (しーとんがくえんたいいくさい)
私立シートン学園で行われる年間行事の一つ。日々勉学に勤しむシートン学園の生徒たちが運動不足にならないようにと、学園長である天野カロリスによって考案された体育祭。午前の部と午後の部に分かれており、午前は主に徒競走や木登り、レスリングといった個人競技が行われ、午後は複数のコースをリレーして走り抜く最終種目が大きな目玉となっている。基本的には身一つで参加するが、道具の使用も認められており、猿原パンはバイクやスノーモービル、ジェットスキーなど、多種多様な道具を使って好成績を収めている。もともと体を動かすことが好きな生徒が多いことから大きな盛り上がりを見せ、獣生ミユビや大狼ランカは、開催日を心待ちにしている。一方で、もともとやる気のない間様人や、動物たちが暴れ回ることに恐れを抱いている牝野瞳、運動が苦手な子守ユカリなど、参加に消極的な生徒も少なくない。生徒参加の競技がすべて終了したあとは、教職員や保護者が参加する棒倒しが行われるが、寺野ギガスや荒本先生など、自然界でも最強レベルの動物たちが多数参加するため、一部では棒倒しこそが本番で、生徒たちによる競技は前座とまでいわれている。
臨海学校 (りんかいがっこう)
私立シートン学園で行われる年間行事の一つ。例年では2泊3日の行事となっているが、間様人(ジン)たちが参加した年は、5日間にわたって行われることとなった。開催される場所はシートン学園の姉妹校である私立シー学園で、シートン学園とシー学園の交流イベントという側面もある。初日から4日目までは主に自由行動で、5日目にはシー学園の生徒たちによる、シートン学園を歓迎するためのショーと、シートン学園の教師陣が主宰する肝試し大会が執り行われる。ジンは、自由時間を牝野瞳との時間に使おうと考えていたが、周囲の観光地のことごとくが人間向けではないうえに、瞳から、白海カナと大狼ランカをサポートするよう求められたことで、しぶしぶ二人の特訓に付き合う。