概要・あらすじ
かつての大戦の英雄サミュエル・クリンゲラインは、片道二年という過酷な旅にもかかわらず、ある目的を果たすため、自ら冥王星探査船に乗り込んだ。夫婦間の微妙な問題、やり取りを太陽系規模の回りくどさで描いたSFブラックユーモア短編。
登場人物・キャラクター
サミュエル・クリンゲライン
52歳の男性。かつての大戦で最高殊勲飛行士章を得たこともある名パイロットで、現在は合衆国宇宙局局長。冥王星探査船・プルート13号の搭乗員選考の際、なぜか自身を指名する。誰の目にも非常識に映るこの行動の裏には、長年自分の胸に溜め込んできたある思いがあった。
アグネス・クリンゲライン
メガネをかけた恰幅のいい中年女性。サミュエル・クリンゲラインの妻。外面と言葉遣いは上品なのだが、会話中に相手の意見に耳を貸さないという悪い癖がある。回想シーンでは夫サミュエルの言葉を遮り、自分の意見を押し付ける場面が度々描かれる。
カブレ
男性。サミュエル・クリンゲラインの友人で、合衆国大統領補佐官。サミュエルの非常識な行動に、宇宙局長解任をちらつかせて説得を試みるも、逆に自身の汚職の情報を持ち出されたため断念。最終的にはプルート13号着陸を扱ったテレビ番組に出演し、サミュエルの行動に理解を示すコメントまでするのだった。
その他キーワード
プルート13号
サミュエル・クリンゲライが乗り込んだ冥王星探査船。二年の歳月をかけて航行し、着陸後はサミュエルから地球へ向けてメッセージが送られることになっている。最初のメッセージは妻のアグネスへ向けたものになる予定だが、電波が地球に届くまでに五時間二十分を要するため、会話ではなく、一方通行のメッセージになる。