あらすじ
魔王降臨
社会人の大野晶はある日、自らが運営しているオンラインゲーム「Infinity GAME」で「魔王」と呼ばれている最強キャラクター九内伯斗にログインしたまま、見知らぬ異世界へと飛ばされてしまう。自分で作ったキャラクターである伯斗の姿から戻れないまま、何もわからずに異世界の森をさまよう彼は、「悪魔王」と呼ばれるグレオールに遭遇する。予想外の事態に混乱する伯斗は、そこで出会った足が不自由な少女アクを助け、親しくなる。アクは村人から迫害され、グレオールへの生贄に捧げられた不幸な娘であった。伯斗は情報収集のためにアクを連れて、元の世界に戻る方法を求めて異世界の旅を始めるのだった。アクの案内を受け、グレオールが出現した願いの祠へと向かった伯斗は、洞窟の奥で謎の集団の死体と椅子に佇む邪神像を見つける。邪神像は謎の集団が魔王を降臨させる黒魔術の儀式の末に、願いを叶えて命を落としたことを語る。伯斗はその儀式こそが自分を魔王として降臨させた原因であると悟り、元の世界に戻すように頼むが、邪神像が彼に与えたのは不思議な力を持つ魔王の指輪であった。こうして、元の世界に戻る方法がわからないままの伯斗は、彼の討伐を狙う聖女や騎士団に追われながら、行く先々で騒動を巻き起こすこととなる。そんな中、さっそく魔王の噂を聞いた聖女の一人であるルナ・エレガントが、伯斗の討伐に乗り出していた。一方、神都へ向かう伯斗とアクの前に、オ・ウンゴールが率いる山賊が現れて行く手を阻む。そこにルナが率いる部隊も合流したことで乱戦となり、伯斗はとっさに思い浮かんだある方法で、その場を切り抜けようとする。
新たな仲間
最強魔王である九内伯斗の姿で異世界に飛ばされてしまった大野晶は、村人のアクと共に元の世界に戻る方法を探す旅を続けていた。だが、魔王と称される伯斗が強力なモンスターを倒した噂は瞬く間に広まり、圧倒的な力を持つ彼の存在を、周囲の者たちが放っておくわけがなかった。聖光国の神都を目指す中でヤホーの街に着いた伯斗たちは、末っ子聖女のルナ・エレガントを仲間に迎えて街に滞在していたところでキラー・クイーンに遭遇し、さらに彼女たちと敵対する謎の組織「サタニスト」の襲撃を受ける。伯斗はピンチに陥るが、かつて作った霧雨零にキャラクターチェンジすることで、サタニストたちを撃退して事なきを得た。さらに伯斗は、新たなスキルを解放する条件を満たしたことで、強力な側近である桐野悠の召還に成功。元の世界に戻る方法を求めて再び神都へ向かうことになった伯斗は、サンドウルフの群れを蹴散らしつつ、アクとルナに悠を紹介していた。その様子を草陰から見ていた冒険者のミカンとユキカゼは、ある目的のために動き出すのだった。ようやく都会に近づいたと思えた道中、ルナの領地を通りかかった伯斗たちは、寂れてしまったラビの村に自分たちの拠点を作ることを決める。伯斗は水脈が枯れて瘦せ細った大地を復活させるため、村を一生懸命耕していたモモとキョンに話を聞く。
神都動乱
現実世界に戻る術を探すべく、異世界での暮らしの拠点を作りつつ活動資金を集めようと九内伯斗が目を付けたのは、ラビの村だった。村に住むバニー娘たちと共に、異世界においては希少なお湯で温泉を作って、大開発に乗り出す。一方、謎の組織「サタニスト」たちは聖光国の神都を滅ぼす計画を企てて暗躍を続けていた。神都に到着し、レストランで食事を楽しんでいた伯斗たちのもとに、社交界で有名なエビフライ・バタフライが声を掛けてきた。一同の歓談中、サタニストの襲撃が始まり、伯斗は晩餐の余興にと対処へ向かい、彼はサタニストが命と引き換えに召喚した悪魔カーニバルを、いとも簡単に撃破する。一方、レストランに残ったルナ・エレガントを狙い、暗殺者が忍び寄っていた。各所で起こるサタニストたちの襲撃に、キラー・クイーンやS級冒険者のミンクたちが応戦するが、聖城前で上級悪魔オルイットが召喚されたことで戦況が悪化する。
聖女との対談
ラビの村の大開発にエビフライ・バタフライの協力も取り付け、村は瞬く間に発展を遂げていき、拠点と資金を求める九内伯斗の計画は順調に進行していた。そして伯斗は、神都で謎の組織「サタニスト」を追い払った際に遭遇した、最後の聖女であるエンジェル・ホワイトと聖城にて対面する。魔王と恐れられる伯斗の狙いがつかめず、警戒しながら対談に応じるエンジェルは、彼がこの聖光国を滅ぼすつもりではないかと恐怖心を抱く。しかし、伯斗がルナ・エレガントと共に行動している以上は逆らうわけにもいかず、責任感の強いホワイトは新たな心配と葛藤を抱えるのだった。一方、ホワイトとの対談を終えて聖城にある書庫の閲覧許可を得た伯斗は、異世界の天使という存在について調べるべく、アクと共に書庫の書物を探っていた。だが、最も必要とする「熾天使」にまつわる情報は少なく、悪魔と天使の関係がわかる程度で終わった。アクと別れて一人で街を歩く伯斗は、あとを尾けてきた少女トロンと再会。先の戦いで悪魔に襲われていたところを霧雨零に救われたトロンは、特殊な能力によって彼と伯斗が同一人物であることを見抜いていた。
湯煙の死闘
一人で神都に向かって羽を伸ばしていた九内伯斗は、北方の迷宮について調べるために冒険者ギルドに向かう途中で、ミカンとユキカゼに遭遇する。なぜか伯斗のことを気に入っているユキカゼに誘われ、伯斗は迷宮について教えてもらうためにいっしょに酒場へ向かう。一方、ルナ・エレガントの危機を感じたエンジェル・ホワイトは、妹を救うべく一人で伯斗たちのもとへ乗り込む。ラビの村でルナと再会し、言われるままに温泉へと案内されたホワイトは、不注意から男湯に入ってしまい、露天風呂で伯斗と鉢合わせになる。動揺を隠せないホワイトとは裏腹に、落ち着いた態度で話を進める伯斗であったが、内心ではなぜ彼女がここに来たのかすらわからず焦っていた。雑談の末、伯斗はかつて入手していたものの使い道がなかった「天使の輪」というアイテムをホワイトに贈り、その場を去る。後日、ラビの村のことを田原勇たちに任せた伯斗は、ユキカゼやミカンと共に北方の地へと向かうことを決意する。だがその一方で、霧雨零を伝説の龍人とカンちがいして恨みを募らせるオルイットが、新たな目的のために暗躍を始めていた。
北方の旅
聖光国の有力者であるエビフライ・バタフライに続いて、エンジェル・ホワイトを取り込むことにも成功した九内伯斗は、着々と異世界での地盤を固めつつあった。回復効果のある温泉旅館が目玉となったラビの村も、エビフライが招いたほかの貴族や周辺諸国を巻き込みながら、歓楽地として栄えていた。伯斗は次なる一手を打つべく、冒険者たちと共に「監獄迷宮」が名物である北方諸国の一つ「バーロー共和国」へ旅立つ。その目的は、伯斗たちの唯一の弱点である魔法に対抗する力を持った、「武具」と呼ばれている武器を探すことであった。バーロー共和国のルーキーの街で聖勇者ヲタメガと遭遇し、黙々と人助けに勤しむ姿と強い意志を見込んだ伯斗は、路地裏で食事をとっていたヲタメガにひそかに接触を試みる。その後、スキルポイント稼ぎのために監獄迷宮でモンスターを狩っていた伯斗は、首のない死体のそばをうろついていた怪しい二人組に遭遇する。一方、街の方では監獄迷宮から逆侵略のためにやって来た凶悪な特異種「アグレッサー」が出現し、人々が混乱に陥っていた。アグレッサーに苦戦するユキカゼから通信を受けた伯斗は、桐野悠を連れて街へ戻ろうとする。
原作小説
本作『魔王様、リトライ!』は、神埼黒音の小説『魔王様、リトライ!』を原作としている。原作小説版は双葉社のモンスター文庫から刊行され、イラストは緒方剛志が担当している。また、加筆修正や続編となるエピソードを加えた新装版が双葉社のMノベルスより刊行されており、こちらのイラストは飯野まことが担当している。
登場人物・キャラクター
九内 伯斗 (くない はくと) 主人公
サラリーマンの大野晶が作ったオンラインゲーム「Infinity GAME」の登場人物で、「魔王」として恐れられる中年男性。年齢は45歳。オールバックの長髪で黒いスーツとロングコートをまとい、渋い顔立ち... 関連ページ:九内 伯斗
大野 晶 (おおの あきら)
オンラインゲーム開発者の男性で、オンラインゲーム「Infinity GAME」をすべて一人で作成した。年齢は30代で、本業はサラリーマン。Infinity GAMEのサービス終了となる日に、九内伯斗にログインしていた状態で異世界に飛ばされ、伯斗の姿から戻れなくなってしまう。これ以降は元の世界に戻る方法を探しながら、異世界でさまざまな活動を行っていく中で、時にはトラブルを起こしたり巻き込まれたりしている。長いゲーム運営と社会人生活で鍛えられた高い演技力を持ち、伯斗としての活動にこの演技力を生かしており、つねに大野晶が伯斗を演じているような形になっている。ただし、強力過ぎる能力に対して一般人程度の精神しか持ち合わせていないため、異世界では数々のプレッシャーに悩まされて苦労している。また、桐野悠をはじめとする部下に自分の本性がただのサラリーマンであることを悟られないよう、必死に威厳のある人物を演じている。Infinity GAMEの前は「極東都市 魔都」というオンラインゲームを運営していた。
アク
九内伯斗が異世界で最初に出会った村人の美少女。銀髪のショートヘアとオッドアイを持ち、左目は伸ばした前髪で隠している。健気で純粋無垢な性格で、伯斗のことは「魔王様」と呼び、父親のように慕っている。一人称は「ボク」。当初は控えめでおとなしかったが、伯斗と旅を続けるうちに明るい性格になっていく。両親は幼くして病死しており、村人たちから迫害を受け、ゴミや糞尿を処分する仕事をしながら一人で生きてきた。しかしそれらが原因でさらに迫害が進み、ついには悪魔王グレオールに生贄に出されていたところを、伯斗に助けられた。異世界に来たばかりの伯斗の道案内を務め、窮地を救ってくれた彼への恩義からいっしょに行動することを決意し、旅に同行し続けている。伯斗の正体が大野晶であることは知らないものの、あちこちで魔王と恐れられる彼のことを優しい人物と認識しており、つねに信頼している。迫害が原因で負傷し、当初は右足を引きずって傷痕もあったが、のちに桐野悠の治療で完治した。伯斗からも娘のようにかわいがられているが、ルナ・エレガントやトロンと異なり特別な能力を持っていないにもかかわらず彼の寵愛を受けていることから、悠や田原勇からは疑問を抱かれている。
ルナ・エレガント
聖光国の三聖女の一人で、末っ子。年齢は16歳。三聖女の中でも飛び抜けた魔法の才能を持つ。その天賦の才を称えられながら蝶よ花よと育てられたため、非常にわがままな性格をしている。もともとは貧民の出身であったが聖女になれるほどの才能によって教会に入り、10歳にして聖女になった。ラビの村を領地として与えられているが、領地経営の能力や知識はなく、寂れたままになっている。魔法以外の才能は持たず、周囲の大人たちのおべっかに乗せられがちで、都合のいいように担がれている。好戦的なところもあり、魔王が出現した報せを受けた途端に、討伐のために騎士たちを率いて出陣する。山賊と九内伯斗の戦いに乱入し、騎士たちと共に戦闘に参加するものの、伯斗にあっという間に返り討ちにされる。この時に財布をまき上げられたことに気づいて伯斗を追ってきたが、泊まる宿がなく彼らの宿でいっしょに泊まったのをきっかけに、そのまま伯斗とアクの旅に同行するようになる。伯斗に対してはツンデレのような態度で接するが、単純なために彼からはチョロいと思われている。伯斗によるラビの村の大開発も手伝い、彼が持ち込んだ石鹼や名物の温泉も気に入っている。当初は聖女のドレスを着ていたが、旅の途中からは伯斗から渡された学生服のような衣装を着ている。エビフライ・バタフライからは、「ワガママで素直な子」と評されている。まだ貧民だった頃は幼なじみのイーグルと共に行動していたが、彼が亜人であったことから殺されてしまい、守れなかったことを聖女になったあとも悔やんでいる。
オ・ウンゴール
山賊集団「土竜」の頭領を務める中年男性。小太りな体型の口の悪い野蛮人で、大野晶の上司に顔がよく似ている。ルナ・エレガントが自分たちを討伐しに来たと思い込み、彼女に奇襲をかけようと企てるが、九内伯斗やルナにあっさり返り討ちにされた。
邪神像 (じゃしんぞう)
願いの祠の奥に安置された謎の邪神像で、どんな願いでも叶えてくれるという言い伝えがある。謎の組織「サタニスト」の教徒たちが魔王を召喚する儀式を実行したことによって九内伯斗が召喚されたが、儀式に参加した教徒はすべて死亡した。現在は禍々しい姿をしているが元は白い姿で、長いあいだ人間たちの邪悪な願いを叶えるうちに、現在の姿に変わってしまった。異世界に来たばかりの伯斗と対面した際に元の世界に帰してほしいと頼まれるが、召喚者の願いに反するという理由で拒否。代わりに、最後の力を使って伯斗に魔王の指輪を授けたあとは砂になって消滅した。その正体は、天使の一人である「座天使」。
グレオール
最上位悪魔で、かつて天使の一人が命と引き換えに封印した強大な存在。「悪魔王」とも呼ばれている。封印されてもなお、呪いで周辺地を汚染するほどの力を持つ。九内伯斗が異世界に召喚される数か月前に自力で封印を解き、各地で暴れ回っては人々に生け贄を要求し、村人に迫害されていたアクが生贄として差し出された。アクを襲っていたところで伯斗に遭遇し、物理攻撃で彼に傷を負わせるものの、あっさりと秒殺されてしまう。
キラー・クイーン
聖光国の三聖女の一人で、次女。年齢は17歳。かなり好戦的な性格で、名前どおりの振る舞いは聖女というより女王そのもの。粗暴な立ち居振る舞いが目立ち、荒っぽいヤンキー口調で話す。禍々しいデザインの馬車に乗り、暴走族のようなモヒカン頭の男たちを従えていることから、一部の者からは「世紀末聖女」と呼ばれている。見た目や言動からは想像しがたいが、自分より強い運命の相手が現れるのを待っているなど、乙女な一面もある。神都襲撃の際は冒険者たちと協力して謎の組織「サタニスト」と戦うが、突如現れた霧雨零に一目惚れし、彼こそが伝説の龍人だとカンちがいしてしまう。これ以降はすっかり零のとりこになり、運命の相手と見なした彼のことを一方的に追い、再会を夢見ている。
エンジェル・ホワイト
聖光国の三聖女の一人で、長女。年齢は18歳。三聖女の中では一番の常識人だが、生まじめで心配性なところがあり、いつも妹たちに振り回されている苦労人。九内伯斗の登場により、なぜか彼といっしょに行動している妹のルナ・エレガントと、国の行く末を案じている。さらにはキラー・クイーンも霧雨零に夢中なことを知り、心配事が絶えない。聖女としての務めはもちろん政務にもまじめに取り組んでおり、一部の特権階級が富を独占する状況を知りながらも、現状を改善できないことを憂いている。伯斗が城の書庫を閲覧することや、ルナの領地であるラビの村を経営するのを渋々認めたが、彼が聖光国を侵略すると思い込み、つねに警戒している。伯斗の圧倒的な強さや、わがままなルナを手なずけていることに加え、さらにはエビフライ・バタフライまでも取り込んでしまったことに危機感を抱き、ルナを連れ戻すべく「熾天使の跳躍」という魔法を使い、一人でラビの村に乗り込む。ルナによって温泉に案内されたが、まちがって男湯に入ってしまったことから、思わぬ形で伯斗と再会を果たし、そのまま温泉につかりながらの会談になった。気まぐれに伯斗がプレゼントした「天使の輪」を受け取り、ルナを取り戻せないまま神都に帰還。伯斗が奇跡を行使できることや天使の輪を作り出せること、聖女であるルナを簡単に手なずけたこと、伯斗自ら「座天使」に呼ばれた存在を名乗ったことなどから、彼の正体が堕天使ルシファーだと誤解するようになる。伯斗に貰った天使の輪を気に入り、いつも頭の上に浮かばせている。
霧雨 零 (きりさめ ぜろ)
大野晶が作ったオンラインゲーム「Infinity GAME」のキャラクターで、暴走族の青年。長身で背中に龍を刻んでおり、白い特攻服をまとっている。硬派な性格で、正義感が強い熱血漢。武器などは持たずに圧倒的な拳闘で戦い、相手が極悪であるほど強烈なバフスキルを発揮できる特性を持つ。九内伯斗とキャラクターチェンジをすることで入れ替わりに出現するが、そのあいだは自動操縦モードに変わってしまう。このため、昌の意識そのものは維持されたままで、性格が変わったような言動を含め、彼の意思や操作をいっさい受け付けなくなる。伯斗とも本来の昌の性格とも異なる言動や行動が多いため、伯斗にとっては気恥ずかしい存在となっており、切羽詰まった状況以外ではキャラクターチェンジをしないようにしている。神都襲撃の時に謎の組織「サタニスト」と戦うために出現し、彼らの召喚した悪魔も瞬殺する。その勇姿に見とれたキラー・クイーンから惚れられると同時に、龍人と誤解される。また、サタニストやオルイットをはじめとする悪魔たちからも龍人と誤解され、恨まれている。当初は霧雨零自身が満足するまで伯斗の姿に戻ることはできなかったが、伯斗がテストや訓練を繰り返したことで、少しずつ伯斗自身の意思で戻れるようになっていった。
ユートピア
謎の組織「サタニスト」の教祖をしている男性。顔はローブとベールで隠しており、冷静で落ち着いた口調で話すが、不気味な雰囲気を漂わせた謎の多い人物。ウォーキングをはじめとする配下に神都襲撃を命じるものの九内伯斗たちの活躍で失敗し、これ以降は冷静さがなくなっていき、苛立ちから些細なことで声を荒らげるなど、偉大な頭領らしい威厳は霞んでいった。また、龍やその力を宿す龍人を疎ましく思っており、神都襲撃を邪魔した霧雨零のことを龍人とカンちがいして恨んでいる。
ウォーキング
ユートピアの配下で、謎の組織「サタニスト」のリーダーを務める男性。神都襲撃では奈落を放って戦況を優位にさせるものの、霧雨零には効果がなく反撃され、追い詰められてしまう。神都襲撃で失敗して以降は、冷静さを失いがちなユートピアの言動に疑問を感じるようになる。元は聖光国を変えたい一心で、サタニストの一員となった。
桐野 悠 (きりの ゆう)
九内伯斗の側近の女性。年齢は22歳。黒のロングヘアでスタイルのいい美女で、ハイヒールと白衣をまとっている。天才女医だがマッドサイエンティストで、オンラインゲーム「Infinity GAME」内ではサディスティックな一面を見せており、一部に熱狂的なファンを持つ。伯斗のことは「長官」と呼び、敬愛している。この世のあらゆる病魔を駆逐し、あらゆるケガを治癒するという設定がされているため、指先を医療器具に変化させられる「神の手」という能力を持ち、瞬時に治療や手術などを行える。異世界でもこれらの設定や能力を引き継いでいるが、Infinity GAME内とは異なり自我を持ち言葉を話せる。側近召喚のスキルが解放された伯斗が、アクのケガを治すために最初に召喚した側近でもある。側近たちのあいだでもそりが合わず浮いているところがあり、伯斗からは優れた知性で自らの本性がバレることを心底恐れられている。アクの足を完治させたのを伯斗に褒められたことがきっかけで、彼に惚れてしまう。美少年を愛するショタコンという設定も持ち、アクに男装するように求めたりしていたが、伯斗に惚れたあとは好みの少年が大勢いるラビの村でも冷静だった。捕えた敵を実験台にするなどマッドサイエンティストな一面は変わっていないものの、伯斗に対して乙女のような態度や言動が増えている。異世界に来てからこれらの変化が表れていることから、伯斗からは不思議に思われ、田原勇からは不気味がられている。
ミカン
Bランク冒険者で、職業は女戦士。年齢は17歳。いつも相棒のユキカゼの言動に振り回される苦労人。褐色肌で赤毛のショートヘアの少女で、パフスリーブのシャツとミニスカート、ロングブーツを着用している。明るく快活な性格をしている。ユキカゼといっしょにサンドウルフ討伐の依頼を引き受けたものの、圧倒的な数に逃げる羽目になる。逃げる途中で九内伯斗の一行に遭遇し、圧倒的火力でサンドウルフを一掃したのを目の当たりにした。魔王と恐れられる伯斗にはあまり好印象を抱かず警戒しているが、サンドウルフの件を含めて何度か彼に助けられたことがあり、その点に関しては恩義を感じている。ユキカゼが伯斗を気に入って迷宮や北方諸国について教えたことから、彼らの北方への旅に半ば無理やり同行させられることになる。
ユキカゼ
Bランク冒険者で、職業は魔法使い。年齢は16歳。相棒のミカンと組んで活動している。透けるような白い肌で見た目は九内伯斗も誤解するほどの美少女だが、実は少年であり、いわゆる男の娘である。ベージュ色のボブカットで、大きな紺色の魔女帽子をかぶっている。エロネタを好み、わざとらしい言動が多く、ミカンをからかってはよく振り回している。ミカンといっしょにサンドウルフ討伐の依頼を引き受けたものの、圧倒的な数に逃げる羽目になる。逃げる途中で伯斗の一行に遭遇し、圧倒的な力でサンドウルフを倒したのを目の当たりにし、彼の勇姿に一目惚れした。これ以降、伯斗のことを「おじ様」と呼び慕っており、なぜか距離感が近い。のちに再会した伯斗に対し、酒場で冒険者やアイテムの事情を説明したところ、彼が北方諸国の迷宮に行くのを決意したために、ミカンを巻き込んで同行を願い出る。
ミンク
Sランク冒険者の女性で、職業は僧侶。年齢は20歳。巨乳美女だが性格は中二病気味で、大げさで禍々しい詠唱は周囲から呆れられるほどに痛々しい。また、闇や悪といった僧侶らしからぬ言葉を好んで使う。相棒のオルガンとは凸凹コンビで、両者の雰囲気にはかなりの温度差がある。
オルガン
Sランク冒険者の女性で、ミンクと行動を共にする。フードマントを羽織った美女で謎に包まれているが、その正体は魔族と人間のハーフ「魔人」で、実年齢はすでに400歳を超えている。九内伯斗ほどではないが高い戦闘力を持ち、いつもクールで余裕のある態度を見せる。相棒のミンクとは凸凹コンビで、両者の雰囲気にはかなりの温度差がある。
カーミヤ
神都の高級レストラン「アルテミス」で雇われたピエロの男性。謎の組織「サタニスト」による神都襲撃の時、恐怖に襲われた客を落ち着かせるために芸を披露していると思われたが、その正体はサタニストから雇われた暗殺者であり、アルテミスで食事をしているルナ・エレガントの命を狙っていた。しかし、桐野悠をルナの取りまきの一人とカンちがいするなど実力は大したことがなく、暗殺計画を実行に移す前に悠に正体を悟られたうえに、一瞬で両腕を切り落とされてしまう。幸い、縫合されて腕は元どおりになるが、悠の恐ろしさと狂気に気づいて逃亡した。
トロン
謎の組織「サタニスト」の少女。無表情で、感情表現が乏しく物静かな性格をしている。魔族と人間のハーフ「魔人」で、人間の世界にも魔族の世界にも居場所がなく、サタニストに拾われるもののなじめずに浮いていた。キラー・クイーンとの戦いでは奈落を放って優位な状況に導くが、霧雨零に追い詰められて力を得ようと襲ってきたオルイットに吸血され、死にかける。零が与えた回復アイテム「カロリー冥土」を食べて一命を取り留め、正義感の強い彼に惚れてしまう。魂や善悪などを色で見分ける「魂魄を見るもの」という特殊能力が宿った目を持つおかげで、九内伯斗と零が同一人物だと見抜く。のちにサタニストを抜けて伯斗のもとを訪れ、そのまま彼の配下になった。
カーニバル
神都襲撃の際に現れた中級悪魔。マージという「サタニスト」が命と引き換えに召喚した。背中にギターを背負った男性道化師の姿をしており、オネエ言葉で話す。強敵に思われていたが実際は九内伯斗の敵ではなく、彼に瞬殺されて汚い花火として処分された。
オルイット
神都襲撃の際に現れた上級悪魔。謎の組織「サタニスト」の教徒たちが、自らの命と引き替えに召喚した。「闇公爵」の異名どおり、黒い服をまとった貴族男性のような姿をしている。聖城前でキラー・クイーンやミンクとの戦闘になり、互角以上の戦いを繰り広げ、トロンが奈落を展開しキラー・クイーンたちを弱らせたことで優位に立つ。しかし、乱入した霧雨零の敵ではなく、トロンから吸血して化け物の姿に変わったが、零の拳にあっさり粉砕された。しばらくは棺に入って眠っていたが、零を龍人と誤解したまま恨むようになり、復活後はほかの悪魔と共に零への復讐をもくろんでいる。
エビフライ・バタフライ
貴族の女性で、聖光国の社交界の重鎮。非常にふくよかな体型で、腹黒いが思いやりのある人物。通称「マダム」。貴族の中心的な存在で、九内伯斗に興味を示す。魔王の噂を知ったうえで接触をしてきたことから、伯斗からも食えない奴と思われている。カキフライ・バタフライという双子の妹がいるが、姉妹仲はよくない。加齢による美貌の衰えを気にしており、伯斗と会食した際に美容効果の高い石鹼をもらったことから、ラビの村にある温泉旅館に訪れる。温泉の美容効果の数々に魅了され、温泉旅館に通い詰めることを決意した。美容への情熱が非常に敏感になり、本来は時間をかけて効果を実感するような美容アイテムでも、その効能を一瞬で感じることができる。その後は伯斗への興味も強まり、ラビの村の宣伝に協力する形で、周囲の貴族の女性を温泉旅館に呼び込んだ。何度か商談を交わすうちに、伯斗が高い戦闘力だけでなく優れた頭脳と商才を持つ人物だと誤解している。貴族を中心に人脈も豊富で、コマンド・サンボとは憎まれ口を叩き合う仲。肥満体型はバタフライ家に代々伝わる呪いの影響であり、幼少期から周囲の貴族にバカにされてきた過去を持つ。
ドナ・ドナ
貴族長を務める大貴族の中年男性。聖光国を実質支配している一人と言っても過言ではないが、傲慢で自己中心的なところがあり、九内伯斗からは無能で毒物のような人物と評されている。伯斗を快く思わず、彼がラビの村を大開発しようとした時は無理やり排除しようとしたが、ほかの貴族の反対やエンジェル・ホワイトの判断を受け、渋々認めた。
モモ
キョンと共にラビの村で暮らす、バニーという種族の少女。頭にウサギの耳が生えている。ボーイッシュな見た目で、言葉や態度には少しトゲがある。語尾に無理やり「ウサ」を付けて話す。ニンジンの不作を九内伯斗に助けられ、ラビの村の大開発を進める彼に協力をすることになる。伯斗が作った温泉旅館では、キョンといっしょにバニーガールの衣装をまとい、店員を務める。
キョン
モモと共にラビの村で暮らす、バニーという種族の少女。頭にウサギの耳が生えており、茶髪をロングヘアにしている。語尾に無理やり「ピョン」を付けて話す。ニンジンの不作を九内伯斗に助けられ、ラビの村の大開発を進める彼に協力をすることになる。伯斗が作った温泉旅館では、モモといっしょにバニーガールの衣装をまとい、店員を務める。
田原 勇 (たはら いさみ)
九内伯斗の側近を務める男性。年齢は31歳。桐野悠と同様に、オンラインゲーム「Infinity GAME」内と異なり自我を持っている。ふだんは怠惰で無気力だが、世界中の銃器に愛される体質を持ち、狙撃も得意とする。伯斗には妹の真奈美と共に救われたことから恩義を抱き、彼を「長官殿」と呼んで敬意を寄せている。伯斗の側近の中では唯一天才の設定を与えられており、どんなことでもそつなくこなせる才能の持ち主。溺愛している妹の真奈美が絡むと人格が変貌する。このため伯斗からの信頼も厚いが、天才だからこそ慎重に扱わなければならないと思われている。伯斗が最初に召喚した悠とあまり衝突しないことから2番目に召喚されたが、それでも敵だけでなく味方にまで手にかけかねないマッドサイエンティストである悠に対し、心底恐怖心を抱いている。その一方で、伯斗のことになるとやたら乙女チックな態度を見せるようになった悠の変化を気味悪く思っている。召喚後は主にラビの村の大開発や、目玉である温泉旅館の経営を任されている。
ナンデン・マンネン
交易都市「ヤホー」で、美術品や骨董品を扱う「NANDEN-MANDEN」の店主を務める老齢の男性。九内伯斗がスキルで作成したアイテムを買い取っているが、彼に提示された値段で売られるのではなく、鑑定をさせられたうえで値段を決めさせられるなど、鑑定眼を確かめられるようなやり口で売られている。このため、あらゆる品を高値でつかまされているように見えるが、大金貨15枚(約3000万)で仕入れた珍しいオルゴールを倍以上の価格でエビフライ・バタフライに売却するなど、十分な利益を上げている。
マーシャル・アーツ
聖光国の戦士長を務める男性で、軍事のトップの立場にある。年齢は62歳。聖光国の重鎮の中では特に良識のある人物で、会議においてドナ・ドナが九内伯斗を無理やり排除しようとした時は反対した。キラー・クイーンからも一目置かれるなど、戦士長としても優れている。
コマンド・サンボ
退役兵士で、老齢の男性。マーシャル・アーツの腹心であったが、魔獣討伐で目を負傷し、半ば失明状態になったために退役に追い込まれた。昔なじみのエビフライ・バタフライと共にラビの村を訪問した際に、桐野悠の治療によって目が完治し、復帰してアーツのもとに戻ることができた。エビフライとは憎まれ口を叩き合う仲であるが、治療の謝礼を彼女が代わりに払ってくれるなど、実際は仲がいい。
イーグル
貧民の亜人で、ルナ・エレガントの幼なじみで同い年の少年。聖女になるために教会に行ったルナによって教会に迎えられる予定だったが、亜人だったために教会の使者に殺処分された。この出来事はルナの心に深い傷を残し、彼女はキョンやモモなどの亜人を見るたびに、死んだイーグルのことを思い出している。
ヲタメガ
ライト皇国の聖勇者(ホーリーブレイブ)の一人で、「白い彗星」の異名を持つ青年。白い甲冑をまとい、「白い三連星」と呼ばれている三人の部下を引き連れている。北方のバーロー共和国に現れるが、勇者らしからぬ名前に加え、小太りの体型にボサボサの髪、眼鏡を掛けたオタクのような容姿で九内伯斗を驚かせた。優れた戦士であると同時に身を削って人々のために尽くす善人であり、特に貧しい子供たちを救うための慈善活動に勤しんでおり、部下からも厚い信頼と敬意を寄せられている。しかし、それらの慈善活動の範囲には限界があり、伯斗の目指すような国家社会の変革にはほど遠いため、いつも無力感に苛まれている。路地裏に一人でいるところで伯斗に接触され、遠回しに仲間になるように言われたが、彼を警戒して断った。監獄迷宮からアグレッサーが出現した際は、冒険者たちと共に戦いに参加した。
集団・組織
サタニスト
聖光国に怨恨を抱く、悪魔信奉主義者の宗教団体。教徒はいずれも黒いローブをまとい、破壊の限りを尽くそうとする。歪んだ願いで魔王召喚の儀式を執り行い、九内伯斗を異世界に召喚した団体でもあり、この儀式に参加した教徒は願いの代償として死亡している。各個人の戦闘力はあまり高くないが、奈落を展開して敵の戦闘力を下げたり、命と引き替えに悪魔を召喚したりなど、厄介で凶悪な手を使う。聖光国の三聖女を亡き者とするために暗躍し、神都を襲撃するが伯斗たちの活躍によって失敗に終わった。
場所
聖光国 (せいこうこく)
「智天使」を信仰し、「三聖女」と呼ばれている三人の聖女を中心に教会、騎士団、貴族などがおさめている国。異世界に飛ばされた九内伯斗が最初に訪れた国でもある。表向きは三聖女が国の頂点に立っているが、実際に国を動かしているのは教会や貴族の上層部で、彼らの居住地でもある神都は繁栄している一方で、搾取されている地方の者は貧困にあえいでいる。また、人族以外への差別が激しく、教会ですら亜人を差別し、時には殺処分することがある。識字率は高めで、貧民だったアクでも平仮名、数字、英字を問題なく読めるほど。流通する貨幣は1枚につき、銅貨が100円、大銅貨が1000円、銀貨が1万円、金貨が10万円、大金貨が200万円くらいの価値を持つ。大金貨よりも高価な「ラムダ聖貨」という特別な貨幣があり、こちらは流通枚数や時期によって価値が変動するが、最低でも1枚2億円ほどの価値があるとされる。伯斗からは、地名や人名を含めてネーミングのセンスが悪いと評されている。ほかの国と同様に、冒険者が各地のギルドに登録しながら活動しており、モンスター退治や迷宮、遺跡などから宝を発見することで報酬を得ている。冒険者にはランクがあり、Sランクなど高ランクの冒険者は優遇されるが、稼げない低ランク冒険者は傭兵などの仕事を請け負って食いつないでいる。
ラビの村 (らびのむら)
ルナ・エレガントの領地で、ウサギの耳が生えた「バニー」という亜人が多く住んでいる。土地が瘦せて水も出ないなど、環境は劣悪。ニンジンが特産品の寒村であったが、九内伯斗が領地経営に乗り出してからは、温泉旅館や野戦病院を構えた歓楽地に大開発された。特に温泉旅館や石鹼は異世界の住人にとって珍しいため、注目を集めている。エビフライ・バタフライの協力を得られるようになってからは、彼女が呼び込んだ貴族も訪れるようになり、さらに順調に発展している。
その他キーワード
魔王の指輪 (さたんりんぐ)
願いの祠の邪神像が九内伯斗に与えた、中二病感あふれる髑髏の指輪。伯斗の指に密着しており、はずすことはできない。邪神像の正体である「座天使」が残した最後の奇跡であり、世に混沌と破滅をもたらすことによって、あらゆる願いが叶うといわれている。伯斗がピンチになると、彼の奥に潜む邪悪な意思が指輪を通して体を支配しようとするようになり、その力を発動するたびに彼を悪の道へ導こうとする。
奈落 (ならく)
謎の組織「サタニスト」が武器として使う謎のアイテム。黒い汚泥のようなもので、ふだんは箱に収容されているが周りに放流されると、汚泥を浴びた者は動きを封じられて弱ってしまう。キラー・クイーンが二度ほど使われて、窮地に陥っている。
天使 (てんし)
異世界で信仰されている天使で、聖光国で信仰される「智天使」のほかには、「座天使」と「熾天使」がいる。智天使はすでに消滅しており、熾天使と座天使は姿を消している。願いの祠の奥にいた座天使(邪神像)は九内伯斗を召喚して彼に魔王の指輪を授けたあと、力を使い果たして砂になった。
龍人 (たつびと)
異世界の亜人の頂点に立ち、中立的な立場にある龍が、自らの血と力を分け与えた存在。獣人の取りまとめ役として、一人だけ地上に送り込まれている。たびたび魔族と獣人の争いに介入してくる龍と共に、謎の組織「サタニスト」からも恐れられ、疎まれている。
Infinity GAME (いんふぃにてぃげーむ)
大野晶が作ったオンラインゲーム。モンスター討伐などでたまるスキルポイント(SP)を消費することで、さまざまなスキルを使用できる。九内伯斗とその側近たちは、いずれもこの「Infinity GAME」の登場人物である。このゲームにおける伯斗は大帝国を統べる魔王という設定で、最終ステージには彼らの本拠地である「不夜城」がある。舞台は近未来で、魔法の概念はない。このことは異世界において、伯斗たちが魔法耐性を持たないことにつながっている。異世界では伯斗の反則級の能力をはじめ、彼の側近にも決められたゲーム内の設定がすべて細かく反映されている。
クレジット
- 原作
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神埼 黒音
- キャラクター原案
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緒方 剛志
続編
魔王様、リトライ!R (まおうさまりとらい あーる)
神埼黒音の小説『魔王様、リトライ!』のコミカライズ作品。身ノ丈あまるの『魔王様、リトライ!』の続編で、原作小説新装版の第5巻以降の内容となる。舞台となる謎のファンタジー異世界に転生し、魔王となった元社... 関連ページ:魔王様、リトライ!R