あらすじ
第1巻
高校に進学した江口香穂のクラスには、つねに能面をつけている泉花子がいた。花子は、その特異な風貌からなにかとクラスの注目を集めていたが、その近寄りがたい雰囲気から誰も彼女に、なぜ能面をつけているのか、その素顔はどんな顔なのかを聞き出す事ができない。そんなある日、香穂は花子の幼なじみであるという相川賢司と知り合い、彼を通じて花子が優しい心の持ち主である事を知る。さらに能面のような顔をした女性が大好きだという能楽師の松田三郎も加わり、花子の周囲は少しずつ賑やかなものになっていく。
第2巻
夏になり、衣替えの時期がやって来た。そんな中、泉花子は相変わらず能面を顔につけた生活を送っている。花子の友人である江口香穂は花子の顔が蒸れないか心配をするが、こういう生活を何年も過ごしている花子は意に介さない。花子や香穂、同じクラスの篠田は、なんとか花子と接触する機会を作ろうとするが、能面を恐れてうまく言葉を掛ける事ができない。一方、花子のとなりの席の坂本は、そんな花子を絶世の美少女と脳内変換して、彼女との生活をやり過ごしていた。そんなある日、花子に思いを寄せる松田三郎は、余暇を利用して花子の家を訪れる。三郎を「兄貴」と慕う花子の幼なじみの相川賢司も、香穂と共に彼女の家を訪問する。子供の頃から何度も花子の家に来ている賢司は慣れていたが、初訪問となった香穂は花子の家に置かれている大量の能面に驚き絶句する。
第3巻
泉花子に思いを寄せる松田三郎は、彼女のために海に面した別荘を購入し、花子を誘う。花子の友人である江口香穂や相川賢司もいっしょに招待され、花子達は三郎の別荘に泊りがけでやって来た。花子のために水着を買ったり、泊まるところまで用意する三郎だったが、あまりにも花子に執着しすぎるために、逆に花子からは辟易されてしまう。さらに三郎の弟である松田四郎が花子達の前に現れ、三郎が花子に執心なあまり能の稽古が疎かになっているのではないかと心配する。四郎が兄の三郎を深く尊敬している事を知った花子だったが、三郎にとっては人生の目的は花子との結婚であり、能楽は二の次で、相変わらず花子に求婚するのだった。
第4巻
松田三郎達と海へ行った時に撮られた泉花子の水着画像が流出してしまった。だが三郎の兄の松田一は、花子とは無関係の女性達「NO-面女子」というアイドルグループをプロデュースし、流出した水着画像をアイドルグループのプロモーションに見せかける事に成功する。そのお礼を兼ねて松田家を訪れた花子達は、そこで出会った一から「ふつう」だと評される。これまでつねに能面をつけている事で、周囲からの好奇の目にさらされて生きて来た花子にとって、「ふつう」という言葉を掛けられるのは初めての事だった。これをきっかけに、一が花子に接近している事を知った三郎は、一に対して危機感を募らせる。
登場人物・キャラクター
泉 花子 (いずみ はなこ)
つねに能面を顔につけている女子高校生。泉花子の家は、代々能面を作る家系のため、その家に生まれた女性は能面をつけなければならないという習わしがある事から、顔に面をつけている。幼い頃から相川賢司の宿題の面倒を見ていたため、成績優秀で高校入試にもトップで合格している。毎日の弁当は重箱に入れて持参するなど料理の腕前にも優れ、大工道具で飾り切りができるほどの技術を持っている。その見た目に反して能面に対するこだわりはなく、家の習わしのため身につけているにすぎない。能面のせいで近寄りがたい雰囲気を漂わせており、周囲からは畏怖の念も込めて「能面女子」と呼ばれている。
江口 香穂 (えぐち かほ)
泉花子と同じ高校に通う女子高校生。花子のクラスメイトで、偶然が重なって彼女と親しくなる。周囲から好奇と畏敬の念を抱かれている花子にとって、高校での一番の親友とも呼べる存在だが、それでも花子の能面には慣れず驚いてしまう事も多い。花子が優しい心の持ち主であり、他人を気遣う事ができる少女である事を知り、なんとか彼女のよさを周囲の人達に理解してもらえるように心を砕く日々を過ごしている。
相川 賢司 (あいかわ けんじ)
泉花子の幼なじみの男子高校生。小学生の頃から花子の友達であり、花子にとって心を許せる数少ない相手でもある。花子に対しては恋愛感情を抱いているものの、花子からは「ペット」のようなものと認識されている。花子と同じ高校に行きたかったものの、入試に失敗したため別の高校に通っているが、つねに花子の事を気にかけて、頻繁に彼女の高校へと様子を見に来ている。料理にはこだわりがあり、花子の料理の腕前が上達したのも相川賢司のこだわりに応えようとしたためである。
松田 三郎 (まつだ さぶろう)
能楽師を務める男子大学生。能楽師の家元の跡取りとして将来を嘱望されている若者で、泉花子に対して理想の女性像を見出したために、事あるごとに求婚している。能面に触れる事が多いため、能面をつけている花子の表情も読み取る事ができる。花子には自分の気持ちを見透かされてしまう事から、少し苦手に感じている。
北山 祥子 (きたやま しょうこ)
泉花子のクラスで担任を務める女性。古典の教科を担当しているという理由から、能面をつけて登校している花子のクラスの担任を半ば押し付けられた。責任感の強い性格で、花子の能面についても担任としての立場から理解しようと努力している。趣味は古典芸能の鑑賞で、能楽師の松田三郎のファンクラブの会員でもある。生徒思いの教師であり、生徒からの人気も高い。泉花子の母親とは趣味が合うため意気投合し、なにかと連絡を取り合うほどの仲となる。
泉花子の母親 (いずみはなこのははおや)
泉花子の母親。花子と同じく面を顔につけているが、こちらは般若の面をつけている。実家は代々面を彫る家系だが、娘の花子と同じく伝統には疎く、花子にはふつうの子供として育ってほしいと願っている。教育熱心で、娘の将来の進路には真剣に悩んでおり、花子の担任である北山祥子とは連絡を取り合いながら進路の相談をしている。花子の父親とは若い頃に合コンで知り合った。
坂本 (さかもと)
泉花子と同じ高校に通う男子高校生。花子や江口香穂とは同じクラスであり、花子のとなりの席に座っている。坂本本人は席替えをしたいと思っているが、誰も花子のとなりに座りたがらないため、仕方なく彼女のとなりにいる。花子に対しては能面をつけているため表情がわからないものの、素顔が美少女であると脳内変換する事で、辛うじて花子のとなりに座るという重圧に耐えている。
篠田 (しのだ)
泉花子と同じ高校に通う女子高校生。花子のクラスメイトで、彼女が身につけている能面の事が気になっているが、江口香穂と異なり、花子に声を掛ける事ができない。そのため、坂本と共につねに彼女の能面の秘密について妄想する日々を過ごしている。
松田 一 (まつだ はじめ)
松田三郎の兄。能楽師の家元の宗家であり、アイドルグループをプロデュースするなど、芸能界とも強いつながりを持っている。代々続く富豪の家系でありながら、数百円の品物であっても支払いをごまかす事があるなど、特殊な経済観念を持っている。能面を身につけている泉花子に対し、「ふつう」だと声を掛けて距離を縮めようとしている事から、三郎に危機感を抱かれている。
松田 四郎 (まつだ しろう)
松田三郎の弟で小学生。幼い頃から能楽師の修行を積んでおり、自身に能楽を指導してくれる兄の三郎を深く尊敬している。現在は声変わりの時期のため、三郎からは声を出す事を禁じられており、主に筆談で会話している。泉花子と出会って彼女に執着する事が多くなった三郎が、自分にかまってくれなくなった事を寂しく思い、なんとか花子を三郎から引き離そうと考えている。
松田 二葉 (まつだ ふたば)
松田三郎の姉。兄の松田一が金銭の支払いをごまかす事が多いのに対し、松田二葉は逆に無駄を許さない性格をしている。家計の収支は一円単位で計算しており、一円でも赤字になった場合にはその原因を徹底的に追求する。その反面、自身が必要と判断した場合には、金に糸目をつけずに使う事を許している。
書誌情報
能面女子の花子さん 9巻 講談社〈KCx〉
(2016-04-07発行、 978-4063808445)
第2巻
(2017-01-06発行、 978-4063808902)
第3巻
(2017-10-06発行、 978-4063809558)
第4巻
(2018-08-07発行、 978-4065124963)
第5巻
(2019-08-07発行、 978-4065167816)
第6巻
(2020-11-13発行、 978-4065214251)
第7巻
(2021-10-13発行、 978-4065257012)
第8巻
(2022-09-13発行、 978-4065292730)
第9巻
(2023-11-13発行、 978-4065338681)