本田鹿の子の本棚

本田鹿の子の本棚

冴(さ)えないサラリーマンの本田鳩作は、思春期を迎えて会話が減ってしまった娘、本田鹿の子の内心を知るために、鹿の子の部屋に侵入する。鹿の子の部屋にあるブックカバーが掛けられたダークな小説の数々から垣間(かいま)見える鹿の子の内面に、日々精神を揺さぶられていく鳩作の姿を描いたシュールコメディ。コミックス各巻ごとにサブタイトルが異なり、第1巻は『本田鹿の子の本棚 暗黒文学少女篇』、第2巻は『本田鹿の子の本棚 天魔大戦篇』、第3巻は『本田鹿の子の本棚 大乱戦クラッシュファミリーズ篇』、第4巻は『本田鹿の子の本棚 続刊未定篇』、第5巻は『本田鹿の子の本棚 鳳凰の帰還篇』、第6巻は『本田鹿の子の本棚 魁題十五撰相篇』となっている。「リイドカフェ」で2017年4月から掲載の作品。

正式名称
本田鹿の子の本棚
ふりがな
ほんだかのこのほんだな
作者
ジャンル
親子
 
不条理・シュール
レーベル
リイドカフェコミックス(リイド社)
関連商品
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あらすじ

サラリーマンの本田鳩作は、思春期に入った娘の本田鹿の子と会話が激減したことを悲しく思っていた。知っているのは大の本好きであることと、歯磨きをしながら歩き回る変な癖しかないことから、鳩作は鹿の子の内面を知るために彼女の部屋に侵入することにする。それは他人の本棚を見ると、その人物を知るプロファイリングに役立つとされているためだった。ブックカバーの掛けられた本ばかりが並ぶ本棚を前に、鳩作は「女に火をつける男」と題された一冊の本を手に取る。(エピソード「女に火をつける男」)

いつものように鹿の子の部屋に侵入して本を読んでいた鳩作は、催眠攻撃を受けているような気分に苛(さいな)まれていた。それというのも鹿の子の本棚からピックアップした「ネゴシエーターたちⅡ」という本に収録されている作品「ゴエモン&ガンタンク」を読んだせいだった。鳩作は朦朧(もうろう)としながらも、「ゴエモン&ガンタンク」の内容を回想する。それは石川五右衛門に髪型が似ているというだけで幼少期からいじめを受け続けていた男性と、『機動戦士ガンダム』に登場するロボット「ガンタンク」のあだ名で呼ばれ続けてきたカウンセラーの物語だった。(エピソード「ゴエモン&ガンタンク」)

鳩作は鹿の子の部屋に侵入して本棚をピックアップしていると、妻から夕飯のリクエストについての電話を受ける。輸入食材店にいるというその電話をきっかけに、鳩作は鹿の子の本棚の海外小説「狂王ガルザーシリーズ」を手にする。その本を読んだ鳩作は、挟まれていた栞(しおり)から鹿子が復刊を希望していることを知り、軽く情報を調べてみることにする。(エピソード「豚肉の下に侍る者達」)

ある夜、風呂上がりの鹿の子に遭遇した鳩作は、鹿の子の機嫌が非常に悪いことに恐れをなす。鹿の子の様子を気にしながら鳩作も風呂へと赴き、バスタブに投与された大量の入浴剤を見て、ある一冊の本を思い出して戦慄する。それは「本当はヤバげな家庭の医学」に収録された、不良たちの抗争を描いた作品「書を捨てよ 風呂に行こう」だった。作品の中で、強豪不良チームのリーダー、風炉野房男は、捕縛した敵対チームのリーダーにとある拷問を行うことを提案する。(エピソード「書を捨てよ 風呂にいこう」)

ある日、鹿の子は母親から琥珀(こはく)のキーホルダーをもらう。その様子を見ていた鳩作は、鹿の子の部屋で読んだ「生体鉱物伝奇」の中の、琥珀に関連する作品「シャーマニックストレンジャー」のストーリーを思い出していた。その作品は、主人公である女子大学生がとある露天商から虫入り琥珀のネックレスを購入したことで、不可思議な出来事に見舞われる。(エピソード「シャーマニックストレンジャー」)

鹿の子は長期休みを前にして、友人の杣水月からフリーゲームの共同制作を持ちかけられる。ノベルゲームの制作ツールを使ってゲームを作ることにした二人は、鹿の子がシナリオ制作、水月がイラストと仕上げを担当することに決めた。「家族」をテーマにした作品をとリクエストした水月に対し、鹿の子は「拷問一家(仮)」というシナリオを提出する。それは、拷問一族「スカベンジャー家」の娘、ヒムロを主人公とした物語だった。(エピソード「拷問一家(仮)」)

登場人物・キャラクター

本田 鳩作 (ほんだ きゅうさく)

本田鹿の子の父親。黒髪をぴっちりとした七三分けにしている。他人の本棚を見るとプロファイリングに役立つという情報をもとに、思春期に入って会話もなくなった鹿の子の好みを知るため、鹿の子の留守中に部屋に潜入し、蔵書を読んでいる。速読術を習得しているため短時間での読破が可能で、最初は潜入のたびに緊張感を持っていたが、次第に側転しながら入室したり、本棚の前で無意味に格好をつけたりと、調子に乗った様子を見せている。また小説を読む時は、映像が頭の中に浮かぶタイプ。かつては筒井康隆やフレドリック・ブラウンなどの著書を読み漁(あさ)っており、クセの強い作品を読んでいた自負があるため、鹿の子の蔵書には少々戸惑いを覚えている。

本田 鹿の子 (ほんだ かのこ)

本田鳩作の娘。大の本好きの女子学生で、黒髪をポニーテールにしている。歯磨きをしながら歩き回る変な癖がある。小学生の頃は図書委員を務めており、誕生日のプレゼントに星新一のショートショート作品集を鳩作にねだったことがある。しかし、思春期に入った頃から鳩作の前では漫画すら読まず、会話もしていない。本棚の蔵書にはすべてブックカバーを付け、気に入った作品には自作の栞を挟んでいる。マイナー作家の短編集を好み、一冊を通して一つの物語になっている作品は所持していない。

杣 水月 (そま みづき)

本田鹿の子のクラスメイトの女子学生。白髪のショートヘアで、長い前髪で左目を隠している。園芸教室に通っており、鹿の子に香り付きの栞をプレゼントするなど仲がいい。しかし一般的な感性を持ち、鹿の子の作ったバッドエンドしかないゲームブックや、フリーゲーム用のシナリオとして提出された「拷問一家(仮)」の内容には憤慨していた。また植物マニアで山に詳しく、一度植物や山に関する話を始めると止まらなくなってしまう。

男谷 一発 (おとこだに いっぱつ)

小説家を生業とする男性。昭和49年生まれで、平成18年に逝去している。本名は「小谷雄一」で、別名義の「罵頭男樹」でも作品を発表していた。両親を早くに亡くしており、10代の頃から妹を学校に通わせるためにさまざまな仕事を経験し、獄中に入ったこともある。BL要素の強い「目覚まし時計」や、男谷一発自身をモデルにしたキャラクター「夕一」が登場する「夕一シリーズ」も手がけている。「男谷一発 無頼作品集」の「空手家」では、妹と二人暮らししていたアパートに「中村」と名乗る空手家の幽霊を登場させている。

その他キーワード

女に火をつける男 (おんなにひをつけるおとこ)

恋田敬の著作の短編小説集「女に火をつける男」に収録されている表題作。巨大隕石の衝突により同時刻に死亡した、恋人同士の庵也と英里を主人公にしている。「生まれ変わってもいっしょになろう」と約束を交わした二人だったが、二人の前に現れた閻魔(えんま)大王から、滅亡した地球に生存しているのは仲間同士で食らい合うエイリアンだけだと聞かされ、エイリアンに転生させられてしまう。来世を誓った恋人たちの、その後を皮肉っぽく描いた作品。

ミニモン

帝都正樹の著作の短編小説集「帝都正樹 奇想短編集」に収録されている作品。人とモンスターが共存し、子供たちのあいだではミニモンスターを戦わせるのが大流行しているという異世界を舞台に、ミニモンバトルに興じる少女、ゴス子を主人公にしている。ライバルとのミニモンバトルで敗北したゴス子は、パートナーのイモモンに、拷問めいた方法で、本来習得することのできない破壊ビームを習得させようとする。しかしそのため、イモモンを餓死寸前まで追い詰めてしまい、それをきっかけに恐怖体験に見舞われることとなる。

目覚まし時計 (めざましどけい)

男谷一発の著作の短編小説集「目覚まし時計」に収録されている表題作。朝に弱く、あまり寝起きのよくない少年、増田を主人公にしている。サイバー技術の進歩した近未来を舞台にしており、ヒト型で必ず起きることができるいう話題の目覚まし時計が発売された。その評判を聞いて購入した増田だったが、その目覚まし時計によって犯されそうになる。

空手家 (からてか)

男谷一発の著作の短編小説集「男谷一発 無頼作品集」に収録されている作品で、男谷自身をモデルとしたキャラクター「夕一」を主人公にした「夕一シリーズ」の最終作。かつてトレーニングのし過ぎで死んだ空手家の幽霊が出るというアパートに引っ越した夕一とその妹、李子は、両親を早くに亡くし、二人しか身内がいなかった。夕一は李子を学校に通わせるため、深夜までアルバイト漬けの生活を送っていたが、高校2年生になった李子が強姦殺人に遭ってしまう。復讐心にかられて体を鍛え始めた夕一と、それを見守る空手家の幽霊の生活が描かれている。

グレープフルーツ太郎 (ぐれーぷふるーつたろう)

尼ヶ崎三太夫の著作の短編小説集「スーパー青果大戦」に収録されている作品。グレープフルーツから生まれた男性、グレープフルーツ太郎を主人公にしている。外国人っぽい容姿に成長したグレープフルーツ太郎は村でいじめられていたが、英雄になって村人たちを見返すため鬼ヶ島へと旅立つ。しかし、そこで外国人っぽい容姿の人々と出会ったグレープフルーツ太郎は、過去を忘れて幸せに暮らすことを決める。本田鹿の子はこの作品を読破後、「プルーン太郎」という二次創作キャラクターを作り出した。

愛浴和尚 (あいよくおしょう)

アダム竹中の著作の短編小説集「ネゴシエーターたち」に収録されている作品。自殺の名所で自殺防止パトロールを行っている僧侶の愛浴を主人公にしている。些細(ささい)なことで思い悩んでしまう性質に苦しんだ末に自殺を図った少年に、愛浴はエロ本の所持の有無を聞き、エロ本には自殺の抑制効果があるため溜めこむべきだと持論を展開する。

カードバトラーカケル

阿修羅木鉄の著作の短編小説集「賭けごと放浪記」に収録されている作品。カードゲーム「マジック・セプターズ」の東京チャンピオンの小学生男子、斗原カケルを主人公にしている。カケルがいつものようにカードショップに出かけると、そこでは最新VRシステムでカードの攻撃を体感させられた仲間たちが見知らぬおばさんに敗北し、心を破壊されて心身喪失状態に陥っていた。火山災害が起こったというのにゲームに興じる子供たちが不謹慎だと語り、心の教育を施すと称して勝負を仕掛けてくるおばさんとの戦いを回避するため、カケルは一計を案じる。

ブリジット・キャンベルVS異世界の化物 (ぶりじっと きゃんべるぶいえすいせかいのもんすたー)

迫水力の著作の小説。海で鮫(さめ)に食われて死んだことをきっかけに異世界に転生し、冒険者としての生活を送るようになったアメリカ人の少女、ブリジットを主人公にしている。一方でブリジットの死後を描いたアメリカでは、ブリジットの恋人が鮫を倒す姿が描かれ、それに附随して、やがて冒険者としてのランクを上げたブリジットが未確認のモンスター討伐に挑む。

柚木さん (ゆのきさん)

望月睦睦の著作の短編小説集「ハードジュヴナイル」に収録されている作品。男子中学生の岡元を主人公にしている。岡元の小学生の頃の同級生の少女、柚木は、まじめで融通のきかない女性だったため、中学生になってから同級生からいじめを受けていた。さらに柚木は彼女の母親の身勝手な持論によって追い詰められていく。岡元が柚木と再会したあと、柚木について人伝(ひとづて)に聞いた話を中心に描かれている。

糖女房 (とうにょうぼう)

奥くくるの著作の短編小説集「蜜壺 シャクティ」に収録されている作品。極度の糖尿病を患っている男性、糖山金四郎を主人公にしている。同級生の赤玉紅実に片思いしている金四郎は、父親の跡を継いだりんご園に夜な夜な肥料と称して放尿を繰り返していた。やがて限りなく糖度100度とされるりんごの生産者として知られるようになった紅実が結婚したのを機に、金四郎はりんご園への放尿をやめることにする。金四郎と紅実の思いが交錯するグロテスクな恋愛模様が描かれている。

爆発物処理班 (ばくはつぶつしょりはん)

北小路大門の著作の短編小説集「極限地帯のトークタイム」に収録されている作品。テロリストが仕掛けた新型爆弾に挑む爆発物処理班を主役にしている。複雑すぎる爆発物の処理に煮詰まった子門を冷静にさせるため、班長はあえて小休止を提案し、日本ダービーの会話をきっかけに、各自の推し競走馬の話を展開させていく。

ぼくのデス子 13歳の少女 (ぼくのですこ じゅうさんさいのしょうじょ)

蠅沢遙の著作の短編小説集「ぼくのデス子 13歳の少女」の表題作。全人類の命の蠟燭を管理する死神は、娘であるデス子の誕生日ケーキを飾るため、13本の蠟燭を私的に持ち帰る。デス子がケーキの蠟燭を吹き消したことで13人の人間が各地で突然死することになったが、デス子のその後の行動によって、混沌とした生命が生まれる様子が描かれている。

ゴエモン&ガンタンク (ごえもんあんどがんたんく)

アダム竹中の著作の短編小説集「ネゴシエーターたちⅡ」に収録されている作品。髪型が石川五右衛門に似ているというだけで幼少期からいじめを受け続けていた男性、柿木五郎吉を主人公にしている。いじめに耐えかねて本当に窃盗犯となり逮捕された五郎吉は警察署で、かつて『機動戦士ガンダム』に登場するロボット「ガンタンク」とあだ名され続けてきたカウンセラーの岩田九郎に出会うことで新たな知見を得る。

抗徹巨人ダギオス (こうてつきょじんだぎおす)

鈍色空の著作の短編小説集「プロジェクト21XX」に収録されている作品。21XX年に現れた異星人によって人類が滅亡に陥っている地球を舞台にしている。宇宙人に対抗する唯一の手段と目されているロボット「抗徹巨人ダギオス」を開発中の新御茶ノ水博士は、エネルギー制御に苦戦し、開発をあきらめようとしていた。一方、開発助手を務める女性の九里緑は、恋人である門野倉夫の事故死をきっかけに研究に没頭するようになる。新御茶ノ水博士が次第に抗徹巨人ダギオスの開発に疎外感を感じ始め、憎悪すら抱くようになっていく姿が描かれている。

黒山羊高校オカルト研究会 (くろやぎこうこうおかるとけんきゅうかい)

角田偽史の著作の連作短編小説集。九巻まで発行されている。収録作の一つ「猿の手 編」は、黒山羊高校のオカルト研究会が、どんな願いも三つ叶(かな)えてくれるが、絶対にその願いは歪(ゆが)んだ形で叶えられるという「猿の手」を入手する。そこでオカルト研究会の面々は、いかに猿の手を困らせる願いごとをかけられるか試していく。また「黒山羊高校オカルト研究会(新装版)」も刊行されており、同じく『猿の手 編』が収録されているが、こちらは猿の手にかける三つの願いごとが、「黒山羊高校オカルト研究会」に収録されている願いとはまったく別のものになっている。

ジパング

田中丸大砲の著作の短編小説集「どくとるクランケ航海記」に収録されている作品。マルコ・ポーロの著書『東方見聞録』に描かれた黄金の国ジパングを夢見て日本を目指した、ポルトガル人のガブリエル提督を主人公にしている。嵐で位置を見失った一行は、未確認飛行物体に拉致され、見知らぬ宇宙船内をジパングだとカンちがいしてしまう。命からがら逃げ出したガブリエル提督がそれ以来ジパングを敵視し、終末戦争に向けた準備を始める姿が描かれている。

シロアリ飯 (しろありめし)

右国虫太郎の著作の短編小説集「シロアリアントン風来記」に収録されている作品。旅のシロアリを主人公にしている。かつてアリ同士の戦争で巣を滅ぼされた旅のシロアリが食用不動産紹介屋に入ったところ、美食家を自称するアメリカカンザイシロアリがその品揃えを酷評するところに出くわす。それを見た旅のシロアリは、アメリカカンザイシロアリにとある物件を紹介し、破滅へ導く。

超能力少年 紀岡 (ちょうのうりょくしょうねん きのおか)

間翔間の著作の短編小説集「ルナティックトラベラー」に収録されている作品。タイムリープの超能力を持つ少年、紀岡を主人公にしている。超能力を駆使してテストを有利に進めていた紀岡だったが、告白だけが何度トライしてもうまくいかないイライラから、高校に入学したばかりで気に障るようになった妹に対し、紀岡は母親が妹の妊娠前にタイムリープし、妹の存在を消そうと考えるようになる。超能力に振り回される兄妹の姿が描かれている。

神隠しのサイコ (かみかくしのさいこ)

不帰離人の著作の短編小説集「仙境遺文」に収録されている、田舎(いなか)を舞台にしたホラー作品。妙に勘が鋭く、どんな難解なゲームのルールも瞬時に理解してしまう少女、祭子と、そんな祭子をはとこに持つ少年を主人公にしている。夏休みのある日、留守番をしながら怪談話をしていた主人公と祭子は、怪談のシチュエーションそっくりの状況に陥り、二人で家から逃げ出す。

漫画家 内田拳紫郎 インタビュー (まんがか うちだけんしろう いんたびゅー)

佐世保海路の著作の短編小説集「ダークエンジェルス」に収録されている作品。読者となる子供たちが不快に感じかねない、ダークで有害な作風を持つ少年漫画家の内田拳紫郎が、なぜそんな作品を描くようになったかというインタビューがメインとなっている。しかし、インタビュアーがふつうの人間ではないと発覚したことで、ストーリーが急展開する。

猫カフェ (ねこかふぇ)

松平忠輝の著作の短編小説集「さだのぶのあにまるぷらねっと」に収録されている作品。とある猫カフェで猫たちから異常に懐かれる童顔の男性、蘇武定信を主人公にしている。定信は暴力団の若頭補佐で、現在跡目争いの抗争中のため、猫カフェに来店する直前にも敵対する組にカチコミに行っていた。本来猫カフェにまったく興味のなかった定信だったが、カチコミに行った銃撃戦の最中、舎弟から猫カフェをお勧めされる。「さだのぶのあにまるぷらねっと」の続編として、定信の所属する組の組長の娘が誘拐される「さだのぶのきらくにやろうよ」も刊行されている。

男のデスゲーム (おとこのですげーむ)

宍戸獅子丸の著作の短編小説集「男とはなんぞや」に収録されている作品。修学旅行中にデスゲームの会場に拉致監禁された2年B組の生徒たちを主人公にしている。敗者が死亡する「限定ポーカー」を、最初の競技に提示する主催者たちだったが、デスゲームに招待された2年B組の生徒たちは血気盛んで、死をも恐れず主催者たちに立ち向かう「『魁!!男塾』みたいな連中」だったことで、主催側は自分たちのリサーチ不足を後悔し始める。

星霜の人 (せいそうのひと)

テロメア未明の著作の短編小説集「赤い人魚館」に収録されているサイコホラー作品。かつて人魚の肉を食べて不老不死になった少女の八重と、八重の世話係をしている看護師の青年を主軸に、金持ちに対する臓器移植を資金源にしている病院を舞台に展開される。臓器を摘出されるためだけに監禁されている八重を少しでも慰めようとする青年だが、以前八重から心臓移植を受けた少女の体に異変が起きたことで、平穏だった日常が一転する。

狂王ガルザーシリーズ (きょうおうがるざーしりーず)

ガトー・イーグルトンの著作の小説シリーズ。本田鹿の子が古本で見つけてきた作品だが絶版となっており、鹿の子は当初、1巻だけを所有していた。鹿の子は強く復刊を希望しておきながら、復刊されてもそのことに気づいていなかったが、本田鳩作の遠回しな示唆によって復刊していることに気づき、続刊を購入している。うたかたの国の狂王として知られるガルザー・ニーバーグが思いつきで国中の「弟」を虐殺しようとしたり、妹姫が好意を抱いた下位貴族を抹殺しようとするのを、家臣たちが思いがけない方法で阻止しようとする。

おつかいは はじめてか?

邪画曲の著作の短編小説集「Be Gentleman」に収録されている作品。幼児が初めてのお使いに挑戦するテレビ番組「おつかいは はじめてか?」に出演した幼い少女の九木菊を主人公にしている。母親に頼まれてカレーの材料を買いに行った菊はじゃがいもを買うのを忘れ、ペナルティとして「じゃがいも君」に連れ去られてしまう。しかし、その先でかけがえのないものを得て成長する菊の姿を描いている。

マッドプロレス20XX (まっどぷろれすにせんえっくすえっくす)

マスクド乱世の著作の短編小説集「君たちはどう生きていくか プロレス篇」に収録されている作品。核戦争によって滅亡した地球を舞台にしており、暴力に支配された世界で生き抜く二人のプロレスラーを主役としている。暴徒によって襲われた集落を助けに来たプロレスラーのレオナルド・ジャーニーとビリー・ダンタレスは、暴徒たちに対し新たな合体技を披露する。その結果二人が、自分たちが大きな円運動の中の存在であることを悟る。

セカイ系 (せかいけい)

遊星静止の著作の短編小説集「幼年期が終わらずに」に収録されている作品。心臓の病気を患う女性のナスカを主人公にしている。成功率の低い手術に怖(お)じ気づくナスカに対し、人間に化けてナスカに近づいていた宇宙人は「ナスカが死んだらその時点で地球人類を滅亡させる」と断言する。手術に怯(おび)えるナスカと、宇宙人の脅迫まじりの交流を描いている。

ミユっちとチカ公 (みゆっちとちかこう)

羽多田オパオパの著作の短編小説集「肌色友戯」に収録されている作品。親友の少女、ミユっちをヌーディストレストランに誘ったヌーディストの少女、チカ公だったが、その日を境にミユっちと疎遠になってしまう。ヌーディストであることをカミングアウトしたことを後悔するチカ公だったが、ある日ミユっちから突然遊びの誘いを受け、待ち合わせ場所に赴くと、そこには全裸のミユっちがいた。ヌーディストの少女、チカ公と、水着になることも嫌がるシャイガールのミユっちとの心の交流を描いている。

人手抄 (ひとでしょう)

伊東篁の著作の短編小説集「SM(シャンティマントラ)作品集」に収録されている作品。あがり症で手の平に人の字を書いて舐(な)める癖のある少女、紙魚野人美を主人公にしている。緊張からクラスメイトの前で自己紹介に失敗した人美は、クラスメイトの琳からいじめを受けるようになっていた。しかし、書道家だった祖父の位牌(いはい)を手に取ってから、人美の様子が一変する。

肩こり人間 (かたこりにんげん)

籾しだくの著作の短編小説集「世の中金だ」に収録されている作品。うどん屋を経営する傍ら副業として按摩(あんま)師をしている男性のもとに、一人の女性が助けを求めてくるところから始まる。女性の父親は中小企業の社長を務めていたが、経済政策が招いた不況で会社が倒産し、ストレスによる肩こりが悪化しすぎて僧帽筋が巨大化し、頭部が陥没した異形の姿となっていた。異形と化した女性の父親を、按摩師の男性が救う姿が描かれている。

黒氏緋花伝 (こくしひかでん)

金五衰の著作の短編小説集「古拳房爆裂」に収録されている作品。古代中国を舞台にしており、秘経穴を突くことで人体を治癒、または破壊することのできる拳法「密伝黒氏経意拳」の使い手である緋苞と緋花を主役としている。緋苞と緋花は奇病に苦しむ村で粛々と治療を続けていた。そんな中、緋苞がついに奇病を完治できる秘経穴の候補を二つまでに絞り込むことに成功する。しかし、ハズレの秘経穴だった場合、突けば相手が爆死してしまうという。緋苞と緋花の愛と、ある秘経穴が発見されるに至る経緯を描いている。

飲尿バー エリュシオン (いんにょうばー えりゅしおん)

夕張ゆばりの著作の短編小説集「下の雫」に収録されている作品。飲尿嗜好(しこう)の来店客たちが訪れる店を舞台にしており、バーテンダーの用意した尿や自分と親友の尿カクテルを楽しむ女性、雫を主人公にしている。男性恐怖症の雫は親友の雪との尿カクテルを楽しんでいたが、そこに強引にアスリートを自称する男性が割り込んでくる。

神感染 ファイナルボクササイズ (しんかんせん ふぁいなるぼくささいず)

青黴麒麟児の著作の短編小説集「悪魔王子」に収録されている作品。人間を撲滅させるために生み出されたものの、人間大の大きさと人格を持ってしまった殺人ウイルスを主人公にしている。製作者から失敗作と罵倒される殺人ウイルスは、ボクサー崩れの父親から虐待を受けている少年と出会い、ボクシングに興味を持つようになる。殺人ウイルスが友人の死をきっかけに、感情を持つようになる姿を描いている。

ナチュラルマン

立花キャップの著作の短編小説集「怒りの巨人」に収録されている作品。怪獣を倒す実在の巨人ヒーロー、ナチュラルマンのコミカライズを担当する漫画家の丸巣十三三と、かつてナチュラルマンに命を救われた女性編集者の峰芙蓉を主人公にしている。芙蓉は地球を守るナチュラルマンにあこがれており、十三三の描く暴力的で情けないコミカライズに不満を持っていた。締切前になるとよく失踪する十三三の行方を追った芙蓉が、そこで思いがけないものを目にする。

書を捨てよ 風呂にいこう (しょをすてよ ふろにいこう)

富良野富士男の著作の短編小説集「本当はヤバげな家庭の医学」に収録されている作品。港区を根城とする不良チームの抗争が激化している街を舞台にしている。中でも強豪チーム、アスモデウスのリーダー、風炉野房男は、捕縛した敵対チームのリーダーの局部に入浴剤を擦り込むことを提案する。意味のわからない提案に困惑するチームメンバーに、房男はかつて自分が母親から強要された経験を語り始める。

キンバリー中止計画 (きんばりーちゅうしけいかく)

魔儀羅憑一の著作の短編小説集「混沌大系」に収録されているSF作品。2199年の横須賀を舞台にしており、素直になれない少女、キンバリー山崎を主人公にしている。幼なじみの少年、昴をかわいく思っているものの素直に接することのできないキンバリーは、昴をいじめることによって時間を共有するという手段を取っていた。ある日、昴に下半身を露出させ、ちんちんおどりをさせていたところ、突然未来からタイムスリップしてきたロボットのキムチョップが現れる。些細な出来事によって訪れる破滅的な未来を回避するため、キムチョップの助言をもとに二人が奮闘する。

オーメガ星の有害図書 (おーめがせいのゆうがいとしょ)

宙船宙魚の著作の短編小説集「妖星伝承」に収録されている作品。架空の惑星であるオーメガ星で発行されている作中コミック「シスターメイト87」の内容と、「シスターメイト87」が有害図書指定された際の読者と作者の反応が描かれている。

妖怪たちの戦後史 (ようかいたちのせんごし)

日野百頭女の著作の短編小説集「壁ぬり男」に収録されているオカルト作品。戦時中に妖怪、ぬりかべと遭遇した日本兵と、ぬりかべとの思いがけない関係を描く。戦時中にぬりかべと遭遇した日本兵は故郷に生還し、恋人の木乃と再会した。しかし二人が結ばれる夜、ぬりかべは木乃の局部に現れ、行為を邪魔し始める。

死にぎわ (しにぎわ)

男谷一発の著作の短編小説集「夕やけにくたばれ」に収録されている作品。作者である男谷一発をモデルとした成人男性、夕一を主人公にした「夕一シリーズ」の一作であり、夕一が母親の死を看(み)取った瞬間から始まっている。悟ったような言葉を残して息を引き取った母親の死に際を見た夕一は、暴力的な気分を持て余し、実戦空手道場へと足を向けるも道に迷ってしまう。そこで武道家の老人、巳藤鉄六と出会った夕一は死について改めて向き合い、創作意欲を強く刺激される。

ゆで理論殺人事件 (ゆでりろんさつじんじけん)

青白鬼脳細坊の著作の短編小説集「ヘラクレス ミステリー」に収録されている作品。善玉レスラーのブロンコキッドが、明らかにレスラーの必殺技で殺害されているのを発見したレスラーたちは、どんな必殺技でブロンコキッドが殺害されたのか推理を始める。プロレス団体、マッスルシードの合宿中に起きた事件を描いている。

陰日本奇譚ツアー・上/下 (かげにほんきたんつあー じょう げ)

叫び童景の著作の、分冊された短編小説集。上巻に収録されている「水憑き」は、故郷の寂れた温泉街を飛び出した民俗学者の三六が、温泉街に残った内気な姉の八十子からもたらされた情報を聞いて故郷に舞い戻り、「水憑き」と呼ばれる怪異に出会う怪異譚(たん)。また下巻に収録されている「湯の花」は、「水憑き」で三六を襲った怪異の正体と、三六が故郷を出たあと、八十子がどう過ごし、そしてなにを思って三六を呼び戻したかが描かれている。

幼馴染考 (おさななじみこう)

アミーゴ寺崎の著作の短編小説集「猿人でも分かるまんが研究部」に収録されている作品。幼なじみキャラを好む望は、恋愛まんがにおいて幼なじみが不利な状況に置かれやすいのはなぜかという疑問を抱き、荒野は楚の件に、編集者の目線から考察する。17歳の少年、愛羽望と隈貝荒野が恋愛まんがにおける幼なじみキャラについて考察する姿を描いている。

うみがなる

天秤棒ぬらぬらの著作の短編小説集「ポイント・ネモ」に収録されている作品。幼なじみの榊と涼子のカップルが道を歩いていた際に、死角から歩いてきたタコの特徴を持つ二人の宇宙人と交差点でぶつかり、涼子が、宇宙人の一人であるサナトと心と体が入れ替わってしまう。四人は協力して体と精神を正しく戻そうとするが、うまくいかない。そのうち、サナトの体に入った涼子の心と、涼子の体に入ったサナトの心に異変が生じ始める。精神と肉体の齟齬(そご)によって本来の人生が狂っていく四人の姿を描いている。

観測者を見る猫 (かんそくしゃをみるねこ)

下山蓋然の著作の短編小説集「ギフテッド」に収録されている作品。類い希な頭脳を持ちながらも、馬鹿な両親にそれを悟らせないよう生きる2歳児の男子、山田死生箱中猫(やまだシュレディンガーキャット)を主人公にしている。山田死生箱中猫はほんの少しの時間、検察官の伯父に預けられた際にその素顔を見破られたことで、今後の人生を相談する機会を得る。そして周囲からは理解されないほどの頭脳を持った二人は、他人を欺いて生きていくことを改めて決意する。

続・耳なし芳一&続・平家物語 (ぞく みみなしほういちあんどぞく へいけものがたり)

羽多田オパオパの著作の短編小説集「完結編」に収録されている作品。『耳なし芳一』と『平家物語』の続編として描かれている。『耳なし芳一』の作中で、平家の怨霊に耳をちぎり取られた芳一を主人公にしている。芳一が後日、和尚によって全身に般若(はんにゃ)心経を書き込んでもらい、平家の怨霊に対して見えない形で物理攻撃を加え、倒していく。

メシマズヒロイン

下呂茜の著作の短編小説集「誰も僕を裁かない」に収録されている作品。料理が異常に下手な少女、夏樹を主人公にしている。夏樹の恋人、久志は、夏樹が初めて作ったラザニアを食べたことで内臓が溶解し、さらに突然変異を起こしてモンスターと化してしまう。それを恨んだ久志の妹は、久志の体から抽出された有毒成分を夏樹の父親に飲ませようと襲撃する。

核まんが道 (かくまんがみち)

中田終末時計の著作の短編小説集「地球のやばい午後」に収録されている作品。核戦争によって滅亡した地球を舞台にしており、暴力に支配された世界に生きる漫画家のサライを主人公にしている。なにを描いても編集長のバラバに没にされる日々に憤慨し、一帯の支配者とその情婦をモデルにした官能まんがを同人誌として発行する。命の危険を犯してでも漫画家として書きたいものを譲らないサライの真摯な姿を描いている。

シャーマニックストレンジャー

羽羽羽麗の著作の短編小説集「生体鉱物伝奇」に収録されている作品。ごくふつうの女子大学生を主人公にしている。昔から存在感が薄く、他人とつながることもなかった女子大学生は、同じく存在感がなく消え入りそうな露天商を見つけ、虫入り琥珀のネックレスを購入する。しかし、琥珀に内包された虫と同じ虫に刺されたことをきっかけに、肉体に不気味な変化が訪れる。

勇気発進ギザハート (ゆうきはっしんぎざはーと)

鈍色空の著作の短編小説集「リアルとスーパーの不気味の谷」に収録されている作品。地球征服を目論む宇宙人に対抗するため生み出された、リアルロボット系AIを搭載された心優しい巨大ロボット・ギザハートを主人公にしている。戦いに疑問を抱くギザハートに理解を示したメカニックの女性、光に対し、ギザハートは恋愛感情を持ち始めていた。そこでギザハートは、光の心を知るためコクピットに光を閉じ込め、同調率を測ろうとするが、その結果として光の本心を知ってしまい、人間のように病んだ行動をとるようになってしまう。

擬人化メシ (ぎじんかめし)

中島だいなもの著作の短編小説集「桜子の胃袋」に収録されている作品。人間のような意識を持つ野菜たちが、断末魔の悲鳴をあげながら野菜炒(いた)めとして料理されていく一部始終を描いている。作者の中島だいなもは、これをパンを擬人化したアニメ作品を見て思いついたと後書きに記述しており、本田鳩作が衝撃を受けている。

疾風伝説バレンタイン (しっぷうでんせつばれんたいん)

颶風二郎三郎の著作の短編小説集「風の魂を持つ男」に収録されている作品。バイク以外に興味のない男子高校生の風間を主人公にしている。バレンタインのチョコレートすら受け取らない主義の風間が、頑(かたく)なに貸し借りや奢(おご)りなどを嫌うのは、かつて懇意にしていた先輩がヤクザから金時計を受け取ったのをきっかけに変貌していったのが原因だった。

飯島アニマ (いいじまあにま)

笠原刑部の著作の短編小説集「君に馴れにし我が身とおもへば」に収録されている作品。夏休みの自由研究に悩む小学5年生の少年、豊市を主人公にしている。紙粘土で山の模型を作ることにした豊市は、さらにその山肌にかさぶたを貼ってリアルな山を表現することを思いつくが、自分のものだけでは足りず、クラスメイトのかさぶたを買い取ることにする。男子が売りに来る中、女子で唯一かさぶたを売りに来た飯島忍に対し、豊市は言いようのない感情を抱いたまま山の模型を完成させていく。

バスターロード

迅電車輔の著作の短編小説集「ぼくにその手を汚せというのか」に収録されている作品。治安の悪い地域で生きてきた男性、二ノ曲輪を主人公にしている。自動車免許の教習所に通うことにした二ノ曲輪は、つねに最悪の事態を想定していることもあってシミュレーターでの教習を初回ノーミスでクリアする。そしてその実力を見込まれ、鬼畜難易度と言われているエクストラハードモードのシミュレーターに挑むことになる。命や安全が他人の気遣いによってもたらされていることを知り、さらに最悪の事態を考えるようになる二ノ曲輪の姿を描いている。

弩級異伝 毛利 (どきゅういでん もうり)

稲村天変の著作の短編小説集「超古代文明文書ハルカ」に収録されている作品。毛利元就が三人の息子、毛利隆元、吉川元春、小早川隆景に語った、3本の矢を用いた逸話が基となっている。3本の矢を併せればやすやすと折れないと語りたかった元就だが、隆元たちが1000本単位の矢をも簡単に折っていくことから、意地になって国が滅ぶまで民に矢を作らせ続ける。

デスゲームで死んだら異世界転生した!? (ですげーむでしんだらいせかいてんせいした)

松村アガルタの著作の小説。三木原という男子学生を主人公にしている。平成最後の年、3年B組の生徒たちは政治家たちに拉致され、新元号の候補がゼッケンに書かれたジャージを着用しての殺し合いを強要された。体内に爆弾を埋め込まれて逃げ場を失い、次々にクラスメイトが殺し合っていく中、三木原もついに死亡してしまう。しかしその直後神から神託が下り、異世界に転生することになる。

脳内ラヴサバイヴ (のうないらゔさばいゔ)

チャフフレア後藤の著作の短編小説集「メンタルマックス・リローデッド」に収録されている作品。浅留都大学のサバイバルゲームサークルに所属する青年、霧隠密を主人公にしている。密は同じ大学の生徒が脳内彼女と話しているのを目にし、絶望感を味わっていた。そんな時、密はいつもいっしょにいる友人の勧めで、サークルの新歓コンパに参加することになる。

水着回 (みずぎかい)

小金井ゴルドマンの著作の短編小説集「太陽がいーっぱい」に収録されている作品。2組の男女が人気のない海を訪れ、太陽の下で海を満喫していた。しかし数瞬ともたずに体が炎上し始め、夜になって駆けつけた警察と各自の両親が灰になった遺体を前に泣き崩れ、四人の正体が明らかとなる。

サイコパス

松平忠輝の著作の短編小説集「さだのぶのあにまるぷらねっと」の続編である、「さだのぶのきらくにやろうよ」に収録されている作品。拉致された組長の娘、阿古耶を、童顔の若頭補佐、蘇武定信が救出するシーンから、無事に阿古耶を救出した定信が行きつけのラーメン屋でサイコパスとはなにかを語り合う姿が描かれている。

偉大な飛躍 (いだいなひやく)

ジェヴォーダン団十郎の著作の短編小説集「ルナゲートのカナタへ」に収録されている作品。月にあこがれる男性、成宮を主人公にしている。長年の貯金のおかげで民間月旅行計画に参加した成宮は、着陸できないことを口惜(くや)しく思いながらも月面を間近に見る感動に浸っていた。そんな中、突如として遊覧艇が月面に墜落し瀕死(ひんし)となった成宮が、死の直前、狼男になる。

ニラ玉節考 (にらたまぶしこう)

宇宙卵玉子の著作の短編小説集「言わなければよかったのに」に収録されている作品。ニラ玉好きの兄妹を主人公にしている。卵料理店を営んでいる母親の作るニラ玉が大好物の兄妹は、自分もニラ玉になりたいと言い始める。そこで母親は、兄、眞太郎の睾丸(こうがん)にニラを混ぜるが、妹の操には「玉がない」ことを理由にニラ玉にするのを拒否した。やがて母親は卵料理中の爆発で死亡し、眞太郎は睾丸がニラ玉になったまま生きていくことになる。

ムエタイ人面瘡 (むえたいじんめんそう)

古血ナムチの著作の短編小説集「足噛峠死人面」に収録されている作品。ムエタイ戦士の青年、ナーケンと、ナーケンの右すねに現れた、人格を持った喋(しゃべ)る人面瘡を主人公にしている。ムエタイのバンタム級チャンピオンを目指すナーケンは、現チャンピオン・ガップラブートに勝つため、師匠に殺人技、雷鳴脚の教えを請う。しかしその習得のためには、右すねを3万回大木に打ち込み、人面瘡を完膚なきまでに破壊しなければならなかった。そのことを知った人面瘡が、階級の変更や雷鳴脚習得をあきらめるよう説得する。

沼田稲穂 (ぬまたいなほ)

菅江旅人の著作の短編小説集「手紙ノコト」に収録されている作品。母子家庭で育った少女、沼田稲穂を主人公にしている。民俗学を専攻している稲穂は、大学の教授から、郷土史にも加えられた古文書の一つに偽書の可能性が出てきたという話を聞く。そこで稲穂は実家にある古い蔵に入り、真実の歴史に近い書物がないか調べることにするが、そこで父親の真実を知ることになる。

収穫の環 (しゅうかくのわ)

ヤヌス・ブラックウッドの著作の短編小説集「今昔の魔法」に収録されている作品。頻繁にミステリーサークルが出現する村を舞台にしている。村はずれに暮らすイネスは大量の猫と共に暮らしていることで、信仰心の強い老女からは「魔女」と呼ばれていた。しかし、その老女の孫娘、パカとイネスは友人関係にあった。イネスは自分と仲がいいだけで老女から暴力を振るわれているパカに対し、互いの肛門の匂いを嗅ぎ合うことで慰め合う。

拷問一家(仮) (ごうもんいっかかり)

本田鹿の子が、杣水月と作るフリーノベルゲーム用のシナリオとして執筆した作品。体制側に不満を持つ人間を矯正させる拷問一族「スカベンジャー家」の娘、ヒムロは、かつて拷問稼業を嫌って兄を非難したことがある。しかしその結果、兄によって拷問され考えを矯正させられてしまう。だがヒムロを矯正した兄こそが体制側への不満分子側へと寝返って行方を眩(くら)まし、ヒムロは兄を拷問することを目標にする。

三ノ輪大量殺人事件 (みのわたいりょうさつじんじけん)

後藤孫六の著作の短編小説集「凶悪事件ファイルⅣ」に収録されている作品。2019年に三ノ輪で起きた大量殺人事件を舞台にしている。事件最初の標的となった小学6年生の少年、加勢海人は、塾に向かう最中で事件に巻き込まれている。海人を襲ったのは、シュモクザメのような頭部に4本の腕を持った異形の怪物だった。異形の怪物たちと、事件の重要人物となった青年、畑中惣の戦いの様子が描かれている。

デリバリー 上に乗る者 (でりばりー いんきゅばす)

タイタスたらおの著作の短編小説集「ハネムーン症候群」に収録されている作品。霊感体質の少年、蘭丸を主人公にしている。毎晩のように自分の上に織田信長と酷似した霊が乗っていることを愚痴った蘭丸は、生徒会長の反町行光に非現実的であると非難される。そこで蘭丸が織田信長に酷似した霊を挑発し、行光のもとに現れるよう仕向ける。

大麻男 胎蔵 (たいまおとこ たいぞう)

朝比奈世阿弥の著作の短編小説集「異形の花伝書」に収録されている作品。天才と賞賛される彫刻家の男性、石神モレヤを主人公にしている。ある時期から、モレヤは体中に大麻の葉を貼り付けたような男性の像しか彫れなくなり、スランプではないかと懊悩(おうのう)し始めていた。そんなモレヤの前に、怪人組織、ショッパーと戦う戦士、仮面ソルジャーと名乗る改造人間が現れる。仮面ソルジャーによってモレヤがスランプに陥った原因と思しき出来事が語られる。

結晶ジカン (けっしょうじかん)

間翔間の著作の短編小説集「時よ止まれ お前は美しい」に収録されている作品。超能力者の子供たちを集めた学園を舞台にしており、催眠能力を持つ少年、転寝を主人公にしている。転寝は日の丸弁当に大量のおかずを分けてくれた時間停止能力を持つ少女、時川琥珀となかよくなる。互いに好意を持ち距離を縮めていく二人の関係が、転寝が琥珀に告白した瞬間、異変が起こり変貌してしまう。

糞世界転記アキオ (いせかいてんきあきお)

李家彦太郎の著書の短編小説集「回るユガの中の一時代」に収録されている作品。ぼっとん便所に落ちて便器と下水のあいだにある糞世界に転移した少年、烏枢沙摩アキオを主人公にしている。水に溶けるうんこ人を食らう水洗便所型の怪物と戦うことになったアキオが、やがてうんこ人の姫と結婚の約束をする顚末(てんまつ)と、その後の様子を描いた異世界召喚ファンタジー。

龍斑 (りゅうはん)

李家彦太郎の著作の短編小説集「サマータイム ファーストキス」に収録されている作品。生まれつ、左頰に龍の顔に見えるアザを持った少年、梨本を主人公にしている。アザのことをからかったクラスメイトを殴ったため、地元に居場所を失った梨本は夏休みに行き場もなく、となり町を探索していた。そんな時、竜神を祀(まつ)っている神社で九重と名乗る少女に出会い、夏休みを共に過ごすことになる。会うたびに性格が変わる九重と、そのことを不思議に思いつつも言い出せない梨本の、現代ラブファンタジー。

サムライ トロッコ道 (さむらい とろっこどう)

苫前銀熊童子の著作の短編小説集「輌嵐」に収録されている作品。野生のトロッコが凶暴化し、日常的にトロッコが一人、または五人の人間を轢(ひ)き殺す問題が発生している近未来を舞台にしている。つねに生死に向き合わなければならない状況から、やがて一種独特な精神性を持った存在・サムライが出現する。中でも厚美太は幼少期にトロッコに襲われたものの、線路の切り替えによって生き残った男性だった。そんな太が再び、野生のトロッコが敷き詰める線路に巻き込まれ、生死の決断をせまられる。

Go to ヘル (ごー とぅー へる)

黒川冷蔵の著作の短編小説集「殺し屋たちの経済政策」に収録されている作品。殺し屋の男性、ブラックを主人公にしている。ブラックは近年の仕事不足に退屈しきっており、愛犬のシロもまた欲求不満に麻薬漬けになる日々を送っていた。そんな中、ブラックのもとに新電力詐欺の手口で個人情報を抜き取ろうとする男性が現れ、ブラックは警察を呼ぶべきか苦悩する。

チーズマン

タイタスたらおの著作の短編小説集「ナポレオン香」に収録されている作品。反り腰による腰痛悪化に悩む女性を主人公にしている。あまりの腰痛と、それに伴う不具合に悩む女性は、腕がいいと評判の整骨院に赴く。しかしそこで行われた施術は、生きたチーズであるチーズマンと呼ばれるものを体内に挿入し、骨そのものをチーズマンに置き換えるというものだった。腰痛はなくなったものの、女性は性器から漂うチーズ臭に来院を後悔する。

セカイ系ハイボルテージ (せかいけいはいぼるてーじ)

平等院アドレナリンの著作の短編小説集「性善説」に収録されている作品。神が世界を滅ぼそうとする世界観で展開される。数百年単位で世界を滅ぼそうとする神に対し、日本は神の血を引く巫女(みこ)、あえかを生贄(いけにえ)に捧げることで神を鎮めようとする。しかし、世界的な独裁者や世界中の死刑囚はそれをよしとせず、あえかを守るため神に戦いを挑む。

暴力ヒロイン対フィジカルモンスター (ぼうりょくひろいんたいふぃじかるもんすたー)

肉厚ヒラメの著作の短編小説集「隣の席の少女」に収録されている作品。常人の数十倍の筋肉強度を持つ男子高校生、岩筋を主人公にしている。岩筋はその並外れた筋力から、スポーツや恋愛において相手を破壊してしまう危険があると宣告されており、あまり人を寄せ付けないようにしていた。しかし、暴力で岩筋の気を惹(ひ)こうとする少女の辛夷や、階段で足をすべらせ股間を岩筋の顔に打ち付けた足利など、複数の女子の肉体を己の意思に関係なく破壊してしまう。強すぎる筋力のために、ふつうの恋愛すらできない少年少女の悲恋を描いている。

ドキッ☆男だらけの創世記 (どきっ おとこだらけのそうせいき)

喉仏ごくりの著作の短編小説集「そのバカは荒野を目指す」に収録されている作品。神の子として作り出された男性、アダムを主人公にしている。楽園で暮らしていたアダムのもとに、もう一人の男、イーグルが遣わされる。イーグルに敗北したアダムが打倒イーグルを志して楽園を出立し、やがて男だらけの街「ソドム」に到達する。

エターナったフリーゲームの世界に転生しちゃった!? (えたーなったふりーげーむのせかいにてんせいしちゃった)

犀の角独歩の著作の小説。トラックに跳ねられて死亡し、未完成のままフリーゲームサイトに公開されたロールプレイングゲームの世界に転生した青年、戒谷を主人公にしている。アップデートの可能性が限りなくゼロに近い世界の中で、精神的に疲弊していく戎谷の姿が描かれる。

書誌情報

本田鹿の子の本棚 リイド社〈リイドカフェコミックス〉

(2018-06-18発行、 978-4845851911)

(2022-08-29発行、 978-4845861392)

(2023-11-28発行、 978-4845866069)

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