ばいばい、アース

ばいばい、アース

冲方丁の小説『ばいばい、アース』のコミカライズ作品。小説『マルドゥック・スクランブル』や『天地明察』、テレビアニメ『蒼穹のファフナー』の脚本など、小説家およびシナリオライターとして知られる冲方丁の初期作にあたる。人々が動物の姿かたちをまとうファンタジー世界を舞台にしている。牙も角も持たない「のっぺらぼう」の少女ラブラック=ベルが世界と交じり合うため、自らの出自を求めて旅をする姿を描いた冒険バトルファンタジー。独特の造語が随所に散りばめられた、冲方丁らしい独自の世界観が特徴で、個性豊かな登場人物たちも魅力となっている。少年画報社「月刊ヤングキングアワーズ」2020年3月号から2022年9月号にかけて連載の作品。2022年11月、WOWOW×ソニー×クランチロールの3社共同によるオリジナルアニメ製作プロジェクトの第1弾作品として、原作小説版のアニメ化が発表された。

正式名称
ばいばい、アース
ふりがな
ばいばいあーす
原作者
冲方 丁
漫画
ジャンル
バトル
 
ファンタジー
レーベル
YKコミックス(少年画報社)
巻数
全4巻完結
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「人間」の存在しない、独特なファンタジー世界

本作の舞台は中世を思わせるファンタジー世界で、ネズミのような外見の「月歯族(マウティー)」や、猫の特徴を持つ「月瞳族(キャッツアイズ)」、感情の起伏によって肉体が男性にも女性にも変化する「水族(マーメイド)」など、さまざまな種族が暮らしている。また、空では巨大な星「<聖星>(アース)」が美しく輝いているなど、メルヘンチックな雰囲気を漂わせている。一方で、世界を治めているとされる存在は、目的は不明ながら意図的に<善>と<悪>の概念を生み出し、二つの勢力を争わせている。その影響から治安は劣悪で、力のない住民が迫害されたり、命を落としたりすることも珍しくなく、残酷さとファンタジーを両立させた世界観が描かれている。

自分のルーツを探すため世界をさすらう少女

ラブラック=ベルは、世界で唯一人間と同じ容姿を持って生まれた存在で、その外見から「のっぺらぼう」と呼ばれて恐れられたり、蔑まれたりしてきた。そのため、師匠であるラブラック=シアンからの勧めで、自分を受け入れてくれる世界を求めて旅に出る。ただし、世界のすべてがベルを敵視しているわけではなく、シアン以外にも、かつてベルを拾って惜しみない愛情を注ぎ、現在でも身を案じてくれている養父母や兄弟子など、出自を気にせず気遣ってくれる人たちもいる。また、ベル自身も現在の世界を憎んではおらず、旅の最中に人助けを積極的に行っている。

ベルと唸る剣を待ち受ける強者たち

ラブラック=ベルは、ラブラック=シアンとの修行によって身につけた剣技と、彼から授かった唸る剣の威力により、並の剣士(ソリスト)を歯牙にもかけないほどの戦闘力を備える。そのため、特定の仲間をつくることなく、旅人として世界を巡っていたが、その道中で巨大な刺突用の剣を自在にあやつるキール=ロワールや、悪に落ちて異形の姿に変じた水族・ティツィアーノなど、さまざまな強敵と相対する。激戦を勝ち抜いたベルは、やがて「カタコーム戦役」と呼ばれる大戦で共に戦ったクエスティオン=アドニスやギネス、ベネットと共にギルド「自由なる剣楽隊」を結成し、その一員として活躍するようになる。このように、自分が世界に受け入れられないと考えていたベルが、他者と信頼し合うまでの経緯も詳しく描かれており、本作の見どころの一つとなっている。

登場人物・キャラクター

ラブラック=ベル

人々が動物の姿かたちをまとう世界で、異形として生まれた「のっぺらぼう」の少女。世界でたった一人だけである孤独感に恐れを抱いており、世界と交じり合うために自分の出自を知ることを渇望し、旅の者(ノマド)となることを目指している。幼い頃は月瞳族(キャッツアイズ)の夫婦によって育てられたが、子供が生まれたことをきっかけに家出する。そして謎の声に導かれ、宝物庫に死蔵されていた「唸る剣(ルンディング)」と出会う。その後、駆け付けた人々によって囚われるも、ラブラック=シアンによって助けられ、彼の弟子となって剣士(ソリスト)として成長する。生まれつきの怪力と、水の上を走ることすらできる身軽さを誇る。繊細な感性を持ちながら、男勝りで勝ち気な性格をしている。また細かいことを気にしないため、「野蛮(ビースティ)」と評されることがある。名前は「珍しい者(ラブラック)」と、「小さき者(ベル)」という意味を持つ。

唸る剣 (るんでぃんぐ)

都市(パーク)の奥深くにある宝物庫に死蔵されていたユリ科の鋼。高名なる剣作家である「値する者(ドランブイ)」の作とされる剣だが、その大きさと重さ故にこれまで誰も扱えずにいた。しかし、謎の声に導かれた並外れた怪力の持ち主であるラブラック=ベルが現れたことで、彼女の剣となった。名前が示す通り、唸(うな)り声を上げて所構わず大きな音を立てるため、いつもベルに叱責されている。しかし、危険を察知した際には警告の意味を持った声で人に知らせるなど、重要な行動を取る場合もある。剣身には無何有郷(むかゆうきょう)の意味を持つ「EREHWON(エレフォーン)」というスペルが刻まれている。

クレジット

原作

書誌情報

ばいばい、アース 全4巻 少年画報社〈YKコミックス〉

第1巻

(2021-01-16発行、 978-4785968427)

第4巻

(2022-09-30発行、 978-4785972417)

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