あらすじ
第1巻
かわいらしい容姿を持ちながらも、男性が苦手な小南静歌は、友達の麻子から男性恐怖症を克服するべきだと発破をかけられ、街コンに参加することになった。しかし、静歌は初めて会う男性と会話ができるはずもなく、こっそり会場の外に出て休憩していると、美しい女性から声を掛けられる。その女性は霧島涼と名乗り、静歌に飲みに行かないかと誘う。優しく思いやりのある涼にすっかり心を許した静歌は、慣れない酒を大量に飲んだことで泥酔してしまう。そのまま静歌は涼の部屋に泊まることになり、静歌は涼にキスをされ、なすがままに身体を淫らに触られてしまう。女性同士なのにと混乱する静歌だったが、実は涼は女装をした男性であることが判明する。この出来事から、静歌に好意を抱いた涼の猛アプローチが始まり、静歌は戸惑いつつも彼のことが気になっていく。それからいっしょの時間を過ごす中で、静歌はふだんは男性の格好をして生活している涼が、女性から非常に人気があることを知る。きらびやかな涼と地味な自分とでは釣り合わないのではないかと、静歌は不安を覚える。
第2巻
小南静歌と霧島涼は交際をスタートさせ、幸せな日々を過ごしていた。そんな中、静歌が通う大学では文化祭が行われることになり、静歌はインフルエンザで倒れてしまった麻子の代わりに、コスプレ姿で接客を行うことになる。胸が大きい上に無防備な静歌は、男性客から注目を集め、ついには素行の悪い集団に絡まれてしまう。そこに女装をした涼が現れ、静歌の窮地を救う。こうしてますます愛を深めていく静歌と涼だったが、先ほどの出来事を目撃していたレズビアンの桜井菫は、女装をした涼に一目ぼれをしてしまう。桜井は女装をした涼と自分の大学にいる男性の涼が同一人物だと知らないまま、一方的に恋心を募らせていく。そんな中、桜井は静歌と涼がラブホテルに入っていくところを目撃し、涼がレズビアンだったことに喜びを覚える。そして桜井は静歌から涼を略奪しようと画策する。
第3巻
小南静歌は倉谷奏介から、アルバイト先である「霧島ホテル」系列のレストラン食事券をもらい、さっそく霧島涼を誘う。涼が喜んでくれるに違いないと思っていた静歌だったが、食事をした日以来、涼の態度はどこかそっけないものに変わっていた。そんな涼の姿に静歌は、自分の身体に飽きたのではないかと危機感を募らせる。そして静歌は、桜井菫からアドバイスを受けつつ、男性を喜ばせるテクニックを習得すべく奮闘する。一方の涼は、食事をきっかけにこれまで避けていた姉の霧島律と再会しただけでなく、静歌と交際している事実も知られてしまう。実は「霧島ホテル」は涼の両親が経営しているホテルであり、律は系列店のレストランに勤務していた。律に交際が知られてしまった以上、静歌に危険が及ぶのではないかと不安を覚えた涼は、周囲に付き合っていることを悟られないため、わざと静歌にそっけない態度を取っていたのだった。するとその不安は的中し、律は静歌との関係を調べ上げ、どうせ金目当てだろうと決めつける。そして涼のためにも、静歌の化けの皮を自分が剝がしてあげるべきだと考え、二人を別れさせるための行動を起こす。
第4巻
すっかり霧島律と親しくなった小南静歌は、霧島涼の実家に遊びに行くことになる。静歌を迎え入れた涼の両親は穏やかで優しく彼女に接するものの、涼の兄だけは目を合わせようともしなかった。のちにこれは、涼の兄が、自分の好きな美少女キャラクターに静歌が似ていたことに動揺していただけだったことが判明し、静歌は霧島家の全員から暖かく迎え入れられる。こうして涼の家族から公認になった二人は愛を深めていくが、自宅デート中に静歌の父が、唐突に静歌の住むマンションを訪れる。静歌は何もできない人間だと決めつけている父親は、到着するなり静歌に対して厳しい言葉を口にする。悲しそうな静歌の姿を見た涼は言い返そうとするものの、運悪く女装をしていたため、どこまで踏み込んでいいものかわからないでいた。
第5巻
霧島涼のおかげで精神的に強くなった小南静歌は、自分を認めようとしない静歌の父に対して、ささやかながらも反論できるようになる。そんな静歌に対して静歌の父は、娘が成長したことを認めると共に、自らが経営する柔道場の跡継ぎになってもらうと宣言する。さらに静歌の父は、静歌と幼なじみの泉大智の結婚を一方的に決めてしまったため、静歌は涼との交際を認めてもらうべく、二人で実家へと挨拶しに行くことを決意する。涼は一度目に静歌の父に会った際、女装姿だったために自分を女性だと偽ってしまったことを気にしていた。また、女装をしながら静歌と交際していると知った小南誠子からの助言もあり、涼は女性の姿で静歌の実家へと向かう。
第6巻
お互いの両親に交際を認めてもらった小南静歌と霧島涼は、新居で同棲生活をスタートさせる。さらに初めての温泉旅行にも行き、二人はますます絆を強いものにしていく。その一方で、一時的に留学していた木下悠が帰国する。留学前、悠は大学内での女性のつきまといに悩んでいた涼に声を掛け、一時的に偽物の恋人を演じていたが、横柄な態度に涼から愛想をつかされた過去があった。再会したことで、自分にはやはり涼しかいないと悟った悠は、涼の恋人だと噂されている桜井菫から真相を聞き出そうとする。菫は否定も肯定もせずにはぐらかすものの、涼に対するそっけなさを怪しんだ悠の追及により、本命の静歌の存在が明らかになってしまう。二人が同棲しているとなりの部屋を借りた悠は、さらに静歌たちの部屋に盗聴器を仕掛け、二人の情事の声を録音して涼を脅すという、常軌を逸した行動を取り始める。
メディアミックス
TVアニメ
2017年7月より、本作『スカートの中はケダモノでした。』のTVアニメ版『スカートの中はケダモノでした。』が、TOKYO MX、AT-Xほかで放送された。小南静歌役を花影蛍、霧島涼役を皐月栞が演じている。
登場人物・キャラクター
小南 静歌 (こみなみ しずか)
男性恐怖症の女子大学生。これまでに恋愛経験のない処女で、友達の麻子に男性と話すための練習だと言いくるめられ、無理矢理「街コン」に参加させられた。そこで女装をしている霧島涼と出会い、一気に距離を縮めていく。その後、涼から自らが男性だとカミングアウトされるだけでなく、彼に身体を淫らに触られると気持ちよく感じてしまうようになり、これまで経験したことのない出来事が続くようになる。涼と過ごす時間が増えていく中で、彼を好きになって正式に恋人同士になるが、やはり異性だと意識すると緊張してしまうため、二人で会う時は基本的に女装をしてもらっている。小柄で童顔のかわいらしい顔立ちをしているが、巨乳を誇る。消極的で奥手な性格ながら、涼と出会ってからは少しずつ自分の考えを言葉にできるように成長している。涼のほかにも倉谷奏介、泉大智からも好意を寄せられ、さらに街ではナンパをされるなど、無自覚ではあるが異性から非常にモテる。
霧島 涼 (きりしま りょう)
小南静歌より1歳年上の男子大学生。静歌とは別の名門大学に在籍している。何もしなくても注目を集める美男子で、その容姿だけに惹かれる女性が多くいるため、告白されることにも嫌気がさしていた。やけになって女装姿で「街コン」に参加したところ、同じイベントに偶然参加していた静歌と出会い、彼女に一目ぼれをする。その後、静歌への猛アプローチの末、正式に恋人同士になる。なお、幼い頃から姉の霧島律によって女装をさせられていた経験から、見た目も声も完璧な女性になりきることができる。静歌を溺愛しており、時には気持ちが強すぎて暴走することも多い。基本的に優しく思いやりのある性格だが、ピュアな静歌を見ているとつい意地悪をしたくなり、場所を選ばず身体を淫らに触るという行為を繰り返す悪癖を持つ。男性の姿では緊張してしまう静歌の申し出もあり、ふだん会う時には女装をして過ごしている。また、両親が全国的に有名な「霧島ホテル」を経営しており、非常に裕福な家庭に育っている。
倉谷 奏介 (くらたに そうすけ)
小南静歌と同じ大学に通っている同学年の男子。以前から静歌に好意を抱いているが、彼女が男性が苦手なことから、アプローチできずにいた。優しくまじめな性格で、静歌と同じく恋愛には奥手なところがある。静歌が霧島涼と交際をスタートさせたと聞いてからも、あきらめきれずに片思いを続けている。しかし、静歌と涼がお似合いなのは認めており、何か行動を起こすこともなく、静かに見守っている。また、以前静歌から「女装が似合いそうだ」と指摘されて以来、女性のファッションに興味を持つようになる。涼の両親が経営している「霧島ホテル」系列のレストランでアルバイトをしており、涼の姉の霧島律は上司にあたる。律からは気に入られているため、過保護な彼女から涼と親しくすることを許されている。
麻子 (まこ)
小南静歌と同じ大学に通っている同学年の女子。静歌とは学部が同じで、親しくしている。明るく元気な性格の人気者ながら、ややデリカシーに欠けるところがある。静歌が男性に苦手意識を抱いていることは知っており、克服させようと強制的に街コンに参加させる。静歌と霧島涼が出会ったきっかけを作った人物でもある。なぜか静歌と倉谷奏介が交際しているのではないかと、カン違いしている。
桜井 菫 (さくらい すみれ)
霧島涼と同じ大学に通っている同学年の女子。小南静歌よりも1歳年上。静歌が涼の大学に遊びに行った際に出会う。大人びた美貌の持ち主で、大学内でもミスコンに選ばれており、誰もが知る目立った存在。一部の生徒からは涼とお似合いだと言われているが、桜井菫自身はレズビアンのため、迷惑に感じている。静歌の大学の学園祭で女装した涼と出会い、一目で恋に落ちる。それからは同じ大学に通う男性の涼と、女装をした涼が同一人物だと知らないまま、自分のものにするべくアプローチを開始する。涼が同じ大学に通っている男性だと判明して失恋してからは、静歌と親しくなり、静歌と涼のカップルを応援している。
霧島 律 (きりしま りつ)
霧島涼の姉。両親が経営している「霧島ホテル」系列のレストランで責任者を任されている。涼のことを溺愛している一方で、自分のものだと認識しており、非常に過保護に接している。そのため、涼からは距離を置かれている。涼が小南静歌と交際していると知り、どうせ金目当てだろうと決めつけて、二人を別れさせようと画策する。見た目は涼に瓜二つだが、穏やかな性格の涼とは対照的に粗暴で、喜怒哀楽が激しい。自分のレストランでアルバイトをしている倉谷奏介がお気に入りで、涼には奏介と親しくなって欲しいと思っている。
涼の兄 (りょうのあに)
霧島涼と霧島律の兄。両親が経営している「霧島ホテル」で働いている。小南静歌が涼の実家に遊びに行った際に知り合いになる。非常に整った容姿でクールな雰囲気を漂わせた美男子ながら、人とコミュニケーションを取ることが苦手で、特に女性とはスムーズに話をすることができない。ネットゲームやアニメを好むいわゆるオタクで、美少女フィギュアやグッズを大量に所持している。涼の兄自身が高校時代から心の嫁として愛している美少女キャラクター「南たん」に静歌が似ていることから、初対面の静歌とどう接していいのかわからず戸惑っていたが、一度会話をしてからは一気に打ち解けた。オタク趣味からか、完璧な容姿とは相反してこれまで恋人がおらず、未だに童貞。涼と静歌には結婚して欲しいと思っており、二人を応援している。
静歌の父 (しずかのちち)
小南静歌の父親。田舎で柔道場を経営している。非常に厳格な性格の持ち主で、幼い頃から消極的で奥手な性格の一人娘の静歌に対して、何もできない人間だと厳しく接している。しかし、霧島涼との交際を通して強くなった静歌を認め、以降は穏やかな一面をのぞかせるようになる。一方で静歌が精神的に成長したからと、静歌の父自身がお気に入りの泉大智と結婚させようと動き出す。
小南 誠子 (こみなみ せいこ)
小南静歌の母親。田舎で柔道場を経営している静歌の父を助けている。厳格な性格の夫とは異なり、温厚な性格をしている。静歌が霧島涼と交際していることを知り、やっと好きな人ができたことを喜んだ。また、涼が静歌の前では女装をしていることに興味があり、帰省する際にはいつもの服装で来て欲しいとリクエストをするなど、好奇心旺盛な女性。
泉 大智 (いずみ だいち)
小南静歌の父親が経営する柔道場に通っていた青年。静歌の幼なじみ。10年前に引っ越してしまったが、また同じ街に戻ってきたことで、帰省した静歌と再会する。柔道の実力は静歌の父にも認められており、静歌と結婚させられそうになっている。最初は静歌との結婚に乗り気ではなかったが、霧島涼と交際していることを知り、初めて静歌に恋をしていたことに気づく。しかし、静歌と涼が愛し合っていることを理解しているため、二人を温かく見守っている。
木下 悠 (きのした ゆう)
霧島涼と同じ大学に通っている同学年の女子。小南静歌よりも1歳年上。静歌と出会う前は、女性からのつきまといに困っていた涼に言葉巧みに接近し、偽物の恋人として行動を共にしていた。しかし、次第に大学内で涼の恋人だからと横柄な態度を繰り返すようになり、涼から見放される。さらに涼と偽物の恋人関係だったことも明るみになり、大学にいられなくなったことで、一時的に留学していたが、帰国してから再び涼に接近する。もともと地味であか抜けなかったが、大学に入学してすぐ涼に恋心を抱き、徐々に誰もが振り向くような美人へと変貌していく。偽物の恋人ながらも、涼のとなりを歩いていた過去が忘れられず、涼に対して異常な執着を見せる。