あらすじ
第1巻
弱小レコード会社「ハリー・レコード」に勤務する大関菜摘は、日々先輩の神代忍から怒られながらも、持ち前の明るさで乗り越えていた。そんな中、菜摘は会社近くの公園で偶然、鈴原多紀と出会う。多紀は菜摘を気に入り、自分の担当を神代から菜摘に変えてくれるよう申し出る。多紀がスランプから脱する手助けになればと、神代はそのわがままを受け入れ、菜摘に多紀の担当を任せる。しかし多紀は菜摘をビジネスパートナーとしてではなく、欲求解消のための女性として扱い、身体の関係を持たないかと迫る。(エピソード「One More Dream」「Physical Attraction」)
スランプから脱するために手を貸してくれた菜摘に好意を抱いた多紀は、積極的にアプローチを開始する。しかし菜摘は仕事絡みの人間と付き合いたくないうえに、妙に自信満々な多紀とは交際したくないと突っぱねる。そんな中、多紀の新曲のPV撮影が始まる。メディアに露出しない多紀の代わりに女優が出演するものの、新作PV発表間際で女優が薬物で逮捕され、PVがお蔵入りになってしまう。(エピソード「君は僕の勇気」)
多紀の新曲のプロモーションのために「ハリー・レコード」内は慌ただしさを増し、特に担当の菜摘は休まるヒマもない。それと同時にCDの売上を操作したり、ラジオ局のコネで新曲を流してもらったり、といった業界の裏側を知った菜摘は反発心を抱く。そんな中、神代が朝の情報番組のプロデューサーを接待する事になり、菜摘も同席する。神代が土下座をさせられたり、自身はセクハラまがいな事を要求されたりと屈辱的な体験をし、菜摘はプロデューサーに対し抑えきれない怒りを覚える。だが、それと同時にどんな相手にも真摯に向き合う神代に対し、菜摘は尊敬のまなざしを送る。(エピソード「そしては僕は途方に暮れる」)
第2巻
鈴原多紀の新曲はヒットし、大関菜摘は神代忍からCMスポンサーの「アルファ生命保険株式会社」に挨拶に行くように命じられる。本来であれば「アルファ生命保険株式会社」の陸上部に所属する予定だった事もあり、菜摘は内心動揺する。しかし、仕事だと割り切って鈴原多紀と共に会社へと向かうと、菜摘の代わりに入社した当時のライバルから酷い言葉を浴びせられる。(エピソード「あなたのために」)
今度は大手化粧品メーカーからCMソングを依頼され、多紀はブレイク寸前の状況にあった。しかしスキャンダルは御法度なこの状況下で、菜摘と多紀が抱き合っている写真が「ハリー・レコード」に送りつけられる。写真の送り主として現われた嶋瑞穂は神代と顔見知りで、菜摘は二人の関係を気にしつつも、シリアスな雰囲気の神代には聞けずにいた。そんな中、多紀は仕事を放棄。菜摘と神代は、単身青森へと逃げてしまった多紀を連れ戻しに向かう。そして菜摘は、多紀と訪れたカラオケ店で、偶然にも神代がミュージシャンとして活動していた過去を知る。何やら訳ありな様子の瑞穂との関係、そしてミュージシャンだった事など、さまざまな疑惑と事実に直面する菜摘に対し、神代は菜摘を同僚ではなく、一人の女性として見ていると告白をする。(エピソード「まもりたい」「Poker Face」「way of life」)
第3巻
神代忍は、ミュージシャンであった過去が大関菜摘にバレた事で動揺し、勢いで告白をしてしまった事を後悔していた。一方の菜摘は再び鈴原多紀からも迫られ、突然の三角関係に思考が停止してしまう。そんな中、これまで菜摘のサポートをしていた神代が外れ、菜摘は一人で多紀を担当する事となる。神代が外れた事でCMソングの提供を依頼してきた大手化粧品メーカーは横柄になり、歌詞に口出しをしたり、締切日を短縮したりと、多紀の意向を無視した要求ばかりを通そうとする。神代に相談したいが、多忙であるためになかなか連絡がつかず、菜摘はパニックに陥ってしまう。悩んだ末に菜摘は、周囲の言いなりに動くのではなく、多紀の音楽を守る事を最優先とし、神代にその決意を伝える。そして菜摘は嶋瑞穂にも話をつけ、大手化粧品メーカーにも多紀の意向をはっきりと伝える。(エピソード「心のままに」「虹」)
自由に行動してばかりの多紀は神代により、人里離れた長野県の山奥で制作活動のために缶詰にされる。多紀から毎日のように連絡を受けていた菜摘は、妙な寂しさを覚えてしまう。ある日、菜摘は多紀にアプローチをされている事を知る先輩のりえとランチをする。多紀への曖昧な気持ちを打ち明けると、「本当に好きだったら性的な気持ちになるはずだから」と、なぜかパンツを身につけずに仕事をしてみるようにアドバイスを受け、菜摘は実行してしまう。そんな中、多紀から今すぐ会いに来てほしいと連絡が入る。明らかに様子がおかしいと感じた菜摘は、単身長野県へと向かう。(エピソード「Missing」「Give Me Everything」)
第4巻
大関菜摘と鈴原多紀は仕事を通して確実に距離を縮めていく。そんな中、菜摘に対するラブソングを作詞作曲した多紀だったが、バンド「ローゼン」のボーカルの準也に歌詞を盗用され、先に発表されてしまう。菜摘は激怒するが、準也の所属事務所の方が格上なため、抗議もできずにいた。しかし多紀の歌として世間に聴いてほしいと思う菜摘は、メディアに顔出しをしたうえで発表しようと多紀に提案。多紀も菜摘のためであればと、これまでの自由を捨てる事を快諾する。しかし菜摘は勤務する弱小レコード会社「ハリー・レコード」から、「多紀が顔出しをして活動するのであれば、菜摘と恋愛する事は許されない」と釘を刺される。困惑する菜摘をよそに多紀は初ライブの日を迎え、満員のファンの前で初めて生歌を披露。ライブは大成功で終わるかと思われたが、ステージ上で多紀が倒れてしまう。目を覚ました多紀は、耳がこれまで通り聞こえない事、そして菜摘が「顔出しをしたら恋愛は許されない」と条件を出されていたにもかかわらずライブを決行したと知り、恋心を利用されたと悲しみに暮れる。(エピソード「Don't wanna Lie」「有頂天LOVE」「Nothing but the beat」「×××」)
第5巻
大関菜摘に利用されていたとショックを受ける鈴原多紀だったが、菜摘に対し、自分が抱いていた恋心は本物だったと打ち明ける。多紀も耳の聞こえが悪くなっていた事に気づいており、悪化したらミュージシャンをやめるつもりだった。そんな中、多紀は手術を受ける事になり、菜摘に対してミュージシャンを引退すると宣言する。音楽と距離を置く多紀に、菜摘は自分もビジネスパートナーではなく、ずっと前から一人の男性として好きだったと打ち明けるのだった。そんな中、菜摘は以前の陸上仲間から、フルマラソンの大会にエントリーしないかと誘われる。ブランクの長い菜摘には無謀な挑戦だったが、「自分が走り切ったらミュージシャンを辞めないでほしい」と多紀に条件を出し、菜摘はトレーニングを開始。そして見事フルマラソンを走り切る。(エピソード「LOVE SONG」「あなたへ」「言葉にできない」「Bye Bye」)
登場人物・キャラクター
大関 菜摘 (おおぜき なつみ)
弱小レコード会社「ハリー・レコード」の宣伝営業部に勤務する女性。勤続年数は2年。昔から陸上競技をやっており、大学時代に靭帯を損傷してしまう。そのため、大学卒業後に入社するはずだった「アルファ生命保険株式会社」の陸上部に所属できなかった。目標を見失っていたところを、知り合いの播磨から声をかけられて「ハリー・レコード」に入社した。 もともと音楽が好きだったわけではなく、業界の話題にも疎い。ただし根が体育会系な事もあり、空回りしたり怒られる事が多いが、仕事に対しては情熱を持って取り組んでいる。先輩の神代忍に対してあこがれを抱く。明るく前向きな性格で、笑顔を絶やさないポジティブ思考の持ち主。公園で偶然に鈴原多紀と出会い、多紀に気に入られて担当となる。 その後、スランプ気味だった多紀をサポートした事で惚れられ、多紀からアプローチを受ける。以降、神代と多紀のあいだで揺れ動く。
神代 忍 (かみしろ しのぶ)
弱小レコード会社「ハリー・レコード」に勤務する男性。大関菜摘の先輩にあたる。クールな性格で笑顔を見せる事は少ない。毒舌家で、言いたい事ははっきり口にするタイプ。仕事においては敏腕として知られ、菜摘ら女子社員からもあこがれの的となっている。当初は菜摘に対し、音楽好きでもないのに、播磨のコネで入社した無能な女と見下していた。 しかし、かかわっていくうちに彼女の仕事への情熱を認めるようになっていく。その後、菜摘にアプローチをし続ける鈴原多紀に嫉妬心を抱いている自分に気づき、菜摘への恋心を自覚する事となる。過去にミュージシャンとして活動しており、インディーズながらも抜群の知名度と人気を誇っていた。
鈴原 多紀 (すずはら たき)
弱小レコード会社「ハリー・レコード」に所属するソロミュージシャンの男性。周囲に努力している自分を見せる事を嫌うストイックな性格の持ち主。自分のルックスには自信があるものの、自由がなくなる事を嫌い、メディアには顔出しをしておらず、プロフィールも「スズハラタキ」という名前以外はいっさい公表していない。音楽業界人も才能を認めるミュージシャンではあるが、曲作りが遅くてなかなか新曲ができず、近年ではスランプに陥っていた。 神代忍が担当していたが、公園でたまたま顔を合わせた大関菜摘に興味を持ち、担当を菜摘に代えてほしいと直談判。以降、菜摘が担当となる。スランプから抜け出させてくれた菜摘に好意を抱き、周りの目も気にせずにアプローチを開始する。
嶋 瑞穂 (しま みずほ)
ミュージシャン時代の神代忍を知る女性。当時、自身も神代の熱狂的なファンだったため、神代にもその存在を認識されている。突然引退した神代の消息を辿っていたところ、弱小レコード会社「ハリー・レコード」に勤務している事をつかんだ。のちに鈴原多紀と大関菜摘が抱き合うゴシップ写真を撮影するが、多紀や菜摘を陥れようという気持ちはなく、これをネタに神代と話をして、またミュージシャンとして活動してもらうように説得するつもりでいた。 のちに菜摘と親交を深めていく。
りえ
弱小レコード会社「ハリー・レコード」に勤務する女性。大関菜摘の先輩にあたる。菜摘とは良好な関係を築いており、菜摘が鈴原多紀に迫られている事も知っている。一方で、神代忍が菜摘に好意を抱いている事実は知らない。多紀のアプローチに対して戸惑う菜摘に対し、アドバイスをしつつも楽しんでいる節がある。
播磨 (はりま)
弱小レコード会社「ハリー・レコード」の社長を務める男性。自分達の立場が業界内で弱い事を知っており、営業をする際には非常に気を使っている。
準也 (じゅんや)
バンド「ローゼン」のボーカルを務める青年。大手音楽事務所に所属しているものの、ヒット曲に恵まれなかった。偶然にも鈴原多紀が作詞作曲をした大関菜摘へのラブソングの楽譜を見て、自分達の楽曲として発表し、見事ヒットを飛ばす事に成功する。菜摘には多紀のラブソングを盗作した事実は認めたものの、その事実を世間に公表する気はない。
増田 (ますだ)
サウンドエンジニアを生業とする男性。鈴原多紀と共に仕事をする機会が多く、多紀の才能を大いに認めている。一方で多紀の陰での努力は知らず、息をするように曲ができる天才と勘違いしている。
場所
ハリー・レコード (はりーれこーど)
音楽業界では小規模なレコード会社。社長は播磨が務めている。業界では非常に弱い立場なため、営業先でもクレームが来ないように行動をするなど、つねに気を使っている。所属ミュージシャンには社員が担当として付く事になっており、鈴原多紀の担当はもともと神代忍が務めていたが、多紀のたっての希望で大関菜摘に代わる事となった。
ゼロミュージック
音楽業界では最大手のレコード会社。人気音楽雑誌と強いパイプを築いており、弱小レコード会社「ハリー・レコード」をはじめ、ほかのレコード会社に所属しているミュージシャンは雑誌に掲載させないようにするなど、強い権限を持つ。そのほかにも、金を使って自分達に優位な状況を画策するなど黒い噂がある。