蝶々事件

蝶々事件

硝音あやが『百千さん家のあやかし王子』連載中に並行連載した作品で、講談社×オトメイト×REDの共同コラボレーション企画。昭和5年の「イエーヴァ女学校」を舞台に、身寄りのない少女・香月えれなが、猟奇的な殺人事件に巻き込まれていく、ゴシックミステリー。強さと優しさを兼ね備えたえれなが、さまざまな苦難や逆境に立ち向かう姿や、その体に秘められた秘密が明かされる過程が秀麗なタッチで描かれる。また、見目麗しい女装男子・狐射堂遙やエリート海軍士官・神藤将成、帝都大学の助教授・神藤理智など、魅力的な男性たちとの交流も見どころとなっている。講談社「ARIA」2016年11月号から同誌休刊号となる2018年6月号まで連載。2017年11月にテレビゲーム版『蝶々事件 ラブソディック』がアイディアファクトリーから発売された。

正式名称
蝶々事件
ふりがな
ちょうちょうじけん
作者
ジャンル
学園
 
サスペンス
レーベル
KCx(ARIA)(講談社)
巻数
全4巻完結
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猟奇的な殺人事件に巻き込まれる主人公

本作の舞台となる昭和5年の横濱では、女学生のみを狙った猟奇殺人事件が多発し、人々を恐怖に陥れている。その残虐極まりない手口から、世間では人間ではない化け物を意味する「非徒(あらず)」による犯行と噂されている。孤独な少女・香月えれなは、横濱港に降り立った際にこの事件を知るが、あまりにも現実離れしているため、その脅威に晒されていることを実感できずにいた。だが、イエーヴァ女学校に転入して数日後、自らの香りを嗅ぎつけた非徒に襲撃される。その時は偶然、その場に居合わせた謎の剣士に助けられるが、その直後にえれなの友人・井口洋子を殺害した犯人として疑われるなど、次々と不可解な事件に巻き込まれていく。

イエーヴァ女学校の特殊システム

イエーヴァ女学校は、昭和の初めに巨大財閥「源家」によって設立された女学校で、才気あふれる女性の人材育成に力を入れている。生徒や周囲からは「男子禁制の乙女の聖域」と呼ばれており、学内には理事長である源イ織や教師以外、男性の立ち入りは基本的に禁止されている。また、女学校には学年が違う生徒同士で交わされる、「エス」と呼ばれる特殊なシステムが存在する。エスの契りを交わした生徒同士は姉妹同然の間柄となり、学内で最も親密な関係として公認される。このシステムについて狐射堂遙は、安易に男性や大人に従わず、女性同士の絆が尊いことを証明するためであると語っており、のちにえれなとエスの契りを結ぶこととなる。えれなは遙が男性だと知らないままにエスを受け入れ、やがてその人間性に惹かれていく。

魅力的な男性たちとの交流

田舎から横濱にやって来た香月えれなは、華族の神藤兄弟やイエーヴァ女学校の創立者であるイ織、イギリス出身のジャーナリストであるシドニー・ワトキンスなど、個性あふれる魅力的な男性たちと出会う。しかし、えれなは男性に苦手意識を持っているため、彼らに心を動かされることなく交流を楽しんでいた。そんな中、「エス」の契りを結んだ遙が、実は男性であるという事実を知り、大きく動揺する。本作は、えれなと男性たちのやり取りが楽しめるほか、コミックスの巻末にテレビゲーム版『蝶々事件 ラブソディック』で男性役を演じた声優たちのインタビュー記事が掲載されているなど、乙女作品としての魅力も持ち合わせている。

登場人物・キャラクター

香月 えれな (こうづき えれな)

名門と名高い「イエーヴァ女学校」に転入した4年生の女子。異国の血を引いている影響から、紫色の髪と金色の瞳を持つため、自分自身の見た目にコンプレックスを抱いている。また、独特の香りをまとっているため、「憎らしいほど甘い香り」と表現されたり、その香りを狙って正体不明の化け物に襲われたりするなど、トラブルに巻き込まれることが多い。身体能力が高く、相手の立場で考えて行動できるなど、洞察力や観察力も優れている。男性に苦手意識を抱いているが、その理由は「みんな死んでしまうから」という、やや漠然とした不安によるもの。すでに両親は亡くなっていて天涯孤独の身だが、父親の友人で「id(イド)」と呼ばれる人物に援助を受けており、いつか会いたいと願っている。

狐射堂 遙 (こしゃどう はるか)

横濱にある「イエーヴァ女学校」に通う5年生の女子。華やかさと美しさを兼ね備えた学園のマドンナ的存在で、横濱歌劇団のトップスターとして人気を博している。香月えれなと寮で同室となり、学園になじめない彼女を優しく指導して信頼を獲得し、やがて「エス」の契りを結ぶこととなる。実は女装をした男性で、平安時代から続いている陰陽師一族「狐射堂家」の現当主の座に就いている。しかし、誰が見ても眉目秀麗な美青年に見えるため、一部の関係者以外からはまったく気づかれていない。「非徒(あらず)」の正体を察しており、性別を偽ってえれなと接触したのも、非徒と彼女に何かしらの因果関係があると疑っているためだった。

書誌情報

蝶々事件 全4巻 講談社〈KCx(ARIA)〉

第1巻

(2017-08-07発行、 978-4063809404)

第4巻

(2018-08-07発行、 978-4065124192)

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