あらすじ
第1巻
まるで完璧な王子様のようだと周囲から賞賛を浴びてきた野島幹也は、人を陥れることでストレスを発散する裏の顔を持っていた。他人に対しての攻撃性はさらに高まっていき、ついに人を殺したい衝動に駆られた幹也は、呪神と契約。周囲にいる気に入らない人間はもちろん、ただ目についただけの相手にまで呪殺事件を起こし始める。人が目の前で死んでいくことに興奮を覚える幹也だったが、彼の前に生物教師として潜入していた呪解探偵の冴山清春が現れる。幹也は事件の解決を焦る大迫智巳や、相次ぐ事件に不安を抱く教師の香田希の心理を巧みに利用するが、冴山は真犯人である幹也を確実に追い詰めていく。そんな状況においてもなお、幹也は冴山をはじめとする周囲にばれないように呪殺事件を起こす緊張感に興奮を覚えていた。そんな中、幹也はついに自分が呪神との契約者であることを双子の弟、野島葉一に見破られてしまう。しかし、用意周到な幹也は葉一の思い人である榎本砂和の命を盾に、彼を呪殺事件の共犯者に仕立て上げる。
登場人物・キャラクター
冴山 清春 (さえやま きよはる)
呪解探偵の謎多き男性。予言の能力を持つ、ほかの呪解探偵からの情報を得て、闇杜(やみもり)学園高校に生物教師として潜入する。ボサボサの黒髪に目つきが悪いことから、生徒からは不審者扱いをされることが多い。また生徒はもちろんのこと、他者と積極的にコミュニケーションを取ることはない。頭の回転が非常に速く、誘導尋問を得意とする。呪解探偵に興味を抱き「自称助手」として何かと絡んでくる山崎完太に対しては、自分にはない視点で物事をとらえる点を面白く感じている。完太からは「サエ先生」と呼ばれている。
山崎 完太 (やまざき かんた)
闇杜(やみもり)学園高校に通う男子で、2年9組に在籍している。明るい性格のお調子者で、クラスのムードメーカー的な存在。野島幹也とも親しくしているが、呪神と契約していることは知らない。非常に惚れっぽく、弓長舞や川上美華子など目立つ女子にはすでに告白済み。呪解探偵の冴山清春に興味を持ち、自ら「助手」と名乗り、独自の視点で事件解明に協力している。
野島 幹也 (のじま みきや)
闇杜(やみもり)学園高校に通う男子で、2年9組に在籍している。容姿端麗で成績優秀、さらに性格も穏やかで優しいと完璧な人物で、周囲からは「王子」の愛称で呼ばれている。しかし、周囲からは「善良な人」だと思われていることを理解したうえで悪事を働いており、気に入らない相手を巧みに陥れるなどしてストレスを発散している。日を追うごとに他人を攻撃することに興奮を覚え、ついには誰かを殺したい衝動に駆られ、呪神と契約する。以降、周囲の人間を呪殺事件の被害者にしているが、表向きはふだんと変わらずに過ごしている。自分を呪神との契約者だと怪しむ冴山清春を大いに警戒しつつも、緊迫した状況を楽しんでいる。双子の弟である野島葉一を、自分より劣った人間だと見下している。
弓長 舞 (ゆみなが まい)
闇杜(やみもり)学園高校に通う女子で、2年9組に在籍している。みんなを振り向かせるほどの華やかな雰囲気を漂わせた美少女で、山崎完太をはじめ、男女かかわらず周囲からチヤホヤされている。自分の容姿に絶対的な自信を持ち、人気者の野島幹也の恋人になるのは自分しかいないと自負しており、幹也に対してなれなれしい言動を繰り返す。幹也と契約した呪神の力によって死亡し、呪殺事件の被害者となる。
梶本 晃斗 (かじもと あきと)
闇杜(やみもり)学園高校に通う男子で、2年9組に在籍している。なんでも完璧にこなす人気者の野島幹也にやっかみを抱いており、いわゆる不良タイプで素行も悪く、幹也に対して直接的に攻撃的な言葉を口にするなど、何かと絡んでいる。弓長舞、川上美華子に交際をせまって断られた過去があり、菅尾猛とも折り合いが悪かったことから、大迫智巳に呪神との契約者ではないかと疑われてしまう。
川上 美華子 (かわかみ みかこ)
闇杜(やみもり)学園高校に通う女子で、3年5組に在籍している。SNS中毒者で、どんなときでもスマートフォンを手放すことはない。SNS上で不特定多数からチヤホヤされることを生きがいとしており、周囲から呪殺事件の被害者になるからスマートフォンをむやみやたらに触らない方がいいと忠告を受けているが、手放すことができない。そんな姿を呪神と契約している野島幹也に目撃され、呪殺事件の被害者となる。以前、梶本晃斗から交際をせまられ、断ったことがある。
菅尾 猛 (すがお たけし)
闇杜(やみもり)学園高校に勤務する教師の男性で、3年1組の担任を務めている。非常に傲慢な性格で、生徒からはあまり慕われていない。素行の悪い梶本晃斗とは頻繁に衝突を繰り返している。野島幹也と契約した呪神の力によって死亡し、呪殺事件の被害者となる。
香田 希 (こうだ のぞみ)
闇杜(やみもり)学園高校の音楽教師を務める若い女性。生徒思いの教師で、学校内で呪殺事件が起こっていることに疲弊している。野島幹也に言葉巧みにせまられ、冴山清春の連絡先を入手するために利用されてしまう。利用されたあとは幹也が契約している呪神に呪い殺されそうになるが、電話がかかってきた時に一人でいたために難を逃れる。しかし、それからは死の恐怖に憑りつかれている。
野島 葉一 (のじま よういち)
野島幹也の双子の弟で高校2年生。幹也とは違う学校に通っている。幼い頃から幹也から見下されており、陰で陰湿ないじめを繰り返されている。家庭内でも悪者に仕立て上げられているため、幹也の母からもぞんざいな扱いを受けるようになり、幹也を非常に憎んでいる。現在は大きな事故に遭い、リハビリ入院中。幹也がいち早く呪神と契約したことを見破ったものの、誰かに教えたら片思いの相手である榎本砂和を殺すと脅され、何もできずにいる。
榎本 砂和 (えのもと さわ)
野島葉一と同じ高校に通う2年生の女子。清楚でまじめな雰囲気を漂わせており、眼鏡を掛けている。葉一と親しいため、入院中の葉一の見舞いにたびたび訪れている。野島幹也ともつながりがあり、連絡先を知られている。
幹也の母 (みきやのはは)
双子の兄弟である野島幹也、野島葉一の母親。幼い頃から幹也に洗脳されており、葉一をダメな人間だと嫌悪している。葉一が事故に遭った時も、夫と共に瀕死状態の本人の前で「幹也でなくてよかった」と口にするなど、愛情はまったくない。
大迫 智巳 (おおさこ ともみ)
警視庁捜査一課に所属している男性。白髪のベテラン刑事で、呪神の存在や呪殺事件に関しては懐疑的な見方をしている。冴山清春、宇佐美遼とタッグを組み、闇杜(やみもり)学園高校で起こっている呪殺事件を調査しているが、上司から強いプレッシャーを受けており、事件を早急に解決しなくてはならないと焦っている。なお、呪解探偵と組んで事件に臨むのは、今回が初めての経験となる。
宇佐美 遼 (うさみ りょう)
警視庁捜査一課に所属している男性。年齢は若く、いっしょに捜査している大迫智巳よりも呪神の存在や呪殺事件に対して肯定的な見方をしている。冴山清春、大迫と共に闇杜(やみもり)学園高校で起こっている呪殺事件を捜査している。
その他キーワード
呪解探偵 (じゅかいたんてい)
呪神の残留思念を読み取る特殊能力を持った者。残留思念を具現化する呪神の尻尾の能力を使うこともでき、呪殺事件の解決には欠かせない存在だが、世界に数十人しか存在しない。そのため、実際に呪殺事件と疑わしい死体が出たとしても、呪解探偵が関与するのはまれ。警視庁捜査一課に所属しているベテランの大迫智巳も、闇杜(やみもり)学園高校の事件で冴山清春に会うまで、呪解探偵と接点を持ったことはなかった。呪神の尻尾のほかに予言を使える呪解探偵も存在し、お互いに情報をやりとりしている。
呪殺事件 (じゅさつじけん)
近年爆発的に増加している殺人事件。殺害したい相手に直接手を下すのではなく、呪神の力を借りて証拠を残さずに行うため、通常の警察が行う捜査では犯人を極めて特定しにくい特徴を持つ。そのため、呪解探偵の特殊能力が必要とされている。ただし、呪解探偵が世界に数十人しかいないため、未解決事件として処理されることの方が圧倒的に多い。呪神の力を借りて相手を呪い殺した者を「契約者」と呼ぶ。
呪神 (じゅしん)
呪殺事件の実行役となる神。特定の相手を証拠を残さず呪い殺す特殊能力を持つ。見た目は黒い影で、人間のような形をしている。契約者(殺害を依頼してきた人間)が命じた相手は基本的に誰でも殺すことができるが、呪神によってはさまざまなルールがある。野島幹也と契約をした呪神が相手を呪い殺すためには二つのルールがあり、一つ目が「スマートフォンで相手に電話をし、そこから発信されるメッセージを少しでも聞くこと」、二つ目は「電話がかかってきたことを第三者が認知すること」。二つのどちらかが欠けていても殺害はされず、香田希のように一人でいたときに電話がかかってきた際には免れることができる。メッセージは画面に触れただけでも再生されるため、電話を切っても一つのルールを満たすことになってしまう。また、幹也が連絡先を知らない相手は殺すことができない。呪神と契約をするにあたっての条件は「1か月で30人を殺すこと」で、達成できなかった場合は契約者が死ぬことになる。
呪神の尻尾 (でびるずている)
呪解探偵が使うことができる特殊能力の一つ。呪神の残留思念を具現化することができる。具現化した残留思念は、呪解探偵が体に触れることによって特殊能力を持つ者以外でも認識できるようになり、警察の呪殺事件の捜査において大いに役立っている。また、残留思念は言葉を話すことはできないが、「はい」か「いいえ」といった簡単な選択肢に答えることができる。呪解探偵が呪神の尻尾を連続で使うことができるのは5回までで、それ以上になると1週間は特殊能力の類を使えなくなってしまう。
予言 (よげん)
一部の呪解探偵が持つ特殊能力。次にどこの場所に呪神と契約した者が現れるのかをあらかじめ知ることができる。予言があった場所には事前に呪解探偵が潜入し、呪殺事件の被害者が最小限ですむように行動を起こす。
クレジット
- 原作
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木場 健介