諸怪志異

諸怪志異

中国の清代に書かれた幻想的な短編小説集『聊斎志異』を意識して描かれた短編コミック集。燕見鬼と五行先生を中心とした宋時代の開封周辺のエピソードが多いが、ふたりの登場しない別の時代を扱ったエピソードも含まれる。物語は前半と後半に分かれており、前半は燕見鬼の幼い頃を描く短編を集めた形で、後半は成長した燕見鬼の冒険を描く長編になっている。雑誌連載時及び最初の単行本(双葉社)では未完で終わっていたが、後に再刊(光文社)された際に完結編が描き下ろされた。物語自体は作者オリジナルだが、描かれる怪異には一部『捜神記』や『山海経』等中国の古い書物が参考にされている。

正式名称
諸怪志異
ふりがな
しょかいしい
作者
ジャンル
怪談・伝奇
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概要・あらすじ

中国・宋の都開封には高名な道士の五行が、弟子の燕見鬼とともに暮らしている。生まれつき幽霊など不思議なものを見る力を持つ「見鬼」の力を持つ燕見鬼は、師匠の下で身につけた方術も駆使し、幼い頃には師匠とともに、やがて成長するとひとりで各地に赴きさまざまな怪奇現象を解決していく。

登場人物・キャラクター

燕 見鬼 (えん けんき)

物語前半は幼い頃、後半は青年に成長した姿が描かれる。河北西路の貧しい農村に生まれ、ごく幼い頃から幽霊や妖異を見る能力を持つことから「おばけちゃん」といった意味の幼名として「阿鬼(あき)」と呼ばれていた。後に通り名となる「見鬼」とは幽霊等を見ることのできる目を持つ者のこと。本名は燕光(えんこう)で、字(あざな)を青眸(せいぼう)といった。 五行先生のもとには、幼い時分に引き取られ弟子となっている。幼い頃は坊主頭の両脇と額のあたりに刈り残した髪が特徴のかわいらしい姿だったが、成長すると長髪を頭頂で団子のようにまとめていることが多い精悍な顔立ちの少年となる。師匠譲りの式神を使う術が得意で、武器としては普段背負っている剣を使い、投げて操ることもできる。

五行 (ごぎょう)

『諸怪志異』の登場人物で、燕見鬼の師である高名な術者。北宋末期の都・開封の城外にある「羽化庵(うかあん)」に住み、訪ねてきた者や旅で出会った者の相談を聞き奇妙な事件を解決していた。紙を切り抜いて式神として使役する術をよく使い、長距離を移動する際は翼を持つ白馬の式神に乗ることが多い。鋭く厳しい印象の目が特徴で、伸ばした口ひげとあごひげが印象的。 全身に黒い道士服をまとい、頭にも黒い帽子を被っていることが普通で、術を行使する際には、払子(ほっす)と呼ばれる白い毛のようなものを束ねてつけた棒を持っており、払子自体も白髪に豊かなひげを持つ老人の姿に変じることがある。「五行」は通り名で、本名は劉真人。

許 栄良

開封に住む官職に就いている人物。妖術師に「犬土(けんど)」という巫術(呪い)をかけられ、目のないブタのような獣に襲われていたところを五行先生と燕見鬼に助けられている。

春蘭 (しゅんらん)

幼い頃の燕見鬼が出会った、開封市内に住む娘。父親の再婚相手が妖怪が化けていた女で、父親は殺害され春蘭自身も餌食にされかけていた。

孫 玉鈴 (そん ぎょくれい)

幼くまだ阿鬼と呼ばれていた頃の燕見鬼と仲がよかった女性。夏候家の息子と結婚することになっていたが、相手が気に入らないため阿鬼の術で化物を出現させ式を妨害していた。当人は鄭州に暮らす康七郎という男を好いており、阿鬼とともにその男の下へと向かうが、女好きのならず者だった。

眼光娘娘 (がんこうにゃんにゃん)

子供の眼の病気を治す存在として、娘娘廟に祭られている女神。まだ幼く阿鬼と呼ばれていた頃の燕見鬼と出会い、見鬼は自分の子供のようなものだと言い気に入って以降、何度か助けている。

費長道 (ひちょうどう)

まだ幼く阿鬼と呼ばれていた頃の燕見鬼が出会った術士。約500年前の人物で、薬学や医学に長け、いつも壺に薬を入れており無料で病人を助けていたが、山に入って姿を消し仙人になったと考えられていた。阿鬼と出会ったときは壺から頭だけを出した奇妙な姿で、五行先生に命を助けてもらおうとしていた。

葉 長命 (よう ちょうめい)

燕見鬼が五行先生の下を離れてからしばらくして、雑用を任せるために入れられた五行の弟子。燕見鬼から見て弟弟子にあたる。特に霊能力も持たない凡庸な人物で、仇道人に何度か利用されている。

仇 道人 (きゅう どうじん)

五行の持つ書物「推背図(すいはいず)」を狙っており、隙の多い葉長命を利用したときも含め、何度も燕見鬼と相対している。

十四娘 (じゅうしじょう)

仇道人同様、五行の持つ書物「推背図(すいはいず)」を狙っている人物のひとり。燕見鬼をつけ狙っており、気を込めた剣を振り下ろすことで建物をも打ち壊す「破山剣」の術を使う。

林 霊素 (りん れいそ)

時の皇帝、徽宗(きそう)に重用された歴史上実在したとされる道士。『諸怪志異』では術を使って皇帝をたぶらかそうとしたところを五行に邪魔され、恨みを抱いていた。

呂 小玉 (りょ しょうぎょく)

五行の兄弟弟子だという呂大公(りょたいこう)こと、呂師嚢(りょしのう)の娘。近隣で評判の美女で、五行から預かった書物「推背図(すいはいず)」を持つ燕見鬼に興味を持ち近づいていた。燕見鬼のことは「青眸さま」と呼ぶ。「気」を弾丸のように飛ばす「気弾」を使うことができる。

武帝 (ぶてい)

中国・前漢時代に実在した第7代皇帝。不老不死を求めており、方士・欒大(らんだい)の教えを受け、霍子候(かくしこう)とともに泰山に登り「封禅」の儀を行うエピソードがこの作品の一編として描かれている。

武松 (ぶしょう)

まだ幼い頃の燕見鬼と五行先生が旅の途中、景陽岡(けいようこう)の地で多くの人間を食い荒らしてきた虎の魔物と出会ったとき、魔物と闘ってふたりを助けた髭面の男性。『水滸伝』に描かれる以前の武松であるとされる。武松には景陽岡で虎を退治した伝説がある。

場所

開封 (かいほう)

『諸怪志異』の主な舞台となる中国の都市。物語中に描かれる北宋時代の中国における首都で、当時世界最大級の都市だった。

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