警察犬物語

警察犬物語

警視庁鑑識課に属する警察犬訓練所に転属となった青年が、担当犬と心を通わせながら、犬と共に警察官として成長していく姿が描かれる。1話完結の連作短編形式で、警察犬の訓練法が随所に織り込まれているほか、当時の世相も反映されている。

正式名称
警察犬物語
ふりがな
けいさつけんものがたり
原作者
三木 孝祐
作者
ジャンル
警察官・刑事・検察官
 
関連商品
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あらすじ

第1巻

昭和33(1958)年、赤坂署巡査だった21歳の雨野しげおは、警視庁刑事部鑑識課に配属される。しかし喜びもつかの間、彼の職場は板橋区にある警察犬訓練所だった。そこでしげおは警察犬のレックスの世話をする事になるが、レックスはしげおにまったく懐かない。頑張れば頑張るほど、レックスとしげおの関係は悪化し、しげおの手は嚙み傷だらけになってしまう。そんな中、フィラリア症にかかっていたレックスの容態が悪くなり、しげおはレックスにつきっきりで看病する。数日経った朝、餌を平らげたレックスは、初めてしげおに心を許すのだった。(エピソード「おれのレックス!の巻」。ほか、7エピソード収録)

第2巻

ひき逃げ事件の犯人として、人気歌手のジョニー伊田の付人である青木が警察に出頭して来た。ジョニーの態度に違和感を覚えた雨野しげおは、レックスに被害者の衣服の匂いと、犯人が手を拭いたハンカチの匂いを調べさせる。青木が犯人ではない事を確信したしげおは、ジョニーに、ひき逃げ事件が起った時間に犬の散歩をしていた目撃者が、青木の面通しをするという情報を与える。(エピソード「ひき逃げを追え!!の巻」。ほか、7エピソード収録)

第3巻

警察犬訓練所の先輩、木村に彼女ができた事もあり、雨野しげおは来る日も来る日も犬ばかりを相手にする生活に嫌気がさしていた。そんなある日、レックスを連れたしげおは、長野県警に向かう汽車の中でレックスに興味を持ったみどりに東京で会いたいと言われ、有頂天になる。一方、レックスはメスの嘱託犬に恋をし、捜査どころではなくなってしまう。だが警察犬の世界では、発情は捜査の妨げになるため、恋をする事は許されていなかった。(エピソード「レックスの初恋!?巻」。ほか、6エピソード収録)

第4巻

雨野しげおレックスは、郊外のカントリークラブで開かれた全日本嘱託犬全国大会の見学にやって来ていた。特別に大会に参加する事になったしげおとレックスだったが、上位に入賞する事ができずに、優勝した嘱託犬、エロールの訓練士、下村一郎はしげおに居丈高な態度を取る。その時、カントリークラブに覚醒剤で興奮状態になったヤクザが侵入したとの情報が入る。現場を甘く見ていた下村は、エロールに箔をつけるチャンスだと意気込むが、ヤクザに刃物を向けられ、恐怖で身体がすくんでしまう。そして、その窮地を救ったのは修練を積んだしげおとレックスだった。(エピソード「日本一の警察犬の巻」。ほか、7エピソード収録)

第5巻

出動過多のレックスが過労で倒れた事をきっかけに、警察犬訓練所内では、体力がなく嗅覚だけが取り柄のアルフは必要なく、新しい犬を入れた方がいいとの意見が出始める。アルフに愛着のある雨野しげおは、アルフには、犯人の匂いが50パーセント以下の混合臭でも選別できる能力があると強く主張する。そんな中、アルフに北アルプスでの遭難者捜査の要請が入る。長時間に及ぶ捜査にアルフは息もたえだえになり、捜査中断の声も上がる中、しげおはまだ目の光を失っていないアルフの、匂いに対する執着心を信じるのだった。(エピソード「ハナのアルフの巻」。ほか、7エピソード収録)

第6巻

森イクエと担当犬のキートンに初出動の許可がおり、空き巣に入られた女子寮での犯人探しに挑む事になった。だが、女子寮の女性達は女性の訓練士がやって来た事に不信感を抱き、その微妙な空気を察したイクエは成果を上げる事ができずに落ち込む。自信をなくしたイクエは、町内会の旅行で東京に来ていた母親の森則子に弱音を吐いてしまう。そんなイクエを優しく受け入れた母親は、キートンが甘えられるのはイクエだけだと諭す。その言葉に我に返ったイクエは、再び女子寮の捜査を志願する。キートンを励ましながら再び捜査に挑んだイクエは、隠れていた犯人を見つけ出す。(エピソード「女子寮盗難事件の巻」。ほか、4エピソード収録)

登場人物・キャラクター

雨野 しげお (あめの しげお)

警視庁刑事部鑑識課、警察犬訓練所1班に配属された男性。かつては赤坂署に勤務する巡査だった。年齢は21歳。しげおの母親、弟の雨野トオル、飼い犬のコロと一軒家に暮らしている。亡くなった父親も警察官だった。勉強熱心ながら、調子に乗りやすい一面がある。しかし、ふだんはふざけていてもスイッチが入れば、別人のように真摯に事件に取り組み、他人の境遇を思いやれる温かみがある。担当犬のレックスとは心を通わせるまで時間がかかったものの、フィラリア症にかかったレックスを愛情と食事療法で完治させ、警察犬として見込みがないとまで言われていたレックスを立派な警察犬に育て上げた。のちにアルフを担当する事になるが、当初はレックスかわいさから受け入れる事を拒んでいた。だが、子犬のアルフを邪険に扱った自分を反省し、以降はレックスが嫉妬するほどアルフをかわいがるようになる。そして、アルフの唯一の取り柄であった嗅覚の才能を最大限に伸ばす事に成功する。

レックス

雨野しげおの担当犬となった警察犬。正式名は「レックス・フォン・ブローニュー号」。フィラリア症にかかっており、新任の訓練士であるしげおにまったく懐かず、病状が悪化の一途をたどる。しかし、しげおが何日もつきっきりで看病した事で、しげおに心を開くようになる。民間の訓練所にいた子犬の頃は、警察犬に向かないと判断されていたが、前任の訓練士の辻の強力な推薦で、警察犬訓練所のテスト犬として仮入舎を許される。だが、訓練を続けるうちに、体力がないという致命的な欠陥が判明。辻が強引に正式採用を認めさせてしまったが、およそ1年後、過労で倒れて病気がちとなり、同じ頃に辻の捜査二課への栄転が決まり、しげおの担当犬となった経緯がある。フィラリア症は、しげおの愛情と情報収集のおかげでほぼ完治した。以降、数々の事件解決に尽力し、立派な警察犬として成長する。ドジな性格で、寂しがり屋。しげおが次に担当する警察犬のアルフとも仲がいい。

アルフ

雨野しげおの2頭目の担当犬となった警察犬。正式名は「アルフ・フォン・ムトーハイム号」。当初はレックス以外の担当を拒んでいた雨野しげおと折り合いが悪く、警察犬訓練所から家出した事もあったが、それを猛省したしげおに、愛情をかけられるようになる。物を持って来るという犬特有の持来欲が強く、嗅覚に非常に優れており、選別訓練が得意。子犬ながら勇敢で、賢い性格ながら、体力がないという致命的な欠陥がある。しかし匂いに対する執着が強く、混合臭から犯人の匂いのついた原臭物を判別できる能力を開花させ、のちに「ハナのアルフ」と呼ばれる日本一の警察犬となる。第二訓練所のバルダー号に恋をしており、バルダーと出動した際は大活躍する。民間訓練所にいた頃は、所長の孫の中沢健太にかわいがられていた。

雨野 トオル (あまの とおる)

雨野しげおの弟で、イガグリ頭の小学生。しげおとしげおの母、飼い犬のコロと一軒家で暮らしている。何に対しても自然体で接する少年で、そんな彼の姿勢が、たびたびしげおに事件解決やレックスの訓練法についてのヒントを与えている。しげおが付き添った夏休みのキャンプでは、コロの芸を友達にインチキと言われ、コロの特技を証明するために山の中に隠れてしまい、行方不明になるという騒動を起こす。

コロ

雨野しげおの家で飼われている犬。小型犬ほどの大きさで、垂れ耳で顔の左側に黒いブチがある。一通りの芸ができ、夏休みのキャンプで行方不明になった雨野トオルを嘱託犬のクロフォードより先に見つけた。しげおがホームシックになったアルフを家に連れ帰った際には、アルフばかりかわいがるトオルの姿にショックを受け、家出するなど繊細な性格。ふだんは庭の犬小屋で寝ている。

しげおの母 (しげおのはは)

雨野しげおと雨野トオルの母親。息子達と飼い犬のコロと一軒家で暮らしている。女手一つで二人の息子達を育てている、優しくて芯の強い女性。世話好きで、近所の赤ちゃんの面倒まで引き受けている。亡くなった夫は警察官だった。

大西 (おおにし)

警視庁刑事部鑑識課、警察犬訓練所に所属する男性。1班のリーダーを務めている。男らしい風貌で顎が割れている。口数が少ないために誤解される事も多いが、雨野しげおの頑張りを暖かく見守っている。担当するケルンは警察犬の運動会で2回連続優勝を収めるなど、優秀なベテラン犬。

前原 拓矢 (まえはら たくや)

警視庁の捜査一課に配属された刑事。雨野しげおの同期の男性。刑事部長賞を受賞するなど、まだ若いが非常に優秀な人物。張り切りすぎてしまうところがあるが、事件を解決するためにつねに全力を尽くす熱血漢。連続爆破魔の赤い牙が仕掛けた爆弾を止めようとして、大ケガを負って入院する。母一人子一人で育ったため、母親に心配をかける事をなによりも苦痛に感じている。しげおとはよきライバル関係にあり、互いに信頼している。

森 イクエ (もり いくえ)

日本で最初の女性警察犬訓練士となった女性。担当犬のキートンがなかなか懐かず、心を痛めていたが、自分の香水が犬に嫌われる要因だと気づき、香水を捨てて訓練漬けの毎日を送っている。精神的に弱い一面もあるが、女性ならではの繊細な感覚で事件解決に尽力している。雨野しげおに密かに思いを寄せている。母親の森則子からは「イッちゃん」と呼ばれている。

森 則子 (もり のりこ)

森イクエの母親。娘思いの優しい性格の持ち主。町内会の旅行で東京に来た際、警察犬訓練所を訪ねた。初出動で失敗し、自信をなくしたイクエに、自分といっしょに実家に帰ってもいいが、キートンはイクエしか甘える人がいないと諭した。

本田 (ほんだ)

警視庁刑事部鑑識課、警察犬訓練所の管理官を務める中年男性。丸メガネをかけ、とぼけた雰囲気を漂わせている。たびたび空気の読めない発言もするが、犬好きで、犬達からは絶大な人気を誇る。のちに本庁に転任した。

広岡 (ひろおか)

警視庁刑事部鑑識課、警察犬訓練所の新任管理官を務める中年男性。メガネをかけ、頭がキレると評判ながら、データしか信用しない堅物で、いつも電卓をはじいている。

木村 (きむら)

警視庁刑事部鑑識課、警察犬訓練所1班に所属する男性。鼻先が赤く、顎がしゃくれている。雨野しげおの先輩にあたる。担当犬のベルディーを、フィラリア症にかかっていると知りながら無理をさせて過労で亡くした事から、その罪悪感で次の担当犬、バロンの訓練に熱が入らずにいた。ある時、バロンが失敗ばかりを繰り返す事でしょげ返っていたが、「犬は主人に似る」という事を思い出して我に返る。その後、彼女のまゆみに結婚を言い出せず、クヨクヨしていた自分の感情にバロンが感化されている事に気づき、態度を改める。

鈴木 (すずき)

警視庁刑事部鑑識課、警察犬訓練所の2班に所属していた男性。過労で体調を崩して安静が必要となった雨野しげおの代わりに、レックスとアルフを訓練する事になった。唇が分厚く、左頰に大きな傷痕があり、メガネをかけている。所詮犬コロだと犬を見下しており、徹底したスパルタ教育に徹している。担当犬のアンドレは多数の賞を受賞しているのが自慢。また、担当犬のブッチャーがレックスと仲が悪かった事もあり、しげおとは犬猿の仲。管理官がデータしか信じない広岡に代わった際には出世を狙い、楽な事件ばかりに名乗りをあげるようになる。しかしアルフの成長のため、難しい事件を選んでいたしげおの実力を見せつけられ、犬を育てる気持がなかった自分を反省する。

坂本 (さかもと)

警視庁刑事部鑑識課、警察訓練所に所属する、メガネをかけたまじめそうな男性。担当犬のサンダーが10歳で引退する事になりショックを受けていたところ、警察犬の運動会前日にサンダーがいなくなった。5年前、犬が飼えない家に引っ越しが決まり、飼い犬のクロが家出してしまったという苦い経験があった事から、サンダーをもっと励ましてやればよかったと後悔する事となった。その後、無事にサンダーを見つけ、翌日の警察犬運動会ではサンダーが特別賞を受賞し、訓練所永住専門犬舎の設立という副賞が与えられた。サンダーは16歳まで生き続けて、坂本の腕の中で老衰で亡くなる。

おじいさん

愛犬家の高齢男性。タロウという15歳の犬を飼っている。レックスのフィラリア症が悪化して憔悴しきっているしげおに、タロウはフィラリア症にかかってから13年もぴんぴんしていると励ました。タロウの治療メモをしげおに託した。

岡村 (おかむら)

日雇いの仕事をしながら予備校に通う苦学生の男性。世田谷で起きた連続放火事件の犯人で、貧乏な自分をバカにしている人間を困らせてやろうと犯行に及んだ。警察犬の鼻をごまかすため、服にチーズを塗ってから灯油に火を放った知能犯。

田沼 友子 (たぬま ともこ)

幸子の母親。精肉店を営んでいる夫の留守中に行方不明になった幸子を探している。近所では、田沼友子の厳しい性格が原因で、幸子が家出したのではないかとささやかれている。レックスが冷蔵庫に反応を示した際には気前よく肉を差し出すが、のちに冷蔵庫の奥に幸子の遺体を隠していた事がレックスによって暴かれる。

(つじ)

レックスの前任担当官の男性。左の頰にホクロがある。3年前、民間訓練所にいたレックスの愛想のよさに惚れこみ、体力がないという致命的な欠陥があったにもかかわらず、強引にレックスの正式採用を認めさせた人物。しかし、レックスが過労で倒れて病気がちになった頃、捜査二課に栄転が決まり、泣く泣くレックスから離れる事になった。そのため、レックスを見捨てたという罪悪感を抱いていたが、現在の雨野しげおとレックスの姿を見て、気持ちに整理をつけて、レックスとの過去をしげおに打ち明けた。のちに、かねてから希望していた大阪府警察犬訓練所に転属が決まる。

向山 (むかいやま)

強盗容疑および誘拐障害未遂犯として指名手配されている20歳前後の男性。人質の少年・幸夫を誘拐して逃走。歩行者天国の人込みに紛れているところをレックスが見つけ、4年前に両親を切り刻んで殺害した凶悪犯だった事が判明する。雨野しげおの提案で、殺された犬の血と幸夫の匂いで混合臭を作り、レックスに向山を襲わせる作戦がとられた。

ジョニー 伊田 (じょにー いだ)

人気歌手の男性。付人の青木がひき逃げ事件を起こしたと、警視庁に出頭して来た。しかし事情聴取の際に、ボリボリとお腹をかいていた事で雨野しげおに不審がられる。しげおがひき逃げ事件の目撃者が青木を面通しするという偽情報を伝えたところ、目撃者がいつも犬を散歩させている場所に姿を現す。

青木 (あおき)

メガネをかけた地味な男性。ジョニー伊田の付人で、ひき逃げをしたと、ジョニーに連れられて警視庁に出頭した。被害者の血をぬぐった証拠品のハンカチには青木の匂いが付着していたが、被害者の服についていた匂いは別の人間のものであった事がレックスにより暴かれ、ジョニーの身代りになったと自白する。

公平 (こうへい)

犬好きの少年。毎日警察犬訓練所を見学に訪れていた。両親は共働き。その勉強熱心さから、雨野しげお達から訓練所への出入りを密かに許されている。ある時、事件現場でレックスと共に迷子になってしまうが、レックスのおかげで無事訓練所まで戻れたものの、一度は訓練所を出入り禁止になる。のちに出入りが許されるようになった際、「シゲオ」と名付けた飼い犬の飼育についてしげおに教えを請うようになる。

クロフォード

雨野トオルが山中で遭難した際、出動要請された嘱託犬。幼犬でも30万円で取引される最高の血統を有する美しいコリー犬。ねばり強いうえに持久力があり、動きも俊敏。

中沢 健太 (なかざわ けんた)

民間訓練所「犬幸荘」の中沢の孫。アルフをかわいがっていた少年。アルフと別れるのが辛すぎて、警察犬候補を選びに来た大西や雨野しげおからアルフを隠そうとした。しげおのもとから家出して来たアルフを迎えに行こうとするが、祖父に厳しく咎められる。のちに、アルフが警察犬の採用試験に合格した際には、友達のミノル達に散々自慢し、ミノル達の嫉妬心に火をつける事となった。

佐藤 昭 (さとう あきら)

暴漢に襲われてケガをした少年。大きな丸いメガネをかけている。母親が教育ママで、毎日塾に行かされている。暴漢が使ったナイフをレックスが嗅いで、佐藤昭の病室にたどり着いた事から、母親の過度な期待から逃れようとして、自作自演の犯行だったと自供する。

みどり

犬に興味を持つ若い女性。レックスを連れた雨野しげおが長野行きの汽車の中で、警察犬についての話をしているのを聞き、東京で会ってほしいとしげおに申し出た。その後も警察訓練所に見学に来たり、しげおとサーカスに出掛けたりしている。

山田 武治 (やまだ たけじ)

東京大学法学部4年生の男子学生。顎がしゃくれて、メガネをかけている。現在大学は休学中。白内障の治療に出掛けていた主婦の家に泥棒に入り、主婦を振り切って逃げているところを、公平とマモルに目撃され、容疑者となった。盗んだ物品や、その時に着用していた黄色いTシャツが見つからず、証拠不十分で釈放されそうになる。

マモル

公平の友達の少年。いつもハナを垂らしている。警察犬訓練所への出入りを公平と共に許されており、その帰りに公平と泥棒を目撃する。その泥棒が黄色いTシャツを着ていたと証言し、容疑者として山田武治が拘束される。

ミノル

中沢健太の友達で、男子小学生。警察犬に合格したアルフを自慢する健太の鼻を明かそうと、自分の持ち物をまどか先生のロッカーに隠し、警察犬を代表して模範演技をしているアルフに捜させようとした。混合臭を偽装したり、事件現場に人の多い学校内を選ぶなど頭がいい。

村上 たかし (むらかみ たかし)

バイク好きな16歳の少年。免許停止期間中にバイクで警察犬訓練所に乱入した。大人は怒るばかりで、自分の事を理解してくれないという鬱憤を溜めている。河原でレックスとアルフを散歩させていた雨野しげおに、バイクの腕を誉められた事でレーサーになる決意をする。

フローダ

警視庁刑事部鑑識課、警察犬訓練所2班所属の谷口が担当する警察犬。訓練所の周りをウロウロしているメスの野良犬と関係を持ってしまい、5年間のキャリアがあるにもかかわらず、警察犬の任を解かれる。ちなみに犬の性本能は訓練で学んだ事より強く、一度メス犬と関係を持ってしまうと、捜査に支障をきたすようになる。

下村 一郎 (しもむら いちろう)

嘱託犬のエロールの訓練士を務める男性。サングラスをかけて威圧的な態度を見せ、全日本嘱託犬大会を見学にやって来た雨野しげおとレックスを完全に見くびっていた。覚醒剤中毒のヤクザが大会場所に乱入し、エロールの箔をつけるチャンスだと突進していくが、ヤクザが持つ刃物の恐怖で身体がすくんでしまう。

エロール

全日本嘱託犬大会に3年連続優勝した嘱託犬。額に十字の模様が入っている。毎日20キロの石を引っ張り、5キロも走行するトレーニングを積んでいる。種牡犬になれば150万円の価値があると噂されている。

太田 富夫 (おおた とみお)

山中に逃げ込んだ男性。ハイキング中の女子高校生を誘拐した。前科7犯で、2か月前に強盗致傷で7年の刑期を終えて刑務所から出て来たばかり。狂暴な人物で、ガイドを装って高校生のヤス子と弘子に近づき、弘子を誘拐した。山中の人家に隠れている際、遭難者を装って侵入して来た雨野しげおの事を、警察官だと見抜く。

ヤス子 (やすこ)

ハイキングをしていた女子高校生。ガイドを装った太田富夫に騙され、いっしょにいた弘子が誘拐される。自身は太田に服を引きちぎられ、山中をさまよっていたところを猟師に発見された。気丈な性格で、精神状態が非常に悪い状況でありながらも、弘子のために捜査協力を申し出る。

弘子 (ひろこ)

ハイキングをしていた女子高校生。ガイドを装った太田富夫に騙され、誘拐されて山小屋に監禁された。太田にマムシのスープを無理やり飲まされるなど、壮絶な恐怖を体験する。

野犬 (やけん)

A市の保健所の檻を破って逃げ出したボス格の野犬。非常に狂暴で、人間に捕われそうになると、まるでヒョウのような俊敏さで障害物を乗り越えて行方をくらます。人間に追われる日々が続いており、人間に対して憎悪を抱いている。雨野しげおの命令に背き、本能で行動したレックスにより捕らえられ、射殺される。

A子 (えーこ)

T町のSマンションに住む主婦。マンションの屋上から転落死した。二浪中の息子の受験でノイローゼ気味であったとされている。その捜査に森イクエが雨野しげおの補助としてつき、初出動する事となった。屋上に行く前に、黒沼の家に寄った事をアルフが嗅ぎつける。

黒沼 (くろぬま)

T町のSマンションに住む主婦。夜中でも娘にピアノの練習させているため、階下に住むA子とよく揉めていた。A子が大事なピアノを壊そうとしたため、花瓶を頭に叩きつけ、屋上から突き落とした。その際、自殺に見せかけるため、A子のイヤリングを外したせいで、森イクエにイヤリングがない事を不審がられる。

竹山 (たけやま)

金持ちの庭を荒らしまわっている若い男性。中学を卒業して集団就職したが、すぐに会社がつぶれてしまい、故郷にも帰れずにいる。また兄弟が多く、故郷に帰っても歓迎されない身の上。そのため金持ちを憎んでおり、嫌がらせをするという犯行を重ねている。竹山の不幸な境遇に同情した雨野しげおにより追い詰められ、自分の行き場のない気持を打ち明ける。保護観察処分に付され、その後は自動車工場で働くようになり、警察犬訓練所にも顔を見せるようになる。

チビ

河原にいたビーグル犬の雑種。アルフを散歩させていた森イクエが見つけ、飼い主が見つかるまで警察犬訓練所で預かる事になった。3週間以内に足跡追及できれば訓練所に置いてくれるよう頼んでやる、という雨野しげおの言葉を受け、イクエが訓練して足跡追及できるようになる。イクエには「おチビちゃん」と呼ばれている。のちに、元の飼い主から「タンク」と呼ばれていた事が判明する。

犬の源五郎 (いぬのげんごろう)

初老の男性。蒸発した隣家の母親に置き去りにされた赤ん坊の世話をしている。近所の野良犬にもエサをあげている優しい性格。実は犬に詳しいドロボウで、マスコミを騒がせた事もあり、赤ん坊の養育費のために最後の仕事としてビル荒らしに入った。追跡して来た雨野しげおとアルフを相手に、犬の弱点をつく色んな仕掛けで惑わす内に、高揚感が高まっていく。

神田 (かんだ)

大西の友人で、髭面の男性。隣町で獣医を開業している。薬ばかり飲ませるのは却って犬の体を悪くするという持論を持ち、薬はできるだけ使わない。レックスがノイローゼになっているのを見て、雨野しげおにその原因を気づかせるため、この犬はもう長くないと発言した。

タロウ

寺の住職に飼われていたゴリラ。住職からろくにエサも与えられず、逃げ出した。西山登志雄の指南を受けた雨野しげおによって確保され、のちにある動物園に引き取られる。

西山 登志雄 (にしやま としお)

動物飼育にこの人ありといわれた名飼育家の男性。ろくに世話もできない人間に動物を飼う資格はないという考えを持つ。ゴリラは平和的な動物で、タロウを殺すような事は絶対にしないでほしいと、タロウが逃げた現場に駆けつけた。雨野しげおにゴリラの捕まえ方を指南する。実在の人物、西山登志雄がモデル。

銀行強盗犯 (ぎんこうごうとうはん)

男女の二人組の銀行強盗犯。名前はひろ子とまさのり。銀行から1000万円を奪って住宅地に逃げ込む。以前は二人共に同じ会社に勤めており、会社を辞めて犯行に及んだ。アルフ達に追いかけられ、走れなくなったひろ子をまさのりが見捨てたため、ひろ子は捕まった途端、まさのりの情報をペラペラとしゃべり出した。

よし子の母親 (よしこのははおや)

雨野しげおとレックス、アルフが出演したテレビ番組の「ご対面のコーナー」で、自分が捨てた娘のよし子に対面する予定だった女性。今さら娘に会わせる顔がないと、トイレに立てこもった。しげおに、警察犬は人間の都合で親子が引き離されるが、それでも人間のために命懸けで働いてくれていると説得を受ける。

集団・組織

赤い牙 (あかいきば)

連続爆破魔のグループ。爆弾を仕掛けた事を予告して警察を翻弄していたが、レックスが爆弾を見つけて未然に防いだ事を受け、綿密な計画を練るに至る。仲間の釈放と引き換えに仕掛けた爆弾は、病院内に複数仕掛けられた。第1の爆弾はアルフ達により阻止され、犬の鼻の事を考えて薬品室に仕掛けられた第2の爆弾は、ギリギリで雨野しげおと前原拓矢により阻止される。その後、アルフが瀕死になりながらも手掛かりをつかみ、レックスが犯人の一人、山路という男を見つける。

その他キーワード

嘱託犬 (しょくたくけん)

警察の出勤要請がある時のみ出動する警察犬。警察犬には大きく分けて2種類あり、警察官が担当して、直接飼育管理して事件出動させる「直轄犬」(シェパードのみ)と、ふだんは民間の訓練所で民間の訓練士が飼育管理している「嘱託犬」に分かれる。警察犬採用試験に合格すると、嘱託犬の飼い主になる事ができる。

クレジット

原作

三木 孝祐

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