あらすじ
ある日、男子高校生の亀梨両平が、頭から血を流しながら登校してきた。クラスメートにして、両平に思いを寄せる鶴見理英が事情を尋ねると、トラックに轢かれそうだった子猫を助けて、自分が代わりにトラックに轢かれてしまったのだという。そして両平は、ケガは放っておけば自然と治るから問題ないと告げ、それ以上に血のシミが落ちなくなったら大変だと、授業中にもかかわらずたらいを持ち込んでYシャツの手洗いを始めるのだった。その日の午後、学校から帰った理英は、両平のポスターやタペストリーを所狭しと壁に貼り付けた自室で、彼の写真を見ながらうっとりとため息をついていた。そして、両平に近づくために一計を案じる。それは、彼がアルバイトをしているファミレスで、自分もアルバイトを始めるというものだった。そのことを両平に相談すると、彼はもっと時給のいいアルバイトをするためにファミレスを辞めようと考えていたと語り、自分が辞めることで空いた穴を理英に埋めてもらおうと、さっそく店長に掛け合うのだった。(第4話)
理英の父親・鶴見富美男は、まじめで文武両道、さらにリーダーシップにも富む両平のことを、大財閥「鶴見グループ」の跡取りにふさわしい人物だと気に入っていた。そして富美男は理英に、ハワイへのペア旅行チケットを手渡す。それは道中、飛行機を墜落させて二人を無人島へと送り、そのあいだに既成事実を作らせてしまおうという魂胆によるものだった。この案はあえなく理英に却下されるものの、富美男はさっそく次の行動に移る。後日、友人の赤西竜と共に帰宅していた両平の前に、わざとらしくも偶然を装って姿を現した富美男は、ペットの猫・シャーロットちゃんを飼っていることを明かし、猫好きな両平を家に呼ぶことに成功する。いっしょにやって来た赤西は、シャーロットちゃんのあまりのブサイクさに言葉を失うが、美的センスのおかしい両平はシャーロットちゃんをかわいいと大いに気に入り、ふだんは平民に懐かないシャーロットちゃんもまた、両平に懐いた様子を見せるのだった。そして富美男は、シャーロットちゃんに会いたければいつでも家に来ていいと、両平を誘う。このあと富美男は、両平と距離を縮めるチャンスをつくったとドヤ顔で理映に伝えるものの、一方の理映は、実際はシャーロットちゃんという、両平を巡る恋のライバルが増えただけであることを実感していた。(第14話)
体育祭の日を迎え、赤西や転入してきた明日之城雪菜をはじめとする血の気の多い者たちは、絶対に優勝するのだと熱く燃えていた。エースの両平が例によって空腹で倒れたり、周囲から恐れられる赤西が騎馬戦で誰にも相手をしてもらえずに成果を残せなかったりする中、生徒会長で両平と縁がある桜井翔子のイタズラによって思いがけない結果を残す者が現れたりと、2年A組は一進一退の攻防を繰り広げる。そして2年A組は、最終種目のリレーを迎えた時点で、この勝負に勝ちさえすれば優勝できるところまでこぎつけていた。リレーならば両平の能力を存分に生かせると赤西は意気込む中、両平は生徒会の仕事で忙しいため、リレーのアンカーを理英に代わってもらったと、とんでもないことを言い出す。ショックで言葉を失う赤西だったが、そんな彼に理英の親友である佳代は、涼しい顔でまだ最後の切り札があると告げる。(第30話)
登場人物・キャラクター
亀梨 両平 (かめなし りょうへい)
琴吹高校2年A組に在籍する男子。生徒会副会長を務めている。一見クールなイケメンということもあり、他学年や他校の女子からモテるが、彼の実態を知る同学年の女子からはそれほどモテない。というのも、弟妹が六人おり、病気で死にかけの母親が血を吐き、借金取りのヤクザが終始家の周りをうろついているなど、極端に貧乏で過酷な生活を送っているというのがその大きな理由となっている。だが、亀梨両平本人はそんな生活環境についても特に気にしておらず、年齢のわりに落ち着いて老成した性格をしている。また文武両道で、成績がつねに学年でトップなだけでなく並外れた運動神経も誇り、さまざまな部活に所属して試合のときには頼られている。加えて、家計を助けるためにいくつものアルバイトを掛け持ちしていることもあって、つねに分単位で管理された忙しい日々を送っている。家庭環境から、道端の雑草すら食べるほどに栄養状態が悪く、部活の助っ人やアルバイトでエネルギー切れになるとその場で倒れてしまう。そのため、食べ物を使った交渉事に弱いが、人に食料をめぐんでもらう際にも、正当な理由がなければ受け取らない義理堅いところがある。あらゆる分野において並外れたハイスペックさを誇るものの、実はファッションセンスや美的センスなど、あらゆる分野において「センス」が壊滅的で、歌が下手でリズム感もまったくない。また運が悪く、何かと偶発的な事故に巻き込まれてはケガをしている。ただし、ケガはお金をかけなくても自動的に治るものなので、両平自身はまったく意に介していない。ちなみに特技は太陽や星の位置から時間や方角を割り出すこと。誕生日は4月1日で血液型はA型、身長178センチ、体重65キロ。好きなものは猫、肉。嫌いなものは睡眠、試食コーナー。友人の赤西竜や生徒会長の桜井翔子など、親しい者からは「カネナシ」と呼ばれている。
鶴見 理英 (つるみ りえ)
琴吹高校2年A組に在籍する女子で、亀梨両平のクラスメート。大財閥「鶴見グループ」の令嬢で、かなりの資産家だが、鶴見理英自身はそのことをまったく鼻にかけることはなく、ごくふつうの女子高校生としての生活を望んでいる。母親の勧めで3歳の頃からヴァイオリンとピアノを習い始め、コンクールなどで数々の実績を残しており、期待の女子高校生奏者として、一部では有名な存在。ただし、周囲にはあまり気づかれていないものの、実は学力も運動神経もレベルが低い。かつてスズメバチにまとわりつかれて困っていたところを両平に助けられたことがあり、それ以来彼に思いを寄せるようになった。ちなみにその時に両平がスズメバチを捕まえたのは、貴重なタンパク源として食料にするためだったが、理英自身は「恋は盲目」を地で行く状態で、両平の行動すべてを好意的にとらえており、彼の欠点である音痴なところすらカッコよく見えている。同時に、両平のことならどんなことでも知りたいとヒマさえあればひそかに彼のあとを追いかけ、半ばストーカーのようになっている。そのため、両平の専属マネージャーかのように、彼のスケジュールを詳細に把握している。また強い妄想癖の持ち主で、何かにつけて両平のことを妄想してはニヤついており、その様子は親友の佳代にも引かれている。基本的に言動が単純なこともあり、理英自身は自分が両平に思いを寄せていることを隠しているつもりでいるが、両平を除く周囲にはバレバレの状態にある。誕生日は10月11日で血液型はO型、身長158センチ、体重50キロ。好きなものは亀梨くん、音楽。嫌いなものは貴金属、チームスポーツ。
赤西 竜 (あかにし りゅう)
琴吹高校2年A組に在籍する男子で、亀梨両平のクラスメート。赤毛を逆立てたヤンキーで、始終他校の生徒とケンカをしている。両平のことを「カネナシ」と呼んだり、何かと貧乏なことをからかって軽口を叩いたりしているが、意外にも仲はいい。ちなみに不良になったのは世間体ばかりを気にする市議の父親に反発してのことで、高校卒業後はすぐに家を出ようと画策している。もともとは高校もまともに通う気がなかったものの、両平に説得されて毎日登校するようになったという経緯がある。実は1年生の時には、気に入らない相手には誰彼構わずケンカを吹っ掛けて「赤い狂犬」と呼ばれて恐れられていたが、現在は周囲からもだいぶ丸くなったと評される程度には落ち着いている。両平のことを気に入っており、彼のいいところも悪いところも含めて思いを寄せている鶴見理英にはシンパシーを感じ、彼女の恋路をさり気なくサポートしている。誕生日は8月23日で血液型はAB型、身長175センチ、体重68キロ。好きなものはケンカ、ロック。嫌いなものはヘビ、父親。
田中 零司 (たなか れいじ)
鶴見理英の家の執事を務める青年。年齢は25歳。10年前に鶴見富美男に拾われ、鶴見家の執事として仕えてきた。執事としては非常に優秀で、理英をはじめとする鶴見家への忠誠心は非常に強い。そのため、理英が思いを寄せる亀梨両平に対しては、鶴見家の財産を目当てに理英に近づいた貧乏人と蔑み、当たりも厳しい。その意識は一貫しており、両平のどんな誠実な姿を見ても揺らぐことはなく、そんな姿にもさらなる反感を募らせていく。理英に対しては、どうにかして両平への思いをあきらめさせようとあの手この手で妨害工作を企ててはいるものの、何かと天然気味な周囲に翻弄されてうまくいっていない。実は田中零司自身、昔は「琴吹の喧嘩王」と呼ばれたほどに荒れており、両拳には当時のケンカ傷が深く残っている。誕生日は5月28日で血液型はA型、身長184センチ、体重72キロ。好きなものはクラシック、絵画鑑賞。嫌いなものは貧乏人、不良。
桜井 翔子 (さくらい しょうこ)
琴吹高校に通う3年生の女子。生徒会長を務めている。生徒会としてさまざまな企画を立てて実行しており、生徒たちからはバリバリ仕事をこなすキャリアウーマンのようだと、あこがれとともに高く評価されているが、その実態は非常にノリの軽いギャル。実際は生徒会の仕事から、絡まったイヤホンのコードをほどくなどプライベートの小さな用事まで、副会長の亀梨両平にすべて丸投げしている。気難しいヤンキーの赤西竜とも初対面で軽々しく口を利くなど、ギャルらしくコミュニケーション能力は意外に高い。そのため人脈も広く、LINEの登録者数は1000人を超える。だがその反面、住んでいる場所や家庭環境など、桜井翔子のことを深くまで知る人は誰もいないなど、謎の多い人物。誕生日は5月5日で血液型はO型、身長168センチ、体重51キロ。好きなものは面白い人、ボードゲーム。嫌いなものは虫、退屈。
佳代 (かよ)
琴吹高校2年A組に在籍する女子で、亀梨両平のクラスメート。鶴見理英の親友で、いつも行動を共にしている。落ち着いた性格で、両平のこととなると何かと奇行に走りがちな理英を制止したり、ツッコんだりと忙しい。理英が両平に思いを寄せていることも把握しているが、彼女の恋愛については特に表立って応援することもなく、傍観を決め込んでいる。ちなみにその理由は、佳代自身がBL好きで、両平と赤西竜のカップリングを推しているからである。
中丸 (なかまる)
琴吹高校2年A組のクラス担任を務める男性教師。世界史を担当している。襟足の長い髪をオールバックにした口調の荒いヤンキー教師で、周囲に恐れられている不良の赤西竜を前にしてもまったくひるまない。意外に常識人で、クラスには亀梨両平や鶴見理英、転入してきた明日之城雪菜など、癖のある生徒ばかりがいるため、つねにツッコミ続けている。
鶴見 富美男 (つるみ とみお)
鶴見理英の父親で、大財閥「鶴見グループ」を率いる男性。マイペースな性格で天然なところがあり、どこからどう見てもブサイクなペットの猫・シャーロットちゃんをかわいがっている。娘の理英が亀梨両平に惹かれていることを知っていると同時に、まじめで文武両道、さらにリーダーシップにも富む両平のことを、鶴見グループの次代を担うに足る人材として高く評価している。そのため、なんとか両平をものにするようにと、理英の恋路への協力を惜しまない。ただし、理英と両平にハワイのペア旅行券を渡し、途中で飛行機を無人島に墜落させてそこで既成事実を作らせるように画策したりと、手段がどこか常軌を逸している。言動も何かとエキセントリックだが、両平には「面白い人」と好意的に受け止められている。
鶴見 理凰 (つるみ りおう)
鶴見理英の母親。理英には家柄のいい人に嫁いでほしいと考えているため、亀梨両平と理英が付き合うことには反対している。そのため、田中零司の数少ない味方といえる。ただし、鶴見家の雑用係として雇われた両平の仕事ぶりには非常に感心しており、理凰自身は両平のことを嫌っているわけではない。
シャーロットちゃん
鶴見理英の家で飼っている猫。体色は紫色で、出来の悪いぬいぐるみのようなシンプルで雑な造形をしており、つねに口の両端からよだれを垂らしている。その姿は赤西竜に、「類を見ないブサイク」と引きながら言わしめたほどだが、美的センスが壊滅的な亀梨両平からは、「類を見ないほどかわいい」と評されている。食事はノドグロや天然本マグロなどの高級食材にしか手をつけず、時と場合にかまわず糞尿を垂れ流すが、飼い主の鶴見富美男には、そんなところが高貴だとかわいがられている。ちなみに、シャーロットちゃん自身も自分を高貴な存在であると自負しており、それゆえに平民は相手にしない。ただし、両平を相手にした場合は膝の上に乗っておしっこをしたりと、懐いている様子を見せる。なお、シャーロットちゃんが強気なのは人間に対してだけで、ほかの動物の前だとビビッて小さくなってしまう。
明日之城 雪菜 (あすのじょう ゆきな)
大財閥「明日之城グループ」の令嬢。人前に出るときにはつねに上田口という強面の黒服たちを背後に伴い、何かあるとすぐに彼らに対処を求める。まるで小学生のような幼い外見でいつも兎のぬいぐるみを抱え、言動もどこか幼稚だが、亀梨両平や鶴見理英とは同学年。鶴見グループと明日之城グループがライバル関係にあり、理英とは小・中学校と同じ学校に通っていたこともあって、幼い頃から理英のことをライバル視してきた。ただし、理英からは相手にされていない。また、明日之城雪菜自身は理英と校内のNo.1を競ってきたと語っているが、学力、運動ともに大したことはなく、実際に理英と競っていたのは校内のビリの座である。当初は当てつけのため、理英から彼女が思いを寄せる両平を奪おうとしていたが、両平の天然さの前に失敗を繰り返す。だが両平との接点が増えるにつれ、雪菜自身も彼に思いを寄せるようになり、やがて思いを募らせて両平らと同じ琴吹高校2年A組に転入してくる。実は小学生の時、明日之城家の令嬢ということでクラスメートにやたらと気を遣われ、そのことが嫌で、逆に自ら不遜な態度を取るようになったという経緯がある。そのため、人生において理英以外とはあまり人付き合いがなく、孤立しがちだった。その本質は素直で純粋なところもある、ふつうの女の子である。誕生日は2月2日で血液型はB型、身長149センチ、体重42キロ。好きなものはウサギ、高いところ。嫌いなものはボクシング、お化け。
上田口 (うえたぐち)
明日之城雪菜のボディーガード。つねに黒いスーツを身にまとっている。スキンヘッドでサングラスをかけた強面の「田口」、角刈りでサングラスをかけた強面の「上田」の二人組で、雪菜には合わせて「上田口」と呼ばれている。ふだんは姿を隠しているが、名前を呼ばれると瞬時に姿を現し、雪菜の命令に従順に従う。その迫力は、雪菜に因縁を付けていた不良集団が、上田口を一目見るなり自主的に町の掃除を始めたりするなど、更生した姿を見せるほど。
亀梨 分 (かめなし わかる)
亀梨両平の弟で、中学2年生。顔立ちが両平に非常によく似ている。自動販売機の裏の小銭を取ろうとしていたところを鶴見理英に助けてもらい、彼女と知り合う。この時、残った弁当を分けてもらったことをきっかけに理英に思いを寄せるようになる。少々恥ずかしがり屋なところがあり、自分の家が貧乏であることをあまり人に知られないようにしている。亀梨分自身のことを魔獣に取り憑かれて感情をなくした存在だと語ったり、空腹時の腹の鳴る音を自らの身に宿した魔獣の咆哮と称したりと、重度の中二病を患っているが、これらの言動は主に自分が貧乏であることを隠すためのものである。誕生日は6月8日で血液型はA型、身長156センチ、体重46キロ。好きなものは真夜中、英和辞典。嫌いなものは授業参観、子供。
亀梨 文 (かめなし ふみ)
亀梨両平の母親。ぼさぼさの髪を異様に長く伸ばして白装束を身につけており、口の端からはつねに血を垂らしている。外出する際もその姿はまったく変わることなく、その不健康な様子から、幽霊に見間違われることも多い。ちなみに血を吹いて倒れ伏すことがよくあり、その際はダイイングメッセージのように、自ら吐いた血を使ってメッセージを残す。