辺境警備

辺境警備

ルウム王国を舞台に、辺境に配属された神官のジェニアス・ローサイが、さまざまな人々との出会いを通じて成長し、自らの出生の秘密にまつわる過去の罪と向き合い克服していく姿を描く。元は投稿作品ながら紫堂恭子のデビュー作となった作品で、「プチフラワー」1988年3月号から1992年5月号まで連載された。

正式名称
辺境警備
ふりがな
へんきょうけいび
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
あすかコミックスDX(KADOKAWA)
巻数
全6巻完結
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概要・あらすじ

西カール地方の神官を勤めるジェニアス・ローサイは、過去の罪を胸に秘めたままひっそりと暮らしていたが、王都から左遷されてきたサウル・カダフ隊長が巻き起こす騒動により、凪のように穏やかだった日々が少しずつ変化していく。そんななか、呪術師のカイルと出会ったジェニアスは、闇の魔術が邪悪なだけではないことを知り、神殿のなかにも闇が入り込んでいることに気づく。

そこへ、ジェニアスを王都へ呼び戻す辞令が届く。かつて友人を失い、今も消えない心の傷を刻みつけられた過ちと向き合って、自分自身を見つめなおすべく、ジェニアスは王都へと帰る。しかしそこには、ジェニアスを最も苦しめる人物、ヘリウス・ヴォルグが待ち構えていた。

登場人物・キャラクター

ジェニアス・ローサイ (じぇにあすろーさい)

西カール地方の神殿で神官を務める青年。銀の長い髪と菫色の瞳を持ち、精霊に例えられるほど美しい。その見た目に反して、思い切りが良くて頑固、かつ生真面目で芯の強い性格。いい加減な言動の多いサウル・カダフをしばしば叱りつけているが、柔軟性のある軽やかな性質への憧れもあり、サウルを頼りにしている。両親の顔を知らず育っており、自分の出自を知りたいという気持ちをヘリウス・ヴォルグに利用され、友人のエルフレード・ヘルムを失った過去を持つ。 両親からもらった名前はエステル・シルヴァスタイン。

サウル・カダフ (さうるかだふ)

王都から西カール地方に左遷されてきた軍人。酒好きで女好きで仕事嫌い。「軍人は暇な方がいい」がポリシー。一見いい加減なようでいて、締めるところは締める有能さを持ち、戦闘や交渉では力を発揮する。部下たちやジェニアス・ローサイをはじめ、周囲の人々にもここぞという時には頼りにされている。

兵隊さん (へいたいさん)

辺境の兵営に勤務する兵隊たち。西カール地方出身の若者で、全員で9人いる。町内会長の息子で9人のまとめ役のマルヴィル、粉屋の次男のボブ、牛飼いのノブ、街道すじの小麦農家のベン、鍛冶屋の三男で少し内気なクリス、ワイン農家の三男のハル、靴屋の次男のフィン、マルヴィルの親戚のフレック、8人兄弟の末っ子のマルト。いずれも性格はのんきだがしっかりしていて、サウル・カダフ隊長を支えながら日々の務めを行っている。 神官のジェニアス・ローサイを心から慕っている。

カイル

レナンディで商いをしていた呪術師。両親はおらず、流れ者で呪術師をしていた祖父に育てられた。祖父を尊敬しており、祖父のような呪術師になる道を選んだため、自分の仕事を誇りに思っている。神殿で育ち、呪術を穢れたものと考えていたジェニアス・ローサイと当初は対立するが、次第に歩み寄っていく。

剣の賢者 (つるぎのけんじゃ)

ジェニアス・ローサイの代わりに神官として辺境に配属された、謎めいた雰囲気を持つ人物。赤ん坊だったジェニアスを引き取り、星径神殿の学舎に預けたという過去を持つ。細やかな気配りで周囲の人々の面倒を見る一方で、ひょうひょうとした軽やかな面もあり、サウル・カダフとは意外に話が合う。実は千年前に冥王を倒した2人の勇者の内の一人。 戦いの後に王として即位し、百年間ルウム王国を治めた。それからずっと長い時を生き続けているため、「不老不死者」とも呼ばれている。

ドル・ドナ (どるどな)

王都エンディミラ・オルムにある星径神殿の大神官。赤ん坊だったジェニアス・ローサイを預かり、成長を見守ってきた。ジェニアスが友人を失った事件で負った心の傷をおもんばかり、のどかな西カール地方の神殿で休息できるように計らった。神殿のトップの地位にいながら呪術にも理解があり、ジェニアスを介して知り合ったカイルのことも気にかけている。

ゴンザロ

西カール地方一帯を仕切る鉄商人。非常にがめつく、他よりも高い値段で商品を売っている。娘のファーナにレナンディから婿を取り、後を継がせようとしていた。サウル・カダフの根回しにより、王都での商業権を手に入れる代わりに、ファーナとロブの結婚を認めた。

ファーナ

鉄商人ゴンサロの娘。山羊飼いのロブと恋人同士だったが、父親にそれを言い出せず、無理やりにレナンディの商人と結婚させられそうになった。サウル・カダフの子供を妊娠したと嘘をついて、結婚から逃れようとする。

ロブ

ファーナの恋人で、山羊飼いをしている。正直で優しい性格。ファーナに駆け落ちを持ちかけられた時には、ゴンザロを一人にするのはかわいそうだからと諭した。ファーナがサウル・カダフの子供を妊娠したと嘘をついた際には、サウルに迷惑をかけられないからと、本当のことをゴンザロに打ち明けようとした。

フィルナス・ハイドランド (ふぃるなすはいどらんど)

王都から派遣された監査官。兵営の会計や勤務に不正がないかを抜き打ちで調べに来た。一貫して不正を許さない生真面目な性格で、堅物すぎると親からも疎まれていた。本人は誠実に仕事をしている自分を誇りに思っている。

アーヴィン

サウル・カダフの元部下。サウルの手続きの不備により、除隊処分になっていて給料が支払われなかったため、西カールの兵営まで取り立てに来た。サウルのいい加減で女たらしな性格を知りつつも、上官として尊敬している。

ゴンファノン

サウル・カダフの友人。軍の幼年学校の頃からの付き合いで、若い頃は女性をめぐって競い合ったこともある。今は出世して将軍になっているが、サウルとは昔と変わらない付き合いをしている。サウルに頼まれてゴンザロのために王都での商業権を融通するなど、なにかと便宜を図っている。

シルフィン

サウル・カダフの友人であるロレアンの妻。辺境の兵営にサウルを訪ねてきた。サウルの王都への召喚状を持ってきており、何の目的で辺境へ来たかを当てられたら、それを渡すという賭けをした。若い頃は王都で評判の美女で、吟遊詩人が窓辺でたたずむ彼女に一目で焦がれて詩を作ったという逸話を持つ。かつてロレアンと婚約していながらもサウルと恋仲になり、それを知ったサウルと大喧嘩のすえ別れたという過去がある。

ジュディス・ミア (じゅでぃすみあ)

ジェニアス・ローサイから天文学や暦づくりを教わっている少女。亡くなった父親がジェニアスと一緒に神殿で天文計算の仕事をしていたため、同じ仕事をしたいと考えている。ジェニアスにほのかな恋心を抱いているが、受け入れてもらえないことも悟っており、自分の気持ちを押し殺している。

ラミア

雪の中で倒れていたところを、ジェニアス・ローサイとサウル・カダフに助けられた女性。父親の病を診て欲しいとジェニアスに頼むが、実は悪霊の一種で、父親にジェニアスを食わせるのが目的だった。かつて父親は人間にさらわれて銀山で働かされ、鎖に繋がれて水も食べ物もろくに与えられず、命からがら逃げだしたという経緯があり、父娘ともに人間を憎んでいる。

エリアン

神聖獣神殿で修行している神学生。お遣いで西カールの神殿近くまで来たため立ち寄った。3年間勤めた後は、故郷に戻れることになっていた。どことなく閉鎖的な神殿の雰囲気に馴染めないでおり、年が近く話の合うジェニアス・ローサイを、今度は自分のいる神殿を訪ねてくれるよう誘う。

クリスティーン

ジョン・オースティンの妻。ジェニアス・ローサイに顔立ちが似ている。2年前に開かれた王立学会の祝宴に夫に同伴して出席し、その美貌のため貴族に目をつけられた。サウル・カダフは上官を通じてクリスティーンを貴族に捧げるよう命令された。

ジョン・オースティン (じょんおーすてぃん)

娘のミスティーンを連れて西カール地方のドレングに訪れた旅の辻音楽師。「グーゴル・プレックス」という偽名を名乗っている。かつては王都の王立学会の数学者だった。サウル・カダフには、かつて妻を奪われたという因縁がある。

ラスタ

ジェニアス・ローサイをライバル視する神官。大神官と縁のあるジェニアスに嫉妬し、なにかと嫌味をぶつけてくる。ジェニアスを引きずりおろしたいと考えており、彼の過去に探りを入れたり、呪術師であるカイルとの繋がりを神殿に密告したりする。

ヘリウス・ヴォルグ (へりうすゔぉるぐ)

かつては外人部隊にいた傭兵で、残忍な戦いぶりで悪名高かった。戦乱のない時には、それなりにあくどく稼いでいる。イヴリン・ヘルムとは愛人関係にあり、ヘルム家を乗っ取って財産を手に入れるために、エルフレード・ヘルムの友人であるジェニアス・ローサイを利用しようとした。その過程でジェニアスの出自を知り、ジェニアスに遺された財産も手に入れようと目論む。

エルフレード・ヘルム (えるふれーどへるむ)

特別生として星径神殿の学舎にやって来た。旧家にして名家ヘルム家の跡取り。家名を重苦しく感じており、好きな学問をし、友人たちと遊ぶ日々を大切に思っていた。ジェニアス・ローサイの一番の友人として親交を深めるが、父親が亡くなったため学舎を去り、ヘルム家当主となる。ヘリウス・ヴォルグの陰謀に利用されてしまう。

イヴリン・ヘルム (いゔりんへるむ)

エルフレード・ヘルムの父親と再婚した女性。非常に美しいがスキャンダルが多く、不倫の噂が絶えない。派手好きで、ヘルム家の親族には評判が悪い。ジェニアス・ローサイの出自を知っており、エルフレードにジェニアスを紹介された時に、両親を知っていると口走る。ジェニアスの父親であるアベル・シルヴァスタインに強い執着を抱いている。

アベル・シルヴァスタイン (あべるしるゔぁすたいん)

ジェニアス・ローサイの父親。由緒ある家柄の財産家だが、戦場でしか暮らしたことのない軍人だった。イヴリン・ヘルムと見合いをした後で、初恋の女性だったエルウィングと再会してしまい、エルウィングを選んで結婚して子供を作った。

エルウィング

ジェニアス・ローサイの母親。河で溺れているところを老夫婦に助けられ、息を吹き返した時には名前の他すべてを忘れていた。そのまま養女として引き取られ、保養地でアベル・シルヴァスタインと出会った。ジェニアスを産んですぐにアベルが亡くなったため、ジェニアスを抱いて屋敷を飛び出し行方知れずになった。

場所

西カール (るーまかーる)

ルウムという大きな王国の北西部の地域で、牧草地や小麦畑、ブドウ畑が広がるのどかな田舎。北方辺境国との国境に近く、警備のための兵営が建てられている。しかし国境を越えて出入りする旅人はほとんどおらず、この場所の歴代の隊長は王都から左遷されてきた人ばかり。

ドレング

西カール地方で一番大きな街。古い石の壁で囲まれており、四方に門があるが、ほぼ開いたままになっている。仮神殿が置かれていて、神官のジェニアス・ローサイは月の半分はこの仮神殿で過ごすことになっている。

レナンディ

ルウム王国北西部にある最大の都市で、王都との行き来も多い。歓楽街やスラム街もあるため、治安はあまり良くない。ジェニアス・ローサイとサウル・カダフがカイルに出会った街でもある。ドレングからは馬で1週間かかる。

エンディミラ・オルム (えんでぃみらおるむ)

ルウム王国の王都。2千年以上の系譜を持つ王の居城を中心に栄え、リーン川を挟んで東西に広がる都市の入り口は「獅子の門」と呼ばれている。王都に吸い寄せられた人々は、この門をくぐって己の運命に飲み込まれていく。ジェニアス・ローサイは、この地にある星径神殿で育った。

その他キーワード

悪霊 (えゔぃるすぴりっつ)

霊というよりは不思議な力を持った生物で、見かけよりずっと恐ろしい能力を持つものもいる。ひとたび人間に関わると、悪知恵を働かせることや、人を憎むことを覚えてしまう。数が少なくなってきており、滅多に見られなくなっているが、起源は人間よりずっと古く神話時代までさかのぼる。西カール地方の方言では「アモン」と呼ばれている。

銀炎馬 (せらいふあくす)

聖なる獣である神聖獣のひとつ。上つ世の昔に生まれ出たと言い伝えられている。冷たい炎のたてがみを持ち、空を駆ける。仲間と離れては生きていけないが、兵営に仔馬が迷い込み、サウル・カダフに捕まった。怒った親馬が兵営の屋根を壊し、サウルに冷たい炎を浴びせた。

獣虫 (じゅうちゅう)

聖なる獣である神聖獣のひとつ。昆虫に似た複数の足を持ち、金と水晶を鳴らすような美しい声をしている。森林に生息していたため人間と出会う機会が多く、恐れられていた。のちの時代には冥王に利用され、人間の街や村を襲ったとされている。

冥王 (めいおう)

世界を創造したといわれている9つの星々のうち、ひとつが天空から地の底深く堕ちてしまい、堕ちた星の力によって地の底に「冥王」と呼ばれる悪霊が生まれたとされている。冥王を産んだ星は再び天に戻って月となり、冥王も2人の英雄によって千年昔に滅ぼされた。

書誌情報

辺境警備 全6巻 KADOKAWA〈あすかコミックスDX〉

第1巻

(2018-10-24発行、 978-4041075210)

第2巻

(2018-10-24発行、 978-4041075227)

第3巻

(2018-11-22発行、 978-4041076378)

第4巻

(2018-11-22発行、 978-4041076385)

第5巻

(2018-12-22発行、 978-4041076392)

第6巻

(2018-12-22発行、 978-4041076408)

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