連ちゃんパパ

連ちゃんパパ

パチンコ依存症になった日之本進と、その家族を中心に繰り広げられるヒューマンドラマ。綜合図書「パチプロ7」で1993年から1997年にかけて掲載。当時は書籍化もされなかったが、連載開始から約27年後の2020年5月に「マンガ図書館Z」で配信されたのを機に、ネット掲示板やSNSで大きな話題を呼ぶ。同年9月、KADOKAWAより初の書籍化となった。

正式名称
連ちゃんパパ
ふりがな
れんちゃんぱぱ
作者
ジャンル
パチンコ・パチスロ
関連商品
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あらすじ

雅子の失踪

高校教師の日之本進は、妻の日之本雅子と一人息子の日之本浩司と共に平和な日々を過ごしていた。しかしある日、進が仕事から帰宅すると家には浩司だけしかおらず、雅子は短い置き手紙を残して失踪してしまう。すると突然借金取りの男が現れ、雅子がパチンコ依存症であることや、男の会社から多額の借金をしていたことを知る。雅子によって貯金も使い果たされており、追い詰められた進は浩司を連れて雅子を捜すために鎌倉へと向かう。旅費を稼ぐため、浩司から勧められて初めてパチンコを打った進は、その面白さに目覚めてしまう。そして、雅子を捜すために訪れた大阪でも進はパチンコにのめり込む。そんな中、大阪で借金取りの男と偶然遭遇し、あとを追跡すると京都のホテルで雅子を発見。すぐに雅子は愛人と逃げようとするが、進が浩司のことを考えて家に戻るように説得すると、雅子も一度はその申し出を了承する。だが、結局雅子は再び二人を裏切って失踪してしまう。

荒井勝子との出会い

日之本進は雅子のことを見限り、日之本浩司と新たな生活を始めようとしていた。しかし、働いていた高校から復職を断られてしまったため、やむなく学習塾の講師として働き始めるが担当した生徒の成績が振るわず、すぐに辞めさせられてしまう。浩司もストレスから反抗的で自暴自棄になっていたが、それを見かねた借金取りの男が世話をするようになり、浩司は借金取りの男に信頼を寄せるようになる。そんな中、進は働きもせずパチンコ店に通う毎日だったが、そこで知り合った荒井勝子と恋仲になり、勝子は進に多額の援助とマンションでの同居を提案する。二つ返事で快諾した進は、浩司を説き伏せて引っ越すことにするが、引越し当日に勝子が会社の金を横領していたことが発覚して逮捕され、すべて白紙に戻ってしまう。住む家を失った進は借金取りの男の家に押し掛け、浩司を盾にして一方的に同居を同意させ、男が経営する金融会社で働くことになる。進は債務者への取り立てを任されると、その家の子供を利用するなど卑劣な方法で無理やり返済をせまり、それが原因で債務者が一家心中未遂をしてしまう。その出来事にショックを受けた進は、まじめに生きようと実家のある田舎に引っ越すことを決意する。

田舎での更生失敗と雅子との再会

実家がある地方の田舎へ引っ越した日之本進はパチンコをやめることを誓い、両親が紹介してくれた学校の教師となり、まじめに働いていた。ある日、タバコを吸うためのライター目当てにパチンコ店に立ち寄った姿を父親に目撃され、さらに進の持っていた校長から預かっていた15万円を確認し、パチンコを辞めていないと誤解されてしまう。そして不運なことにその15万円を落としてしまい、15万円を取り戻すべく再びパチンコに興じるが、結局負けて取り戻すことはできなかった。その後、自分の身の潔白を聞く耳を持たない父親に、責任をすべて押し付けて日之本浩司と共に東京へ逃げ戻り、借金取りの男の家に転がり込む。そんなある日、借金取りの男のそばで小間使いとして働いていた進のもとに、失踪した妻・日之本雅子が現れ、借金を完済する。雅子は現在別の男と愛人関係にあり、結婚を視野に入れているため、多額のお金を提示して浩司の親権を譲ってほしいと言い出す。一度は断ったものの、進は目先の金欲しさに浩司を雅子に引き渡すが、雅子は愛人の男の不正行為に巻き込まれ、さらにその責任を問われそうになったことで、浩司を置いたまま再び失踪してしまう。結局、浩司は進のもとに引き取られたが、度重なる両親のトラブルによって浩司は心を閉ざすようになり、借金取りの男にのみ懐くようになる。

美保絵里との出会いと二度目の更生失敗

日之本浩司が心を閉ざしたことを問題視した担任教師・美保絵里が、日之本進に浩司を一時的に預かると申し出る。すると進は、怒りに任せて絵里を強姦して妊娠させてしまう。絵里の両親は進に責任を取って結婚するように要求し、絵里の父親が経営する大手企業の跡継ぎにも指名される。しかし、絵里の妊娠はカンちがいであったことが判明してすぐに破談となり、進と浩司は借金取りの家に戻る。このままではいけないと一念発起した進は、パチンコをすっぱり断ち切ってアルバイトを掛け持ちして地道に働き始めたが、悪質な経営者に騙されて120万円の支払いを要求されてしまう。雅子の借金もあり借金ができないことを知った進は、最後の望みをかけてパチンコで取り戻そうとしていたが、ある時、景品交換所の襲撃を計画して失敗に終わる。それを機に、今度はパチンコ依存症であることを開き直り、パチプロとして生きると宣言。そして、偶然再会した教え子から更生のためにとカンパされたお金もすべてパチンコにつぎ込んでしまう。

雅子との復縁

パチプロを自称して自堕落な生活を送っていた日之本進は、借金取りの男の家を追い出されてしまう。そして住む場所を探していると、日之本浩司が失踪したはずの日之本雅子と再会し、時折会っていることを知り、雅子が暮らすアパートに転がり込む。すると雅子は、別の男性との子を妊娠していることが判明し、進は自分の戸籍に入れることを拒否して離婚届を書かせるが、アパートには住み続けたうえ、雅子の給料を巻き上げてパチンコに費やしていた。そんな中、雅子は予定日より早く産気づいて緊急搬送される。帝王切開での出産となり、雅子の命も危ういと聞かされた進は離婚届を破り捨て、生まれてくる子の面倒を見ると宣言する。雅子は無事に双子を出産し、進は宣言どおり雅子と子供たちとの生活を決意する。

雅子との離婚と浩司のうつ

日之本進は扶養家族が増えたことで、手っ取り早く稼げる仕事を求めて借金取りの男に債務者への取り立て代行を提案し、非道な方法で回収業務を行っていた。その一方で、進はパチンコによる借金返済に追われていたが、借金取りの男と日之本雅子とのあいだで裏取引が行われており、知らずのうちに借金を返済する。しかし雅子は、いつまでもパチンコを辞めようとしない進に見切りをつけ、弁護士を立てて離婚を求めるが、最後のチャンスとして1か月で定職に就き、パチンコ断ちができれば離婚も取り消すとの条件を出す。そして進は、本気でパチンコ依存症を治すために心療内科に通うが、治療の一環としてパチンコ店に訪れた姿を弁護士に目撃され、正式に離婚が成立する。ところが離婚が原因で、息子の日之本浩司がうつ状態になってしまう。そんな中、進と雅子は協力して浩司の元気を取り戻すことに成功するものの、復縁することはなかった。

進の再婚と雅子の依存症再発

離婚して一人になった日之本進に、借金取りの男が進学塾講師の仕事を紹介する。その進学塾は老夫婦が長年経営しており、進の事情を知っている老夫婦は進の更生のために経営を任せることにする。進は人との信頼関係の大切さを再認識し、パチンコを辞めて学習塾の再興に尽力する。そんなある日、老夫婦からの紹介で中山美佐子と見合いすることになり、お互い再婚同士の気軽さから付き合うことになる。一方の元妻・日之本雅子は、パチンコ依存症が再発してしまい、交際していた男の貯金をパチンコにつぎ込んだ挙げ句、男名義で多額の借金をして失踪していた。残された日之本浩司と双子の子供を引き取った進は、美佐子との結婚も破談しようと提案したが、美佐子は子供ができない体であるため、実家の和菓子屋を継ぐことを条件に了承する。美佐子の実家では進や子供たちは歓迎されていたが、ある日美佐子の妊娠が発覚するとその態度は一変し、進に相談することなく浩司と双子の赤ちゃんを児童養護施設に預けてしまう。その行動に激怒した進は、借金取りの男と共謀して美佐子と和菓子屋一家を追い詰め、これまでどおり子供たちを住まわせる約束を交わして施設から引き取ることに成功するが、進が原因で和菓子屋で食中毒が発生して絶縁されてしまう。住む場所を失った進と子供たちは、雅子のあとを追って鹿児島へ向かい、そこで再び復縁を果たし、今度こそパチンコから足を洗って社会復帰するため、何もない田舎に引っ越す。

登場人物・キャラクター

日之本 進 (ひのもと すすむ)

東京の高校で数学教師を務めていた男性。妻の日之本雅子と息子の日之本浩司がいる。年齢は34歳。雅子がパチンコ依存症になり、多額の借金を残して失踪したことをきっかけに人生が一変する。家庭を顧みないタイプながら、職場ではまじめな教師として評価されていた。雅子の失踪を境にパチンコにのめり込むようになり、打算的でいいかげんな性格に変貌を遂げ、人道に外れるような行動も平気で取るようになる。雅子の失踪中、荒井勝子や中山美佐子と交際していたこともあったが、いずれも破局している。雅子とは正式に離婚が成立したものの、のちに浩司のために復縁した。パチンコ依存症を自覚しており、何度も更生を決意して心療内科の受診も行っているものの、パチンコの誘惑に勝てずに毎回失敗しているが、その度に立ち直りと気持ちの切り替えが異常に早い。依存症であることを開き直り、パチプロを自称した時期もあったが、家族の立て直しのために自重するようになる。元高校教師であることを生かして学習塾の講師を務めたり、簡単な英語通訳を引き受けたりすることもある。借金取りの男とは雅子の借金が判明してからの付き合いで、住む家と働き口がなくなった際には浩司を盾にして面倒を見てもらっている。

日之本 浩司 (ひのもと こうじ)

日之本進と日之本雅子の息子。小学生ながら雅子に連れられてパチンコ店に出入りしていたため、進よりもパチンコに詳しく、進がパチンコに依存するきっかけをつくった。達観した性格で冷めた言葉を口にすることが多い。度重なる雅子の失踪や、パチンコ依存症になった進の影響で反抗的な態度を取るようになり、うつ状態にも陥ったが両親のことは嫌っていない。借金取りの男から優しくされたことで、両親よりも信頼を寄せている節がある。

日之本 雅子 (ひのもと まさこ)

日之本進の妻で、日之本浩司の母親。パチンコ依存症となり、借金取りの男からの多額の借金を残したまま失踪してしまう。愛人の男と京都に隠れているところを進に発見され、一度は説得されて家庭に戻る意思を伝えたが再び失踪してしまう。その数か月後に別の男と愛人契約を結んで借金を完済したが、男が経営する会社のトラブルに巻き込まれてしまう。その後、生活が安定すると日之本浩司を進から取り戻そうとするものの、日之本雅子自身の立場が揺らぐと浩司を置いて何度も失踪を繰り返す。また、別の愛人とのあいだにできた双子さえも進に押し付けている。最初の借金以来、パチンコには手を出していなかったが、進との離婚後に知り合った男性に誘われて再びのめり込み、多額の借金を作ってしまう。その後、単身で鹿児島に引っ越して偽名で働いていたが、最終的に進と浩司と共に家族として生きていくことを決意する。

借金取りの男 (しゃっきんとりのおとこ)

日之本雅子が借金をした金融会社に勤務する男性。大柄な体型をしている。本名は不明。スキンヘッドで口ひげを生やし、厳つい顔にはバツ印の傷がある。粗暴な性格で取り立てのためにはどこにでも出没し、雅子や日之本進を追い詰めている。しかし情に厚い一面があり、日之本浩司は借金取りの男自身の生い立ちと重なる部分があるため、親身に接している。借金の取り立てのためなら、暴力的な行動もいとわない。

荒井 勝子 (あらい かつこ)

日之本進と恋仲になった女性。大手銀行に勤務している。年齢は33歳。パチンコが趣味で、進とそっくりな男性と交際していたが死別している。貢ぎ癖があり、進に多額の援助をしながら同居を持ちかけたが、引っ越し当日に1億8000万円の横領が発覚して逮捕される。

美保 絵里 (みほ えり)

日之本浩司の担任を務める女性教師。父親が大手企業の社長で、厳格なクリスチャンの家庭で育った。浩司の成績低下と家庭環境を問題視し、浩司を一時的に預かっていたが、日之本進によって強姦される。その際に妊娠疑惑が持ち上がったことで結婚をせまるなど、変わった一面を見せる。

中山 美佐子 (なかやま みさこ)

日之本進の見合い相手として紹介された女性。不妊症であることが原因で離婚歴がある。当初は日之本浩司と、日之本雅子が愛人ともうけた双子をかわいがっていたが、中山美佐子自身の妊娠が発覚すると冷たく接するようになり、最終的には両親と結託して進に無断で浩司と双子を施設に預けた。その後は進との子供を流産し、疎遠になった。

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