あらすじ
第1巻
かつて売れっ子漫画家だった北里都は、今は40歳を過ぎ、独身でヒット作もない。そんな中、都の母が急死。悲しみに暮れる都だったが、母親は彼女に多額の保険金と京都の町屋を残していた。そして京都に自分の町屋を見に行った都は、京都嫌いの不動産屋、松下駿や、町屋を愛する材木屋の山口征ら年下のイケメン達と知り合って横浜に戻る。そんなある日、これまで連載作家としてやって来た都は、編集長から読み切り作品を打診され、ショックのあまり再び京都に向かう。そこで、母親は自分と町屋に住みたかった事を知り、征の「田舎の学問より都の昼寝(田舎で勉強しているより都で昼寝していた方がいろんな物が身につく)」という言葉で、都は町屋に住む事に心が傾いていた。さらに親友のミケに背中を押され、都は征達と共に町屋の片づけを始める。
第2巻
北里都は都の母が残した京都の町屋を、町屋を愛する山口征と小川誠というイケメン達に手伝ってもらい修繕を開始する。そんな中、京都嫌いの不動産屋の松下駿が誠の異母兄弟だと知った都は、寂しげな駿にトキメキを感じる。しかし、それを知った征も都に積極的にアプローチを開始する。一方、駿の麻布の家に招かれた都は、彼が極度のマザコンだと知ってしまう。京都に帰った都は、彼女を待っていた征と結ばれる。征ともラブラブで町屋も完成し、希望に満ちあふれる都だったが、突如征の元彼女の筒井玲央奈が現れ、征とよりを戻してしまう。一方、駿は都の誤解を解くべく京都へ向かっていた。失意の都が町屋を貸家に出そうとしたその時、都の元彼が彼女の目前に現れる。
登場人物・キャラクター
北里 都 (きたざと みやこ)
漫画家の女性。初登場時は40歳。ショートカットの髪型で目が大きく、世間知らずな事もあり、実年齢より若く見える。横浜在住で、都の母とマンションで二人暮らし。18歳で漫画家デビューし、最初の10年は次々ヒット作を飛ばしたが、現在は「月刊お花畑」での隔月連載のみ。19歳の時に父親の浮気が原因で両親が離婚し、北里都自身が一家の大黒柱となって、母親を養って来た。4年前、京都オタクの男性と付き合っていたが、妻がいた事が発覚して別れた過去があり、それからは京都嫌いとなった。以前は漫画家を30歳で引退し、結婚するという夢があったが、今では50歳で結婚して引退するのが目下の目標。ある時、母親が突然亡くなり、京都の町屋を相続する。そんな中、京都で知り合った町屋を愛する材木屋の山口征から教わった「田舎の学問より都の昼寝」という言葉がひっかかり、親友のミケに背中を押され、町屋を修繕して京都に移住する事を決める。すると征や、京都嫌いの不動産屋の松下駿、若い編集者の真田陽から思いを寄せられるようになり、京都での希望に満ちた日々をスタートさせる。
ミケ
横浜のスナック「ミケの穴」のママ。北里都の親友。年齢は初登場時50歳。ロングヘアの巨乳を誇る美女だが、実はオネエで、本名は「三池勝」。気学鑑定士を務めており、都は西の方角が吉方位だと都を強引に京都へ誘う。実は亡くなった都の母から、京都で町屋を購入した事を打ち明けられており、どうにかして都を京都の事を好きにしてほしいと頼まれていた。好きなタイプはガテン系で、ミケランジェロの彫刻ような肉体をしたイケメンを「イケメンジェロ」と呼んでいる。都が京都に移り住んでからは、都のもとを頻繁に訪れ、小川誠を落とせば、もれなく町屋と娘がついて来ると、誠のパートナーを目指すようになる。性転換手術をし、残りの人生50年を「三池勝美」としてエンジョイしようとするポジティブな性格。
都の母 (みやこのはは)
北里都の母親。都と横浜のマンションに二人暮らし。都が19歳の時に夫と離婚し、夫は慰謝料を踏み倒してどこかへ逃げてしまった。都の母は年金にも入っていないため無収入ながら、経済観念がまったくない。死後、都の売れっ子時代のお金で大量の着物と京都の町屋を購入していた事が発覚。また複数の生命保険にも入っており、3000万円の保険金を都に残した。都と京都の町屋で暮らすのが夢で、大量の着物は都が着られるようにあつらえていた。
松下 駿 (まつした しゅん)
東京の不動産会社「松竹梅ハウジング」に勤める会社員の男性。ラフな短髪のイケメンで30代半ば。京都と町屋が嫌いで、町屋をすべて更地にして売却したいと考えている。現在は麻布十番の豪華なマンションに駿の母と住んでいる。母親は小川誠の父親の妾であり、昔は京都に住んでいた。父親の住む小川家の敷居をまたいではいけないと母親と約束していた苦い過去があり、そのため京都と町屋が嫌いになったという経緯がある。古い物は嫌いといいながら、骨董品などを見る目は確か。京都へ向かう新幹線で北里都と出会い、町屋を所有する都に売買の話を持ち掛けるべく接触すると同時に、都へ積極的にアプローチする。都には「はやお」と呼ばれている。
山口 征 (やまぐち せい)
父親が社長を務める材木屋「山口材木」で働く男性。町屋の修理を手掛けている。黒髪のサラサラな短髪で、30代半ばのイケメン。北里都が移り住む事になった京都の町屋の向かいに住んでいる。「田舎の学問より都の昼寝」という言葉を都に教えた人物で、町屋を愛してやまない。猫が大好きで猫柄のTシャツをよく着ており、「ちゃい」という名の猫を飼っている。町屋には職人やアーティストに住んでもらい、自宅兼工房兼ショップで製造直売を行って、そのネットワークでものづくりのシステムを構築しようとしている。その後は京都から世界へ、ものづくりを発信するという京都再生ビジョンを持っている。松下駿の幼なじみで、小川誠と行動を共にする事が多い。都会派の駿に京都名物「イケズ」をするのが趣味で、料理が得意。年の割には若く見える都に好意を寄せており、駿も都を狙っていると知ると積極的に行動を起こすようになる。その努力の甲斐があって都と結ばれラブラブになるが、突如、自然消滅した元彼女の筒井玲央奈が戻って来たため、都との関係は曖昧になる。
ちゃい
征が飼っている黒猫。近所の子供が拾った猫で、その子供が「ちゃいしとうない(捨てたくない)」と言った事から、ちゃいと名付けられた。ネズミ捕りが得意で、北里都に懐いている。
小川 誠 (おがわ まこと)
京都で子供達に伝統文化を教える寺子屋を経営している男性。町屋の修繕を山口征と共に手伝う事がある。眼鏡をかけた物腰の柔らかいジェントルマン。5年前に妻に出て行かれ、今は独身。娘の小川澪と、誠の母の三人で町屋で暮らしている。北里都のもとに滞在するミケといい雰囲気となる。松下駿が自分の異母兄弟で、自身が弟である事はまったく知らない。
誠の母 (まことのはは)
小川誠の母親。髪の毛を後ろでひっつめ、眼鏡をかけたインテリ風の穏やかな見た目の女性。自分の夫に妾がおり、松下駿の父親だという事はまったく知らない。その夫は、3年前に脳卒中で亡くなっている。
小川 澪 (おがわ みお)
小川誠の7歳になる娘。モサっとしたおかっぱ頭で、眉毛は太く短く、顔はイケメンの父親とまったく似ていない。ミケに、あっという間に手なずけられる。
真田 陽 (さなだ よう)
小楽館で「月刊お花畑」の編集者を務める男性。北里都の新しい担当となる。襟足が長めの短髪で、都とは干支が同じで29歳のイケメン。夏は半袖半ズボンというスーツを着用している。母親が都の大ファンだった事もあり、真田陽自身も都の大ファン。自分の力で、都をもう一度売れっ子漫画家にしたいという野望を持っている。
編集長 (へんしゅうちょう)
小楽館で「月刊お花畑」の編集長を務める中年の男性。肩までの髪をオールバック風に垂らし、眼鏡をかけてアゴが割れている。売れっ子漫画家にしか眼中になく、ずっと人気作家だった北里都がここ数年鳴かず飛ばずな事から、シリーズ物の読み切りを勧める。
川本 (かわもと)
人事異動で小楽館「月刊お花畑」の編集長となった中年の男性。マッシュ系の短髪の穏やかな雰囲気を漂わせている。北里都の最初の担当者で、都の才能を非常に高く買っている。天才だと思った漫画家は後にも先にも都だけだと豪語し、都に新連載を打診する。
七瀬 奈々美 (ななせ ななみ)
小楽館「月刊お花畑」に人事異動して来た女性。入社2年目の24歳。ロングヘアの巻き髪をした、今風のおしゃれな美女。しかし見た目に反して意地悪な性格で、真田陽が北里都を好きだという噂を聞き、都に敵意をむき出しにした悪意のある発言を浴びせる。
駿の母 (しゅんのはは)
松下駿の母親。ロングヘアの巻き髪をした美魔女。小川誠の父親である「小川順」の愛人だった過去があり、駿は順とのあいだに授かった子供。不動産会社「松竹梅ハウジング」を経営する男性と再婚し、麻布十番のマンションに駿と住んでおり、夫は仕事で外国に行っている。駿とペアルックを着るのが趣味で、玄関には駿と恋人同士のように写った写真を飾ってある。ちなみに、北里都はその写真を見て、駿と音信不通になった。
光浦 (みつうら)
大黒キモノ工房の代表を務める高齢の男性。長い髪を無造作に結んだ着物作家で、友禅作家になると決めた北里都が工房に通う事になる。しかし実は巨乳好きで、弟子である26歳の巨乳の持ち主、亜矢子と不適切な関係を持っている。
筒井 玲央奈 (つつい れおな)
青山の美容院で働いている女性。山口征の元彼女。年齢は21歳。東京の水が合わず、2年半ぶりに京都に戻って来た。征とは遠距離恋愛になり自然消滅したが、山口木材の嫁になる事が幸せになるための第一歩だと考え、何の迷いもなく征とやり直すつもりでいる。
都の元彼 (みやこのもとかれ)
数年前、独身と偽って北里都と付き合っていた中年の男性。京都マニアで、京都の町屋に住むのが夢だと語っていた。山口征と筒井玲央奈がよりを戻し、征の家の向かいの町屋に住むのが耐えられなくなっていた都の目前に現れる。都と別れたあと、町屋で暮らすため妻とは離婚して早期退職した。
場所
町屋 (まちや)
京都が昔、都だった頃に洛中にあった職住一体型の家。江戸末期から昭和初期までに建てられた伝統的木造住宅。町屋の中でも特に大きく立派な家が「京町屋」と呼ばれている。町屋は都の職人の美意識と技の結集で、昔は京の都の町屋に住むというのは職人のステータスであった。生活の楽しみは手工芸しかなく、人々は自己実現を目指して手仕事の品質を競っていた。北里都は都の母からボロボロの町屋を受け継ぎ、町屋を愛する山口征達の力を借りて、片付けや修繕を開始する。ちなみに都の町屋の鍾馗(邪気よけの神様)さんは、自分の主となった都のモテモテぶりを楽しんでいる。
クレジット
- その他
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小針 剛 , 俵 里実