概要・あらすじ
日本で五本の指に入る屈指の名家・詩浄院家のお嬢様である詩浄院サラサは、父親の定めた政略結婚の相手に嫁ぐ前に、19歳から20歳までの1年間限定で、執事の衛藤が勧める庶民生活の体験をすることになった。コンビニの店員やキャバクラ嬢、銭湯の番台に座るなど、衛藤が勧める勤め先は千差万別な職業。いかなる困難にも負けず、真のレディに成長できるよう、敬愛する衛藤のためにもサラサは日々献身的に働いている。
しかし、2人の感性はそれぞれがどこかズレており、サラサの疑問に即座に返す衛藤の回答は、時に大きなトラブルを発生させることになる。
登場人物・キャラクター
詩浄院 サラサ (しじょういん さらさ)
日本で五指に入る大財閥・詩浄院家の一人娘。年齢は19歳。ロシア人の母譲りの金髪ストレートロングの髪型をしている。生粋のお嬢様故に世間知らずな一面があり、幼い頃から詩浄院家に仕えていた執事の衛藤に、心からの信頼を寄せている。高校の卒業式を翌日に控えた夜、20歳を迎えると同時にアリア国王の第三夫人になるよう、いきなり父親に命じられた。 父親とはそれまでまともに話したこともなく、まるで物のような扱いを受けたことに傷付きながらも、彼の良心を信じたいと願っている。ひたむきで素直な性格で、人間的な魅力に溢れた人物。
衛藤 (えとう)
詩浄院家の執事を務める男性。年齢は35歳。長身でがっしりとした体格をしている。英国執事学校に学び、20歳の頃から詩浄院サラサに仕えている。いかなる局面においても執事服を身にまとい、華麗に振る舞っている。自身の価値観に則して「レディ」と認めた人物には真心を込めて仕えるが、何よりサラサのことを最優先している。元SPの七瀬にも勝るとも劣らない格闘術を修めており、物陰に潜む刺客も華麗に舞いながらあっという間に倒してしまう強さを誇る。 一方で周囲への警戒に力を入れ過ぎ、被害妄想や思い込みがやや激しい面もある。
マダム・キナ (まだむきな)
詩浄院サラサの母親。由緒あるロシア貴族の三女で、気品のある美人。サラサがまだ5歳と幼い頃に病没した。執事の衛藤が詩浄院家に仕え始めた当時は、その病弱さゆえに詩浄院家の妻としての役割を果たしていないと、フットマン(召し使い)たちに嫌われていた。マダム・キナはそんなフットマンたちに対しても愛情を持って接しており、衛藤はそんなキナのことを尊敬していた。
七瀬 (ななせ)
詩浄院家に雇われているフットマン(召し使い)の1人。黒髪を後ろで束ねた、きりっとした若い女性。元SPの職歴を持ち、坂崎、中田、富永との4人体制で詩浄院サラサの身辺警護を担当している。素手で人を殺す方法を20通り習得していると豪語する武闘派で、SP時代には部下たちに「鬼教官」と恐れられていた。執事の衛藤とは自他ともに認める犬猿の仲。
坂崎 (さかざき)
詩浄院家に雇われているフットマン(召し使い)の1人。口ひげを生やした壮年男性。七瀬、中田、富永との4人体制で詩浄院サラサの身辺警護を担当している。元レンジャー部隊所属という経歴が買われ、狙撃兵として雇い入れられた。サラサの散歩を見守り、だらしない服装をしていた通行人を怪しんで、麻酔弾を撃ち込むほどの厳重警戒ぶりを見せる。
中田 (なかた)
詩浄院家に雇われているフットマン(召し使い)の1人。20代くらいの、口の軽い青年。七瀬、坂崎、富永との4人体制で詩浄院サラサの身辺警護を担当している。軽薄な性格で、何かと調子に乗り過ぎるきらいがあるが、顔も知らない相手に嫁がねばならないサラサの境遇を気の毒に思うなど、心優しい一面もある。
富永 (とみなが)
詩浄院家に雇われているフットマン(召し使い)の1人。短く刈り込んだヘアスタイルに彫りの深い顔立ちの、いかつい容貌をした男性。七瀬、坂崎、中田との4人体制で詩浄院サラサの身辺警護を担当している。肉弾戦が得意だが、普段は警護チームの拠点となっている、宅配便業者に偽装した軽バンの運転手をしている。
斉木 (さいき)
コンビニ「ハピハピマート桜並木町店」で働く、爽やかな青年。詩浄院サラサが社会経験のために最初に勤めに出た先で、同僚となった。接客に丁寧に時間をかけすぎるサラサのことを、笑顔で励ましながら温かく見守る、優しく面倒見の良い性格。サラサに好意を抱き、彼女が親の決めた顔も知らない相手と結婚しなければならないことを承知のうえで告白したが、断られてしまう。
レイア
キャバクラ「あなこんだ」で働く、店のNo.1キャバ嬢。年齢は20代ほどで、気が強い性格の女性。詩浄院サラサが社会経験のために二番目に勤めに出た先で、同僚となった。金のために身を削ってキャバ嬢をやっているという自負が強く、短期限定で就労したサラサに対しては、金持ちの道楽と反感を抱いている。
花咲 快 (はなさき かい)
20代くらいの男性。長髪に派手な容姿で、見るからに遊び人といったチャラ男。キャバクラ嬢の職業体験をしていた詩浄院サラサを疎んじたレイアにそそのかされ、サラサを騙してベッドに連れ込もうと試みる。
キヨコ
詩浄院サラサが社会経験のため、三番目に勤めに出た先の銭湯「ゆう湯」の店主を務める老女。料理が上手で、仕事を終えたサラサと、彼女に付き従う執事の衛藤に、毎回庶民的な食事を振る舞う。息子の友行には客離れが激しい銭湯を取り壊して、スーパー銭湯へのリニューアルを提案されている。サラサの型破りな接客が話題になって、「ゆう湯」には一時的に客が戻ったものの、最終的には友行の提案を受け入れる。 それでも、今は亡き主人とともに過ごした「ゆう湯」に名残惜しさも感じている。
友行 (ともゆき)
キヨコの息子で、40代くらいの壮年男性。キヨコが経営する銭湯「ゆう湯」を廃業し、スーパー銭湯にリニューアルさせる計画を進めている。しかし銭湯の取り壊しの日に、煙突掃除を請け負った詩浄院サラサと衛藤のやり取りを聞いて、両親の愛した銭湯の在りし日の姿を留めようと思い直し、シンボルとして煙突を残すことを決める。
アリア国王 (ありあこくおう)
中東の小国「ウサイム国」の国王。日に焼けた肌にがっしりとした体格の、威圧的な雰囲気を漂わせている壮年男性。女たらしで世界各国に愛人を囲っているなどの醜聞が絶えない。詩浄院サラサを第三夫人として迎える約束を交わしている婚約者。しかし、実情は日本側がエネルギー資源の豊富なウサイム国との関わりを保つための政略結婚に過ぎず、サラサを物のようにしか考えていない。