星の王子さま

星の王子さま

サン=テグジュペリの小説『星の王子さま』を、漫☆画太郎が大胆な解釈で漫画化した作品。爆発的なハイテンションで、先の読めない物語が延々と展開されるクレイジーかつシュールなギャグ漫画。連載中に打ち切りをチラつかせ、一口25万円のクラウドファンディングで資金を調達するなど、姑息かつ実験的な内容も盛り込まれている。第4巻の巻末にはクラウドファンディング応募者(パトロン)に対する返礼漫画が掲載されており、トラックによる轢死をはじめたとした、それぞれのパトロンの壮絶な死にざまが描かれている。「少年ジャンプ+」で2017年43号から配信の作品。

正式名称
星の王子さま
ふりがな
ほしのおうじさま
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
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あらすじ

旅立ち編(第1巻)

操縦していた飛行機が故障し、砂漠のど真ん中で不時着してしまったパヤオは、迫り来る死に怯えながらも必死に飛行機を修理していた。そんな彼の前に、斧と生首を持った謎の少年が姿を現し、パヤオにヒツジの絵を描けと強要する。見かけの幼さとは裏腹に、頭に血が上ると凄まじく凶暴になるその少年は、絵を描くのが遅いという理由で、パヤオの足を切断するという鬼畜の所業に出る。あまりのクレイジーさに恐怖したパヤオが必死でヒツジの絵を描き上げると、少年はようやく落ち着きを取り戻し、自分が別の星からやって来た宇宙人である事をパヤオに告げる。そして、少年こと王子は、パヤオが発現させた絵を3D化する能力を利用し、UFOを3D化させたうえで、パヤオを連れて自分の星へと旅立つのだった。

仲間集め編(第1巻~第3巻)

王子は旅の道中で地理学者が住む星を訪問し、彼を仲間にしようと試みるが、断固拒否した地理学者から激しい攻撃を受けてしまう。パヤオの機転で形勢を逆転し、地理学者を倒した一行は、地理学者の体に、王子の星を乗っ取ったハイブリッド草のババァが飛ばした種が宿っており、洗脳されて凶暴になっていた事に気づく。地理学者を蘇生させて仲間にした一行は、それ以降も星々を巡り、目くらまし攻撃が強力な点灯夫、超計算機のソロバリンで相手の動きを先読みするビジネスマン、酔っぱらうと異常なほど強くなるアル中といった住人を倒してババァの洗脳を解き、ババァを打倒するための仲間を増やしていく。しかし、とある星で遭遇した住人のうぬぼれ屋の、頭を爆破するという謎の攻撃に対抗できなかった一行は、全滅寸前まで追い込まれる大苦戦を強いられてしまう。

緊急特番編(第3巻~第4巻)

しがない漫画家の漫☆画太郎は、『星の王子さま』が打ち切りを宣告されるという悪夢を見てしまう。夢でよかったと安堵する画太郎をよそに、画太郎のアパートを訪れた編集者のモミーは、『星の王子さま』の打ち切りを宣告する。夢でババァが言っていた、ババァの等身大フィギュアを作れば打ち切りを回避できるという言葉を思い出した画太郎は、モミーにフィギュア作成代の250万円を要求。慌てて逃亡したモミーはトラックに轢かれてしまうが、その瞬間に一口25万円のクラウドファンディングで資金を集める事を閃く。後日、クラウドファンディングで924万円を集めた画太郎は、原作者のサン☆テグジュペリに礼をするため、となりに住む彼の部屋まで出向く。しかし、画太郎がテグジュペリと大騒ぎした事で、騒音に怒り狂ったアパート階下の住人のゆでたまごが部屋に怒鳴り込んで来る。慌ててアパートの外に逃げ出した画太郎は、ゆでたまごともども暴走トラックに轢かれてしまうのだった。

パヤオ救出編(第4巻)

うぬぼれ屋との戦いの最中に死んだパヤオだったが、王子が施した蘇生と、みんなの必死の呼びかけで悪夢から覚め、再び意識を取り戻す。過去のトラウマのせいで暴れていたアル中になんとか勝利し、取り押さえたという報告を受けたパヤオは、そこでようやく自分達がうぬぼれ屋と戦っていた事を思い出す。しかし、みんながアル中にかまけて無視された事にショックを受けたうぬぼれ屋は、星のはずれで首吊り自殺をしていた。その姿を見たパヤオは、心の憶測に封印していた母親の首吊り死体のトラウマが蘇り、錯乱して意識を失ってしまう。パヤオを助けるため、絶対君主「王様」の星を目指す一行だったが、王子がルートを間違え、いきなりB621へたどり着き、恐怖のハイブリッド草、ババァと対峙する事になってしまう。

登場人物・キャラクター

パヤオ

やや太り気味な、団塊の世代の中年男性。操縦していた飛行機が故障して砂漠に落ち、難儀しているところに現れた宇宙人の王子に連れられ、彼の星までいっしょに旅をする事になってしまった苦労人。取り立てて特徴のない一般人だったが、描いた絵を3D化する事を王子に強要され、死に物狂いで呪文を唱えた結果、描いた絵を3D化できるという隠された特殊能力に目覚めた。とんちが得意で、パーティの頭脳的な役割を担う。王子をはじめとする突き抜けたタイプが多いパーティメンバーと比較すると、常識的な性格をしている。しかし、戦闘での働きが悪いという理由により、宇宙での移動の際は、空気の薄い最後尾に配置され、息も絶え絶えになってしまう事が多い。幼少の頃から、アルコール中毒の母親を50年にわたって介護し続けていたつらい過去を持つ。母親が決めた厳しい門限に縛られ、社会人になっても自由な生活を送れなかったため、未だ独身でなおかつ童貞。子供の頃の夢はアニメーターになる事だったが、母親に激怒された事であきらめている。パーティメンバーからは「パーちゃん」「パーさん」など、思い思いの名で呼ばれていた。

王子

惑星のB612から地球にやって来た宇宙人の少年。首元にスカーフを巻き、靴を履いただけのほぼ全裸に近い格好をしている。一見すると純粋無垢で穏やかな性格の持ち主だが、右手に斧を携えており、激高すると斧を振り回して人間だろうが飛行機だろうが、軽々と切断してしまうほどの非常に危険な人物。故郷のB612がハイブリッド草のババァに制圧されてしまったため、地球へと逃げて来た過去を持つ。10年間、毎日欠かさずババァに虫よけのなんこうを塗り続けたせいで、両手が触るだけでどんなケガでも治癒でき、死者すら蘇生できる薬手拳に変化している。地球逃亡後に予言者のキツネマンと出会い、近い将来に地球人類が滅びる事や、自分が砂漠でパヤオと出会う事を知った。ババァを倒すためにパヤオを強引に仲間に引き入れ、星々を巡って仲間を増やし、再び故郷を目指そうとする。宇宙空間を移動できる特殊能力を持っており、王子に触れている人間も、連なっていれば問題なく宇宙を移動できる。ただし、王子から離れるほど酸素が薄くなる。

地理学者

小さな星に住んでいる、ローブをかぶった学者の男性。長い白髭を蓄えているのが特徴。ずっと机にかじりついて研究をしており、探検家の話を聞いて記録台帳に書き留めていた。実地検分をしないため、自分の住んでいる星が、わずか3分で一周できるほど小さい事も知らない。足を大きくを振りかぶって地面に叩きつける事で、地中からマグマを噴出させて攻撃する特殊能力「ちゅどーん」を得意技としている。王子が旅の道連れにするために仲間になる事を要請したが、猛烈に地団駄を踏んで拒否し、「ちゅどーん」で王子とパヤオを殺害しようとした。体内をババァの芽で浸食されており、とても凶暴な性格になっている。王子達に倒されたあとにババァの芽から解放され、晴れて王子の仲間となった。「働かざる者!!! 食うべからず!!!」がモットーで、戦闘での活躍が少ないパヤオを時に見下した態度を取る。

ビジネスマン

小さな星に住んでいる、体格のいい宇宙人の男性。ネクタイに靴下と革靴を履いているだけの、全裸に近い格好をしている。左腕にそろばんに超計算機のソロバリンを装備しており、計算によって相手の次の動きを予測できるいう特殊能力を持つ。ネクタイには携帯電話が収納されている。王子一行の全員の動きを読み、すべての攻撃を避けて的確な反撃をしていた。体内をババァの芽で浸食されており、残虐で凶暴な性格になっている。本来は穏やかな喋り方をするジェントルマンで、王子達に倒されたあとにババァの芽から解放され、王子の仲間となった。

点灯夫

小さな星に住んでいる、熊やネズミのような姿をした宇宙人の男性。頭の上にあるチャーミングな丸耳を付けている。手持ちのステッキを光輝かせる、目くらまし攻撃を得意としている。パヤオ一行が彼の住んでいる星を訪れた時は、体内をババァの芽で浸食されており、非常に凶暴になっていた。パヤオが機転を利かせ、光を防ぐサングラスを3D化して、倒す事に成功する。当初は「ピカー」という一言だけコミュニケーションを取っていたが、あとでふつうにしゃべるようになる。パーティメンバーからは「点ちゃん」と呼ばれていた。

アル中

小さな星に住んでいる、アルコール中毒の男性。四六時中酒を欲している廃人。らくだシャツを着て腹巻をしている。一度酒が入ると巨大化して化け物のような姿に変わり、異常なほど強くなる。その強さは、王子達の1000倍はあり、地理学者、点灯夫、ビジネスマンを軽々と始末してしまうほど。目は長年の不摂生で見えなくなっているが、代わりに聴覚が発達している。体内をババァの芽で浸食されているが、性格はもともと凶暴で、酒のために女房を殺しているクズ人間。アル中自身が宇宙で一番不幸だと思っていたが、パヤオの不幸で陰惨な身の上話を聞いた事で改心し、酒を止めてまっとうに生きる事を決意する。漫☆画太郎のアシスタントを首になり、そのショックで酒におぼれた過去を持ち、首というワードにトラウマがある。そのため、首という言葉を聞くと我を忘れて暴れてしまう。

うぬぼれ屋

小さな星に住んでいる、シルクハットをかぶった小さな宇宙人の男性。つねに自分に酔っており、他者からほめてもらう事がなによりも大好き。パヤオ一行に遭遇した際も、自分をほめるようにお願いをしていた。他者からほめられると体が大きくなり、貶められると小さくなるという特殊能力の持ち主。そのため、悪口を言われて体が小さくなった時に対象の頭に入り込み、中で暴れて強制的に自分をほめさせ、大きくなって対象の頭を破壊するという手段で敵を倒していた。幼少の頃に母親の愛情が不足しており、自尊心が育まれなかった反動により、うぬぼれた性格になった。困難な状況に著しく弱く、戦闘中にパヤオ一行の関心が別の事に向いたせいで心を折られ、自殺してしまう。蘇生後はパヤオ達の仲間となった。

ババァ

地上に出ている茎の部分がバラで、地中にある根っこの部分がバオバブというハイブリッド草。惑星のB612で生育する。バラと勘違いして王子が毎日欠かさず水やりをした事で、根っこが惑星全土を浸食した。十分に力を蓄えたあとに本性を現し、人間の老婆に似た巨大な化け者になる。王子に対して日に3回、虫よけのなんこうを全身に塗る事を強要し、10年にわたって奴隷のように扱っていた。股間のデリケートゾーンからは、ラフレシアのような悪臭がする。宇宙に種を飛ばしており、それが体内に入った者は成長した芽によって洗脳され、性格が凶暴になったうえに戦闘で役立つ特殊能力を得る。

漫☆ 画太郎 (まん がたろう)

ベレー帽をかぶった漫画家の男性。冴えない風貌をしており、オンボロのアパートの2階に住んでいる。担当のモミーから『星の王子さま』の打ち切りを宣告されてしまい激しく動揺するが、夢の中で見た「今は亡きババァの等身大フィギュアを作れば打ち切りを回避できる」という言葉を信じ、モミーに対しフィギュア造形代として250万円を要求していた。「古本屋で(単行本を)買った貧乏人は死ねーッ!!!」と見開きを使って宣言するファンキーな性格をしている。実在の人物、漫☆画太郎がモデル。

モミー

編集者の男性。漫☆画太郎の担当者。作中では「変臭者」というよくわからない肩書が付いている。画太郎に対し、『星の王子さま』の打ち切りを宣告する。「今は亡きババァの等身大フィギュアを作れば打ち切りを回避できる」という夢を信じた画太郎から金銭を要求され、恐怖のあまり逃走するが、トラックに轢かれて身体がバラバラになってしまう。それでも生存し、クラウドファンディングで資金を募るというアイデアを思いつく。

ゆでたまご

二人組の男性。漫☆画太郎が居住するアパートの1階に住んでいる。夜中に騒いでいた画太郎に業を煮やして部屋へと怒鳴り込み、逃げる画太郎を追いかける。架空のプロレス技「マッスル・ドッキング」で画太郎とサン☆テグジュペリに瀕死の重傷を負わせるが、突っ込んで来たトラックに轢かれ、「へのつっぱりはいらんですよ!!!」という言葉を残して絶命する。実在の人物、ゆでたまごがモデル。

パヤオの母親

乳を丸出しにした老婆。パヤオの母親。もともとは世間体を気にするごくふつうの女性だったが、小学生の長男が学生運動にはまって以来、恥ずかしさで外を歩けなくなり、引きこもって酒浸りの生活を送るようになってしまう。嫌気が差した父親に逃げられた事で生活が荒み切り、50年もの間、パヤオの介護を受け続けたあとに自殺。その姿はパヤオの心に強烈なトラウマを刻んでいる。

サン☆ テグジュペリ

外国人の男性。漫☆画太郎が住むアパートのとなりの部屋に住んでいる。『星の王子さま』の原作者とされており、作品の打ち切りを回避した画太郎が、お礼をするために彼のもとを訪れていた。カタコトの日本語でしゃべる。その際、私ではなくテレビの前のちびっ子にお礼を言えと、画太郎を諭していた。ゆでたまごに追いかけられた際に、トラックに轢かれて絶命する。実在した作家であるサン=テグジュペリがモデル。

栗戸 リス

新人のOL。パヤオがサラリーマンだった時代の部下。パヤオの事を気に入り、彼の童貞を奪うためにバレンタインのチョコに脱法ハーブを混ぜてヘベレケにし、強引にラブホテルへと連れ込んでいた。定年間近のくたびれたおっさんを理想の男性としており、パヤオに結婚を申し込んでいた。

キツネマン

狐のフードをかぶり、マントを羽織った筋骨隆々の男性。狐の格好をして一人で世直しをしている自称・過激派。スキャンダルをスクープされた政治家の自宅をバズーカ砲で爆破する事を、主な活動内容にしている。見た夢がすべて現実になる予知夢が見られる能力を持つ。地球に逃げて来た王子の事を予知夢で知り、現場で待ち受けて王子の親友になる。近い将来に地球人類が滅びる事と、パヤオの情報を王子に伝えていた。

場所

B612

小さな惑星で、王子の故郷。毎日数十本の草が生える土地柄で、王子は根っこで惑星を破壊しかねないバオバブを引っこ抜くのを日課にしていた。しかし、王子がバラとバオバブのハイブリッド草であるババァを間違って育ててしまった事により、ババァにまるごと星を乗っ取られてしまった。

その他キーワード

薬手拳

高い治癒能力が宿った王子の両手を指した言葉。10年にわたってババァの身体に虫よけのなんこうを塗っていたせいで、この能力を得た。触っただけで切断された部位を治癒し、死者すら蘇生する事ができる。染み込んだなんこうをクモの糸のよう細くして飛ばし、遠くにあるものにくっつけてぶら下がったり、近くに引き寄せられる。

ソロバリン

そろばんに似た超計算機。ビジネスマンが左手に装着している。右手で対象のデータを打ち込む事で、対象の次の動きを正確に予測できる夢の計算機。しかし、実戦ではソロバリンが不調に陥る事が多く、核融合反応を起こして大爆発を起こしたケースもあるため、不調になるたびにビジネスマンが地面に叩きつけて破壊していた。地面が揺れていたり、対象が酔っぱらっているだけで動きが予測不能になるなど、欠陥も多い。

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