愛する娘を守るため奮闘する父親
岡谷渉は取材中、偶然に妻の岡谷綾香の不倫を目撃してしまう。さらに綾香が専業主婦でありながら家事を疎(おろそ)かにし、娘の岡谷心寧をタレントにするため束縛していることを目の当たりにし、彼女との離婚を決意する。心寧を心から愛する渉は、妻の不倫に気づかないフリをしながら、親権を獲得するため妻の不倫の証拠集めに奔走する。しかし弁護士の財田トキ子から、父親が親権を獲得できる割合は全体の1割で、親権を獲得できる可能性が非常に低いことを聞かされる。渉はその言葉に絶望するが、探偵の三砂裕やトキ子の助言に励まされ裁判の準備に着手する。
父親が親権を持つ困難さが描かれる
本作は、現在の法曹界がいかに父親の親権獲得に消極的であるかが描かれている。親権者に求められるのは子供を育てる能力であり、たとえ女性が不倫をしても育児能力が高ければ問題にはならない。さらに幼い子供にとって母親は必要不可欠な存在であり、子供は母親と暮らす方が幸せとの考え方「母性優先の原則」は現在でも有力な判断要素で、夫婦間で親権の争いが起きた場合、父親が親権を獲得できる割合はなんと1割である。この絶対的に不利な状況下で、岡谷渉は娘の親権を獲得するためにさまざまな手段を講じる。
岡谷渉に執着する間男の陰謀
岡谷綾香と不倫に興じている司馬真斗は、業界最大手の芸能事務所「ポールスター・プロダクション」に勤務する敏腕マネージャー。その美貌と甘い言葉で綾香を虜(とりこ)にしているが、岡谷渉から慰謝料を取るために離婚を先延ばしにしようとしている綾香の思惑とは裏腹に、すぐにでも離婚をしてほしいと望んでいる。その理由は綾香を愛しているからではなく、渉に対する憎しみによるものだった。しかし二人は一向に離婚する気配がなく、業を煮やした真斗は所属事務所の同僚、栗川満子から紹介された「別れさせ屋」と接触する。そして、ハニートラップ要員に渉を誘惑させて浮気の既成事実を作ろうとするなど、エスカレートした行動に走る。
登場人物・キャラクター
岡谷 渉 (おかたに わたる)
関東新聞社の社会部に所属する男性。年齢は30歳。若いながらも社内では指折りのエース記者として知られており、取材・執筆した書籍「消えた三億円」は複数の賞を受賞している。ある日、取材中に妻の岡谷綾香が不倫している姿を目撃し、娘の岡谷心寧の世話も疎かにしていることに気づき、綾香との離婚を考える。そして綾香の浮気の証拠集めと、娘の心寧の親権を獲得するべく、養育実績を重ねるために出世を捨てて在宅ワークに切り替える。しかし弁護士の財田トキ子から、父親が親権を獲得できる割合は全体の1割で、親権を獲得するためには少なくとも1年のあいだ離婚はしてはいけないと告げられ、愛のない妻と愛する娘との三人暮らしの継続を余儀なくされる。
岡谷 心寧 (おかたに ここね)
岡谷渉と岡谷綾香の一人娘。年齢は3歳。明るく無邪気な性格で、両親を心から愛している。テレビアニメ「ぷるっとプルキュア」の大ファンで、キャラクターグッズの「メープルン人形」を大切にしている。綾香から子役タレントになることを期待され、さまざまなオーディションを受けている。渉が在宅ワークに切り替えたことで、父親といっしょにいられる時間が増えたことを喜んでいる。また綾香が不倫していることは知らないが、渉の様子がおかしいことにうすうす察しており、彼の負担にならないようにとつねに明るく振る舞っている。
書誌情報
離婚しない男 3巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2023-02-20発行、 978-4065304495)
第2巻
(2023-06-20発行、 978-4065320617)
第3巻
(2023-09-20発行、 978-4065330340)