雪女と蟹を食う

雪女と蟹を食う

Gino0808の代表作の一つ。痴漢の冤罪をかけられたことで仕事を失い、自らの死を望んだ挙句、破れかぶれになって女性の金品を強奪しようとした北と、脅されてもまったく動じることなく、それどころか彼との不倫に興じる大富豪の雪枝彩女。そんな二人が蟹を食するため、名古屋から北海道最北端を目指して旅するラブサスペンス。すべてに完璧な所作を見せながら人を煙に巻くような言動が目立つ彩女と、そんな彼女に翻弄されつつも心惹かれていく北の心理が巧みに描写されている。また、日光東照宮や猪苗代湖、龍泉洞など北海道に向かう旅の途中でさまざまな名所を訪れる、ロードムービー的な要素もある。講談社「週刊ヤングマガジン」2019年9号より連載を開始し、同社「コミックDAYS」で2021年1月に完結。単行本は全8巻。その後「週刊ヤングマガジン」2022年31号から43号まで「沖縄編」が連載。単行本9巻として発売された。2022年7月からテレビ東京系列でテレビドラマ化。北を重岡大毅(ジャニーズWEST)、雪枝彩女を入山法子が演じている。

正式名称
雪女と蟹を食う
ふりがな
ゆきおんなとかにをくう
作者
ジャンル
サスペンス
レーベル
ヤンマガKCスペシャル(講談社)
巻数
既刊9巻
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強盗から始まる旅路

痴漢の冤罪で人生のどん底に落ちてしまった北は、絶望の果てに自殺を考える。だが、死ぬ前に一度も蟹を食べたことがない事実を思い出し、北海道で蟹を食べてから死を迎えようと考える。そして、図書館で北海道に関して調べていたところ、清楚系な美女・雪枝彩女と遭遇する。自暴自棄になっていた北は、北海道までの旅費を奪うべく、彩女の跡をつけて家に押し入る。しかし、半ば誘惑されるかたちで肉体関係を持ち、さらに彩女から私も蟹を食べたいと、北海道までの同行を持ち掛けられる。かくして、犯罪者になり損ねた北と自称人妻の彩女は、ただ蟹を食べに行くという理由だけで、名古屋から北海道までの旅を始める。

死を望む二人の逃避行

失うものが何もない北は、ただ北海道へ行って蟹さえ食べればいいと考えていたが、年上で人妻の雪枝彩女が旅に同行することで旅そのものに、ある種の心の安らぎを感じるようになる。そして、謎めいた振る舞いを見せる彩女の素性が気になるとともに、一人の女性として彼女を意識するようになる。一方の彩女は表向きは北に対して好意的で、北との旅も楽しそうな様子を見せるが、北が死を望んでいることに対しては止めようとすることもなく、達観していた。さらに、「二人の最大の共通点は、互いに自分の死を望んでいること」と発言し、北を困惑させる。

旅の果てに明かされる雪枝彩女の素性

さまざまな場所を巡る中で、雪枝彩女の素性が明らかになる。彩女は学生時代、恩師である雪枝一騎と文学を通じて交流し、やがて惹かれ合って結婚した。だが、教師を辞めて小説家として生計を立てようとした一騎がスランプに陥り、生活のために筆を折らざるを得ない状況にまで追い込まれる。それを知った彩女は、わずか1か月で大金を用意して一騎に小説を書くことをせまるが、一騎は彼女の妄執する姿に恐怖する。これをきっかけに二人のあいだに決定的な亀裂が生じ、一騎が浮気に走ってしまう。彩女はそれでも一騎の小説家としての成功を望み、最後の手段として自らの死を手段にして彼の小説を完成させようとしていたのだ。この真相を知った北は、自分の死はさておき彩女に死んでほしくないと考えるようになり、なんとしてでも自殺を思いとどまらせようとする。しかし、彩女の決意は北よりも堅固で、最後まで共に死ぬことを願い続ける。

登場人物・キャラクター

(きた)

かつて消防士をしていた青年。年齢は27歳。ある日、女子高校生から痴漢の冤罪をかけられ、懲役4か月の実刑判決を受けた。これがきっかけで仕事を失ったばかりか、周囲の誰一人として冤罪だと信じてくれなかったことに絶望する。その後、生活費も底をついたことから、一度も食べたことのない蟹を北海道で食べてから命を絶とうと思い立つ。その資金を調達するため、偶然出会った雪枝彩女から金品を強奪しようと考えるが、その場で彼女に懐柔された結果、なんとなく不倫関係となる。この体験に驚愕しながらも死を望む気持ちは変わらず、このまま自殺しようと考えるが、彩女から北海道への同行を持ちかけられたことで思いとどまる。そして、蟹料理を食べるという当初の目的を遂行するため、彩女の名義で借りたレンタカーを使い、北海道まで向かうこととなる。本来はまじめな性格ながら、現在は度重なる不幸によって厭世(えんせい)的になっているほか、若い女性に対して嫌悪感と恐怖感を抱いている。また、誹謗中傷を避けるために本名を隠し、「北」という偽名を使っている。

雪枝 彩女 (ゆきえだ あやめ)

死を決意した北と偶然、図書館で遭遇した大富豪の女性。穏やかな性格であまり感情を表に出すことがなく、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。北に対しては世間知らずに見せかけているが、いざというときは並外れた行動力を見せたり、金に物を言わせてトラブルを解決することに手慣れていたりするなど、したたかな一面を見せる。成り行きから北と不倫の関係になり、死ぬ前に北海道で蟹を食べたいと望む彼に対して同行を申し出る。夫の雪枝一騎とは仲がいいと聞かされているが、北には夫婦関係が冷え切っていると推測されている。また、ウソが苦手と主張しているが、その言葉もウソなのではないかと北から疑われている。

書誌情報

雪女と蟹を食う 9巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉

第1巻

(2019-06-06発行、 978-4065154700)

第2巻

(2019-09-06発行、 978-4065169865)

第3巻

(2019-12-06発行、 978-4065178560)

第4巻

(2020-03-06発行、 978-4065188415)

第5巻

(2020-06-05発行、 978-4065199923)

第6巻

(2020-09-04発行、 978-4065206782)

第7巻

(2020-12-04発行、 978-4065217122)

第8巻

(2021-03-05発行、 978-4065226056)

第9巻

(2022-12-06発行、 978-4065298039)

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