あらすじ
野獣(第1巻)
クールな魅力で女生徒から人気の高校3年生、海津龍一は、実は野心を秘めた冷徹非道な人間だった。そんな彼は総合病院の一人娘の内藤絵美に目をつける。龍一はホステスの小夜子と付き合いながら、絵美とも交際するが、医者の婿を取らせたい絵美の父から交際を反対される。龍一は絵美の父に手切れ金として1000万円を要求し、拒絶されるものの、既に絵美は龍一から離れられなくなっていた。観念した絵美の父から金を得た龍一は、絵美に別れを告げ、龍一の父とも縁を切って家を出る。一方、失意の絵美は自殺を図る。そんな中、絵美に思いを寄せていた桐岡から呼び出された龍一は、桐岡を挑発し、彼が自分を殴るよう仕向ける。
財閥(第2巻)
慶応大学に合格した海津龍一は、ホステスの小夜子を伴い、東京での暮らしをスタートさせる。テニスサークルに入った龍一は、サークルのキャプテン、堀田哲郎から彼女の黒枝慶子を奪い、堀田をテニスで打ち負かす。そんな中、大学の先輩の川井からディスコのポーターにスカウトされた龍一は、東京の夜の世界に刺激を受ける。龍一は多くの女性達と関係し、六本木ヤクザと呼ばれる今中錠と知り合う。プール付きマンションに住む実業家の娘、エリとも付き合い始めた龍一だったが、彼の本命は同じテニスサークルの財閥の令嬢、住菱久世だった。
失踪(第3巻)
テニスサークルの新歓合宿に参加した海津龍一は、小夜子にプレゼントされたベンツの190SLで颯爽と登場し、上級生の反感を買いながらも住菱久世を連れて合宿所をあとにし、久世をモノにする。一方、使う側の人間になりたいという川井に感化された龍一は、六本木ヤクザの今中錠とも交友を深めていく。そんな中、龍一は川井の友人のホスト、洋二から、愛車のベンツのガルウィングを譲ってもらう事になり、金策に奔走。だがそんな中、黒枝慶子に頼まれた田沢政一から大ケガを負わされる。さらに、久世の父親が雇った探偵に強請られた龍一は、彼を殺害。一方、薬の過剰摂取で死亡していたエリの口座から現金を引き出した龍一は、田沢をあやつっていたのが慶子だと知り、彼女の家に火を点ける。
襲撃(第4巻)
財閥の娘、住菱久世と結婚するという野心を抱く海津龍一は、久世の勧めるラグビー部に入部し、メキメキ頭角を現す。だが、久世はラグビーの天才と言われている早稲田大学の後関とも付き合っていた。そんなある日、貸しビルに興味を持つ龍一は、同じ大学の浩から、多数のビルを所有する未亡人の角田里子を紹介され、彼女を籠絡する。一方、龍一に捨てられた小夜子は、郷田直道を使って龍一への復讐を企む。郷田に襲われた龍一は六本木ヤクザの山上公二郎を頼り、危機を脱する。そんな中、龍一はラグビー部の合宿で黒枝慶子の気を引きたい田沢政一から、山中で襲われ、逆に田沢を崖から突き落とす。この時、ケガを負った龍一は早稲田との試合で、後関に完敗。一方、慶子から田沢の失踪の相談を受けた刑事は、龍一を調べ始める。
取引(第5巻)
郷田直道から拳銃を手に入れ、海津龍一に復讐しようとした小夜子だが、龍一は小夜子を懐柔して拳銃を手に入れる。そんな中、ラグビーの関東大学対抗戦が始まり、龍一の所属する慶応大学は順調に勝ち進む。ある日、ラグビー部を訪ねて来た野暮ったい女子大生の清水マリアに、龍一は特別な感情を抱くようになる。一方、早稲田大学との試合で後関に力の差を見せつけた龍一は、後関から住菱久世を奪うが、久世の父親から交際を反対される。何者かが龍一の怪しい人間関係を密告したのだった。自分こそが本当のエリートだと捨て台詞を吐き、住菱家をあとにした龍一は、資産家の未亡人、角田里子と結婚し、500億円もの財産を手に入れる。
決着(第6巻)
ある夜、清水マリアと再会した海津龍一は、マリアの友人、上岡と関係を持つ。龍一に遊ばれて自殺しそうな上岡を心配したマリアは、自分と一晩付き合えば上岡と会うという龍一の条件を飲む。だが、龍一を救いたいと願うマリアにペースを乱され、龍一はマリアを抱く事ができなかった。苛立った龍一は妻の角田里子の殺害を決行。自らの命をも賭けた作戦は成功し、龍一は莫大な資産を手中に収め、絶頂感を味わう。そんな中、マリアからすべてが龍一より上だという東大生の石垣切人を紹介される。切人の父親、石垣強一郎は、圧倒的な資金力を有する闇の総理と呼ばれる男だった。切人に自分の片腕になるよう迫られた龍一は、初めての敗北感に打ちのめされる。ある決意を秘めた龍一は、切人に勝負を挑むが歯が立たない。その時、龍一を追っていた刑事は、龍一が鞄から拳銃を取り出すのを目撃するのだった。
登場人物・キャラクター
海津 龍一 (かいづ りゅういち)
慶応大学に通う大学生。金のためならどんなことでもする非道な男。頭がキレるだけでなく、運動神経もバツグン。普段はその本性を隠し、クールな好青年を演じている。ルックスと話術、そしてSEXを武器に、金持ちの女性に近づき虜にしていく。最初は住菱銀行頭取の孫、住菱久世を狙っていたが、ターゲットを資産家の未亡人、角田里子に変更。 彼女を口説き落として結婚すると、交通事故に見せかけて殺し、その財産を自分のものにする。
小夜子 (さよこ)
ホステスの女性。海津龍一が高校生の頃から付き合いで、龍一といっしょに上京した。龍一に心底惚れており、当初は龍一の生活の面倒をみていた。龍一に捨てられた際には自分に惚れている郷田直道の力を借りて復讐を企むが、最終的には龍一に懐柔されてしまい、郷田から手に入れた拳銃を龍一に渡してしまう。のちに、勤めている店のママに「銀座のカマキリ」になれと発破をかけられ、龍一に振り回されてばかりの自分が嫌になり、仕事に打ち込むようになる。
内藤 絵美 (ないとう えみ)
海津龍一と同じ高校に通っていた女子高生。父親が県下最大の総合病院の院長だったため、海津龍一のターゲットとなる。海津龍一にもてあそばれたあげくに捨てられ、自殺を図る。
黒枝 慶子 (くろえだ けいこ)
慶応大学の学生で、テニスサークルに所属している。新入生としてサークルに入ってきた海津龍一に興味を持ち、関係を持つがやがて捨てられる。怒りが収まらない彼女は、ラグビー部の田沢政一に海津龍一を痛めつけさせるが、その報復に家を放火されてしまう。
住菱 久世 (すみびし ひさよ)
慶応大学の学生。海津龍一とは、所属していたテニスサークルで知り合う。住菱銀行頭取の孫だったことから、海津龍一のターゲットとなる。恋愛に関しては奔放で、海津龍一のほかに早稲田大学の学生、後関とも付き合っている。
今中 錠 (いまなか じょう)
六本木を縄張りにするヤクザ。海津龍一がバイトしていたディスコの客とトラブルになった際に知り合った。海津龍一を気に入り、兄貴分である山上公二郎に引き合わせる。
山上 公二郎 (やまがみ こうじろう)
六本木を縄張りにする暴力団、山上組の組長。海津龍一がただの学生でないことを一目で見抜き、組にスカウトする。
田沢 政一 (たざわ せいいち)
慶応大学ラグビー部に所属。好意を抱いていた黒枝慶子に頼まれ、海津龍一を叩きのめす。ラグビー部の合宿で再び手を出そうとしたところ、海津龍一の反撃に遭い、崖から突き落とされて殺される。
清水 マリア (しみず まりあ)
お茶の水大学に通う女子。慶応大学のラグビー部のいとこを訪ねて来た際に、海津龍一と知り合う。都会慣れしておらず、野暮ったい性格だが、龍一とはお互いに惹かれ合う。だが、龍一が現代の毒に冒されていると気づき、救いたいという思いで、石垣切人を龍一に紹介する。龍一が邪険に扱えない唯一の人物。
角田 里子 (かくた さとこ)
都内に複数のビルを所有する資産家。慶応大学に通う甥の紹介で、海津龍一と知り合う。海津龍一の肉体の虜となり、彼の言うがままに結婚。その後、事故に見せかけて殺される。
石垣 切人 (いしがき きりひと)
東京大学に通う男子。日本の闇の総理と呼ばれる石垣強一郎の息子。清水マリアを通じて海津龍一と知り合う。スポーツでも秀でた才能を発揮し、ボクシング、陸上、レスリングなど複数の個人競技で、オリンピックのメダル候補という実力者。一見穏やかだが神の子を自称している。龍一に、彼が三人を殺害した事実を突きつけ、自分の片腕になるよう迫る。
川井 (かわい)
慶応大学に通う男子。ディスコのポーターのアルバイトをしている。キツネ目の長身で、容姿端麗な海津龍一をディスコのポーターにスカウトする。野心家で、一流大学生はただの一流奴隷予備軍だという持論を有し、大学を辞めてディスコを経営する会社の社員となる。
後関 (ごせき)
早稲田大学の学生でラグビー部に所属。大学ラグビー界では、天才と噂されている。住菱久世と付き合っており、彼女を狙って現れた海津龍一にライバル心を燃やす。
エリ
地方でパチンコやラブホテルを手掛ける事業家の娘。海津龍一がアルバイトするディスコの常連客。眉毛が太い美人で、家賃が80万円のプール付きのマンションに住んでいる。精神がやや不安定で、60万円の仕送りでも足りないほど毎晩遊びまくっており、のちに薬の過剰摂取で命を落とす。
洋二
No.1ホストの男性。年齢は25歳。川井を通じて海津龍一と知り合い、たびたび龍一をホストの世界に誘う。濃い顔立ちをしており、眉毛が太くまつ毛が長い。年配女性のベッドの相手を務めて手に入れた、3000万円近い愛車、ベンツのガルウィングを、龍一に2000万円で譲る約束をする。
絵美の父 (えみのちち)
県で一番の総合病院の院長を務める男性。内藤絵美と内藤等一郎の父親。絵美には医者の婿をもらって病院を継いでもらうつもりでいるため、絵美と海津龍一の交際に反対する。龍一から絵美と別れる手切れ金として1000万円を要求され、彼に底知れない悪の匂いを感じ取る。
海津 操 (かいづ みさを)
海津の娘。海津龍一と同じ高校に通っている2歳年下の妹。無邪気な性格で、校内でもかわいいと評判。バスケットボール部のキャプテンから好意を寄せられている。龍一にとっては唯一の肉親と呼べる存在で、家族と絶縁して受験前に家を飛び出した龍一を案じている。
関山
ずんぐりむっくりの中年男性。海津龍一と角田里子の新婚家庭をしょっちゅう訪ねて来るようになった。里子の元夫と従兄弟であり、龍一が何か企んでいるのではないかと訝しんでおり、執拗に龍一に絡むようになる。
内藤 等一郎
弁護士の男性。絵美の父の息子で、内藤絵美の兄。人がよさそうな風貌で、穏やかな性格の持ち主。自分が弁護士になったため、父親が絵美に医者の婿を取らせようとしている事に負い目を感じており、一時的に絵美と海津龍一の交際を応援する立場を取る。
石垣 強一郎
大東国国際産業の総帥を務める男性。戦後のドサクサに紛れて、裏の世界で力を蓄え、政治家や暴力団をあやつる闇のフィクサー。圧倒的な資金力で企業を買収し、一代で一大コンツェルンを築き上げた。海津龍一が尊敬し、目標としていた人物でもある。
桐岡
海津龍一と同じ高校に通っている男子高校生。ラグビー部の主将を務めている。龍一と校内の女子の人気を二分している。単純な性格で、好意を寄せていた内藤絵美が、龍一に捨てられて自殺未遂をした事に憤慨し、龍一を殴って推薦入学を取り消された。のちに、日体大に進学してラグビーの試合で龍一と対戦する。
海津 (かいづ)
海津龍一と海津操の父親。まじめなサラリーマン風の男性で、メガネをかけている。明るい操を大事にしているが、一方で何を考えているかわからない龍一をかわいいと思えず、我が子ながら不気味さを感じている。
郷田 直道
地上げ屋を自称するヤクザの男性。小夜子の店の常連客。来店時にはたびたび現金100万円をプレゼントするなど小夜子を気に入っている。強面だが、小夜子に本気で惚れてしまい、彼女に頼まれて海津龍一を襲うが失敗。小夜子をあきらめきれず、龍一に復讐したい小夜子のために拳銃を用意する。
刑事 (けいじ)
定年間近の刑事の男性。黒枝慶子から、自宅への放火と田沢政一の失踪に海津龍一が絡んでいるとの相談を受け、単独で捜査に乗り出す。龍一を尾行し、徐々に事件の核心に近づいていくが、物的証拠を見つけられずにいた。角田里子の事故死を知り、再度龍一を追う事になる。
寄川
慶応大学に通う男子学生。海津龍一と同じテニスサークルの先輩。ヘラヘラしたいい加減な性格だが、龍一の怪しさに興味を示し、ダンスパーティに連れて行ったりと、色々と世話を焼いて親切にする。
上岡
お茶の水大学に通う女子大学生。清水マリアの友人。まじめな性格で、メガネをかけている。マリアといっしょに歩いていた際、海津龍一に飲みに行こうと誘われる。その後、龍一に遊ばれて捨てられ、死にたいと部屋に閉じこもってしまう。