あらすじ
1か月前、私立星原高校に勤務する北王子凛は、度重なる職務放棄と究極的なやる気のなさを理由に、教頭からクビを宣告される。しかし北王子は、悠々自適な職場を辞めたくないとごね、最後のチャンスとして新年度から超能力に目覚めたサイケだけを集めたP組の担任を命じられる。P組はさまざまな問題を抱えた生徒が在籍しており、去年だけで20人もの生徒が自主退学していた。世間の評判を気にする学校としては、これ以上の退学者を出さないために、残ったP組の生徒を全員卒業させることができればクビを撤回すると北王子に伝えるのだった。新学期を迎えた初日から生徒の超能力でひどい目に遭った北王子は、仕事をサボるために屋上に向かうと、そこには先にP組の灰崎火恋がいた。北王子は灰崎から超能力にまつわる悩みを聞き、解決の手伝いをすると伝えるのだった。(第1話「屋上の灰被り」)
灰崎の悩みを解決するため、北王子と灰崎は日々屋上で特訓していた。P組の白雷姫華も交えて特訓していたある日、北王子たちは生徒会長の薔薇坂乙女から校則違反を理由に屋上への立ち入りを禁止されてしまう。灰崎の爆発する超能力の特性上、人のいない屋上以外で特訓できないために立入禁止を解除させたい北王子たちは、放課後に薔薇坂を尾行して弱みを握ろうとする。もくろみは失敗に終わるが、あきらめきれない北王子は深夜に薔薇坂の部屋に忍び込むことを決める。灰崎と白雷の協力もあって侵入に成功した北王子は、ベッドの下で薔薇坂の日記を見つけるのだった。(第5話「探れ!生徒会長」)
登場人物・キャラクター
北王子 凛 (きたおうじ りん)
私立星原高校の教師を務める男性。担当教科は現国。感情が2個ほど足りないという理由で、学生時代の友達からは「ニコタリン」と呼ばれている。小さい頃から相手の気持ちに疎く、煙たがれて孤立していた。嫌われることに絶望してやる気をなくしているため、無気力で怠惰な性格となった。教師になってもその性格は変わらず、度重なる職務放棄や究極的なやる気のなさを理由に教頭からクビを宣告される。しかし教頭から、サイケが集まったP組の生徒を全員卒業させることができればクビを撤回するとの条件を提示され、P組の担任になる。面倒くさがり屋だが、約束したことや自分で決めたことは必ず守る性質で、P組の生徒が抱える悩みにも真摯に向き合っている。
灰崎 火恋 (はいざき かれん)
私立星原高校に通う2年P組の女子で、サイケの一人。照れると体から火を発し、恥ずかしさが頂点に達すると大爆発を起こす発火能力(バイロキネシス)に目覚めている。極度の恥ずかしがり屋ですぐに発火してしまい、小さな頃から一人で過ごすことが多い。年相応に恋愛に興味があり、いつか訪れる彼氏とのキスがうまくいくように、屋上でぬいぐるみを相手に練習している。その場面を北王子凛に目撃され、北王子に彼氏役を頼んだ。何度も発火に巻き込まれながらも、練習に付き合ってくれる北王子に好意を寄せるようになる。
白雷 姫華 (しらかみ ひめか)
私立星原高校に通う2年P組の女子で、サイケの一人。電気や電磁波をあやつることができる操電能力(エレクトロキネシス)に目覚めている。しかし、触れた相手に自分の思考を知られてしまう副作用もある。一目ぼれした北王子凛が灰崎火恋と親密になっている場面を目撃してしまい、さらに北王子に白雷姫華自身の本心を知られ、気持ちの整理がつかなくなって不登校になる。北王子からハッキリと断られるがあきらめきれず、登校するようになってからは学校内でも積極的にアプローチするようになる。また、北王子に近づく女子生徒をライバル視している。
南月 奈槻 (なづき なつき)
純喫茶「サウスルナ」の店長を務める女性。北王子凛の唯一の友人で、大学時代からの顔見知り。祖父が急逝して店を継いだものの、祖父のコーヒーの味が出せずに客足は途絶えて店は閉店寸前となっている。北王子の協力もあって祖父の味の再現に成功したことで、北王子に恩義を感じている。生徒との向き合い方に悩んでいる北王子に、さまざまなアドバイスを送る。
薔薇坂 乙女 (ばらさか おとめ)
私立星原高校に通う女子。超能力は持っていない。生真面目な性格で規律を重んじており、リーダーシップを発揮して生徒会長を務めている。教師の北王子凛が相手でも、一歩も引かずに正論で諭すなど正義感も強い。灰崎火恋に一目ぼれしているため、灰崎に近づく男性には無意識に厳しい態度を取ってしまう。
指動 ミア (しどう みあ)
私立星原高校に通う2年P組の女子で、サイケの一人。高重力を生み出して圧壊したり、低重力で空中を飛んだりできる重力操作(グラビティリティ)に目覚めている。好きな気持ちが高まるほど、高重力場が発生する特性がある。見ると動けなくなって泣き出してしまうほどにカエルのことが大嫌いで、カエルから助けてくれた北王子凛に好意を寄せるようになる。小学1年の時に好きだった男子に重力場でケガを負わせて、歩けなくしてしまったことがトラウマとなり、北王子の身を案じて学校から去るように意地悪している。
水瀬 緋魚妃 (みなせ ひなき)
私立星原高校に通う2年P組の女子で、サイケの一人。イメージするだけで好きな場所に一瞬で移動できる瞬間移動(テレポーテイション)に目覚めている。登校時に瞬間移動で現れた時に北王子凛とぶつかってキスをしてしまい、さらに白雷姫華から電気を浴びたことで能力が変化。水瀬が北王子のことを考えるか、北王子が水瀬のことを考えると強制的に北王子の目の前にテレポートするようになってしまう。ふつうに生活できなくなったことで部活にも集中できず、北王子とさまざまな精神修行を行っている。
集団・組織
P組
私立星原高校に設置されたクラスで、サイケの生徒だけが集められている。担任は北王子凛が務めている。去年は30人の生徒が在籍していたが自主退学が相次ぎ、新学期を迎えた時には10人までに減っている。残った10人を全員卒業させることが、北王子に課せられた使命となっている。
その他キーワード
サイケ
1999年のグランドクロスによって超能力に目覚めた新人類の総称。一万人に一人くらいの割合で目覚め、使える超能力は多種多様。超能力は成長とともに制御できるようになるが、小学生の頃は勝手に発動して周囲に迷惑をかけることも多く、心ない人たちからは恐怖の対象や厄介者として見られている。
書誌情報
青春サイケと怠惰な王子 2巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2022-01-20発行、 978-4065261026)
第2巻
(2022-05-19発行、 978-4065277881)