靴ずれ戦線 -魔女ワーシェンカの戦争-

第二次世界大戦の独ソ戦を背景に、ソビエト軍女性士官ナージャと魔女のワーシェンカ2人がドイツの首都ベルリンを目指す。近代兵器と魔術の混合するファンタジックな戦いをソビエト軍視点で描写した作品。

正式名称
靴ずれ戦線 -魔女ワーシェンカの戦争-
ふりがな
くつずれせんせん まじょわーしぇんかのせんそう
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
リュウコミックス(徳間書店)
巻数
全2巻完結
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概要・あらすじ

1941年に始まった独ソ戦。ソビエトでは大祖国戦争と呼ばれる戦争の中、ソビエト軍女性士官ナージャは従軍を命じられた魔女ワーシェンカの上官兼見張り役としてコンビを組むことになる。ベルリンをめざす道中の戦場で、ロシア古来の魔物や神様、魔法使いが戦場に登場。近代兵器に魔法と知恵で立ち向かうナージャワーシェンカだが、ドイツ軍の魔女ベルタと対峙したことで、目をつけられ狙われてしまう。

登場人物・キャラクター

ワーシェンカ・プリクラースナヤ・メドヴェージェワ (わーしぇんかぷりくらーすなやめどゔぇーじぇわ)

半人前の見習い魔女だが、師匠の代わりにソ連当局の協力命令に従ってNKVDに徴用される。修行で現世との関わりが少なかったせいかソ連やドイツの社会情勢にはやや疎い。しかし生まれ育ったスラヴの地を蹂躙しようとするものに対しては魔術を駆使して果敢に立ち向かう。 また熊神の守護を受けているため熊の姿に変化し同様の力を振るえる変身能力を持っている。能天気でややお調子者の性格だが、ともに戦い抜いてゆく間にナージャとは深い信頼関係で結ばれるようになる。

ナディア・ソロモノヴナ・ノルシュテイン (なでぃあそろものゔなのるしゅていん)

内務人民委員部所属の女性士官。ウェーブしたセミロングの黒髪を束ね、近眼のため眼鏡を着用。共産主義の下、正義感が強く真面目で教養もあるため、魔術といった非科学的な事を信じていない。そのためワーシェンカの行動に振り回され勝ちではあるが、時には臨機応変な対応を取るなど柔軟な態度を見せることもある。

ディッケ・ベルタ (でぃっけべるた)

ドイツの魔女であり金髪碧眼の美女。ナチス親衛隊の一員として独ソ戦の裏方で魔術を使い暗躍していた。ナージャとのはじめての遭遇は魔物が集うお化け温泉の中であり、友好的な出会いであったが、その後のドイツ軍の命令書奪取作戦時に熊に変化したワーシェンカによって重症を負わされる。 以後終戦時まで公私共にワーシェンカと敵対することになる。

ラヴレンチー・ベリヤ (らゔれんちーべりや)

内務人民委員部(NKVD)長官でありナージャの上官。魔女という存在については祖国のために利用できるものは利用する立場で容認していたが、戦争後期にはワーシェンカとナージャを逮捕して統制しようとしていた。実在の政治家ラヴレンチー・ベリヤをモデルとしたキャラクター。

バーバ・ヤガー (ばーばやがー)

森の中の一軒家に住む高齢の魔女。ワーシェンカの魔女修行の師匠。従軍命令書を持ってきたナージャに様々な無理難題を出して困らせていた。問題解決にワーシェンカが隠れてナージャに助け舟を出していた事を知った後は、お仕置きと称してワーシェンカを自分の代わりに従軍させた。 どのような魔術を使うのかは作中ではほとんど描写がないため不明。

青年兵士 (せいねんへいし)

作中では名前が表記されていない。ワーシェンカが一目ぼれしたソ連軍兵士。負傷して入院していたが、戦闘の影響か心を閉ざしたままだった。「冬が心を閉ざしているから、春を呼ぶ」と考えたワーシェンカは、近くのドイツ軍の拠点で見つけた冬の象徴マースレニツァ人形を焼き払う。 そのおかげで青年兵士は回復し、ワーシェンカとデートもできるようになったが、その後の戦闘で死亡。「死」から取り戻そうとワーシェンカは奮闘するが、「死」の狡猾さに勝つことができなかった。青年兵士はワーシェンカに感謝しながらも冥界へと旅立った。

死人たち (しびとたち)

友軍戦線へ移動中のナージャが落ちた塹壕の中に蠢いていたソ連軍兵士の死人たち。きちんと埋葬されなかったために蘇ったゾンビ兵士である。最後に受けた「一歩も退くな」という命令に執着しており、ワーシェンカ達も塹壕にとどまり戦うよう迫る。最後はワーシェンカが魔法で細工した偽の攻撃前進命令を受け、全員塹壕を飛び出していった。

ドモヴォーイ

ロシアの家屋に住む人間に友好的な精霊。顎鬚を生やした老人の姿をしている。ドイツ軍拠点に住み着き、大量の食料を食べることで部屋いっぱいの巨大な姿になっていた。食料のお礼にドイツ軍を守護していたが、ソ連軍に来るようにワーシェンカに交渉される。交渉という名の飲み比べに負けた後はドイツ軍の守護はやめたようで、拠点もソ連軍に奪回された。

ジェド・マロース (じぇどまろーす)

ロシアにおけるサンタクロース。あごひげの豊かな恰幅のよい老人の姿をしている。孫娘のスネグーラチカを人質にとられ、ドイツ軍に捕まっていた。ドイツ軍は1日でロシア中を回る秘密を尋問しようとしたが、スネグーラチカに化けていたワーシェンカと、対戦車ライフルで武装したナージャの活躍で、ドイツ軍より救い出された。 お礼として本当は子供にしかあげないプレゼントをワーシェンカとナージャにあげた後、孫娘と共に雪原の中を帰っていった。

バーンニク

スラブ神話に登場するロシアの浴槽の精霊。風呂桶を頭からかぶった小柄な老人の姿をしている。本来は一般家庭の浴槽小屋やサウナに住み着いている。戦争のせいでバーンニクに対する礼儀を忘れたロシアを嫌って、精霊たちが集まるお化け温泉に入り浸っていた。風呂の中で人の背中を触って占いをする性質を持つ。

聖カシヤーン

ロシア正教会の聖人。非常に長い眉毛と髭を持った老人の姿をしている。睨んだだけで災いをもたらすと言われる邪眼の持ち主で、酒をくれたドイツ兵の願いをかなえるためにソ連軍陣地へ攻めてきた。普段は守護天使によって封じられているために、4年に1度、うるう年の2月29日にだけ世界に解き放たれる。 その力は強力で、ワーシェンカはまったく歯が立たなかった。カシヤーンが、爆炎を背にしたナージャを守護天使と見間違えた隙を突いて、ようやく撃退できた。

レーシィ

森の番人をする精霊。森に道を通そうとしていたソ連軍を惑わし、森の中で迷子にさせていた。だが悪意はなく、森に籠っていた脱走兵の頭領、ルカ・スメルティッチに脅かされてのことだった。

ルカ・スメルティッチ (るかすめるてぃっち)

ボスニア生まれの青年。ボスニア戦線と大祖国戦争に参加したが、「他人の戦争を手伝うのは飽きた」と嘯き、あちこちの脱走兵を従えて自分たちだけで気ままな戦争をしようと森に籠っていた。その正体は人狼であり村人や兵士を餌食にしていた。ナージャも危うく毒牙にかかるところだったが、正体を見破ったワーシェンカの罠にかかり、ドイツ軍と鉢合わせして戦闘に巻き込まれる。 その後の生死は不明。

モスクワ西方の森林に住む、巨大な熊の姿した魔物。森に迷い込んだナージャがドイツ軍に包囲された時、ワーシェンカから教えてもらった「熊」の「真の名前」を叫んだことにより登場。慣れ慣れしく呼び出されたことを不快に思っていたのか、ドイツ軍の無礼さを見て彼らに襲い掛かった。

ルサールカ

ロシアの水辺に住み、人間を魅了しては水中に引きずり込んで命を奪う不吉な女性の精霊。住処のそばでの戦闘を煩わしく思い、腹いせにナージャを水中に引きずり込んだ。しかしナージャを気に入り、殺しはしないが川の中でナージャを飼おうと言い出す。ナージャを助けに来たワーシェンカにも動じず、地の利がある川の中で翻弄してしまう。 しかし勝ち誇って水面に顔を出したところ、ワーシェンカの北風の魔法で川ごと凍らされてしまう。そしてワーシェンカの脅迫に素直に屈し、ナージャを開放した。

ゲオルギー・ポペドノーセ (げおるぎーぽぺどのーせ)

ドイツ軍に対するパルチザンの頭目の青年。ドイツ軍の囚人となっていたが、救出命令を受けたワーシェンカとナージャに助けられる。重要人物ということを利用して食事や酒、あまつさえワーシェンカを口説きかけるなど軽薄な行動をとる。だがその正体は竜退治でも有名なロシア聖人のひとり聖ゲオルギイにして勇者エゴーリイである。 その聖人の力で追跡してきたドイツ軍を撃退し、ソ連軍には協力しないと1人去ってゆくが、のちにベルリンでの戦いではワーシェンカたちを助けに再登場する。

チョールト

ロシアに古くからいる精霊。古風な衣装を着た直立する黒猫のような姿で登場する。暇つぶしにワーシェンカをナージャをからかって遊んでいた。その後ドイツ軍に強制収用されるユダヤ人を見て、全員を救出しようとするナージャがドイツ兵に捕まった時に、ワーシェンカとナージャをつむじ風で助け出す。

ポルードニツァ

夏の昼時に現れるロシアの精霊。農作業をする人に頭痛を起こし、鎌をふるって人々をなぎ倒す。しかし彼女の行動はドイツ軍の捕虜収容所にいた元ソ連兵たちを守ろうとした結果だった。その中にいた元ソ連軍伍長ラザレフを慕っていることをワーシェンカに見抜かれて動揺するが、ワーシェンカのアドバイスを聞き、相思相愛と判明したラザレフと2人でどこかに去っていった。

イリヤ・ムーロメンツ (いりやむーろめんつ)

ロシアの叙事詩に登場する伝承の英雄。ソ連軍に参加し、塹壕を掘っていたところでワーシェンカと再開する。ベルタにそそのかされワーシェンカを襲ってきた、不死身のコシチェイと戦う。命を別の場所に隠して不死身となったコシチェイに苦戦するも、隠した命をナージャが見つけてたことで、ようやく勝利した。 彼も後のベルリンの戦いでワーシェンカを助けるべく再登場する。

不死身のコシチェイ

スラブ神話に登場する魔物で甲冑に身を包んだ巨漢の姿で登場。魔女ベルタによって復活した後は、ひたすらソ連兵を殺戮。ワーシェンカとナージャも殺そうと迫り来る。肉体と生命が別になっており、隠してある命が見つからないうちは文字どおり不死身であり、銃弾を何発もくらっても平然としていた。 卵に隠した命をナージャに食べられてしまったために、不死身でなくなり死亡。

キキーモラ

家に住んでいる老婆の姿をした精霊。モスクワにあるナージャの家の隣人であり、ナージャと顔なじみである。そそっかしく家事をすると必ず何かを壊してしまう。一般にキキーモラは守り神の面よりも不吉を運ぶことが多いと信じられているが、キーラは口は悪くもドイツ軍の爆撃から家を守り、ワーシェンカと一緒にご馳走を作るなど、人のよい面が強い。

聖パラスケーヴァ・ピャートニツァ

ロシアの女性聖人で、乙女の守護神。魔女ベルタから「ナージャを愛しているので恋敵のワーシェンカを呪ってほしい」と嘆願され、釈然としないながらもベルタの願いを聞く。ワーシェンカを死の一歩前まで追い詰めたが、ベルタの願いが嘘とわかると立腹しながら呪いを解き、「死」と共に去っていった。

ソロヴェイ・ラズボーイニク (そろゔぇいらずぼーいにく)

樫の木の上に止まり、キエフに向かう旅人を妨害するといわれている魔物。半人半鳥の姿をしており、草木を枯らしガラスを砕く深いな歌声で攻撃してくる。不死身のコシチェイの命の隠し場所を守るため、命を探しにきたワーシェンカとナージャの前に立ちふさがる。歌声で一度は彼女たちを撃退するも、森でワーシェンカが手に入れた拳銃と伝説の鏃(やじり)を加工した弾丸で撃ちぬかれ、退治されてしまう。

ズメイ・ゴルイニチ (ずめいごるいにち)

『靴ずれ戦線 -魔女ワーシェンカの戦争-』に登場。空を飛び三つ首から炎を吐く竜の姿をした魔物。魔女ベルタによってロシアの地から密かにベルリンに運び込まれていた。ドイツの勝敗よりも、ワーシェンカへの復讐のためにとベルリン市外で大暴れする。ワーシェンカは大苦戦するが応援に駆けつけたムーロムのイリヤと、ゲオルギー・ポペドノーセ、そしてナージャが見つけたゴーレムとの共闘で退治される。

ゴーレム

『靴ずれ戦線 -魔女ワーシェンカの戦争-』に登場。ユダヤ教の伝承に登場する自分で動く泥人形。魔女ベルタにより捕まり閉じ込められていたが、竜のズメイが暴れたことで半崩壊した部屋から脱出した。途中で同じく閉じ込められていたナージャの願いを聞いて彼女を救出。以後はナージャと共に竜退治に参戦する。

その他キーワード

マースレニツァ人形

『靴ずれ戦線 -魔女ワーシェンカの戦争-』の登場人形。ロシアの冬を送り、春を迎えるお祭りマースレニツァで使われる藁人形。ドイツ軍拠点に飾られていたが、ワーシェンカが焼いたことで冬の寒さが和らぎ春が近づく事となった。ただしロシアの春は泥んこの季節でもあるのでナージャはぬかるみに苦労するはめとなった。

書誌情報

靴ずれ戦線 魔女ワーシェンカの戦争 全2巻 〈リュウコミックス〉 完結

第1巻

(2011年12月13日発行、 978-4199502811)

第2巻

(2013年3月13日発行、 978-4199503337)

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