概要・あらすじ
若の三味線の弟子・豊作が、なりゆきで吉原の女郎・磯江と心中の約束をしてしまう。馬風は、とりあえず磯江を足抜きさせて、二人を駆け落ちさせればどうかと思いつく。女の出入りに厳しい吉原だが、まずは女姿のおかつが入る時に切手(通行証)を手に入れ、それを使って磯江が堂々と吉原大門から脱出。
おかつは男姿で出ていくという計画であった。計画は見事に成功するのだが、吉原から一歩外に出た磯江は憑き物が落ちたように、吉原へと戻ってくるのだった。
登場人物・キャラクター
馬風 (ばふう)
馬風庵に住まいする32歳の学者。馬の耳に風シリーズ三部作を通じて登場する。総髪を後ろで束ね、不精髭が目立つむさ苦しい風体だが、知恵者。
野火止 勝四郎 (のびどめ かつしろう)
馬の耳に風シリーズ三部作を通じて登場する馬風の遊び仲間。与力・野火止彦十郎の双子の弟。双子を忌む風習があったためか幼時より女装をさせられていた。一見、おきゃんな江戸娘。21歳。本作では姓を「火火止」と表記しているが、続編月夜の宴の扉では作者の手書きで野火止と表記されている。
守屋 弓弦 (もりや ゆづる)
馬の耳に風シリーズ三部作を通じて登場する馬風の遊び仲間。千五百石の旗本の若様で三味線の名手という風流人。26歳。
豊作 (ほうさく)
若の三味線の弟子。呉服問屋・丸升の三男坊。なりゆきで吉原の女郎・磯江と心中の約束をしてしまう。
磯江 (いそえ)
吉原の女郎。年季明けも近いのに、稼業に嫌気が差し、気鬱となり、自殺しようとしている。心中の約束はどうでもいいらしい。
場所
吉原 (よしわら)
『馬の耳に風』に登場する江戸時代の歓楽街。男性は出入り自由だが、女郎の脱走を防ぐため、女性の出入りには切手と呼ばれる通行証が必要。
その他キーワード
切手 (きって)
『馬の耳に風』に登場する吉原の通行証。女郎の脱走を防ぐため、所用で吉原の大門内に入る女性に発行される木札。これを示さないと外には出られない。
関連
『馬の耳に風』シリーズ (うまのみみにかぜしりーず)
江戸時代を舞台に、三人の若者の呑気な姿を通じて、江戸の人々の日常と心情を浮き彫りにする時代劇漫画の短編連作シリーズ。 関連ページ:『馬の耳に風』シリーズ