月夜の宴

月夜の宴

短編集『ニッポニア・ニッポン』に収録された短編三部作馬の耳に風の第二作。江戸時代をのんびりと生きる、旗本の嫡男、若の三味線の音色に合わせて打たれる鼓の音の秘密を探ろうと、学者の馬風とおかつが興味半分で乗り込んでくる。

正式名称
月夜の宴
ふりがな
つきよのうたげ
作者
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

本所、柳島の別宅で、が三味線の練習をしていると月に一度、三味線の音に合わせて鼓を打つ者がいる。その正体を暴こうと、自ら発明したと称する照明器具天燈鏡を持ち込んだ馬風おかつ。酒盛りのあと、二人は夜の野原に出て、の三味線の音に聴き惚れていた。そこへ鼓の音が響く。音を頼りに、十日稲荷社に近寄れば、妙齢の美女が鼓を打っていた。

その正体は鼓の師匠・田中小伝次だった。翌日、彼女は改めて、のところに挨拶に伺い、は彼女の美貌にぼーっとなってしまうのだった。

登場人物・キャラクター

馬風 (ばふう)

馬風庵に住まいする32歳の学者。馬の耳に風シリーズ三部作を通じて登場する。総髪を後で束ね、不精髭が目立つむさ苦しい風体だが、知恵者。本作では、おかつとともに、若の三味線に合わせて聞こえる鼓の音の正体を探る。

野火止 勝四郎 (のびどめ かつしろう)

馬の耳に風シリーズ三部作を通じて登場する馬風の遊び仲間。与力・野火止彦十郎の双子の弟。双子を忌む風習があったためか幼時より女装させられていた。一見、おきゃんな江戸娘。21歳。本作では、馬風と一緒に若の三味線に合わせて聞こえる鼓の音の正体を探る。シリーズ第一話に当たる馬の耳に風では姓を「火火止」と表記しているが、本作の扉では作者の手書きで野火止と表記されている。

守屋 弓弦 (もりや ゆづる)

馬の耳に風シリーズ三部作を通じて登場する馬風の遊び仲間。旗本の若様で三味線の名手という風流人。26歳。シリーズ第二話に当たる本作では、三味線の名手であることが描かれる。

田中 小伝次 (たなか こでんじ)

鼓の師匠。芸名は男名だが若い美女。鼓の音の正体。

その他キーワード

一片 (ひとひら)

『月夜の宴』に登場する若愛用の三味線の名器の銘。銘の謂われは「これを弾けば花の香を誘い一片の花弁が舞い込む」という伝説がある。この三味線の音色が美しい鼓の師匠、田中小伝次を若の元に誘うことになる。本作で「〈原富の古近江〉といわれる名器」と書かれていることから、名手・原富(原武太夫、1697-1776年)がかつて所有した、名工・石村近江の初期作品ということになる。

天燈鏡 (てんとうきょう)

『月夜の宴』に登場する馬風が発明した照明器具。現代で言えば懐中電灯に当たる江戸時代の「龕灯」の内側に銀メッキを施し、前に天眼鏡(拡大鏡)を嵌め込んだもの。

関連

『馬の耳に風』シリーズ (うまのみみにかぜしりーず)

江戸時代を舞台に、三人の若者の呑気な姿を通じて、江戸の人々の日常と心情を浮き彫りにする時代劇漫画の短編連作シリーズ。 関連ページ:『馬の耳に風』シリーズ

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