概要・あらすじ
プロローグ編「梅雨の頃」は江戸時代、湯上がり客の溜まり場だった銭湯の二階が舞台。そこに集う庶民の姿を描き、登場人物の紹介を行う。本編に当たる「一夜千両(上・下)」では、小金を手にした左官の亀吉が吉原ではもてない武士に扮して遊びに行き、最後に正体をバラして女郎にウケようという茶番を思いつく。亀吉のお供として、長松、留吉、柳森先生が、それぞれ変装して吉原に向うが、女郎が仮病を使ったり、寝てしまったりで、大人三人は惨敗に終わり、一番若い留吉だけが好い目を見ることになる。
登場人物・キャラクター
幸太郎 (こうたろう)
大家の伜で、おっとりしており、年齢よりも幼い感じの少年。
佐次郎 (さじろう)
池之端に住む粋人。二枚目。
長松 (ちょうまつ)
植木屋。亀公の悪友。おっちょこちょいな性格で、「一夜千両」では亀吉扮する武士の若党として吉原にくっついていくが、相手の女郎が寝てしまい、仕方なく柳森先生と花火を眺める。
柳森先生 (やなもりせんせい)
易者。口髭、顎髭が白い老人。「一夜千両」では亀吉扮する武士のお供の儒者としてくっついて吉原にいくが、女郎が寝てしまい、仕方なく長松と花火を眺める。
亀吉 (かめきち)
左官。長公の悪友。臨時収入があるとパッと使ってしまう。「一夜千両」では武士に変装して吉原で遊ぶことを思いつき、仲間を引き連れて繰り込むが、相手の女郎が仮病を使って姿をくらまし、計画倒れに終わってしまう。
留吉 (とめきち)
床屋・柚床の見習い職人で、商売道具の櫛を髷に刺している。幸太郎より一歳上だが、すでに色事のあれこれを知っている。一夜千両では、武士に扮した亀吉にお供して吉原に行き、一人だけ好い目を見る。
里好 (りこう)
粋人を気取りすぎて、笑われている若旦那。
場所
吉原 (よしわら)
『日々悠々』の「一夜千両」で、登場人物一同が変装して遊びに行く江戸時代の遊里。「一夜千両」の意味は本作では語られないが、山東京伝の黄表紙『江戸春一夜千両』にちなんだサブタイトルだと思われる。京伝の『江戸春一夜千両』では、大金持ちの息子が吉原で一夜に千両を使い果たすことから、ここでは吉原そのものを指す言葉として選ばれたのであろう。