概要・あらすじ
昭和27年(1952年)。女子中学生の柚木加菜子は、友人の楠本頼子と家出しようとして列車に轢かれ重傷を負う。加菜子は姉と名乗る柚木陽子の手によって美馬坂近代医学研究所に運ばれたが、その後、忽然と姿を消してしまう。一方東京近郊では、連続してバラバラ殺人事件が起きていた。編集者鳥口守彦からこの事件の相談を受けた古書店主の中禅寺秋彦(京極堂)は、二つの事件の繋がりに気づく。
登場人物・キャラクター
中禅寺 秋彦 (ちゅうぜんじ あきひこ)
長い髪に目つきの鋭い男性。中野の坂の上で古書店・京極堂を営んでいる。裏手にある神社の宮司もつとめ、副業で拝み屋もしている。宗教や民族伝承等に深い知識を有している。周囲からは店の屋号に因んで「京極堂」、「京極」と呼ばれている。事あるごとに「この世に不思議なことなど何ひとつない」と語る。普段は和服姿で、事件の現場に向かう際には五芒星の紋が入った漆黒の羽織と着物を着る。 学生時代の友人・関口巽の紹介で月刊「實録犯罪」の編集者鳥口守彦と会い、武蔵野連続バラバラ殺人事件と穢(けがれ)封じ御筥(みはこ)様の関連について相談を受けたことがきっかけで、これらの事件解決に関与するようになる。
関口 巽 (せきぐち たつみ)
気弱そうな男性。小説家だが、文芸だけでは食えず「楚木逸巳」(そきいつみ)という筆名でカストリ雑誌に寄稿している。中禅寺秋彦(京極堂)とは学生時代からの付き合い。かつて鬱病に悩まされ、現在も時折精神的に不安定になることがある。月刊「實録犯罪」の編集者鳥口守彦を京極堂に紹介したことから、武蔵野連続バラバラ殺人事件などの奇怪な事件に巻き込まれていく。
榎木津 礼二郎 (えのきづ れいじろう)
人形のように端正な顔立ちの男性。私立探偵で、薔薇十字探偵社を営んでいる。旧制高等学校では中禅寺秋彦(京極堂)、関口巽の一期先輩で、彼らから「榎さん」と呼ばれている。また警視庁の刑事木場修太郎とは幼馴染。相手の記憶を見ることができるという不思議な能力を持っている。天衣無縫で奇妙な振る舞いが目立つ。 弁護士の増岡則之から、行方不明となった柚木加菜子の捜索を依頼され、京極堂のもとを訪ねて共に動く。
木場 修太郎 (きば しゅうたろう)
いかつい身体の男性。警視庁捜査一課に所属している刑事。私立探偵の榎木津礼二郎とは幼馴染で、中尊寺秋彦(京極堂)や関口巽とも旧知の仲。自身を「中身はないが頑丈な箱」と揶揄している。女優美波絹子のファンで、密かに彼女の写真を手帳に挟んでいる。ある日の帰宅途中、武蔵小金井駅で柚木加菜子の事故に遭遇し、事件に関わるようになる。
楠本 頼子 (くすもと よりこ)
髪を二つ分けにした14歳の少女。私立鷹羽女子学院の中等部に通っている。父親がおらず不遇な家庭で育ち、良家の娘達が通う学校では孤立した存在だった。同級生の柚木加奈子から声をかけられ、以来彼女を慕っている。「お互いがお互いの生まれ変わり」という加菜子の言葉を聞き、彼女と永遠に一緒にいるものと信じていた。加菜子と共に家出をしようと、武蔵小金井駅にいたところ、加菜子はホームから転落してしまう。 これが後に中尊寺秋彦(京極堂)が関わる事件の発端の一つとなる。
柚木 加菜子 (ゆずき かなこ)
中尊寺秋彦(京極堂)が関わる事件の当事者の1人。長い黒髪で容姿端麗な14歳の少女。私立鷹羽女子学院の中等部に通っている。男性のような口調で話し、才色兼備で校内でも目立つ存在。いつも一人でいた楠本頼子に話しかけ、親しくなる。頼子に対して、「お互いがお互いの生まれ変わり」と語る。頼子と共に家出しようとしたが、武蔵小金井駅でホームから転落し、電車に轢かれて重傷を負う。 その後姉(実は母)の柚木陽子によって、医師の美馬坂幸四郎が営む美馬坂近代医学研究所に運ばれたが、姿を消してしまう。
美馬坂 幸四郎 (みまさか こうしろう)
長い髪をオールバックにした壮年の男性。美馬坂近代医学研究所の所長。武蔵小金井駅で事故に遭った柚木加菜子を治療する。中禅寺秋彦(京極堂)とは面識があった。戦前には天才外科医として有名で、研究がエキセントリック過ぎて学界から追放されたと噂されていた。第二次世界大戦中は、京極堂と同じ機関にいたことがある。
久保 竣公 (くぼ しゅんこう)
中尊寺秋彦(京極堂)が関わる事件の当事者の1人。オールバックで吊り目の男性。指がいくつか欠損しているため、常に手袋をしている。新人賞を受賞した新進の小説家で、稀譚舎が発行する文芸誌「近代文藝」に寄稿している。目下『匣の中の娘』という小説を執筆しており、本編ではこの作品から引用された内容が、冒頭部分をはじめ随所に挿入されている。 作画上のモデルは鳥肌実。
雨宮 典匡 (あめみや のりただ)
中尊寺秋彦(京極堂)が関わる事件の当事者の1人。小柄で冴えない容姿の青年。武蔵小金井駅で事故に遭った柚木加菜子の保護者と名乗り、美馬坂近代医学研究所に現れた。その後、加菜子が消え失せると同時に失踪し、誘拐殺人の容疑で全国に指名手配される。
柚木 陽子 (ゆずき ようこ)
中尊寺秋彦(京極堂)が関わる事件の当事者の1人。黒髪で右の口元にほくろのある女性。以前は美波絹子という芸名で女優をしていた。武蔵小金井駅で事故に遭った柚木加菜子の姉と名乗って現れ、瀕死の彼女を、医師の美馬坂幸四郎が営む美馬坂近代医学研究所に運んだ。加菜子の出生について、ある重大な秘密を抱えている。
寺田 兵衛 (てらだ ひょうえ)
中尊寺秋彦(京極堂)が関わる事件の当事者の1人。山伏のような身なりの壮年の男性。穢封じ御筥様の教主。背中に担いだ「御筥様」に魍魎を封じ込めると言う。元は箱職人で、精密な金属製の箱を得意としており、大学や研究機関からも注文が殺到していた。経営していた木工製作所を道場に改装している。
増岡 則之 (ますおか のりゆき)
オールバックの髪に眼鏡をかけた男性。長い顔が特徴。弁護士で、柚木陽子らとある交渉をしている。柚木加菜子が消え失せた後、その捜索を私立探偵榎木津礼二郎に依頼する。
須崎 太郎 (すざき たろう)
中尊寺秋彦(京極堂)が関わる事件の当事者の1人。骨ばった顔にまばらな髪、せむし男のような風貌の男性。美馬坂近代医学研究所で、所長美馬坂幸四郎の助手を勤めている。美馬坂からは後継者と目されていたが、後に何者かに殺害された。
石井 寛爾 (いしい かんじ)
丸眼鏡をかけた中年男性。神奈川県警の警部。柚木加菜子の誘拐事件を担当している。所轄に割り込んでくる警視庁の刑事・木場修太郎を邪魔に思っている。
鳥口 守彦 (とりぐち もりひこ)
赤井書房の編集者。カストリ雑誌月刊「實録犯罪」で、関口巽を担当している。一見調子の良い性格だが、頭の切れは良く、中禅寺秋彦(京極堂)の不可思議な話も即座に理解する。武蔵野連続バラバラ殺人事件と、穢封じ御筥様の信者に共通点を見出し、その謎を追って京極堂のもとに相談に訪れた。
里村 紘市 (さとむら こういち)
眼鏡をかけた小柄な男性。外科医で、警視庁の監察を勤めている。普段は里村外科を営んでいるが、死体が出ると喜んで駆けつける変わり者。中尊寺秋彦(京極堂)とも面識がある。武蔵野連続バラバラ殺人事件の遺体を鑑定した。
青木 文蔵 (あおき ぶんぞう)
こけしのような顔をした男性。警視庁の刑事で木場修太郎の部下。第二次世界大戦時は特攻隊員で、見かけによらず度胸がある。中禅寺秋彦(京極堂)達を木場の「変わったお仲間」と呼んでいる。
福本 (ふくもと)
小柄な男性。武蔵小金井駅の駅前にある派出所に勤務する警察官。柚木加菜子が駅のホームから転落して重傷を負った際、刑事の木場修太郎の命令で捜査に参加し、最終局面で中尊寺秋彦(京極堂)達と共に美馬坂近代医学研究所に乗り込む。
中禅寺 千鶴子 (ちゅうぜんじ ちづこ)
中禅寺秋彦(京極堂)の妻。清楚で穏やかな女性。夫を「仏頂面の石地蔵」と呼んで、涼しい顔をしている。関口巽の妻・関口雪絵と仲が良い。
関口 雪絵 (せきぐち ゆきえ)
小説家・関口巽の妻。落ち着いた性格で、不安定な夫を支えている。中禅寺秋彦(京極堂)の妻・中禅寺千鶴子と仲が良く、一緒に出掛けたり買い物をしたりしている。
クレジット
- 原作
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京極夏彦
書誌情報
魍魎の匣 5巻 KADOKAWA
第3巻
(2009-07-17発行、 978-4048543408)
第4巻
(2010-01-20発行、 978-4048544252)
第5巻
(2010-07-21発行、 978-4048545051)