作品の概要
基本情報
ヤマザキコレの代表作。2013年に同人誌として頒布した作品がベースとなっている。
要旨と舞台設定
物語は現代のイギリスを舞台に、魔力の生成と吸収に長けた「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれる特殊体質を持つ少女、羽鳥智世(チセ)と、人外の魔法使いであるエリアス・エインズワースの関係を中心に展開される。父親と弟に去られ、母親に殺されかけた過去を持つ15歳のチセは、居場所を求めて自ら人身売買の市場に身を投じる。そこでチセはエリアスと運命的な出会いを果たし、彼に500万ポンドで買い取られ、弟子兼花嫁として迎えられることとなる。
ストーリー展開
エリアスのもとで魔法を学び始めたチセは、妖精や精霊との交流を通じて成長していく。一方でエリアスは、チセとのかかわりを通じ、少しずつ人間的な感情を理解していく。両者の成長と関係性の変化を中心に、周囲の人々や存在とのかかわりが描かれる。
ジャンル的特徴と位置づけ
本作は異類婚姻譚の要素を持つファンタジー。イギリスの伝承や伝説の生物、魔法や魔術の体系が詳細に描かれ、ブリテン諸島の民間伝承を基盤とした綿密な世界観が構築されている。
作品固有の表現技法と特徴
作中では、「魔法」と「魔術」が明確に区別されている。魔法は妖精や精霊、幽霊、悪魔の力を借りて起こす奇跡であり、魔術は魔法から派生した科学的な技術として設定されている。
世界観の構築と設定
作品世界では、魔法使いたちは「カレッジ」と呼ばれる組織に所属し、魔法や魔術の研究と教育を行っている。人間以外の存在は鉄に弱いという特徴を持つが、概して人間には好意的で、彼らから「お隣さん」や「良い友達」と呼ばれることを好む。
連載状況
マッグガーデン「月刊コミックブレイド」2014年1月号から連載。同誌がオンライン誌「コミックブレイド」としてリニューアルされた際に、本作の連載も引き継がれた。また、同社の新創刊雑誌「月刊コミックガーデン」2014年10月号から同時連載となり、2023年5月号まで連載。その後、ブシロードワークス「コミックグロウル」に移籍し、2023年12月21日から連載。
受賞歴
2014年「コミックナタリー大賞」第2位。
2014年「このマンガがすごい!2015」オトコ編第2位。
2015年「全国書店員が選んだおすすめコミック2015」第1位。
2015年「マンガ大賞2015」第12位。
メディアミックス情報
ドラマCD
2016年3月10日刊行のコミックス第5巻初回限定版、2024年4月12日刊行の第20巻特装版に付属。
OVA
『魔法使いの嫁 星待つひと』:2016年9月10日刊行のコミックス第6巻特装版以降、第7巻特装版、第8巻特装版に付属。前・中・後篇の全3部作で、制作はWIT STUDIO。
『魔法使いの嫁 西の少年と青嵐の騎士』:2021年9月10日刊行のコミックス第16巻特装版以降、第17巻特装版、第18巻特装版に付属。前・中・後篇の全3部作で、制作はスタジオカフカ。
テレビアニメ
第1期『魔法使いの嫁』:2017年10月から2018年3月まで放送。
第2期『魔法使いの嫁 SEASON2』:第1クールが2023年4月から6月、第2クールが2023年10月から12月まで放送。
舞台
『舞台「魔法使いの嫁」』:2019年10月上演。
『舞台「魔法使いの嫁 ~老いた竜と猫の国~」』:2020年10月から11月まで上演。
あらすじ
普通の人間には見えないものが見える少女羽鳥智世は、その力のため不幸のどん底に落とされ、自暴自棄になって自らを謎のオークションに商品として出品する。人ならざるものにして異形の魔法使いエリアス・エインズワースは、ひと目で彼女の能力を見抜き、500万ポンドで落札。エリアスは智世を自分の弟子にすると語り、さらには「嫁」にするとまで言い放つ。ロンドン西方のイングランドの田舎にあるエリアスの家に住むことになった智世は、その図抜けて特殊な魔力に関する体質のため、様々な魔法・妖精界がらみの出来事を経験していく。非日常的な事件の数々を経験しつつ、智世は謎に包まれたエリアスの正体へ一歩一歩近づき、彼らは同時にお互いの絆を深めていく。
登場人物・キャラクター
羽鳥 智世 (はとり ちせ)
15歳の少女で、髪は赤毛でショート、瞳の色は緑(この配色は西欧で「魔女」の印と言われる)。普通の人間には見えないものが見え、さらに魑魅魍魎が寄ってくる。その力のために家族は離散し、母は彼女の目の前で命を絶つ。数奇な運命を経て、人外で異形の魔法使いエリアス・エインズワースに引き取られた彼女は、彼の弟子となってイングランドの田舎にある彼の家に住むことになる。イギリスへ渡ってからは、チセと呼ばれることが多い。彼女の持つ力は「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれ、尋常でない度合いで魔力を吸収・生産することができるというもの。そのため強大な魔法の行使が可能となる。しかしその膨大なエネルギーの流れは、彼女を短期で摩耗させてしまうので、何もしなければ彼女は3年で活動を停止しまうと言われている。
エリアス・エインズワース
大型犬の頭蓋骨に山羊の角を生やした頭部を持つ、長身の異形。「人間にもなれず精霊にも戻れない汚れた存在」と言われる。性別は男性。人間の顔に化けることもできるが、感情をコントロールできなくなると魔獣のような姿になってしまう。「茨の魔法使い」「影の茨(ソーン)」「裂き喰らう城(ピルム・ムーリアリス)」といった様々な異名を持つ。強大な魔法を扱い、その世界では有名人で教会からも目をつけられている(教会からの案件を遂行することで、自由を許されている)。膨大な量の魔力を吸収・生産することができる羽鳥智世をオークションで落札し、自らの弟子にする。チセと共に暮らし、魔法をはじめさまざまなことを教えている。彼女の摩耗に関しては、何らかの手段を考察中らしい。料理をまったくしたことがなかったが、チセに教わり、サラダや簡単なオーブン料理を作れるようになった。
シルキー
エリアスの家事を一手に引き受ける家事妖精(ブラウニー)。プラチナブロンドの髪に、紫がかった瞳。フード(ボンネット)を被り、ピンクと白のドレスを着ている。「銀の君」「銀の花」という異名を持つ。ほとんど無口だが、筆記は可能。エリアスの作った薬を村の人間に売ったりするのは彼女の仕事。 兄はスプリガンで、妖精女王の付き人。単行本のカバーを外した本体の表紙には、彼女が主人公の4コマ漫画『シルキーちゃん日記』が載っている。
アンジェリカ・バーレイ
ロンドンに店を構える、魔法機構(マギウス・クラフト)の技師。魔法使いの女性。外見の年齢は30代くらい。様々な魔法器具を制作・修理する。「石切蜂(ジェムズ・ビー)」という異名がある。父親も魔法機構の技師であり、また魔術師であった。若い頃、修行中に失敗して、腕の鉱物の結晶が埋まっているようになった。使い魔は、水妖ヴォルジャノーイのヒューゴ。アルシアという娘がいる。エリアスの依頼で、チセ用の魔法具をつくる。
サイモン・ラカム
エリアスの村にある教会で、神父と牧師どちらもこなす中年男性。見えないものを見る力があり、そのため教会からエリアスの監視を命じられている。教会からの「案件」をエリアスに渡す仕事なども行う。エリアスが人間に化けるときのモデルでもある。
リンデル
「竜の巣」を管理する(人間の目から隠す)魔法使い。見た目は青年だがエリアスよりずっと年上で、エリアスを我が子のように扱う(チセを「孫」と呼んだりする)。「白花の歌(エコーズ)」という異名がある。チセを「竜の巣」に連れて行き、年老いた竜・ネヴィンの終焉に立ち会わせた。また、その後のエピソードでは、チセの杖をつくる手助けをし、さらに自分とエリアスの因縁を彼女に語る。海豹人(セルキー)という妖精を使い魔にしている。
ネヴィン
「竜の巣」に暮らす年老いたウーイルという種類の竜。五百年生き、チセと出会ったとき、まさに「あちら側の世界」へ行こうとしていた。彼はチセの力で、ふたたび空を飛ぶ夢を見ながら最後の時を迎える。死後、リンデルが植えた菩提樹の種が育ち、瞬く間に巨木となった。チセは後に、その樹の枝で自分用の杖を作る。
モリィ
猫の街・「ウルタール」に住む当代の「猫の王」。長毛種でオッドアイ。エリアスが教会から解決するように命じられた「案件」の遂行に手を貸す。
レンフレッド
魔法使いを毛嫌いする魔術師の中年男性。顔の左側に、大きな爪でえぐられたような傷があり、左腕も失っている。とある理由で、エリアスの2つの「案件」の遂行を邪魔し、対象を奪い取ろうとする。ちなみに、この作品中では、「魔法使い」は「世界の理を妖精や精霊などの力を借りて操作しようとする存在」で、「魔術師」は「世界の理にハッキングをかけようとする存在」として区別される。
アリス
レンフレッドの弟子である若い金髪の女性。口調はあまり綺麗ではない。師匠を思う気持ちは人一倍で、そのため単独行動に出ることがある。「ウルタール」の案件と「黒妖犬(ブラックドッグ)」の案件の邪魔をしようとする。
カルタフィリス
半ズボン姿の可愛らしい少年の姿をしているが、レンフレッドに命じてエリアスの2つの「案件」の遂行を邪魔した張本人。自分がコントロールできる妖精を捕まえ、それで邪悪なキメラを創りだそうとした。「ヨセフ」「彷徨えるユダヤ人」などとも呼ばれ、その呼び名の通りの人物なら、かつてイエス・キリストをないがしろにした罪で、審判の日まで永久に死ぬことができなくなった存在と思われる。非常に長く生き、かつ体にひどい損傷を受けてもやがて再生するために、記憶があやふやになるときがある。「カルタフィリス」と呼ばれると、「その名前で僕を呼ぶな」と激昂する。
ルツ
かつてはユリシィと呼ばれていた大きな黒い犬だったが、妹と思っていた人間の少女イザベルの死後、彼女の墓を守る存在となり、やがて「墓守犬(チャーチ・グリム)」「黒妖犬(ブラックドッグ)」と呼ばれる精霊となる。カルタフィリスに、キメラの材料とするため捕えられかけるが、チセと契約を結んで彼女の使い魔となり、力を得て野望を打ち砕く。黒い服を着た青年の姿にもなれる。
妖精たち (ようせいたち)
妖精王オベロンと妖精女王ティターニアを筆頭とする、この世とは別に存在する「常若の國(ティル・ナ・ノーグ)」に住む精霊たち。空気や風を操るエアリアル、女王につき従うスプリガン、墓や森に棲んで人々を惑わせたり死者の魂を冥界に案内するウィル・オー・ウィスプ、才能あるものに取り付いて血を吸うかわりに名作のインスピレーションを与える美女のリャナン・シーなどが登場する。名前で呼ばれることを好まず、「お隣さん」「隣人」などという表現を好む。人間を「肉の殻持つ者(リャー・アナム)」と蔑む。
関連
魔法使いの嫁 断片集 (まほうつかいのよめ だんぺんしゅう)
ヤマザキコレの代表作『魔法使いの嫁』の外伝を収めた短編集。魔法使いや妖精が息づくイギリスを舞台に、日本からやってきた赤毛の少女・羽鳥智世と、彼女と共に暮らす魔法使いエリアス・エインズワースを中心に、魔... 関連ページ:魔法使いの嫁 断片集
書誌情報
特装版 魔法使いの嫁 19巻 マッグガーデン〈ブレイドコミックス スペシャル〉
第16巻
(2021-09-10発行、978-4800010841)
第17巻
(2022-03-10発行、978-4800010858)
第18巻
(2022-09-09発行、978-4800010865)
第19巻
(2023-03-10発行、978-4800012760)
魔法使いの嫁 20巻 ブシロードクリエイティブ〈ブシロードコミックス〉
第1巻
(2024-04-06発行、978-4048995894)
第2巻
(2024-04-06発行、978-4048995900)
第3巻
(2024-04-06発行、978-4048995917)
第4巻
(2024-04-06発行、978-4048995924)
第5巻
(2024-04-06発行、978-4048995931)
第6巻
(2024-04-06発行、978-4048995948)
第7巻
(2024-04-06発行、978-4048995955)
第8巻
(2024-04-06発行、978-4048995962)
第9巻
(2024-04-06発行、978-4048995979)
第10巻
(2024-04-06発行、978-4048995986)
第11巻
(2024-04-06発行、978-4048995993)
第12巻
(2024-04-06発行、978-4048996006)
第13巻
(2024-04-06発行、978-4048996211)
第14巻
(2024-04-06発行、978-4048996112)
第15巻
(2024-04-06発行、978-4048996129)
第16巻
(2024-04-06発行、978-4048996136)
第17巻
(2024-04-06発行、978-4048996143)
第18巻
(2024-04-06発行、978-4048996150)
第19巻
(2024-04-06発行、978-4048996167)
第20巻
(2024-04-12発行、978-4048996174)
魔法使いの嫁 23巻 ブシロードワークス〈ブシロードコミックス〉
第21巻
(2024-10-08発行、978-4048996396)
第22巻
(2025-04-08発行、978-4048996716)
第23巻
(2025-10-08発行、978-4048997720)
魔法使いの嫁 ドラマCD付き特装版 20巻 ブシロードクリエイティブ〈ブシロードコミックス〉
第20巻
(2024-04-12発行、978-4048996181)
魔法使いの嫁 14巻 マッグガーデン〈BLADE COMICS SP〉
第2巻
第9巻
(2018-04-01発行、978-4800007278)
第10巻
(2018-09-01発行、978-4800007858)
第11巻
(2019-03-01発行、978-4800008275)
第12巻
(2019-09-01発行、978-4800008534)
第13巻
(2020-03-01発行、978-4800009289)
第14巻
(2020-09-01発行、978-4800009678)
魔法使いの嫁 19巻 マッグガーデン〈Blade comics〉
第1巻
(2014-04-01発行、978-4800002846)
第2巻
(2014-09-01発行、978-4800003614)
第3巻
(2015-03-01発行、978-4800004222)
第3巻
(2015-03-25発行、978-4800004208)
第4巻
(2015-09-01発行、978-4800004987)
第5巻
(2016-03-01発行、978-4800005472)
第6巻
(2016-09-01発行、978-4800006110)
第7巻
(2017-03-01発行、978-4800006585)
第8巻
(2017-09-01発行、978-4800007131)
第9巻
(2018-04-01発行、978-4800007476)
第10巻
(2018-09-01発行、978-4800007940)
第11巻
(2019-03-01発行、978-4800008374)
第12巻
(2019-09-01発行、978-4800008909)
第13巻
(2020-03-01発行、978-4800009456)
第15巻
(2021-03-01発行、978-4800010551)
第16巻
(2021-09-01発行、978-4800011282)
第18巻
(2022-09-01発行、978-4800012401)
第19巻
(2023-03-01発行、978-4800013026)







