作品の概要
基本情報
塩塚誠の代表作の一つ。原作は『賭ケグルイ』などで知られる河本ほむらが担当している。
要旨と舞台設定
百年戦争の英雄ジャンヌ・ダルクが火刑に処される瞬間に別世界へ転移することから物語が始まる。魔界に集められた、歴史上の女傑32人が「魔女」として戦い、最後の一人となった者の願いが叶えられるという「魔女千夜血戦」が描かれる。
ストーリー展開
主人公のジャンヌ・ダルクは「無」の魔女で、魔女階位(ウィッチズ・オッズ)は最下位の32位に位置づけられる。他の魔女たちが強い欲望を持つ中、「欲」を持たないと思われていたが、「欲」そのものを欲する「無欲」の魔女であることが判明する。第1回戦第1試合では巴御前とエリザベート・バートリーの戦いが繰り広げられ、第2試合でジャンヌは武則天と対峙する。
ジャンル的特徴と位置づけ
本作は、実在した歴史上の人物たちを魔女として再解釈した歴史バトルファンタジーである。各魔女は己の「欲」を源とする異能力・魔法や、魔装と呼ばれる武器や防具を用いて戦う。
作品固有の表現技法と特徴
作品の構成は、トーナメント形式の戦いが軸となっている。それぞれの戦いでは、魔女たちの生前の功績や人生が描かれ、それが現在の戦いと結びつく点が特徴的である。
世界観の構築と設定
悪魔女王アグラットによって集められ、「魔女千夜血戦」への参加を余儀なくされた魔女たちは、自身の欲望を具現化した魔法と魔装を武器に、己の願いを叶えるために戦う。また、魔女たちの階位(ウィッチズ・オッズ)は賭けのレートとして数値化されており、観衆は戦いの勝敗を予想して自分の「徳」を賭けることができる。
連載状況
コアミックス「月刊コミックゼノン」2020年12月号より連載。
32人の魔女たちによるデスマッチトーナメント
本作で描かれるのは、「魔女千夜決戦(ヴァルプルギス)」という、32人の魔女によるバトルトーナメント。ここでいう魔女とは、人類700万年の歴史の中で、善悪関係なくその名を轟(とどろ)かせた女傑たち。具体的には、ジャンヌ・ダルク、巴御前、クレオパトラといった歴史上の人物。いずれも、悪魔女王、アグラット・バット・マハラットの招待を受け、死の間際に契約を交わした者たちである。魔女たちは尋常ではない「欲」の持ち主であり、このトーナメントは己の「欲」を賭けて行なわれる魔女同士の殺し合いである。アグラットの力で己の最も強い「欲」を叶(かな)えられるのは、たった一人の優勝者のみ。敗者たちの魂は輪廻(りんね)の輪を外れ、この世から完全消滅する。つまり、敗北即死のデスマッチなのである。
「徳」を賭け「推し魔女」を応援する大観衆
試合会場は、魔界の魔宴(サバト)闘技場。大観衆が見守る中、魔女同士、一対一のバトルが行なわれる。これらの試合は賭けの対象にもなっていて、観衆は自分の「推し魔女」を選び、自分の「徳」を賭けることができる。「徳」とは、たくさんあるほど高位の存在に転生できるポイントである。魔女には、事前投票による「魔女階位(ウィッチズ・オッズ)」が設定されていて、観衆は自分が賭けた魔女が優勝すれば「徳」が何十・何百倍にもなり、より良い来世が迎えられるという仕組みになっている。
魔法と魔装、二つの異能力で戦う魔女たち
魔女たちの戦いは、主に魔女特有の力によって行なわれる。魔女には大きく分けて二つの力がある。一つは己の「欲」を源として発露する異能である「魔法」。もう一つは「欲」を武器や鎧(よろい)にする戦闘装束「魔装」である。これらは、各自の「欲」やキャラクターに応じたもので、例えば「嫐(なぶ)ること」を喜びとする殺人鬼、『血』の魔女、エリザベート・バートリーの魔装は、無数の拷問器具が仕込まれた「血の伯爵夫人(カウンテス・オブ・ブラッド)」。魔法は「血魔法・朱殷の遊び部屋(レッド・プレイルーム)」という、巨大な鉄の処女(アイアン・メイデン)と宙に浮いた無数の拷問器具を出現させるもの。『豪』の魔女、巴御前の魔装は鎧甲冑(かっちゅう)と巨大な薙刀(なぎなた)「大刀一人千力(だいとういちにんせんりき)」、魔法は大型の弓を使う「禍断の空弓(まがたちのからゆみ)」である。
登場人物・キャラクター
ジャンヌ・ダルク
「無欲」という欲を持つ『無』の魔女。魔女階位(ウィッチズ・オッズ)は最下位で1065.0倍。魔装は、両手に十字架のような盾を持つ「無貌の乙女(ラ・ビュセル・ド・アンフィニ)。魔法は、相手の感情に共鳴して自分の能力にするもので、「無魔法・軌跡の聖乙女・紅蓮(ラ・ビュセル・ド・ラージュ)」と「無魔法・義憤の業火(フラム・デ・コレール)」。15世紀、フランス東部の農家の娘。12歳のときに神の啓示を受け、フランス軍に従軍。華々しい活躍を見せた後、最後は異端者として火刑に処せられる。死の間際に現れた悪魔により、別世界へと転移。32人目の魔女として、魔女千夜決戦(ヴァルプルギス)という、デスマッチトーナメントに参加することになる。幼少時より他人に従う人生を送っていたため、「欲」を持たないと思われていたが、「欲」そのものを欲する「無欲」の魔女であることが判明する。同名の実在人物をモチーフにしている。
アグラット・バット・マハラット
悪魔女王。魔女たちの「欲」が醜く激しくお互いを喰らいあい、大きくなるのを見たいという「欲」を持つ。32人の魔女を魔界に招待し、700万年越しの悲願である「魔女千夜血戦(ヴァルプルギス)」を開催する。「無欲」のジャンヌ・ダルクこそ、最もおぞましい「欲」を持つ魔女であることを見抜く。武則天との戦いで、期待以上の力を見せたジャンヌに脅威を感じる。
クレジット
- 原作
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書誌情報
魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う 14巻 コアミックス〈ゼノンコミックス〉
第1巻
(2021-06-18発行、978-4867202425)
第2巻
(2021-09-18発行、978-4867202647)
第3巻
(2021-12-20発行、978-4867202876)
第4巻
(2022-06-20発行、978-4867203927)
第5巻
(2022-10-20発行、978-4867204313)
第6巻
(2023-02-20発行、978-4867204672)
第7巻
(2023-07-20発行、978-4867205259)
第8巻
(2023-11-20発行、978-4867205884)
第9巻
(2024-03-19発行、978-4867206287)
第10巻
(2024-07-20発行、978-4867206690)
第11巻
(2024-11-20発行、978-4867207048)
第12巻
(2025-03-19発行、978-4867207499)
第13巻
(2025-07-18発行、978-4867207833)
第14巻
(2025-11-20発行、978-4867208366)







