魔女の守人

魔女の守人

人類を襲う異形の敵、魔から人々を守る魔女のマナスファ・ルースタシアと、彼女を守る市国最強騎士のファフナ・レオレンジが、それぞれに定められた自身の運命に抗(あらが)い、世界から魔女を消滅させるために戦い続ける姿を描くダークファンタジー。「週刊少年ジャンプ」2020年10号から29号にかけて掲載の作品。

正式名称
魔女の守人
ふりがな
まじょのもりびと
作者
ジャンル
ダークファンタジー
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
全3巻完結
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あらすじ

亡命編

強大な敵、によって存亡の危機に立たされていた人類は、魔法を扱う魔女の力によってかろうじて命脈を保っていた。バーン市国を見渡せる魔女塔に住み、強大な魔法で襲来する魔を撃破し続けていた魔女のマナスファ・ルースタシア、そして彼女を守る市国最強の騎士、ファフナ・レオレンジは、憎まれ口を叩き合いながらも、心の内では互いを信頼し合う平穏な日々を送っていた。そんなある日、司祭から呼び出されたファフナは、魔女が人為的に魔を注入された対魔用の究極兵器であり、すべての魔女はいずれ魔へと変貌を遂げるという衝撃の真実を知らされる。そして、騎士の隠された掟に従い、ファフナは魔に浸食されつつあるマスナファを殺害するように司祭から命令されるのだった。一度は司祭の命令に従ったファフナだったが、いざマスナファを前にしたファフナは決心が鈍り、彼女を手にかけることを躊躇してしまう。そんなファフナの姿を見た司祭は、暗殺部隊を投入して強引にマナスファを殺害しようとするも、マナスファを守ることを決意したファフナはこれらを撃破。魔女の守人となったファフナは、マナスファを人へと戻す手段を探すため、マナスファと彼女の付き人であるナータ・インテリナを引き連れ、バーン市国から亡命する。

魔女狩り編

ファフナ・レオレンジ一行は魔女を人間に戻す手がかりを求め、引退した魔女が存在するというノワール国へ向かう。その道中立ち寄った村の宿屋に泊まったファフナは、司祭が派遣した追っ手の魔女狩り、ゲン・オードブルと、魔女のルゥリ・リララの襲撃を受けてしまう。ルゥリの魔力を最大限に活かしつつ戦う、ゲンの「対魔女・騎士戦闘」の前に大苦戦を強いられるファフナだったが、魔封じの首輪を自ら破壊し、力を解放したマナスファ・ルースタシアの決死の覚悟に応え、ゲンを打ち倒すことに成功する。しかし、勝利の代償として魔力を大幅に消耗し、憔悴(しょうすい)してしまったマナスファを連れて村を出たファフナは、の襲撃を受けて窮地に陥るものの、謎の発明家、ドレイク・マルドゥックによって命を救われる。元騎士で、かつて愛する魔女のアイを手にかけた過去を持つドレイクは、亡命したファフナたちへの処遇を決めかねていた。しかし、魔女を守るというファフナの揺るがない決意を見たドレイクは、3日以内にファフナが自分を超えるまで強くなるように命令する。3日間の厳しい戦闘訓練で「対魔女・騎士戦闘」の基本を体得したファフナは、マスナファとのタッグでドレイクとの戦いに勝利を納めるのだった。

ヴァリ国編

ファフナ・レオレンジ一行はを避けてノワール国に向かうため、危険を承知でヴァリ国へと潜入するも、そこでルールを守り続ける厳格な騎士のクロード・グラウスに正体を看破されてしまう。魔女スピカ・クラーヌの魔力を得て、重力を自在にあやつるクロードに大苦戦を強いられたファフナは、ほうほうの体で現場から逃げ出す。街の住民からの慕われぶりと、戦闘中の様子から、クロードとスピカが決して悪い人間ではないことを見抜いたファフナたちは、魔女を人間にするという目的を果たすために彼らを仲間にする方法を模索。夜半にスピカが住む魔女塔へと忍び込み、スピカを説得しようとするが、クロードによって阻まれてしまう。再びクロードとスピカのコンビが生み出す強力な攻撃を受けるファフナだったが、そんな戦いの最中にヴァリ国の司祭のユーゴー・ヴヴ・シシマルが現れ、魔力を使いすぎて魔に侵されようとしているスピカを殺すように、クロードに命令する。葛藤の中で自身の本当の気持ちに気づいたクロードはユーゴーに逆らい、スピカを守ろうとする。そんなクロードの姿を見たファフナは、ユーゴーを打ち倒し、二人の心をルールという呪いから解放する。

魔女の守人編

海沿いの街道でに襲われたファフナ・レオレンジ一行は、アクア・レベリンと名乗る新米の魔女に助けられる。アクアの村に立ち寄ったファフナは、彼女が村出身の初めての魔女として、村人の期待を一心に背負っていることを知る。その様子から、アクアが魔女の真実を知らされていないと判断したファフナは、一刻も早く魔女が不要な世界を作ろうと決意を新たにする。しかし、ゴビ国の修道士がアクアを迎えに来た当日、寂しそうな目をしていたアクアを見たマナスファ・ルースタシアは、彼女が魔女の真実を知っていることに気づいてしまう。機転を利かせたマナスファは、アクアの父親であるポセイ・レベリンとアクアを引き合わせ、アクアには父親という味方が最後までいることを再認識させたうえで、将来の再会を約束する。そして5年後、魔女の不要な世界を築き上げることに成功したファフナ一行はバーン市国への帰国を果たし、マナスファはそこで魔女の引退を宣言するのだった。

登場人物・キャラクター

ファフナ・レオレンジ

バーン市国最強と謳われる凄腕の戦士。青い短髪の精悍な顔立ちをした少年で、年齢は16歳。まっすぐな性格をした熱血漢で、騎士としてのプライドが高く、どんな状況であっても騎士として自らの任務を全うしようとする。自分自身に厳しく、自己錬磨が大好き。その強さを見込まれ、国防を一手に担っている魔女を護衛する騎士に任命された。そのため、今は魔女塔に住むマナスファ・ルースタシアにつねに付き従っている。剣と鞘(さや)をそれぞれ両手に持つ、ほかに類を見ない独特の二刀流で立ち回る。その強さは本物で、人類の敵である魔も、その剣技のみで打ち倒すことができるほど。若干口が悪く融通が利かないところがあるため、マスナファからは「騎士道バカ」と呼ばれていた。幼い頃に魔によって家族を食い殺された過去を持ち、その辛い記憶を払拭しようとするために、罪のない人々を懸命に守ろうとする。バーン市国の司祭から、魔に浸食されたマスナファの抹殺を命令されるもこれを拒否。マスナファをふつうの人間に戻すため、マスナファとナータ・インテリナを引き連れ、バーン市国を飛び出した。その後は、魔女を狙う強者や魔と戦いながら、騎士として成長を遂げていく。

マナスファ・ルースタシア

バース市国の魔女塔で、人々の暮らしを守っている魔女。縦ロールツインテールの髪型をしたかわいらしい少女で、年齢は16歳。少々ワガママだが明るく前向きな性格で、みんなのために魔女として使命を全うしようとしている。見た目とは裏腹に人知を超えた強力な魔法を使うことができ、その力で人類の敵である魔の脅威からバース市国を守り続けてる。細身だがかなりの大食漢で、1回の食事量は騎士のファフナ・レオレンジが呆(あき)れるほど膨大な量を食べる。ファフナのことは同年代の気の置けない男子として存分にコキ使っているが、彼のことはとても信頼している。12歳の頃に人為的に魔を体内に埋め込まれており、魔の力で徐々に体を蝕まれ、体のあちこちに魔の紋章が浮き出ている。バース市国の司祭から、ここ最近で魔の浸食が限界に達したと判断され、ファフナの手によって殺害されるはずだったが、ファフナが司祭の命令を拒否したため、その運命は大きく変わることになった。ファスナや従者のナータ・インテリナと共にバース市国を飛び出し、ふつうの人間に戻る方法を探し、世界で最後の魔女になるための旅に出る。魔力を封じる魔封じの首輪を付けている。

ナータ・インテリナ

バース市国の魔女塔で暮らし、マナスファ・ルースタシアの身の回りの世話をしている従者。眼鏡をかけ生真面目な雰囲気を漂わせる少女で、年齢は16歳。クールな性格をした博学・博識な才女で、自らを犠牲にして国を守っているマスナファを尊敬している。従者という立場を超えてマスナファに誠心誠意、忠実に仕えていた。そのため、最終的にマスナファを殺すことが仕事になる騎士のファフナ・レオレンジのことを強く警戒しており、ファフナに対しては常日頃から突き放した態度を取っていた。のちにマスナファをふつうの人間に戻すため、ファフナの旅に同行することになる。

ドレイク・マルドゥック

発明家の男性。シルクハットをかぶり、頭蓋骨のアクセサリーを首元に付けた奇怪なファッションをしている。年齢は34歳。偏屈な性格をしており、つねに醒(さ)めた態度で他人に接する変人。荒野に一人で住み、魔力についての研究・発明をしている。もともとはメディ市国の魔女、アイの騎士だったが、アイが魔に浸食されたため、彼女を殺害した過去を持つ。アイを愛していたため、そのことを後悔しており、自分への戒めとして彼女の頭蓋骨をアクセサリーにして肌身離さず持ち歩いている。現役を退いて久しいが、騎士として力は本物で、ファフナ・レオレンジを遥かに上回る戦闘力を持つ。ゲン・オードブルとの戦闘で消耗しきったファフナたちを助けた際、ファフナに対し3日以内に自分を超えるように命令し、「対魔女・騎士戦闘」の基本を叩き込んでいた。

アイ

かつてメディ市国を守っていた魔女で、故人。体を魔に浸食されてしまったため、彼女を守っていた騎士のドレイク・マルドゥックの手にかかり、命を落とした。彼女のことを愛していたドレイクの手により、その頭蓋骨は彼のアクセサリーとして加工されている。

ゲン・オードブル

スチール市国の騎士。短髪の少年。魔女狩りを自称する自信家で、スカした性格をしている。今はルゥリ・リララの騎士として活動している。戦闘が大好きで、司祭の命を受け、バーン市国から亡命したファフナ・レオレンジの一行を襲撃した。かなりの戦闘力を誇り、ゲン・オードブル自身の巧みな剣技とルゥリと魔法を活かし合う「対魔女・騎士戦闘」を駆使して、ファフナを追い込む。「魔女は使い捨ての武器」という非情な思想の持ち主。マスナファからは「カリアゲチビピアス」というあだ名を付けられていた。

ルゥリ・リララ

スチール市国を守っている魔女。美しい黒髪の少女。礼儀作法や秩序にうるさい生真面目な性格で、魔女としてより多くの人々を救うことをルゥリ・リララ自身の最大の目的にしている。そのため、魔女のことを「使い捨ての武器」と考えている騎士のゲン・オードブルの思想のことも、特に気にしていない。ゲンとのコンビネーションは抜群で、戦闘では鋼の魔法を扱い、ゲンの剣技を効果的にサポートしていた。

クロード・グラウス

ヴァリ国の騎士。柔らかい長髪の美男子で、年齢は18歳。今はスピカ・クラーヌの騎士をしている。ルールや規律を厳格に守り、また周囲にも守らせようとする生真面目な性格の持ち主。一見すると人間味のない冷血漢に見えるが、生活に苦しむ住民にルールの枠外から食料を与える方法を模索するなど、本当は思いやりがあり優しい人物。そのため、住民やほかの騎士からは尊敬されている。幼い頃はルールなど気にしない奔放な少年だったが、言いつけを破って街の外に出た際に、ついてきたスピカが魔に浸食され、魔女になってしまったことがきっかけとなり、厳格にルールを守るようになった。スピカのことは何よりも大切にしている。

スピカ・クラーヌ

ヴァリ国を守っている魔女。右目をつねに包帯で覆っている美少女。明るく優しい性格で、苦しんでいる人を見過ごすことができない。そのため、食料不足で苦しむ住人にいつも助け船を出していた。幼い頃にクロード・グラウスと街の外に出た際に魔に襲われて瀕死の重傷を負うが、魔が体に浸食したことで生きながらえた過去を持つ。すでに体の多くが魔に浸食されており、右目は完全に魔化している。

ユーゴー・ヴヴ・シシマル

ヴァリ国の司祭にして国家元首を務める男性。高いカリスマ性を持ち、国民からは崇拝されている。しかし本性は冷酷で、他人のことはすべて使い捨ての道具としてしか考えていない。国内に侵入したファフナ・レオレンジをクロード・グラウスに命じて排除しようとしていた。その際、魔に浸食され魔女として限界に達したスピカ・クラーヌもまとめて始末しようと画策する。

アクア・レベリン

新人の魔女。顔立ちに幼さが残るあどけない少女。海沿いにあるラティス村の村長、ポセイ・レベリンの一人娘で、魔女になったため単身ゴビ国に移住することになった。ラティス村初の魔女として村人の期待を一身に背負っている。表向きは何も知らないように振る舞っているが、魔女の真実と運命に気づいており、時おり寂しそうな表情を見せていた。

司祭 (しさい)

バーン市国を統括する国家元首を務める男性。代々の掟に従い、魔女として限界に達したマナスファ・ルースタシアを騎士であるファフナ・レオレンジに殺害させようとするが、ファフナに反抗され、マスナファといっしょに亡命されててしまう。その後、ファフナを始末するため、スチール国から派遣されたゲン・オードブルを刺客として送り込んでいた。

ポセイ・レベリン

ラティス村の村長を務める男性。アクア・レベリンの父親。魔女の真実を知っており、一人娘のアクアが魔女になってしまったことに苦悩している。別れ際にアクアの揺るがない決心を知ることになり、涙と共に彼女をゴビ国へと送り出す。

その他キーワード

魔女 (まじょ)

絶大な魔力を持つ魔法使い。人類の敵である魔を撃退するための唯一にして最大の武器となっている。世間的には単に強大な魔力を持つ人物と思われ、崇拝されている。実は魔に対抗するために人為的に作り出された存在で、12歳になった少女に「魔子」を注入し、体を魔に浸食された末、それでも生き残ったほんの一握りの少女が魔女となる。魔力を行使するたびに体が魔に浸食されていき、最終的には魔そのものになってしまう。そのため、魔女には国一番の騎士をつけるのが習わしとなっており、魔女の体が限界に達した暁には、騎士によって殺害させるのが代々の掟となっている。

(いびる)

世界のあらゆる場所を跋扈(ばっこ)している人類の敵。化け物のような姿をした異形で、人間を一瞬で食い殺してしまうほど強大な力を誇る。ほとんどの人間では太刀打ちできず、凄腕の騎士しか退治することができない。そのため、すべての国で魔の力を利用して作り上げた魔女によって、魔を撃退するようになった。

書誌情報

魔女の守人 全3巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第1巻

(2020-05-13発行、 978-4088823256)

第2巻

(2020-08-04発行、 978-4088823805)

第3巻

(2020-09-04発行、 978-4088824659)

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