舞台は「海魔」が存在するファンタジー世界
本作は古代ローマをモチーフにした過酷なファンタジー世界を舞台としている。特定の海域で人を襲う呪いの怪物が出るという噂がまことしやかに囁(ささや)かれる中、奴隷船に密航者として潜り込んだ少年、ユリアンは、奴隷100人と共に自由を求めて大陸を目指していた。しかし、呪いの海域で怪物に遭遇したユリアンは、多くの仲間と恩人の妊婦、ミラを失い、彼女が遺した一人の赤ん坊、ディアナを引き取る。孤独と絶望の中で、新天地と小さな希望の光を追い求めるユリアンの冒険と戦いが、海洋ロマンとダークファンタジーを交えて展開される。
孤独なユリアンがミラに救われる
母親に売られて奴隷となった少年、ユリアンは鍛冶屋(かじや)の雇い主から逃げ出し、新天地での自由な生活を求めて奴隷船に隠れて密航する。101人目の奴隷となったユリアンは、同じ奴隷船に乗っていた女性、ミラと出会い、この残酷な世界にも優しさと愛があることを知る。しかし、呪われた海域に突入したとたん、奴隷たちは海に捧げる生贄(いけにえ)として、船長たちの手で次々と殺されてしまう。そこに「海魔」と呼ばれる怪物が姿を現し、ミラとユリアンは大きな選択をせまられる。自ら犠牲となったミラを目の前で失ったユリアンは、殺された奴隷100人分の力と100人分の命を「海の祝福」という形で得ることになる。ユリアンはこの謎だらけの力を駆使しながら、自分自身の運命を切り拓(ひら)いていく。
赤ん坊と共に島で新生活を送る
ミラが自らの命と引き換えにして、死ぬ間際に産んだ赤ん坊は「ディアナ」と名付けられた。呪いの海域の中で生き残ったユリアンは、ディアナを連れて陸地へたどり着く。そしてユリアンは小さな村を訪れ、鎧騎士の女性、アンヴァルと村娘のティティに助けられる。その後、アンヴァルたちの世話になっていたユリアンは過酷な労働をものともせず、村人たちから一人前と認められる。そんな中、ディアナを育てながら平和に暮らしていたユリアンに試練が訪れ、ユリアンが海魔から得た不思議な力も明らかになる。
登場人物・キャラクター
ユリアン
元奴隷の少年。母親に売られて鍛冶屋の奴隷として働いていたが、主人を殺して逃亡した。大陸で自由な生活を夢見て奴隷船に乗り込み、同乗していたミラと出会い、彼女を母親のように慕うようになる。しかし、奴隷船が呪いの海域に突入したとたんに、仲間になったほかの奴隷たちは殺され、巨大なタコのような生物「海魔」から「海の祝福」を授かる代償としてミラを失う。だが、殺された100人の奴隷の瞬発力や腕力をはじめとした力と100人分の命を海の祝福によって得て生き残り、超人的な力を発現する。ミラが遺した赤ん坊のディアナと共に、陸で暮らすようになる。
ミラ
ユリアンと同じ奴隷船に乗っていた若い女性。赤ん坊を身ごもっており、奴隷狩りで息子を亡くした過去を持つ。孤独なユリアンを本当の息子のようにかわいがり、彼に母親の温かさや愛情を教えた。呪いの海域に現れた怪物「海魔」の生贄となって死亡するが、死ぬ間際に身ごもっていた子供を出産する。この際に生まれた赤ん坊は、ミラの父親の名前を取って「ディアナ」と名付けられた。