あらすじ
第1巻
スレイとゲオルク・ヘルダルフの最終決戦の終結後、穢れが少しずつ浄化され、世界には平和が戻りつつあった。この戦いから3か月後、ハイランド王国の公務に戻っていた王女のアリーシャ・ディフダは、マティア大臣やセルゲイ・ストレルカたちと共に隣国「ローランス帝国」との和平協定に奔走していた。そんな中、アリーシャはローランスとの和平に反対する反休戦過激派の急襲を受ける。過激派戦闘員の様子がおかしいことに気づいたアリーシャは、ロゼに助けられる。反休戦過激派の陰謀が動いていると知ると同時に、ロゼと久々の再会を果たしたアリーシャは、かつて共に旅をしたスレイのことを思い出す。しかし、単独で動いているロゼの様子から、スレイに何かあったのではと察したアリーシャは、彼女を追ってスレイの現状を聞こうとする。何も話そうとしないロゼと、それでもゆずれないアリーシャは、互いの思いを激しくぶつけ合う。アリーシャは根負けしたロゼと従士の契約を交わし、同じく再会したライラやエドナと共に、新しい旅に出ることになる。ロゼの提案により、過激派を探るべく公務の正装をまとったアリーシャは、道中で過激派の戦闘員に遭遇。過激派を追ってカーネック封洞に到着したアリーシャたちは、彼女の亡き師匠であるマルトランの幻影に襲われる。ロゼが止めに入ろうとする中、アリーシャは自らの手で決着をつけようと、再び戦いに身を投じるのだった。
第2巻
マルトランの幻影と戦う中で、彼女との過去を思い出していたアリーシャ・ディフダは自分の気持ちを確かめていた。騎士や従士、王族や政治家といったさまざまな姿を持つアリーシャは、いずれの姿も本当の自分であると、一つの答えを導き出す。師への未練が残っていたアリーシャは覚悟を決め、マルトランの幻影の撃破に成功。アリーシャの心の傷をえぐるつもりだったサイモンはとまどいを見せるが、アリーシャは師への気持ちを整理することができたと、サイモンに礼を告げる。サイモンはその場を去り、あらためてアリーシャの決意や覚悟を見届けたロゼは、スレイに会わせようと決意。その夜、アリーシャはライラやエドナたちから、スレイのことや今までの出来事を聞くこととなる。ロゼたちの案内を受けるアリーシャは、スレイのもとを目指しながら、カムランへの道「エレイン遺跡」を目指して進んでいた。その道中、アリーシャたちはミクリオと共に行動していたザビーダと再会を果たす。アリーシャはロゼやザビーダたちと協力しながら、次々と現れる憑魔を倒して遺跡の中を進んでいくが、奥には二体の巨大な憑魔が待ち構えていた。なんとしてもアリーシャをスレイのもとへ導こうとするロゼは、一人でその憑魔たちを倒そうとする。しかし、ロゼの神依でも打ち破れず、二体の憑魔は何度も復活を繰り返してしまう。
登場人物・キャラクター
スレイ
天族しかいない村イズチで育った人間の少年。天族の少年ミクリオとは幼なじみにして親友。天族の村で育ったため、普通の人間が視認できない天族を視認でき、会話する事もできる。村から一歩も出た事がなく、アリーシャ・ディフダと出会うまで一度も人間に会った事がなかった。先代導師ミケルの遺した書物である天遺見聞録を読み、世界中の遺跡を回る事を夢見ている。 アリーシャとの出会いで、十数年前から世界各地が災厄に見舞われていると知り、世界を救ったとされる導師の伝承になぞらえた剣の試練を受けるため、周りの反対を押し切って旅立つ。その後、剣の試練で剣を守護していたライラに認められた事で導師となる。以降は導師として各地を巡り、憑魔となったものを救うため穢れを祓い、穢れのもとである災禍の顕主を止めるため行動した。 どんな時でも相手の命を奪う事やあきらめる事に抵抗を持っており、命を奪う事が救いにもなるという考えのロゼとはぶつかる事もあった。
アリーシャ・ディフダ
ハイランド王国の王女で、一介の騎士としても祖国のために尽くしている女性。正当な王女ではあるが王位継承権においては末席で、母親が市井の女性であったことから王家での扱いはよくない。祖国の現状を憂い理想に燃える一方で、政治などに疎く空回りしてしまうこともあったが、いくつかの出来事を経て成長し、騎士や国民の支持を得られるようになった。王女としてだけでなく騎士として祖国に尽くそうとしているため、男性のような騎士口調で話し、凛々しく毅然とした態度が多い。祖国を心から愛するまじめで礼儀正しい人物だが、昔から不遇な立場や不器用さもあって無力さを悔やみ、落ち込んだり葛藤を繰り返したりすることもある。ゲオルク・ヘルダルフがスレイに倒されたあとは、隣国「ローランス帝国」との和平協定のために奔走していた。しかし、和平に反対する反休戦過激派には反感を抱かれており、過激派戦闘員の襲撃を受けていたところでロゼに助けられ、ライラやエドナとも再会を果たして共に行動するようになる。ロゼの様子を見てスレイに何かあったことを察し、尋ねようとするが拒絶され、彼女とは何度か衝突を繰り返している。これらをきっかけにロゼの影響を受け、ふつうの少女らしい口調で話すことが多くなった。ロゼたちの協力を得ながら過激派のアジトを探る中で、マルトランの幻影に遭遇する。
ロゼ
商人のキャラバン隊「セキレイの羽」の頭領を務める少女。かつてスレイやアリーシャ・ディフダたちと共に旅をしていた。マイペースで明朗快活な性格で、つねにパーティのムードメーカー的な存在。しばらくはアリーシャと離れて行動していたが、ハイランド王国の反休戦過激派に襲われていた彼女を助けたことで再会を果たす。再会後は訳あって、スレイに関する出来事をアリーシャに話せずにいた。このため、アリーシャとは取っ組み合いのケンカをするなど何度か衝突するが、彼女の熱意に折れて従士の契約を交わし、行動を共にするようになる。ある事情から、アリーシャにわざと悪口を言ったりあおったりすることが多いが、彼女のことはつねに心配して気にかけている。マルトランの幻影との戦いを通して新たな決意と覚悟を決めたアリーシャの戦いを見届け、彼女をスレイに会わせることを決意。アリーシャをスレイのもとへ案内しながら、彼女の旅や戦いに同行する。
ライラ
火属性の天族の女性。かつてスレイやアリーシャ・ディフダたちと共に旅をしていた。元はハイランド王国で行われている導師選定の儀式に使われる剣に宿る存在だった。その後、剣がスレイの手に渡ってからは自らの姿を現し、剣と共にスレイに力を貸していた。また、豊富な経験から主神として、導師の指南役や参謀として助言を行って仲間をサポートした。優しく責任感も強いが妄想癖があり、時折一人で妄想を暴走させることがある。ロゼ、エドナと共にハイランド王国でアリーシャと再会し、彼女たちを見守りながら旅に同行している。
エドナ
地属性の天族の女性。かつてスレイやアリーシャ・ディフダたちと共に旅をしていた。霊峰レイフォルクで、長いあいだ孤独の中で生きていた。見た目は小柄で可憐な少女ながら実はかなり年齢が高く、一見年上に見えるミクリオを子供扱いしてからかうことが多い。ザビータとは旅でいっしょになる前からの知り合い。基本的にはテンションが低く、面倒くさがり屋。つねに淡々と話す毒舌家で、人をいじってとまどわせるのが大好き。ロゼ、ライラと共にハイランド王国でアリーシャと再会し、彼女たちを見守りながら旅に同行している。
サイモン
幻覚をあやつる天族の少女。ゲオルク・ヘルダルフに価値を認められ、唯一の心のよりどころとして慕っていたが、スレイやロゼとの戦いでヘルダルフを失う。カーネック封洞でアリーシャ・ディフダたちを待ち伏せし、彼女の師であるマルトランの幻影を見せることで心の傷をえぐろうとした。結果的にアリーシャの心をえぐることはできなかったが、実はスレイと行動を共にしていたアリーシャやロゼの動向を気にしていたための行動だった。
マルトラン
アリーシャ・ディフダの恩師で、ハイランド王国に仕える騎士の女性。隣国との戦争で一騎当千の働きを示して功績を挙げ、国民から「蒼き戦乙女」として称えられていた。昔は病弱で没落した家柄のため、いくつもの苦労を重ねていた。アリーシャに対しては複雑な感情を抱きながらも、愛情を注ぎながら育てていた。ゲオルク・ヘルダルフの手下としてスレイたちと戦った際、ヘルダルフに利用されていたことを悟り、アリーシャの槍で自決した。カーネック封洞で、サイモンが作り出した幻影として現れる。
セルゲイ・ストレルカ
ハイランド王国の隣国「ローランス帝国」皇帝直属の親衛部隊である「白皇騎士団」団長を務める男性。ある出来事をきっかけにアリーシャ・ディフダと親しくなり、たびたび行動を共にしていた。現在はアリーシャをはじめとするハイランドの重鎮たちと協力しながら、両国の和平協定のために尽力している。
ミクリオ
水の天族の少年で、スレイの幼なじみにして親友。エドナからは子供扱いされ「ミボ」と呼ばれている。冷静沈着な性格で、先走る事もあるスレイのブレーキ役でもある。スレイが旅立つ際にも、自身の下界への興味もあった事に加え、スレイを心配して旅に同行している。当初は戦う力を持たず、スレイを助ける事ができない憤りからスレイと意見が対立する事もあった。 しかし、導師と融合する神依に必要な弓の神器を手に入れ、契約の主となる天族の下に連なる陪神契約をライラと行った事で、スレイと共に憑魔と戦う力を手に入れる。先代導師ミケルの妹であるミューズの息子が、マオテラスの生贄としてささげられた際に天族として転生した存在である。真名は「ルズローシヴ=レレイ(執行者ミクリオ)」。
ゲオルク・ヘルダルフ (げおるくへるだるふ)
災禍の顕主と呼ばれる憑魔を生み出す穢れの源泉といえる存在。初めてスレイの前に現れた際には、圧倒的な威圧感で彼の精神をへし折っている。ゲオルグ・ヘルダルフはもともとローランス帝国の将軍であった。しかし、はじまりの村カムランを餌にハイランド王国を叩く作戦を実行し、村人を犠牲にした事で先代の導師ミケルの怒りを買い、彼の手によって永遠の孤独という呪いを掛けられる。 その後は呪いによって多くの裏切り、災いに見舞われ災禍の顕主となっている。
集団・組織
天族 (てんぞく)
容姿は人間とほとんど変わらないが、人間とは異なる存在で地脈から生まれる。普通の人間には視認する事も会話をする事もできず、スレイやロゼといった高い霊応力を持った人間は姿を見たり会話する事ができる。自然をあやつる天響術という技を持ち、天族によって水や土など異なる属性の技を自在にあやつる事ができる。また、天族を視認できるほどの高い霊応力を持つものと契約する事で契約者に力を与えるだけでなく、神依と呼ばれる技で融合して戦う事も可能である。 実体化するほどの憑魔は、天族が穢れによって変質したものであり、穢れが最後まで進行するとエドナの兄アイゼンのようにドラゴンと化してしまう。
憑魔 (ひょうま)
穢れから生まれる怪物であり、普通の方法では倒す事ができない。倒すには導師が持つ浄化の力が必要で、スレイは天族であるライラと契約する事で導師となり、この力を手に入れている。例外的にザビーダの持つ特殊な銃でも倒す事ができるが、この場合、憑魔となっていた生物は助からない。天族を視認できるほどの高い霊応力を持つ者にしか人間や動物が穢れによって変化した憑魔を判別できないが、天族が憑魔となって実体化したものは普通の人間にも視認する事ができる。
場所
ハイランド王国 (はいらんどおうこく)
豊かな自然と多様な環境を持つ大陸「グリンウッド」にある王国。山地や高原に囲まれた豊かな大国で、アリーシャ・ディフダの故郷でもある。昔ながらの文化や伝統を重んじていたが、現在はそれらの伝統が薄れ、政治も王族ではなく腐敗した官僚組織が実権をにぎっている。隣国であるローランス帝国とは長らく緊張状態が続いていたが、アリーシャやセルゲイ・ストレルカにより、和平協定が少しずつ進められている。しかし、和平に反対する反休戦過激派も存在し、アリーシャの命を狙っている。
その他キーワード
導師 (どうし)
世界が闇に覆われるとどこからか現れ、世界に光を取り戻すと伝えられる存在。ハイランド王国では、導師伝承になぞらえた儀式として導師を選定するための剣の試練が行われている。剣には天族ライラが宿っており、彼女に認められて契約を結ぶ事で剣を抜いたものが、導師となる。導師は憑魔となったものを浄化の力で祓い穢れを取り除く事ができる。 導師の使命は穢れの源泉ともいえる存在・災禍の顕主を鎮める事である。
神依 (かむい)
導師が契約を交わした天族と融合する能力であり、導師が天族の真の名を呼ぶ事で能力を使用できる。融合した導師と天族は通常より大きな力を振るえる。導師と契約した天族が、ほかの天族をもとに連ねる陪神契約をする事で、陪神となった天族と神依を行う事もできる。しかし、神依にはライラの剣、ミクリオの弓など、天族の属性に合った神器が必要となる。
従士 (じゅうし)
導師を補佐するために真名を与えられ特別な契約を結んだもの。導師の力の領域内であれば憑魔と戦う力を得られる。霊応力が低いものと従士契約すると、導師が何らかのリスクを負う可能性がある。スレイがアリーシャ・ディフダと契約を結んだ際には、スレイが右目の視力を失うなど体調を大きく崩している。
クレジット
- 原作
-
バンダイナムコエンターテインメント
関連
テイルズ オブ ゼスティリア 導きの刻 (ているず おぶ ぜすてぃりあ みちびきのとき)
TVゲーム『テイルズ オブ ゼスティリア』のコミカライズ作品。ハイランド王国とローランス帝国の二つの国が覇権を争う大陸を舞台に、「天族の杜」と呼ばれる場所で育ったスレイと、ハイランド王国の王女であるア... 関連ページ:テイルズ オブ ゼスティリア 導きの刻
書誌情報
テイルズ オブ ゼスティリア アリーシャ アフターエピソード ~ 瞳にうつるもの ~ 全2巻 KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉
第2巻
(2016-03-26発行、 978-4048658355)