欲望(クレシャ)を収集する魔法行商人
魔法行商人のロマは、人間の欲望から生まれるエネルギー「欲望(クレシャ)」を収集するため、日本に滞在している。クレシャはすべての人間にとって不可欠なエネルギーだが、体内に過剰に蓄積されると、エゴが増大したり、自己中心的な性格になるなどの悪影響を及ぼす可能性がある。また、クレシャは人間の望みが叶うと所有者の身体から離れ、拡散して消滅するが、消滅する前にロマが「ボルド」の呪文を唱えることで吸収することができる。ロマは、大量のクレシャを体内に蓄えた人間に近づき、「魔法具」と呼ばれる道具を授けてその望みを叶えさせ、クレシャを収集している。
人々の欲望を叶える危険な道具
ロマが多くのクレシャを持つ人間に提供する魔法具には、他者と身体を入れ替えることができる「ワヤンデルの人形」や、「ラデル」の呪文を唱えることで他者の記憶の一部を奪う「エルゼフの写本」など、現実では考えられない現象を引き起こすものがある。これらの魔法具は、正しく使えば幸せをもたらす一方で、誤った使い方をすれば使用者自身に災厄が降りかかる危険性も秘めている。また、魔法具を使用することでクレシャが増大し、その力に呑まれて人格が蝕まれる事態も起こり得る。本作では、こうした魔法具が数多く登場し、その効果や、それを授けられた人間たちに起こる変化が丁寧に描写されている。
欲望に満ちた人々の運命
本作には、「恋人が欲しい」と願う稲本優一や、バイクを購入するためにアルバイトを続ける若杉耕平、難病を患う妹の命を救うために手術費用が必要な武田勇太など、さまざまな欲望を抱えた人物が登場する。ロマとミィノは、彼らに近づき、願いを叶えられそうな魔法具を与え、クレシャを収集するために利用する。魔法具を使用した多くの人々は、その非現実的な効果によって願いを実現させるが、のちに不幸に見舞われたり、魔法具の副作用で身体に支障をきたす事態も発生している。なお、ロマたちはクレシャの収集が完了したあと、取引相手にはいっさい関与しない方針をとっている。
登場人物・キャラクター
ロマ
魔界から人間の世界にやってきた魔法行商人の少女。ある目的のために大量の欲望(クレシャ)を必要としており、人間に魔法具を譲渡し、その効果で増幅されたクレシャを収集する行動を繰り返している。口数が少なく、感情の起伏も乏しいため、魔法具を提供する際も必要最低限の会話で済ませることが多く、交渉はミィノに任せることがほとんど。人間に対してはつねにドライな態度を崩さず、魔法具を譲渡した相手が使い方を誤ったり、ほかの誰かが魔法具の影響で不幸になっても、クレシャを収集できればそれで構わないと考えている。しかし、魔法具に頼らずに困難を乗り越えた人間には高い評価を与え、そういった人物を見届けた際には、クレシャの回収に失敗しても満足そうな表情を見せることがある。また、家族のために魔法具を使う人間には無意識のうちに肩入れする傾向があり、これはロマがかつて魔界で経験した悲劇と深く関係している。
ミィノ
ロマの助手を務める小型の生物。赤い瞳と2本の角が特徴。黒いマントと白い仮面を身につけている。人間に対してはふつうに言葉を交わすが、話しかけられた相手からはしばしば人形として認識されることが多い。ロマとは対照的に饒舌(じょうぜつ)であり、口数の少ないロマに代わって、欲望(クレシャ)を持つ人間に声をかけることも少なくない。クレシャを集めるためには手段を選ばず、人間に対して良い感情を抱いていないこともあり、平然と彼らを騙したり、魔法具の使い方を誤った人間を嘲笑(あざわら)うこともある。しかし一方で、ロマのことは心から大切に思っており、彼女を気遣う場面も多い。
書誌情報
魔法行商人ロマ 全5巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2009-09-17発行、978-4091217585)
第2巻
(2010-03-01発行、978-4091221971)
第3巻
(2010-07-16発行、978-4091224781)
第4巻
(2011-01-18発行、978-4091227775)
第5巻
(2011-05-18発行、978-4091228901)







