魔王様ちょっとそれとって!!

魔王様ちょっとそれとって!!

春野友矢の代表作の一つで、初連載作『ディーふらぐ!』とは並行連載となった作品。舞台は魔王が封印された荒涼とした異世界。魔王封印の際に巻き込まれて異空間に飛ばされた勇者たちが、封印された魔王と手を組み、元の世界に戻るために冒険を繰り広げる異世界サバイバルファンタジー。集英社「ミラクルジャンプ」No.5(2011年10月11日)から2016年3月号にかけて連載後、同社「ウルトラジャンプ」2016年4月号から2018年11月号まで連載。

正式名称
魔王様ちょっとそれとって!!
ふりがな
まおうさまちょっとそれとって
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
 
ファンタジー
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魔王と勇者たちの共同生活

勇者たちは、復活した魔王を激闘の末に封印することに成功するが、その封印の影響は予想以上に広範囲に及び、勇者たち自身も巻き込まれてしまう。そして、彼らが目にしたのは見渡す限りの荒野が広がる異空間「檻」だった。この空間では魔法を封じられ、勇者も魔王もほとんどの力を失っていた。そのため、勇者たちは魔王に休戦協定を提案し、かつて敵同士であった勇者と魔王は協力して共にサイバル生活を繰り広げることになる。

ドS魔法使いとポンコツ魔王

本作の主人公は勇者ではなく、勇者パーティーの参謀を務める魔法使い。魔法使いが魔王や異空間「檻」にまつわる謎の解明に挑む姿が物語の中心となっており、彼が持ち前の知性と探究心で、この奇妙な状況を打破しようと奮闘する。また、他人をからかうのが大好きな魔法使いは、非力となった魔王に対しても思う存分イタズラを仕掛け、ドSな魔法使いとポンコツな魔王の掛け合いも大きな魅力となっている。魔法使い以外にも、料理にこだわりを持つ勇者、大人にあこがれるボーイッシュな少女武道家、歴戦の戦士にしか見えない荷物持ち、そして誰もが恐れる最強の僧侶と、個性的なキャラクターたちが登場する。

「現代パート」と「過去パート」の2部構成

本作は、魔王たちが異空間「檻」から脱出を試みる「現代パート」と、魔王が過去を振り返る「過去パート」で構成されている。過去パートでは、幼少期の魔王と、その養育係である侍女とのコミカルなやり取りを中心に描かれている。また、過去の物語は意外な形で現代につながっており、すべての謎を握る「爺」と呼ばれる存在にも言及されている。これらの要素が複雑に絡み合い、本作の根幹を成している。

登場人物・キャラクター

魔王 (まおう)

かつて「魔王」として崇められた少女。長い銀髪と切れ長な瞳を持つ。一人称は「我」で、語尾に「じゃ」を付ける尊大な話し方をする。年齢は不詳だが、外見は10代半ばに見える。無尽蔵とも言える魔力と圧倒的な戦闘能力を誇る。だが、その強力過ぎる魔力を完全に制御することができておらず、魔法使いからは「大技ばかりで行動が読みやすい」「基本が不器用」と評されている。魔王を崇める一派によって復活させられて勇者と激闘を繰り広げるも、最終的には魔法使いたちによって再封印され、異空間「檻」に閉じ込められてしまう。檻の中では力が完全に封印され、見た目に相応しい非力な少女に戻ってしまう。元々不器用なため、サバイバル生活でもほとんど役に立たず、勇者一行からは実質的に無害と見なされている。魔法使いにはよくからかわれているため、スキあらば出し抜こうと考えている。封印される前は、「爺」と呼ばれる存在を親代わりにし、侍女に育てられていた。幼少期は素直な性格で、一人称も「私」とふつうの口調だった。しかし、侍女たちによる偏った教育の影響で、魔王としてのキャラクターが形成され、現在の口調となったため、時おり素の性格や口調が垣間見えることもある。

魔法使い (まほうつかい)

魔王討伐のパーティーに魔法使いとして参加している青年。冷静沈着な性格で、その明晰な頭脳と豊富な知識を活かしてパーティーのブレイン役を務めている。物腰は丁寧ながらも、人を見下してからかうことが大好きなドSな性格で、しばしば慇懃(いんぎん)無礼な態度を見せる。幼少期から魔王に関する研究を続けていたが、研究所の兄弟子が魔王復活を企てて逃げ出したため、研究所がその責任を負うことになった。魔法使い自身はもともと勇者のパーティーに参加するつもりはなかったが、卓球で負けたら入ると口にしたところ、特訓を重ねた勇者に敗北したからである。同じパーティーに所属する僧侶は彼の実の姉。魔法だけでなくあらゆることを器用にこなす天才で、体術も相当なレベルに達している。魔王の封印に関しても数か月で解析を終え、最終決戦では再封印を行い、魔王を異空間「檻」に閉じ込めた。しかし、巻き添えで勇者パーティーもその檻に閉じ込められてしまったため、魔王と休戦協定を結び、檻からの脱出を目指している。檻の中では魔王と同様に魔法が使えないが、探索や檻の解析を進めている。一方で、完全に足手まといとなった魔王をからかったり、セクハラをして楽しんでいる。

勇者 (ゆうしゃ)

魔王を倒すパーティーのリーダーとして勇者に選ばれた青年。文武両道の熱血漢でありながら、単純な性格のため、魔法使いにしばしばからかわれることが多い。魔法使いとは悪友の関係で、よくいっしょに悪ふざけをしていた。魔法使いが魔王にセクハラをする際には、しばしば巻き込まれて共犯となることが多い。だが恋愛に関しては純粋なため、実際にセクハラめいたことをされると鼻血を出して慌ててしまう。祖母の教育方針の影響で、勉強も戦闘もそれなりにこなせるが、特に際立った部分がないため、魔法使いや武道家と比較してしまい、自分が勇者であることに疑問を抱いている。ただし、祖母から受け継いだ料理の腕前は魔法使いにも認められており、パーティーの中では料理当番を担当している。魔法使いの姉である僧侶は、自らを勇者として鍛えた師匠でもあり、頭が上がらない存在。魔王との最終決戦では、せめて僧侶だけでも逃がそうと、吹き飛ばすために彼女に向けて必殺技を放ったところ、武道家も同じことを考えていたため、偶然にできた合体技が僧侶にクリーンヒットしてしまう。しかも、結局は僧侶も封印に巻き込まれ、檻の中にいることが判明する。そのため、僧侶に復讐されることを極度に恐れており、彼女の存在を感じただけで荷物をまとめて逃げ出すほど怯えている。

侍女 (じじょ)

魔王の侍女を務めていた女性。故人であり、魔王の回想によく登場する。魔王を生み出した「爺」の娘であり、幼少期の魔王の養育係を務めていた。魔王に対して偏執的な愛情を抱く変わり者で、魔王が幼いことを利用してセクハラやいたずらを繰り返していた。魔王を敬っているものの、慇懃無礼な態度が目立ち、時には命を賭けて魔王をからかうこともある。そのため、爺からは実の娘にもかかわらず「ドブ」と評されている。また、マッドサイエンティストの気質を持ち、よくわからない発明をしては魔王をトラブルに巻き込んでいる。侍女が記した「魔王の侍女の日記」は、後世において魔王の存在を裏付ける重要な歴史的資料として伝わっており、この日記が結果的に魔王の復活につながることとなる。実は魔法使いと僧侶の先祖にあたる人物であり、魔法使いの慇懃無礼な態度は彼女から受け継がれたもの。また、侍女が書いた日記は複数存在し、「最終巻」のみが子孫の家に伝わり、紆余曲折の末に魔法使いが受け継ぐこととなる。

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