鳥人大系

鳥人大系

高度な知能を得て人間を滅ぼし、地球の支配者となった鳥人が、文明の進化につれてかつての人間と同じように堕落し、やがて滅びへと向かっていく姿をオムニバス形式で描いたSF漫画。「SFマガジン」1971年3月号から1975年2月号にかけて連載された。

正式名称
鳥人大系
ふりがな
ちょうじんたいけい
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
手塚治虫文庫全集(講談社コミッククリエイト)
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あらすじ

ウロロンカ・ドメスティク・イグニス

1975年6月、とある農家より出火して同家は全焼、家族全員が焼死体となって発見される事件が起きた。この家ではかつて、主人の足立某が、出荷用の小鳥に、脳を発達させる特殊なエサを食べさせ、鳥の鳴き声のテープを四六時中聞かせていた。小鳥たちに美しい鳴き声を覚えさせれば、より高値で売れると考えたからである。朝から晩まで同じテープを聞かされて苦しむ鳥たち。ついに、1羽の小鳥が主人のマッチをくわえて農家から逃げ出す。

ラルス・フスクス・イグニス

船が難破して漂流していた船員の男船客の男女が、とあるサンゴ礁に漂着した。たき火と思われる煙を発見して喜ぶ3人。だが、そこに人間の姿はなく、たき火の周囲には無数の鳥がいるだけだった。鳥たちは自分で火をおこして、たき木をくべていたのである。驚きつつも鳥たちと火にあたっていた3人だったが、空腹を覚えた女が鳥を捕まえて食べようと提案する。

パイロマニアック・マグピー

アナウンサーの小松作右衛門丞定常のもとに、至急テレビ局に来るよう連絡が入る。急きょ組まれた特別番組に、ロシア語を話せる小松が必要なのだという。慌てて局に向かった小松は、上司からソ連を荒らし回っている鳥の大群が日本に向かっている、という知らせを受ける。ソ連では知能の発達したカササギの一群が都市を次々に襲い、多数の死者が出る騒ぎとなっていた。

むかしむかし……めでたし めでたし

むかしむかし、あるところに住むオジイサンオバアサンが、1羽のスズメにこき使われていた。スズメに十分な食べ物を与えなければならないため、2人はろくに食べることができず、ひもじい思いをしていた。オバアサンは空腹のあまり縁側に置かれていた「のり」を一口なめるが、それを見て怒ったスズメは、オバアサンの舌を切り取ってしまう。

オーベロンと私

無数の鳥たちが起こした放火事件によってワシントンは焼野原となった。そんな中、ホワイトハウスに招かれた鳥類学者のフレデリック・ニームは、放火テロを主導した鳥たちのリーダー、オーベロンを暗殺してほしいと、大統領から依頼される。オーベロンはニームがかつて飼育していたコンドルだった。

トウルドス・メルラ・サピエンス(ブラック・バード)

南スイスのとある村で、1人の老人リズという小鳥と暮らしていた。村の人間は鳥たちに襲われて死に絶えていたが、老人は目が悪く、耳もろくに聞こえなくなっていたので、何が起きているのか気づいていなかった。実は、鳥たちには人間抹殺指令が出ており、リズもまた老人を殺害するよう仲間たちに強要されていたのだが、老人を慕うリズは、せめて安らかに死なせてやりたいと願う。

ローデシアにて

南アフリカ連邦では、なぜか白人だけが鳥たちに襲われていた。追われる白人たちは黒人居住地区に逃げ込むが、差別に苦しんできた黒人たちは積年の恨みを晴らすべく、進入して来た白人を次々に虐殺していく。

スポークスマン

満たされない日々を送る売れっ子のSF作家がいた。彼はかつて無名の三文文士だったが、鳥人から自分たちのことを書いてほしいと依頼され、高額の契約金に釣られて承諾。テレパシーで鳥人たちからもたらされた情報をもとに「鳥人体系」という本を発表し、夢に見たベストセラー作家になる。だが、彼は鳥人のプロパガンダに利用されていることに憂鬱さを覚えるようになっていた。

ドゥブルゥド査定委員会への要請

イグナニルグム星系二十七伴星のドゥブルゥド主能長(博士)は空中を飛び、液体に潜り、さらに地表を闊歩できる能力を持つことが、宇宙進化論における「人類」と呼ばれる生物の条件としていた。この理論から鑑みて、空を飛べない二足獣類が「人類」を名乗っているゾラ系第三伴星の進化は歪んでおり、正しい形に是正する必要がある、とドゥブルゥドは特別査定委員会に進言する。

うずらが丘

鳥人は世界を支配し、人間は鳥たちに飼われる家畜のような存在に成り下がっていた。ある時、鳥人のナルコーは、知人のギノンから闘群を申し込まれる。闘群とは人間の集団同士を戦わせるというもので、有産階級の鳥人たちの間で人気のゲームとなっていた。ナルコーはギノンとの闘群に勝利するため、妹の二コラがペットとして飼っている人間のキルを借り受ける。だが、キルはこの闘群を利用した鳥人への反乱を計画していた。

クロパティア・ピティアルム

鳥人たちの社会が複雑化し、支配層と被支配層の階級差が明らかになってくると、鳥人たちは「自分たちは何のために生きているのか」と考えるようになった。やがて下層鳥人の中から、鳥人たちの信仰の基盤を確立する聖人ポロロが出現する。

ポロロ伝

成長してポロロ教の教祖となった聖人ポロロは、12人の使徒と人間のメスを連れ、自らの教えを説いて回っていた。ポロロは人間のメスから天上の主の声を聞いていたが、ポロロが神だと思っていたのは、鳥人を地球の支配者にしたドゥブルゥドだった。彼はテレパシーで人間のメスの口を通して、人間の生活様式を模倣する鳥人たちを悔い改めさせるよう、ポロロに命じていたのである。ポロロはドゥブルゥドの言葉に従い、さらに布教に力を入れるが、ポロロの教えを危険視する支配階級は、彼をニセ預言者、悪魔の使いとみなして弾圧を加える。

ミュータント

長い年月を経て、人間たちは完全に野生化していたが、ある時、人間保護区のウツザ地区に高度な知能を持つ人間が現れる。市長によって「山猫」と名付けられたその男は、人類の過去の知識を先天的に持っているミュータント(突然変異体)だった。市長は山猫の知識を利用しようと、彼をウツザ地区から連れ出し、自身の支配下に置く。

ファルコ・チンヌルクルス・モルッス

凄腕の殺し屋である鳥人のベグラーは、ムッムス考古学協会のデングル教授から、人間3匹の暗殺を依頼される。ターゲットであるイチジロサブの兄弟は古代人類の遺跡を守っており、協会はこの兄弟を抹殺して、遺跡に眠る人類の文明遺産を手に入れようと目論んでいた。

赤嘴党

食肉部族の鳥人が同族を餌食にすることは重罪とされていたが、鳥人の有産階級の間では、生贄を手に入れて残忍な本能を満たす行為が密かに行われていた。こうした同胞食いを行っている秘密組織「赤嘴党」の捜査をするモッズ警部は、あるとき自宅の寝室のベッドで食中部族の男の羽を発見する。自分の留守中に浮気をしていたのかと激怒するモッズに、妻のウエーネは、同胞食いの本能に負けて、向かいの主人を殺したと告白する。

カモメのジョンガラサン

自力で獲物を捕らなくなったため、カモメ族は太って飛ぶことすら面倒がるようになっていた。しかし、ジョンガラだけは違っていた。彼は毎日海に飛び込んで自力で獲物を捕っていたのである。仲間たちはそんなジョンガラを変人扱いしていたが、それでも彼は海へのダイビングをやめようとはしなかった。

ブルー・ヒューマン

真夜中に目を覚ました鳥人の少年は、体の透けた人間の少年と少女が庭園にいるのを見て驚く。少年は2人が幽霊だと思い込み、人間は1000年以上前に滅びたのに、今頃になってなぜ現れたのかと尋ねる。そんな少年に、2人は「長い間、君を探していたんだ」と言うと彼を捕えて、謎のおばあさんのもとへと連れていく。

ラップとウィルダのバラード

沼地に暮らす下層部族スキルアード族の鳥人ラップは、上級部族のウィルダという娘からハンドバックを盗むが、彼女の美しさに心うたれて返しにいった。ウィルダはラップを許し、彼を自宅のパーティーに招く。ウィルダの父親は差別撤廃論を説く高名な進歩的文化人で、彼らはラップを快く迎えたのであった。やがてラップとウィルダは恋に落ち、2人は結婚の約束をするが、その瞬間からウィルダの家族のラップへの態度は一変する。彼らは娘がスキルアード族の者と結婚するなどもってのほかと考えていた。

ドゥブルゥドへの査定委員会懲罰動議

ウルペレスト四級委員より、ドゥブルゥド主能長への懲罰動議が特別査定委員会に出された。ドゥブルゥドの提唱によって、ゾラ系第3惑星こと地球は鳥人の支配する星となったが、今や鳥人の退廃は目に余るものがあった。これは鳥人族出身のドゥブルゥドが、同族かわいさから権力を乱用したためだ、とウルペレストは主張する。

登場人物・キャラクター

足立某 (あだちなにがし)

エピソード「ウロロンカ・ドメスティク・イグニス」に登場する。ペット用の鳥を育てている農家の主人。出荷用の鳥が良い声で鳴くようになれば、より高く売れると考え、小鳥たちに脳を発達させる過タンパク餌を与えて飼育している。物覚えを良くしたうえで鳥の鳴き声のテープを聞かせ、美しい鳴き声を覚えさせようとする。

船員の男 (せんいんのおとこ)

エピソード「ラルス・フスクス・イグニス」に登場する。客船の船員をしている男性。乗っていた船が難破したため、船客の男女と救命ボートで脱出。どうにかたどり着いたサンゴ礁で、たき火に群がる異様な鳥の群れに遭遇した。鳥を捕えて食べようと女にせがまれるが、火にあたる場所を提供してくれた鳥たちを殺す気になれず拒否。男と女を置いてその場を立ち去るが、翌朝たき火のあった場所で異様な光景を目撃する。

小松 作右衛門丞定常 (こまつ さくえもんのじょうさだつね)

エピソード「パイロマニアック・マグピー」に登場する。QPTVというテレビ局のニュース解説者をしている男性。ロシア語が堪能であることから、ソ連を荒らしまわっているカササギ軍団の襲来を伝える緊急特番のキャスターを任されることになる。妻と3人の子供がいる平凡な人物。自分の珍妙な名前が好きではなく、ふざけているという視聴者からの苦情も多いため、改名を考えている。

オジイサン

エピソード「むかしむかし……めでたし めでたし」に登場する。オバアサンと暮らしている老人。知恵を持つ1羽のスズメに家に居つかれ、オバアサン共々こき使われているが、気性が優しいこともあって、スズメに従順に仕えている。だが、オバアサンがスズメの機嫌を損ねてしまったため、謝罪しようとスズメのお宿(アジト)を訪問。どうにか許しを得て、小さいつづらを持って家に帰る。

オバアサン

エピソード「むかしむかし……めでたし めでたし」に登場する。オジイサンと暮らしている老婆。知恵を持つ1羽のスズメに家に居つかれ、オジイサン共々こき使われており、スズメのことを激しく憎んでいる。ひもじさから、のりを一口なめたのをスズメにとがめられ、舌を切り取られたため町に逃走。スズメたちに復讐するべく一計を案じる。

フレデリック・ニーム (ふれでりっくにーむ)

エピソード「オーベロンと私」に登場する。鳥類の研究をしているテキサス在住の男性。ワシントン放火テロを主導したコンドル・オーベロンのかつての飼い主だったため、アメリカ大統領よりオーベロンの暗殺を依頼される。当初は躊躇していたが、鳥たちが人間に取って代わろうとしていることを知り、オーベロン殺害を決意。いつもオーベロンの側に控えている通訳の女に暗殺を実行させようとする。

リズ

エピソード「トウルドス・メルラ・サピエンス(ブラック・バード)」に登場する。南スイスのとある村に住む老人に、よく餌をもらっている小鳥。実は人間並みの高い知能を得ていて、ほかの知能を持つ鳥たちから老人を抹殺するよう命令されている。心優しい老人を慕っており、殺害を実行できずにいる。

黒人の少年 (こくじんのしょうねん)

エピソード「ローデシアにて」に登場する。南アフリカの黒人地区に住む少年。鳥たちに襲われて黒人地区に逃げ込んで来た白人の女を納屋にかくまう。しかし、白人への同情心はなく、彼女のことを犯そうとする。鳥は黒人の味方で、白人だけを襲うのは自分たちを差別してきた罰があたったのだと考えている。

SF作家 (えすえふさっか)

エピソード「スポークスマン」に登場する。若くしてベストセラー作家となった男性。かつては売れないSF小説で糊口をしのぐ三文文士だったが、鳥人から自分たちのことを書いてほしいという依頼を受け、『鳥人体系』という本を出版。一躍人気作家となるが、やがて自分が鳥人のPR役をやらされていることに気づく。

ドゥブルゥド

エピソード「ドゥブルゥド査定委員会への要請」「ポロロ伝」「ドゥブルゥドへの査定委員会懲罰動議」に登場する。イグナニルグム星系二十七伴星の主能長(博士のこと)を務めている鳥人族出身の男。地球は鳥類が支配すべきだと、宇宙の査定委員会に主張。人間に代わって鳥を地球の支配者とするべく工作した。しかし、鳥人がかつての人間と同じような社会形態を取るようになったため、その将来を危惧。 ポロロを利用して鳥人の思想や風習を改善しようとする。

キル

エピソード「うずらが丘」に登場する。鳥人の二コラにペットとして飼われている人間の男性。大柄で力もあるため、二コラの兄・ナルコーの命令で、鳥人が人間同士を戦わせるゲーム「闘群」のリーダーを務めることになる。表向きは鳥人に忠実に従っているが、鳥人の支配に反感を抱いており、闘群を利用して反乱を起こそうと目論む。

ポロロ

エピソード「クロパティア・ピティアルム」と「ポロロ伝」に登場する。人間の女性であるマーリヤに生み育てられたという過去を持つ鳥人の男性。天の声に導かれて、鳥は鳥らしく生きるべきであるという教えを掲げ、信者たちから「聖人」とあがめられている。しかし、人間社会の模倣の産物である階級、身分、財産などを捨てよと説いているため、支配階級の鳥人たちから危険視されている。 天の声の主がドゥブルゥドであるとは気づいていない。

山猫 (やまねこ)

エピソード「ミュータント」に登場する。ウツザ地区と呼ばれる人間保護区に住む人間の男性。失われた人類の科学技術や知識を先天的に有している突然変異体である。ウツザ地区のリーダー的存在で、飢えに苦しむ仲間たちを助けるため、自家製の爆弾を使って地区に入って来る食品運搬車を襲っていた。鳥人にとって未知の技術だった爆弾製造術を市長に見込まれ、鳥人の町で暮らすようになる。 いずれウツザ地区に帰ろうと考えている。

ベグラー

エピソード「ファルコ・チンヌルクルス・モルッス」に登場する。殺し屋を生業としている鳥人の男性。ウンダーダンス抹殺請負公社という殺し屋組織に属する一級抹殺士。ムッムス考古学協会のデングル教授から、イチ、ジロ、サブの3兄弟の暗殺を依頼されることになる。殺しに生きがいを感じていて、気に食わなければ、愛人でも平気で引き裂く残忍な男である。

モッズ

エピソード「赤嘴党」に登場する。同族食いを行っている秘密組織「赤嘴党」の捜査を担当している鳥人の男性警察官。階級は警部。「赤嘴党」追及の急先鋒というべき存在だったが、妻のウエーネが密かに同族食いを行っていたことが発覚。この事実を「赤嘴党」の幹部であるミラーズにつかまれ、彼らへの協力を余儀なくされる。優秀な警察官だが、自身も食肉部族で、同族食いの衝動に苦しんでいる。

ジョンガラ

エピソード「カモメのジョンガラサン」に登場する。カモメ族の鳥人の男性。狩りの風習が絶えて久しいにも関わらず、空から海に飛び込む、という昔ながらの方法で捕まえた魚のみを食している。そのため、周囲から変人扱いされているが、当人はまったく気にしていない。

鳥人の少年 (ちょうじんのしょうねん)

エピソード「ブルー・ヒューマン」に登場する。イスクラード市ベルメッス区ボリドー町に住む鳥人の少年。あるとき自分を探し続けていたという、幽霊のような人間の少年と少女に遭遇。2人に捕まって金色のカゴに入れられ、人間のおばあさんのいる家に連れていかれてしまう。

ラップ

エピソード「ラップとウィルダのバラード」に登場する。最下層の被差別部族であるスキルアード族の男性。汚染された沼地で生まれ、差別の対象として虐げられて育った。生活のために盗みを覚えるが、有名な差別撤廃論者の娘であるウィルダとの出会いを機に更生。ウィルダと相思相愛の関係になるが、進歩的文化人であるはずの彼女の家族に激しく反対される。

船客の男女 (せんきゃくのだんじょ)

エピソード「ラルス・フスクス・イグニス」に登場する。難破した船に客として乗船していた男と女。船員の男とともに救命ボートで脱出し、漂着したサンゴ礁でたき火に群がる異様な鳥の群れに遭遇。当初は一緒に火にあたっていたが、空腹に耐えかね、鳥たちを捕まえて食べてしまう。

オーベロン

エピソード「オーベロンと私」に登場する。ペルー産のコンドルで、ワシントン放火テロを起こした鳥の群れのリーダー。鳥類学者のフレデリック・ニームに飼われていたが、上空から落ちてきた謎の粉末を食べて脳が肥大し、高い知能を得た。自分の意志を他の動物にテレパシーで伝達する能力を持っており、通訳の女を介して人間と会話している。

通訳の女 (つうやくのおんな)

エピソード「オーベロンと私」に登場する。オーベロンに通訳として使われている人間の女性。オーベロンによって脳を支配されていたが、フレデリック・ニームに助けられて正気を取り戻した。やがてニームと恋仲になり、彼のオーベロン暗殺計画に協力するが、オーベロンのことを憎んでいるわけではない。

老人 (ろうじん)

エピソード「トウルドス・メルラ・サピエンス(ブラック・バード)」に登場する。南スイスのとある村に1人で暮らしている孤独な老人。リズという小鳥の歌声を聞くことを唯一の楽しみとしている。村人は鳥たちに襲われてすべて殺されたが、目が悪く耳も遠くなっているため、周囲で何が起こっているか気づいていない。

白人の女 (はくじんのおんな)

エピソード「ローデシアにて」に登場する。南アフリカの白人地区で暮らしていた女性。鳥たちが白人だけを襲っていたため黒人地区に逃げ込む。だが、白人は黒人たちの虐殺の対象になっており、たまたま出会った黒人の少年に助けを乞う。

人間の女 (にんげんのおんな)

エピソード「うずらが丘」に登場する。食虫部族の鳥人に飼われている人間の女性。普段は奴隷として農場で働かされている。ニコラが飼っている人間のキルと恋愛関係にあり、闘群を利用した鳥人への反乱計画を聞かされて不安を覚える。

ナルコー

エピソード「うずらが丘」に登場する。「うずらが丘」と呼ばれる地を居住区としている食虫部族の若き男性。切れ者だが性格は穏やかで、人間同士を戦わせる「闘群」を嫌っている。しかし、食肉部族のギノンの誘いを断り切れず、妹の二コラが飼っている人間のキルを、闘群における自軍のリーダーに任命する。

ニコラ

エピソード「うずらが丘」に登場する。食虫部族の鳥人でもあるナルコーの妹。歌ったり踊ったりするのが好きで、兄のナルコーと同じく人間同士を戦わせる「闘群」を嫌っている。しかし、ナルコーが食肉部族のギノンと闘群を行うことになったため、嫌々ながらペットとして飼っている人間のキルを兄に貸し与える。

ギノン

エピソード「うずらが丘」に登場する。食肉部族の鳥人の男性。人間同士を戦わせる「闘群」に食虫部族のナルコーを誘う。ナルコーとは友人同士だが、凶暴な食肉部族の本能を内に秘めている。闘群に勝ってナルコーの妹の二コラを手に入れ、自らの餌食にしようと企んでいる。

ジャグ

エピソード「うずらが丘」に登場する。食肉部族の鳥人、ギノンに飼われている人間の男性。驚くほどの巨漢で、戦闘力も群を抜いているため、ギノンが飼っている人間たちのリーダー格となっている。「うずらが丘」の人間たちと敵対しているように見えるが、実は裏で連絡を取り合っており、キルの反乱計画に協力する。

マーリヤ

エピソード「クロパティア・ピティアルム」に登場する。貧しい下層階級の鳥人に飼われていた人間の女性。支配階級の鳥人の襲撃を受けた際に、主人から卵を託されて逃走。小川のある森に小屋を作り、そこで自分の膣に卵を入れて孵化させ、のちの聖人ポロロを生み落とす。

マグダラ

エピソード「ポロロ伝」に登場する。人間の女性。鎖にかけられて死にかけていたところをポロロに助けられ、以後行動をともにすることになる。「毒まむし」とあだ名される残忍かつ淫乱な女性だが、ポロロのことは気に入っている。彼を守るため、人間の男たちを率いて支配階級の鳥人と戦う。

市長 (しちょう)

エピソード「ミュータント」に登場する。人間保護区であるウツザ地区を管理する鳥人の市長。鳥人にとって未知の技術である爆発物を使う人間の男に「山猫」という名を付けて保護。鳥人と同等の身分を与えたり、女をあてがったりして手なずけようとする。

鳥人の女 (ちょうじんのおんな)

エピソード「ミュータント」に登場する。市長が山猫を手なずけるために情婦としてあてがった鳥人の女性。市長の命令で強制的に山猫の女にされたが、やがて彼の純真さに魅かれていき、市長への復讐計画に協力することになる。下等な人間のなぐさみものになっているとして、他の鳥人たちから軽蔑の目で見られているが、山猫との間に肉体関係はない。

イチ

エピソード「ファルコ・チンヌルクルス・モルッス」に登場する。古代人類の文明遺産が眠る遺跡を守護する人間の3兄弟の長兄。人間を虐げる鳥人を憎んでいるが、「人類が別種の高等生物に主導権を奪われていたら、その後継者に人類の遺産を譲れ」という先祖の遺言が記録されたテープを発見。悩んだ末に文明遺産を明け渡す決意をするが、鳥人たちには人類の道具は使いこなせないと考えている。

ジロ

エピソード「ファルコ・チンヌルクルス・モルッス」に登場する。古代人類の文明遺産が眠る遺跡を守護する人間の3兄弟の次兄。遺跡に眠る文明遺産には複雑な思いを抱いていて、こうした便利な機械や道具を作りすぎたために、先祖は滅んだのではないかと考えている。

サブ

エピソード「ファルコ・チンヌルクルス・モルッス」に登場する。古代人類の文明遺産が眠る遺跡を守護する人間の3兄弟の末弟。反抗的かつ好戦的。遺跡の文明遺産を明け渡すというイチの決定に不満を抱き、ジロと組んで鳥人たちから遺産を奪い返そうと企む。

ウエーネ

エピソード「赤嘴党」に登場する。警察官であるモッズの妻。同族を餌食にしたいという欲求に負け、密かに秘密組織「赤嘴党」に入党していた。日常生活でも同族食いの衝動を抑えられなくなり、向かいに住む食虫部族の男性を自宅に連れ込んで殺害。「赤嘴党」の捜査を担当しているモッズを窮地に陥らせる。

ミラーズ

エピソード「赤嘴党」に登場する。食肉部族の鳥人の男性。モッズが捜査を担当している地区の秘密組織「赤嘴党」の幹部。モッズの妻のウエーネが「赤嘴党」のメンバーであることをつかんでおり、これをネタに自分たちの活動を黙認させよう、とモッズを脅迫する。

人間の少年と少女 (にんげんのしょうねんとしょうじょ)

エピソード「ブルー・ヒューマン」に登場する。青白い姿をした人間の少年と少女。体が透けていて幽霊のように見える。鳥人の少年をずっと探し求めていたと言って捕え、金色のカゴに入れて、人間のおばあさんが住む家に連れていく。

ウィルダ

エピソード「ラップとウィルダのバラード」に登場する。有産階級である虹鳥族の娘。父親が差別撤廃論を説く有名な進歩的文化人であるため、当人もリベラル的な思想を持つ。盗んだハンドバックを返しに来たラップを許し、家族とともに彼を歓待。やがてラップと相思相愛の関係となり、彼のプロポーズを受け入れる。しかし、ラップがスキルアード族であることを理由に、家族たちから猛反対される。

ウルペレスト

エピソード「ドゥブルゥドへの査定委員会懲罰動議」に登場する。特別査定委員会の四級委員を務める、鳥人の男性。ゾラ系第三惑星こと地球を支配する鳥人の堕落と退廃を査定委員会に告発。鳥を地球の最高支配層としたドゥブルゥドへの懲罰動議を起こすと同時に、もう一度地球の支配生物を変更すべきであると提案する。

集団・組織

赤嘴党 (せきしとう)

エピソード「赤嘴党」に登場する。同胞を食したいという食肉部族の鳥人の欲求を満たすために組織された秘密結社。美味とされる種族の卵を密かに入手。育てたヒナを餌食として会員たちに供している。かなりの大組織のようだが、各地区の幹部がそれぞれ独立した活動を行っており、内紛が耐えない。

場所

ウツザ地区 (うつざちく)

エピソード「ミュータント」に登場する。野生化した人間たちが暮らしている地区の1つ。人間保護区という名目になっているが、人間が地区の外に出ることは許されておらず、実質的には鳥人たちから隔離された状態にある。定期的に食糧が配給されてはいるが十分ではなく、地区内では飢えて死ぬ者が多い。

遺跡 (いせき)

エピソード「ファルコ・チンヌルクルス・モルッス」に登場する。ニッポン列島の中央部の盆地にある古代人猿類(人間)の遺跡。兵器や自動車からテレビ、冷蔵庫、洗濯機といった電化製品まで、ありとあらゆる人類の文化遺産が埋蔵されている。イチ、ジロ、サブという人間の3兄弟が、鳥人たちからこれらの遺産を守っている。

その他キーワード

食虫部族 (しょくちゅうぶぞく)

虫や木の実を常食としている鳥人の部族。平和主義者で穏健的だが、一方で高い貴族性とブライドを持っている。食肉部族とは表面的には友好関係にあり、お互いの領土や権利を犯さない、という暗黙の了解ができている。しかし、気性が荒く凶暴な食肉部族を危険視している者も多い。

食肉部族 (しょくにくぶぞく)

肉を常食としている鳥人の部族。獰猛で気性が荒く、同胞を餌食にしたいという本能的な衝動を、内側に抱えている者も少なくない。食虫部族とは表面的には友好関係にあり、お互いの領土や権利を犯さない、という暗黙の了解ができている。しかし、内心では不信と反発を抱いている。

闘群 (とうぐん)

エピソード「うずらが丘」に登場する。有産階級の鳥人たちの間で流行っているゲーム。飼っている人間たちを互いに集団で戦わせるというもの。人間たちはかつて使用していた銃器や戦車などの武器を与えられ、がむしゃらに戦い、かつ殺し合う。財産を賭けて行われることも多く、一種のギャンブルと化している。

スキルアード族 (すきるあーどぞく)

エピソード「ラップとウィルダのバラード」に登場する。鳥人カーストの最下層に位置する被差別種族。鳥人社会では羽の色艶や飾りの有無、体毛の柔らかさなどによる差別がある。スキルアード族は、体毛が地味な栗毛色で頭も褐色であるなど、見た目が冴えないので、他の種族に蔑視される存在となっている。

書誌情報

鳥人大系 講談社コミッククリエイト〈手塚治虫文庫全集〉

(2011-08-12発行、 978-4063738483)

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