あらすじ
第1巻
ゲームと称した軽度売春を行う10代の女子グループに所属していた衛藤キズナは、同じホテル・ウィリアムズチャイルドバードの住人である井上由起から、新鋭画家である浅井有生のヌードモデルにならないかと勧誘を受ける。最初は有生の尊大な態度に渋っていたものの、キズナは次第に、有生の芸術家としての感性に惹かれていく。そんな折、マンション内で奇妙な盗難事件が発生。怪しい人影に付きまとわれたキズナは有生に救われるが、有生は乱闘の最中、利き腕を骨折してしまう。
第2巻
利き腕を骨折してしまった浅井有生の世話係に任じられた衛藤キズナは、彼との交流を重ねるうち、有生のかつての恋人兼モデルである皆子の存在を知る。そして彼女がこなしたポージングを再現させられ続けていた事から、自分が皆子の代替品として採用され、現在もその認識が覆っていない事を知り、キズナは有生とケンカしてしまう。そんな中、井上由起は傷ついたキズナをデートに連れ出すが、その帰り道、二人の乗った車はトラックと衝突事故を起こしてしまう。
第3巻
衛藤キズナと井上由起は、事故を起こしたものの、どうにか軽傷で済んだ。その安心感からキズナは由起に頬へのキスを許すが、その瞬間を浅井有生に見られてしまい、キズナと有生のケンカはさらに長引く事となった。だが、ある雨の日、ホテル・ウィリアムズチャイルドバードへの落雷が原因で停止したエレベーター内に二人きりになったキズナと有生は、これをきっかけに急速に距離を縮めていく。一方で、キズナへの好意を匂わせながらも煮え切らない態度を取る有生と由起の関係が悪化してしまう。
単行本の装丁
コミックスの巻頭にはカラーページが差し込まれている。また、1、2巻はカバーを外した本体表紙・裏表紙に4コマ漫画が描かれており、衛藤キズナら主要人物三人の和やかな様子や、本作にはほとんど登場しないが、ほかのホテル・ウィリアムズチャイルドバード住人と浅井有生との関係が描かれている。
関連作品
本作『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち』は、原作者である壁井ユカコによる同名小説のコミカライズ作品。原作小説はホテル・ウィリアムズチャイルドバードに暮らす多数の住人たちを描いた群像劇であり、衛藤キズナを主人公とした作品ではない。ほかに本作に登場しない設定なども多数あり、本作とは内容が大きく異なる。
登場人物・キャラクター
衛藤 キズナ (えとう きずな)
ゲームのメンバーの一人で、16歳の少女。背中まで伸びた、ウェーブがかった赤毛が特徴。ホテル・ウィリアムズチャイルドバードの445号室に住んでいる。よりスリルのある状況を求めていくゲームに不安を覚えはじめていた頃、サチが脱退を申し出て、嫌々ながらリンチに参加した。サチのことは大切な友人と考えており、その後も心配して連絡を取っている。 同じホテル・ウィリアムズチャイルドバードの住人である井上由起に声をかけられ、浅井有生のヌードモデルのバイトをはじめる。当初は有生の事を傍若無人で近寄りがたいと考えていたが、次第にその芸術家としての感性や世界観、芸術に対して真摯な人柄に惹かれていく。由起から好意を寄せられるも男性として見る事に戸惑っており、友達として接していたいと考えている。
浅井 有生 (あさい ゆうせい)
新鋭画家として活躍する、左利きの22歳の青年。井上由起とは母親同士が双子のいとこ。ホテル・ウィリアムズチャイルドバードの546号室がアトリエ兼住居となっている。衛藤キズナをヌードモデルとして雇っている。青山公園美術大学造形学部を卒業しており、現在は同大学の油画研究室に所属している。衣服に関心が薄く、絵の具が付着しすぎてもともとの色が分からなくなっているシャツや靴を着用している事が多い。 かつての恋人でありモデルだった皆子への想いを引きずっており、キズナの事も代替品としか認識していなかったが、次第にキズナ個人の感性に興味を持っていく。右手で絵を描くと3歳児レベルのものしか描けないといわれている。ひよりという名の妹がおり、「ユウ兄ちゃん」と呼ばれている。
井上 由起 (いのうえ ゆき/よしおき)
浅井有生とは母親同士が双子のいとこの男子大学生。女装癖のあるオネエキャラのヘテロだが、ケンカにはめっぽう強い。ゲームのメンバーがサチにリンチを行っている場面を目撃し、通報した。その直後、衛藤キズナが同じホテル・ウィリアムズチャイルドバードの住人である事を知り、有生のモデルにと勧誘する。キズナが皆子に似ている事から有生と引き合わせたが、キズナのはっきりとした性格や気の強さに次第に好意を抱いていく。 ほとんどの場合に井上由起(ゆき)と名乗っているが、本名は「井上由起(よしおき)」という。こかげという名の弟がおり、「ユキ兄ちゃん」と呼ばれている。
大澤 雅親 (おおさわ まさちか)
青山公園画廊の2代目オーナーを務めている若い男性。前オーナーである大澤の甥。浅井有生とは以前からの知り合いで、皆子がモデルとなっていた頃の有生の絵も知っている。そのため、衛藤キズナと初対面の時には皆子と見間違えており、キズナが皆子の事を知るきっかけを作った。
大澤 (おおさわ)
青山公園画廊の前オーナーで、老齢の男性。白いスーツを着用し、眼鏡をかけている。衛藤キズナは初対面時、フライドチキンチェーン店の人形と見間違えた。とある出版社の役員が友人にいる事もあって、多くの出版社につてがある。
皆子 (みなこ)
浅井有生のかつての恋人兼モデル。衛藤キズナがホテル・ウィリアムズチャイルドバードに越して来る以前、有生のとなりの部屋に住んでいた。空間恐怖症という病気で、少しでも広い場所に行くと発作が起き、恐慌状態に陥るため外出する事ができなかった。快方に向かっているかと思われた矢先、5階のバルコニーから投身自殺した。
サチ
ゲームのメンバーの一人で、16歳の少女。メンバーの中で一番足が美しいと評されている。学校に通わずにゲームに参加して遊び歩いていたが、祖母の入院をきっかけにゲームの脱退を決意する。その際メンバーからリンチに遭ったが、脱退後は2日に一度は学校に通うようになり、衛藤キズナには電話で報告するなど友好関係を維持している。 本名は「早知恵」。
ルミ
ゲームのメンバーの一人で、17歳の少女。金髪にピンクのメッシュを入れ、派手なメイクをしている。サチがゲームのメンバーから脱退を口にした際に最初に暴行を加えており、それ以来、ゲームのリーダー的存在として仕切りはじめた。会社員の買春報道がされた際には、ほかのメンバーと共に補導された。
掃除人 (そうじにん)
ホテル・ウィリアムズチャイルドバードに出没する男性。ネズミのようにちょろちょろと動き回っており、人に見つかるといつの間にか姿を消す。非常に小柄で、片言で話す。美しい物を見つけると触りたくなるという理由で、マンション内で窃盗を働いていた。
集団・組織
ゲームのメンバー
ゲームを行っている女子高生たちの集団。本来リーダーは作らないという暗黙の了解があったが、サチがメンバーの脱退を申し出て以降、ルミがリーダーとして仕切りはじめた。補導された際は売春グループとして報道された。
場所
ホテル・ウィリアムズチャイルドバード (ほてるうぃりあむずちゃいるどばーど)
衛藤キズナたちが暮らしているマンション。「鳥籠荘」とも呼ばれている。建物の中央に各階を貫く巨大な鳥籠を模したデザイン部分があり、半円形となっているその内部は、各階に広いバルコニーが作られている。レトロな蛇腹フェンスのエレベーターで各階を移動できる。奇人変人の集まる場所として知られており、管理人が常駐している。
青山公園画廊 (あおやまこうえんがろう)
大澤雅親が2代目オーナーを務めている画廊。浅井有生の絵画をたびたび展示しており、受付嬢も有生とは顔なじみとなっている。有生の個展を開く事を打診してスケジュールの調整も繰り返しており、どうにか個展の開催にこぎ着けた。
その他キーワード
ゲーム
衛藤キズナがサチらと共に行っていたゲーム。街中で金離れのよさそうな男性に援助交際を持ちかけ、カラオケ、食事を共にして金銭を得る。ラブホテルまで行って金を持ち逃げしてもOK。ただしどれだけ金を積まれても実際に性交渉を行ってはならない、持ち回りで順番が回ってきたら必ず実行する、捕まってもゲームやメンバーの事は口外しない、メンバーの脱退は許さないなどのルールがある。
クレジット
- 原作
-
壁井 ユカコ
- キャラクターデザイン
-
テクノサマタ
書誌情報
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 3巻 KADOKAWA〈シルフコミックス〉
第1巻
(2008-11-22発行、 978-4048674478)
第2巻
(2009-11-24発行、 978-4048682381)
第3巻
(2011-04-22発行、 978-4048703987)