コールドゲーム

コールドゲーム

強国E国の王妃として迎え入れられたB国の姫、アルナは、侍女のカミラと入れ替わり、素性を騎士と偽ってE国の内情を探ることになる。しかしそこは、アルナ以外に五人もの姫が迎えられ、正妃の座を巡って憎み合い殺し合う、恐ろしい世界だった。そんなアルナがやがてスミレと呼ばれるようになり、E国に真の平和をもたらそうとする王のアーサーと協力しながら、E国で生き延びていく姿を描いたファンタジックラブストーリー。「ベツコミ」2017年8月号から連載の作品。

正式名称
コールドゲーム
ふりがな
こーるどげーむ
作者
ジャンル
ファンタジー
 
恋愛
レーベル
フラワーコミックス(小学館)
巻数
既刊9巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

B国の第五王女・アルナ(のちのスミレ)は、15歳のある日、強国E国へ嫁ぐことになった。しかし、E国にはすでにS国からやってきた妃がいるうえ、結婚相手である王の情報が非常に少ないなど、不審な点ばかりだった。そこでアルナの父親は、アルナたち王族と髪の毛と瞳の色が似ている侍女のカミラにアルナのふりをさせ、一方のアルナにはカミラを名乗らせ、E国に向かわせることを思いつく。こうして入れ替わった二人がE国に到着すると、正妃候補の姫はアルナのほかに五人もおり、アルナは最下位の序列6番目の王妃だという衝撃の事実が発覚する。E国は本来、最初に招いたS国のカザリンを正妃にする予定だったが、彼女と結婚するはずだった前国王のヘンリーが突然亡くなってしまう。そこで代わりにヘンリーの弟であるアーサーが即位したが、アーサーとカザリンがすでに義姉弟であることを理由に、教会は二人の結婚に反対。これによってアン・グレゴリーをはじめとする四人の姫が新たに招かれたが、全員が教会の反対に遭い、六人目としてアルナが招かれたのである。この六人の正妃候補者たちと正妃の座を巡って争うことを理解したアルナは、周囲から瞳の色にちなんだ「スミレ」というあだ名を付けられ、ひとまずカミラのサポートを継続する。そんな中、スミレは第五王妃のリズィー・オブ・グレイと親しくなるが、アンの策略により、リズィーが姦通罪の疑いで処刑されてしまう。

第2巻

スミレは、リズィー・オブ・グレイに無実の罪を着せて処刑したアン・グレゴリーの残酷で身勝手な人間性を知り、復讐を誓っていた。そこでスミレはまずカザリンに会いに行き、アンを警戒しろと忠告するが、そこにE国に来てから何度も遭遇した謎の少年が現れる。彼は身分が高く、カザリンとも親しい人物だった。しかしカザリンまでもが、リズィーのような悲惨な結末になってはならないと判断したスミレは、彼と共にカザリンの部屋を去るのだった。だがその直後、スミレは彼からリズィーを助けられなかったことを謝罪される。この言葉によってスミレは、彼の正体は一体何者なのかと、増々疑問に思うのだった。そんなある日、ついに王が参加する晩餐会が開かれる。第六王妃であるカミラたちは最後に呼ばれるはずだったが、ここで異変が起きる。スミレとの一件もあり、アンを危険視したカザリンが序列を変更し、カミラをアンより上の第二王妃に引き上げたのである。こうしてアンに一矢報いたスミレだったが、一人で晩餐会会場を離れたのが原因で、突如何者かに襲われ、誘拐されてしまう。この事態を重く見た世話係のアデール・ヒューズエドワード・ヒューズは、スミレを救うために件の少年に助けを求める。エドワードは、彼こそがE国の国王であるアーサーだと、うすうす勘づいていたのである。

第3巻

時はさかのぼる。E国の第二王子であるアーサーは、ある日化け物が住んでいるといわれる噂の塔へ、こっそり足を踏み入れる。アーサーはドラゴン退治の冒険譚にあこがれており、化け物を退治して「ドラゴンスレイヤー」の称号を手に入れようと考えていたのである。しかしそこにいたのは、北の国から捕えられた男性のヴァリーだった。彼こそが自分のドラゴンだと感じたアーサーは、それ以来、兄のヘンリーから許可を得て度々ヴァリーに会いに行き、剣術を習ったり、北の国の話を聞いたりして親しくなっていく。だが、父親である国王が亡くなり、ヘンリーが即位したことで、彼の態度が急変。アーサーは田舎に追いやられ、ヴァリーとも会えなくなってしまう。それでもヘンリーを信じようとしていたアーサーだったが、ある日ヘンリーとS国王女のカザリンの結婚式のためにアーサーが宮殿に戻ると、ヘンリーはアーサーに、ヴァリーを処刑するように命じるのだった。しかし、どうしてもヴァリーを処刑することに同意できないアーサーはこっそりヴァリーを逃がし、兄に反逆した罪で処刑される覚悟を決める。だが処刑当日、ヴァリーが処刑場に姿を現す。そして、今日自分というドラゴンを殺すことで、アーサーの冒険譚が始まると告げ、ヴァリーはアーサーに処刑されるのだった。

第4巻

エドワード・ヒューズと共に無事スミレを救出したアーサーは、己の弱さを嘆き、強くなりたいと願うスミレの姿に、幼い頃の自分を重ねていた。これによってスミレを気に入ったアーサーは、自分の正体を打ち明け、従者になるよう命じる。そして、エドワードと共にスミレに剣の稽古をつけるようになる。しかしそんなある日、カミラが失踪。E国での暮らしに限界を感じていたカミラは、何者かの手引きで帰国しようとしていたのである。そこでスミレ、アーサー、エドワードの三人は、カミラが最初に向かうはずの「自治都市フラドル」へと足を運ぶ。早速現地で調査を始める三人だったが、その途中で不審な男性に声を掛けられる。これを警戒した三人は、男性がスミレかアーサーを狙って近づいてきたと考えて二手に分かれるが、男性の正体はリズィー・オブ・グレイと生前親しくしていたロバート・バランシだった。アン・グレゴリーを通じてリズィーと手紙のやり取りをしていたロバートは、スミレこそがリズィーを陥れ、処刑に追い込んだ人物だと誤解しており、スミレを激しく憎んでいた。そこで、アンから聞いた情報どおりフラドルでスミレを発見し、殺害しようとしていたのである。

登場人物・キャラクター

スミレ

B国の王女。年齢は15歳。B国に10人いる王子、姫のうちの末っ子の第五王女である。B国王族由来の銀色のストレートボブヘアで、すみれ色の瞳をしている。本名は「アルナ」だが、侍女のカミラと入れ替わってE国に潜入してからは「カミラ」と名乗るようになる。しかし、この名前は浸透せずに、ほぼ瞳の色にちなんだ「スミレ」というあだ名で呼ばれている。クールで落ち着いた性格で、感情の起伏があまりなく表情も乏しいため、人形のような女性だと評されることが多い。また、刺繡やダンスといった女性らしい趣味にはあまり関心がなく、剣術を学ぶのが大好きで、許嫁のヨハン・クレーに剣を習っていた。しかし、騎士として優れているわけではない。15歳のある日、突如強国E国の妃になるよう命じられ、謎の多いE国の内情を探るため、カミラと入れ替わってE国に潜入することになる。この時にヨハンとの婚約を解消し、カミラと二人だけでE国に迎えられるが、すぐにE国宮廷が、六人の王妃たちが正妃の座を巡って殺し合いをする恐ろしい場所であると気づく。当初はカミラを正妃にするつもりはなく、いかにE国王に選ばれず、二人揃って帰国しようかと考えていた。だがアーサーに出会い、E国に真の平和をもたらそうとする彼に惹かれていく。

アーサー

E国の王。年齢は16歳。マーガレットの息子であり、ヘンリーの異母弟の第二王子である。金色の短髪に琥珀色の瞳を持つ美形で、マーガレットと似ており、アーサー自身もその自覚がある。スミレには出会った当初、E国は魔界のような場所であると忠告したことが理由で、正体を明かすまで「魔界小僧」と呼ばれていた。正直な性格の自信家で、耳に痛いこともはっきり言うため、意地悪な人間だと誤解されがちである。しかし、実際は心優しく正義感も強く、誰よりもE国のことを思って行動している。また知略に長け、経験豊富な戦略家のように見えるが、年齢相応の少年らしい一面もある。子供の頃は両親やヘンリーを慕い、従兄のケイ・サセックスと遊ぶ楽しい日々を送っていたが、父親が亡くなってからはヘンリーが豹変。当時親しくしていた囚人のヴァリーの処刑を命じられたことで、家族が本当は憎み合っており、E国が地獄のような場所であると理解する。その後、ヘンリーに遠ざけられ3年間北の国との戦場に赴くが、ヘンリーの死を機に帰国し、即位する。E国をよくするために周囲の国・都市との関係を有利にしたり、信頼できる家臣を探したりするためにケイと入れ替わり、素性を隠して独自に動いていた。そんなある日、スミレとエドワード・ヒューズと出会って声を掛ける。

エドワード・ヒューズ

貴族・ヒューズ家の長男。E国でカミラの世話係を務めることになった少年。アデール・ヒューズの兄で、グレン・ヒューズの息子でもある。髪の毛全体を立てた短髪で、がっしりした体型をしている。あだ名は「エド」で、質実剛健を地でいく人物。妹同様歯に衣着せぬ正直な性格で、さらに非常に口が悪く、下品な言葉を使うことが多い。しかし、根はまじめで家族や友人思いである。貴族的な思考の父親のグレンとは意見が合わず、長男でありながら、実家を愛せずにいた。そのため、アデールが男性であれば代わりに跡を継いでくれたのにと愚痴ったり、カミラの世話役が自分に向いていないと考えていたりと、鬱屈した日々を送っている。そんなある日、アーサーの正体を暴いたことをきっかけに彼に気に入られ、秘密裏にアーサーに仕えて行動するようになる。また、これを機に、スミレに剣を教えるようになった。しかしアデール同様、スミレとカミラが入れ替わり、スミレこそが真のB国王女であることは知らない。そのため、スミレをただの護衛の女性騎士だと思い込んだまま、友人として親しくなる。アデールとは仲がよく、よく喧嘩もするがお互いに尊重し合っている。

アデール・ヒューズ

E国の貴族、ヒューズ家の娘。カミラの侍女を務めることになった少女。年齢は15歳。エドワード・ヒューズの妹で、グレン・ヒューズの娘でもある。前髪を切りそろえ、腰まであるロングウェーブヘアをハーフアップにしている。リズィー・オブ・グレイには、喧嘩になると「前髪パッツン」「前髪一直線」などと悪口を言われていた。明るく正直な性格で、思っていることをすぐに口にしてしまうが、根は優しく情に厚い。また知的で思慮深く、E国とその周辺国の情勢についても理解している。さらに、家庭の事情もありお金には非常に厳しく、物の見方もシビアで現実的。それゆえに実家が成金貴族であるという自覚があり、実家の地位を絶対的なものにするためにも、カミラを正妃にして共に成り上がろうとしている。しかしエドワード同様、スミレとカミラが入れ替わり、スミレこそが真のB国王女であることは知らない。そのため、スミレをただの護衛の女性騎士だと思い込んだまま、友人として親しくなる。エドワードとは仲がよく、よく喧嘩もするがお互いに尊重し合っている。

カミラ

B国出身のスミレの侍女。スミレと入れ替わって「アルナ」と名乗る少女。E国到着時は、六人の正妃候補の中で最下位の序列6位だったが、カザリンがアン・グレゴリーを危険視した結果、カザリンの意向で2位にまで押し上げられた。血筋はB国王家傍流のものであり、容姿が髪を切る前のスミレと同じ銀髪のロングヘアだった。スミレほど紫色に近くはないが、青系の瞳の色であることから、入れ替わる相手に選ばれた。しかし、顔は似ておらず地味な印象で、カミラ自身も冴えない容姿であることを自覚している。そのため自分に自信がなく、泣き虫で気の弱い性格をしている。さらにE国語は理解できるものの、話すことはほとんどできないため、E国内で不用意な発言をしないために、会話はスミレに任せている。E国に到着する前からE国の異常さを目の当たりにし、いつ殺されるかわからない恐怖に怯え、精神的に参ってしまっている。そのため以前からあこがれていたスミレに依存気味で、自分にはスミレしかいないと思っている。それゆえにアデール・ヒューズやリズィー・オブ・グレイを野蛮で教養がないと見下すなど、次第に排他的になっていく。しかし、スミレに執着しすぎていることが原因で、やがてスミレとすれ違うようになる。

カザリン

大国S国出身の姫。E国における六人の正妃候補の中では序列1位の若い女性。ヘンリーの元妻で、アーサーの義理の姉でもある。前髪を真ん中で分けて、額を全開にしてヘッドドレスをかぶっている。いつも険しい表情で、気難しい印象を与える。語尾に「~じゃ」と付ける、古めかしい口調で話す。気が強く、プライドの高い性格をしている。そのため、身分や序列を重んじており、出過ぎた振る舞いをする人間には容赦がない。その一方で野蛮なことや、理不尽なことを嫌うまじめさと気高さがある。六人の正妃候補の中、E国には最初に招かれて前国王、ヘンリーの妻となった。しかし、ヘンリーが突然亡くなり、代わりにヘンリーの弟であるアーサーと結婚することとなる。だが、これを教会がアーサーとカザリンはすでに義理の姉弟であることを理由に反対。そこで代わりの王妃としてアン・グレゴリーやほかの五人が選ばれたが、全員が教会に反対される状態となる。それでも六人の中では特別な存在で、五人の王妃の序列を自由に変えることができる。アンの本性を理解しており、彼女を警戒している。リズィー・オブ・グレイの死後は、スミレの進言もあり、アンの序列を落とした。

アン・グレゴリー

E国大貴族の娘。E国正妃候補の一人。年齢は17歳。E国における六人の正妃候補の中では序列2位だったが、カミラが迎えられた直後にカザリンの意向で3位に落とされる。ジョージ・グレゴリーの娘で、クリスティナ・ディアラムの妹でもある。前髪を真ん中で分けて、額を全開にした黒のロングヘアにヘッドドレスをかぶっている。目をギョロギョロさせ、唇の左下にほくろが一つある。このルックスのために子供の頃は「頭でっかちのギョロ目のアン」とからかわれることがあり、アン・グレゴリー自身も容姿にコンプレックスを感じ、クリスティナのような容姿を理想としている。ふだんはつねに笑顔で、穏やかで優しい印象を与えるが、実際は残虐で、身勝手な目的のためには手段を選ばない非情な性格の持ち主。また虫の羽を引きちぎってから殺すなど、弱い生き物を殺して楽しむ趣味がある。特に容姿の優れた女性や頭の悪い女性には冷たく、姉のクリスティナを見下したり、元侍女のリズィー・オブ・グレイをいじめていた。六人の候補の中で最も正妃の座に執着しており、ほかの五人を蹴落として正妃になろうとしている。そのため、高い知性を武器に正妃候補たちを陥れ、次々に殺害する。ケイ・サセックスとは子供の頃から親しいため、ケイとアーサーの入れ替わりについても理解している。

クリスティナ・ディアラム

E国大貴族の娘。E国正妃候補の一人の若い女性。E国における六人の正妃候補の中では序列3位だったが、カミラが迎えられた直後にカザリンの意向で4位に落とされる。旧姓は「グレゴリー」で、あだ名は「クリス」。ジョージ・グレゴリーの娘で、アン・グレゴリーの姉。金髪碧眼で色白、さらにスタイルがよく胸が大きいため、異性から非常に人気がある。マイペースでのんびりとした性格で、間延びした口調で話す。あまり知的な印象はなく、ジョージからもただ容姿が美しいだけの女性と評されている。さらにアンには面と向かって馬鹿にされているが、これはアンがクリスティナ・ディアラムを本心では警戒しているため。クリスティナ自身はまったく気にしておらず、姉として変わらず親しくしている。また、ケイ・サセックスとは子供の頃から親しい。

リズィー・オブ・グレイ

領主のアルバート・グレイの娘。E国正妃候補の一人。年齢は14歳。E国における六人の正妃候補の中では序列5位だったが、カミラが迎えられた直後にカザリンの意向で6位に落とされる。また、王妃に選ばれるまでは、アン・グレゴリーの侍女を務めていた。ロングヘアを大きく巻いてまとめた、派手でかわいらしい少女。気が強くわがままながら、家族や領民思いで根は素直な性格をしている。特に父親のことを非常に尊敬しており、正妃になろうとしているのも、父親に爵位を与えたいため。実家は毛織物で莫大な富を得た成金貴族で、性格や生い立ちなどがアデール・ヒューズと似ているためにアデールとは喧嘩ばかりしている。もともとは王妃候補でなく、E国でアンの侍女として暮らしていた。自分に優しくしてくれるアンを慕っていたが、ある日アンの態度が豹変。周囲から孤立し、淋しい日々を送るようになる。それからしばらくして王妃に選ばれ、アンと距離を置くこととなったものの孤独は癒えず、アンへの恐怖心を抱えていた。そんなある日、カミラとスミレが現れ、当初は二人を見下していたものの、やがてスミレの人柄に惹かれ親しくなっていく。領民のロバート・バランシとは親しくしていたが、これをアンに利用されてしまう。

ケイ・サセックス

アーサーと入れ替わってE国国王の執務をしている男子。年齢は18歳。アーサーの従兄で、アーサーよりも穏やかな雰囲気を漂わせたイケメン。顔立ちはアーサーと非常に似ているが、骨格はケイ・サセックスの方ががっしりしており、二人共に長期的に入れ替わり続けるのは困難であると考えている。知的で思慮深く警戒心が強いため、子供の頃から危険な場所に出入りしようとするアーサーをいさめたり、E国王家が家族で憎み合っていることも理解していた。ヘンリーの即位後、ヘンリーによって田舎に追いやられてからはアーサーとも会えずにいたが、ヘンリーの死後、即位したアーサーの意向に従って入れ替わりを了承する。それからはできるだけ公の場に姿を現さず、自室にこもって執務のみを行なっていた。特に正妃候補六人のもめごとにはかかわらないようにしている。

ヘンリー

先代E国国王で、故人。アーサーの異母兄で、顔立ちは同じ名を受け継いだ父親と非常に似ている。前髪を真ん中で分けて肩まで伸ばしたボブヘアにしている。一見穏やかな雰囲気だが、これは表向きに偽っているもので、実際は残虐で暴力的な性格をしている。継母であるマーガレットを生意気で気に入らないという理由で強姦したり、即位後はアーサーに対して別人のように冷たくあたったりと裏表が激しい。父親の存命中はおとなしくしていたが、父親が亡くなり、即位してからは徐々に本性を現すようになる。アーサーはもちろん、アーサーの許嫁のいるキャトリン家やサセックス家を田舎に追いやって宮廷から遠ざけたり、アーサーが親しくしていた囚人のヴァリーの処刑をアーサーに命じたりと、その行動は王妃であるカザリンにも問題視されていた。その独善的で強引な改革はやがてあちこちで恨みを買うようになっていく。ある日、狩りの最中に落馬事故で亡くなるが、アーサーはヘンリーが何者かに殺害されたのではないかと考えている。

マーガレット

E国太后で、アーサーの母親。ヘンリーの義理の母親でもある。金髪をハーフアップにした美人で、周囲からはその美貌だけで王妃に選ばれたと考えられていた。特にヘンリーからは、美形だからなんでも思う通りになると考えている傲慢な女だと思われており、彼から強姦された過去がある。以来、ヘンリーを非常に恐れており、アーサーにはヘンリーと親しくしないように繰り返し言い聞かせていた。しかし、アーサーの行動を制限するあまりアーサーを疲弊させており、距離を置かれてしまう。のちにマーガレット自身も疲労困憊し、精神的に不調をきたすことが増えていく。

ジョージ・グレゴリー

E国の大貴族の男性。クリスティナ・ディアラムとアン・グレゴリーの父親。薄くなった髪に顎ひげを生やしている。ギョロギョロとした目や、顔立ちがアンと非常によく似ている。E国を支える貴族の娘として、アンが正妃になるのは当然だと考えている。そのためアンと結託して、周囲を蹴落とす策を講じながらアンを正妃にしようと画策している。残虐な本性と、天使のようなに人格をコロコロ入れ替えることのできるアンに時おり恐怖心を抱いている。その一方で、クリスティナのことは単なる美しいだけの女性だととらえており、アンの忠告も聞かずにまったく警戒していない。

スタンレー

昔からE国王家周辺で暗躍する謎の中年男性。前髪を真ん中で分けて額を見せ、肩につくほどまでのボブヘアで、顎ひげを生やしている。美しい男性が好きなオネエ口調の人物で、女性に対しては差別的な発言が多い。ふだんは飄々とした気さくな男性として振る舞っているが、非常に狡猾で自己中心的な考えの持ち主で、他者を利用することしか考えていない。また警戒心が強く、宮廷でスミレと出会った際も、その容姿を見ただけでスミレがただの護衛ではなく、彼女こそがB国王家の人間なのではないかと怪しんだ。やがてグレゴリー家に手を貸し、アン・グレゴリーを正妃にするべく画策するようになる。

アルバート・グレイ

広大な領地を持つ貴族の男性。リズィー・オブ・グレイの父親。刈り上げヘアで顎ひげを生やしている。非常に仕事熱心な素晴らしい商才の持ち主で、領地を豊かにするために日夜毛織物工業の商売に励んでいた。そのため、リズィーにはあまり構ってやれずにいたが、大切に思っていた。リズィーがアン・グレゴリーの侍女となって正妃候補に選ばれても、E国正妃になって欲しいとは思っていなかった。しかし正妃候補になったことで、リズィーが罠に嵌められて処刑されてからは、自分のせいでリズィーが亡くなり、リズィーにも恨まれているだろうと考えている。リズィーの死後は領地を追われ、ロバート・バランシと共に自治都市フラドルに身を隠していた。そんな中、スミレたちと出会い、リズィーの死の真相を知る。

ロバート・バランシ

リズィー・オブ・グレイの友人の若い男性。刈り上げヘアで、目がギョロギョロしている。リズィーとは彼女が領地にいた頃から親しく、非常に慕っていた。リズィーがアン・グレゴリーの侍女となってからは離れ離れになっていたが、アンの気遣いによって手紙のやり取りをしたことで、スミレの存在を知る。しかしこの時、アンが噓を書いた手紙を混ぜたことにより、噓の手紙の差出人がアンであることも知らないまま、スミレこそがのちにリズィーを死に追いやり、グレイ家を失脚させた女性だと勘違いする。この思い込みの激しさをアンに利用されてしまう。リズィーの死後は、領地を追われたアルバート・グレイと共に自治都市フラドルにやってきたが、ここでアンに教えられたとおりスミレを見つけ、命を狙う。

ヴァリー

かつてE国に捕らえられていた囚人の男性で、故人。北の国で「服(まつろ)わぬ人々」という集団の頭目を務めていた。肩まであるバサバサの髪で顎ひげを伸ばし、鎖につながれてボロボロの服を着ていた。E国との戦において前線で戦っていたが、ある日敗北して塔の中に捕らえられ、脱獄の機会をうかがっていた。そんな中、興味本位で塔を訪れたアーサーと出会い、彼の高い知性を見抜き、興味を持つようになる。さらに、アーサーがヘンリー公認で塔に来ていると知り、そんな危険な目に遭わせるヘンリーに不信感を抱いた。そこでアーサーに自分の国の話をしたり、剣を教えたりと、兄のような存在となっていく。しかしヘンリーの策略により、アーサーの手によって処刑されることとなった。

ヨハン・クレー

B国に暮らすスミレの元許嫁の男子。ベンノ・クレーの息子。癖のある髪の毛を前髪を目が隠れそうなほど伸ばした短髪で、明るく親しみやすい印象を与える。非常におしゃべりでノリがいいため、スミレには軽い男だと誤解されていた。しかし、実際はスミレを非常に大切に思っており、本来であれば女性らしく音楽やダンスをしているべきスミレにこっそり剣を教えるなど、彼女の意志を尊重している。しかしある日、スミレがE国の王妃に選ばれたことで婚約解消となり、実質的にスミレがE国の人質状態となってしまったのを案じるようになる。だが、E国の情勢はいずれ変わると考えており、いつかスミレをB国に連れ戻せると信じている。

書誌情報

コールドゲーム 9巻 小学館〈フラワーコミックス〉

第1巻

(2018-02-09発行、 978-4091398437)

第2巻

(2018-09-26発行、 978-4098701438)

第3巻

(2019-05-10発行、 978-4098704422)

第4巻

(2020-02-10発行、 978-4098707539)

第5巻

(2021-03-10発行、 978-4098711482)

第6巻

(2021-11-10発行、 978-4098714735)

第7巻

(2022-10-07発行、 978-4098717811)

第8巻

(2023-09-08発行、 978-4098722358)

第9巻

(2024-08-09発行、 978-4098725816)

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