強大な6体の幻妖が封印されている街が舞台
古来、日本には人の怒りや悲しみを察知して集まる「幻妖」という存在があった。しかし、陰陽師が幻妖と戦い続けた結果、現代の日本には幻妖はほとんどいなくなっている。そんな中、篝弥市だけには、未(いま)だ多くの幻妖が出現する。それは、千数百年前、日本の人口の3分の2を灰にした「鏖(ひょう)」と呼ばれる6体の幻妖がこの街に封印されており、幻妖を生み出し続けているからである。6体のうち5体の鏖の封印場所は判明しており、その地には陰陽師の精鋭である討伐隊の支部が設置されている。そして現在、数か月後に鏖の封印が解けるという状況下で、6体目である鵺の封印場所が発見される。それは夜島学郎が通う北高であった。
陰陽師の武器と戦い方
幼い頃から幻妖が見える学郎は、高校入学初日、美しい女性の姿をした幻妖の鵺と出会う。鵺によると、自分が封印されているせいで、学校に幻妖が増えているという。学郎は鵺の力を借り、幻妖と戦う戦士(陰陽師)となった。陰陽師は、「令力」というエネルギーを使い、人から見えなくなる「霊衣」をまとい、「盡器(じんき)」という固有武器や、「式神」を使役して戦う。盡器というのは、最初は錆(さび)だらけであり、幻妖を倒すことによって錆が落ちていき、やがて本来の力が解放される。また式神は、固有の効果と自身の能力上昇をもたらす上級術である。常夜(とこよ)という世界で、四つの円状の区画に捕らえられている式神は、内に行くほど階級が高くなり、召喚の代償も大きくなる。したがって、強力な式神が召喚できるのは、基本的に階級の高い陰陽師のみである。
学園を舞台にした青春物語が魅力
本作は、陰陽師と幻妖の戦いを描いたバトル漫画であり、人類の命運を懸けた戦いに展開する、壮大なストーリーが魅力である。その一方で、もう一つの魅力となっているのが、学園を舞台にした学郎の青春の日々である。師匠である美しい幻妖の鵺には、膝枕で令力を充電してもらい、先輩の陰陽師、周防七咲のパンチラに胸をときめかす。また、最初は敵として登場した藤乃代葉とも初デートすることになる。学郎は、タイプの違うヒロインたちと海に出かけたり、オカルト部の部室で同居したりという、甘酸っぱいエピソードを重ねていくのだ。
登場人物・キャラクター
夜島 学郎 (やじま がくろう)
北高に通う1年生の男子。お人好しな性格でコミュ障。幼い頃から幻妖という存在がみえる。父を幻妖に殺された過去を持ち、それ以来、強いものに抗(あらが)わないことを信条としていた。しかし、幻妖に襲われた際、クラスメイトの勇敢な行動をきっかけに、強くなりたいと考えを改める。学校に封印されていた幻妖の鵺と契約を結び、最強の戦士を目指す。強大な令力を秘めており、剣の形をした盡器で戦う。先輩の周防七咲に誘われ、一緒に「オカルト部」を設立する。
鵺 (ぬえ)
「鏖(ひょう)」と呼ばれる、6体の強大な幻妖の1体で、黒いロングヘアーが特徴の女性。謎の多い幻妖で、底しれぬ強さを持つ。北高の一室に封印されており、60年間人間に発見されることがなかった。部屋を訪れた夜島学郎と契約を結び、学校の幻妖を退治するため、彼に力を貸す。学郎が学校にいる間は「分体」として学校の敷地を歩き回ることができ、学郎の姉の夜島沙鵺子を名乗っている。サブカルチャーが大好きで、封印されている部屋には、友人の幻妖が届けた最新のゲームや漫画が並んでいる。
周防 七咲 (すおう かずさ)
北高に通う女子高生。夜島学郎の先輩。ポニーテールが特徴で、北高の「三天女」の一人として知られる美少女。陰陽師であり、幻妖が見える学郎に近づき、ともに「オカルト部」を設立する。盡器は両足の横にある車輪。スピードに優れ、蹴りによる攻撃や空中移動が得意である。
藤乃 代葉 (ふじの しろは)
無感情で冷淡な少女。陰陽師の中でも強い影響力を持つ、二大旧家の一つ「藤乃家」に属する。においと脈拍で人の感情を読む特技を持つ。狂骨という強い幻妖と契約し、その分体を引き連れている。当主の命令で、鵺と契約を交わすために夜島学郎のクラスに転入してくる。盡器は染離(ぜんり)という形状が変えられる槍(やり)。また鴉(からす)の式神を使役し「眇の鴉合(すがめのあごう)」という術を使う。また、「猩枷」という枷で藤乃家当主に命を握られており、任務失敗の先には体罰や死が待っている。しかし、鵺をめぐる学郎との戦いの後は、鵺が「猩枷」の制御権を当主から自分に切り替えた。
書誌情報
鵺の陰陽師 6巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2023-10-04発行、 978-4088836874)
第2巻
(2023-12-04発行、 978-4088837888)
第3巻
(2024-02-02発行、 978-4088838205)
第4巻
(2024-05-02発行、 978-4088840253)
第5巻
(2024-07-04発行、 978-4088841137)
第6巻
(2024-09-04発行、 978-4088841717)