3×3EYES 幻獣の森の遭難者

3×3EYES 幻獣の森の遭難者

高田裕三の代表作『3×3EYES』の続編。不老不死の術を持つ聖なる魔神の一族・三只眼吽迦羅(さんじやんうんから)の少女・パイと、その不死身の守護者・无(ウー)となった少年・藤井八雲の新たなる戦いを描く。講談社の「ヤングマガジン海賊版」2014年第35号から2015年第35号、および「eヤングマガジン」2015年第36号から2016年第33号かけて掲載された作品。

正式名称
3×3EYES 幻獣の森の遭難者
ふりがな
さざんあいず げんじゅうのもりのそうなんしゃ
作者
ジャンル
アクション
レーベル
ヤンマガKCスペシャル(講談社)
巻数
既刊4巻
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

聖なる魔神の一族・三只眼吽迦羅(さんじやんうんから)の少女・パイと、その不死身の守護者である无(ウー)の藤井八雲は、12年前、三只眼吽迦羅の鬼眼王が全人類の魂を抜き、世界を浄化しようという儀式「サンハーラ」を阻止することに成功した。しかし八雲は、その死闘の代償として、自身の感情の一部を麻痺させてしまう。心の一部が欠けてしまった自覚を持ちながらも、八雲は世界に散らばる「獣魔の卵」の処分を請け負う「妖撃社」に所属し、要請があれば、宇宙ステーションまでも赴いていた。

その宇宙空間で獣魔の卵を産む女王獣魔・エキドナを目撃する。人類に甚大な被害を及ぼす存在であるエキドナのことを気にしつつも、八雲は地球に帰ってすぐ、パリから新たな妖魔の卵の駆除依頼が「妖撃社」に持ち込まれる。

だが、「妖撃社」の社長・李鈴鈴は、一度に複数の妖魔の卵が出現するという、この怪しい依頼を警戒し、パイと八雲、そしてかつて「サンハーラ」阻止のためともに戦ったハズラット・ハーン綾小路葉子を呼び寄せ、万全の態勢でパリへと向かう。しかしそこで、一行はノルマルテ・ウリュプスの襲撃を受け、ハーンと葉子の娘であるセツ、そしてパイの2人がさらわれてしまう。

セツのスマホのGPS情報から、さらわれた2人を捜索しようとした八雲たちの前に、ノルマルテと組んで八雲の不死の力を狙う、工藤千夏渡部唯華有村沙雪と名乗る3人の女子高校生が立ちはだかる。世界の滅亡を防ぐため、八雲の力を必要とするノルマルテ、その計画に後から参加し、別の目的を持って八雲の力を狙うゲゲネイス・ド・ギガンテス、そして仲間を救うために奔走する八雲たちの三つ巴の戦いが展開される。

そんな中、新たな鬼眼王となった三只眼吽迦羅・カーリーは、宇宙空間を彷徨(さまよ)うエキドナを発見し、月の居城から地球へと降下を開始する。

登場人物・キャラクター

藤井 八雲 (ふじい やくも)

パイの不死身の守護者・无(ウー)の男性。高校生の頃にパイに魂を喰われ、彼女の命が尽きるまで、命も肉体も不滅の无となった。当時から外見の加齢が止まっているため、少年のような姿をしているが、当時の同級生たちは皆すでに中年になっている。糸目で黒い短髪という風貌で、さまざまな獣魔術を使いこなす。12年前、世界を浄化する儀式「サンハーラ」を阻止するために、すべての人類の魂と融合した経験があり、当時地球上に生きていた全人類のパーソナルデータを持っている。 それにより、人の思考や行動パターンが読めてしまう。そのため、人付き合いを嫌って普段は人里に現われず、世界との関わりを最小限に留めて、パイに支えられながら暮らしている。「サンハーラ」を阻止する戦い以降、自身の心の一部が失われたままだと感じており、寂しさを抱えている。 強力な戦闘力を持ちながら、敵として現れた少女・甲子美智留らを相手に手加減したり、一般市民を巻き込むことを極力避けようとするなど、基本的に思いやりのある、優しく穏やかな性格。

パイ

聖なる魔神の一族・三只眼吽迦羅(さんじやんうんから)の1人。見た目は若い少女だが、実年齢は320歳。朗らかな性格をしている。背中の半ばまで伸ばした黒髪のストレートロングヘアを、束ねてアップにしている。普段は陽気で、少し幼げな振る舞いをする少女。彼女の人格とは別に、老成された三只眼吽迦羅「パールバティⅣ世」としての人格も持ち合わせている。 額の三つめの眼が開眼すると「パールバティⅣ世」としての自我が表面化し、その際には口調も古風でいかめしいものとなる。自身の不死身の守護者・无として藤井八雲を選び、彼の魂を喰らって、生死をともにする存在となった。美味しいものを食べることが好きで、行動をともにしている舞鬼からは「喰っちゃ寝」と呼ばれるほどの食いしん坊。 セツには、敬意を込めて「聖魔様」と呼ばれている。

李 鈴鈴 (りー りんりん)

獣魔の卵駆除を請け負う「妖撃社」の代表取締役社長を務める女性。黒髪のロングヘアで眼鏡をかけている。スティーブとは公私にわたって親密な間柄で、有事の際にはハズラット・ハーンと藤井八雲を呼び寄せて仕事を任せている。高額報酬に釣られ易く、がめつい一面もあるが、有事の際には一般市民を助けるために戦うなど、面倒見が良く、責任感も強い。 最前線で戦う八雲とハズラットの帰りを心配しながら待っている。

スティーブ

「妖撃社」の取締役社長の李鈴鈴と、公私ともに親密な間柄の壮年男性。オールバックの髪型で、眼鏡をかけて口ひげを生やしている。妖魔に対抗できる護符を駆使して戦うこともできるが、持久力はあまりない。鈴鈴とは、何かにつけて息がぴったり合う。

ハズラット・ハーン (はずらっとはーん)

「妖撃社」に協力する若い男性。頭にぐるりと鉢巻のように布を巻き、腰までの長い髪を背中の半ばほどで束ねている。左頬に大きな傷がある。綾小路葉子の夫で、セツの父親。夫婦仲は基本的に良いが、自己主張の激しい性格のため、深刻な夫婦喧嘩に発展することもしばしば。一方で、危機的な状況では、自分が何をすべきかを瞬時に判断して行動に移せる、頼りになる人物でもある。 12年前、世界を浄化する儀式「サンハーラ」を阻止するため、藤井八雲たちとともに戦った仲間の1人。当時敵対した敵・ベナレスの存在を脅威に感じており、八雲を彼に対抗できる唯一の存在として評価している。そのため、将来来たるべき戦いに備え、八雲の役に立とうと、呪術の研究を重ねている。 ほかに、「妖撃社」の仕事においては、八雲を全力でサポートしている。

綾小路 葉子 (あやのこうじ ようこ)

「妖撃社」に協力する若い女性。その正体は闇のモンストルムの妖魔「化蛇」で、実年齢は不詳。人間の姿をとると、腰まで届くほどのストレートの長い髪をした若い女性となる。12年前、世界を浄化する儀式「サンハーラ」を目論んだベナレスの直属の部下だったが、離反して藤井八雲たちと共闘した。現在はハズラット・ハーンと結ばれ、セツという幼い女児をもうけている。 一度は退けた鬼眼王が再起した際に備え、セツを重要な戦力とすべく厳しく鍛えている。根はかなりロマンチックな乙女思考の持ち主であり、ハズラットを深く愛している。神山依子と同居しており、「お姐様」と呼び慕われている。

セツ

ハズラット・ハーンと綾小路葉子の娘。年齢は7歳。長いウェービーな髪を垂らし、両側にこぶし大位の大きさのモチーフをつけたカチューシャをしている。世界を救った術士のハズラットと、ベナレスの直属の部下だった葉子の娘であることを誇りに感じている。両親から術式の手ほどきを受けており、葉子には将来の貴重な戦力として期待をかけられている。 パイを「聖魔様」と呼び、両親に倣ってパイを守護しようと振る舞う、しっかりした娘。両親に認められたい、と背伸びをしている部分もある。

舞鬼 (うーかい)

「妖撃社」に協力する若い女性。スレンダーで小柄な体型をしている。12年前、世界を浄化する儀式「サンハーラ」を目論んだベナレスの直属の部下だったが、離反して藤井八雲たちと共闘した。推定年齢は250歳。長い髪を首の後ろで1つに束ねており、額に一本の角がある。かつては自分の力を誇示していたが、今はそれほどの力は持っていないと自覚している。 八雲に密かに好意を抱いているが、幼児体形がコンプレックスなので、気持ちを伝えることは考えていない。

神山 依子 (かみやま よりこ)

「妖撃社」に協力する女性。区役所勤めで、28歳の誕生日を目前に控えている。ショートカットの髪型をしている。思念獣を操る能力の他、スマホを介して遠隔地に対象者の分身を作る能力を持つ。綾小路葉子と同居しており、葉子を「お姐様」と呼んで慕っている。仕事の都合で、獣魔の卵の駆除依頼のためにパリへ向かった葉子たち一行には、同行できなかった。 ところが、夫婦喧嘩に加えて娘のセツが誘拐されてしまい、途方に暮れて電話してきた葉子の泣き声を聴き、即座に仕事を放棄してパリへと向かう。だが、飛行機の不具合により、結局パリにたどり着くことはかなわなかった。酒好きで、嫌なことがあると酒浸りになる癖がある。

若口 (わかぐち)

宇宙ステーションに勤務する若い男性。ステーションに付いた獣魔の卵に対応するため宇宙までやって来た藤井八雲に対し、同じ日本人として活躍しているのは鼻が高い、と好意的な言葉をかけた。パイに助けられてばかりだと語る八雲に、人間の幸せは基本的に「交換」によってもたらされるものだ、もらうだけでなく与えることも重要だ、と説いた。

ノルマルテ・ウリュプス (のるまるてうりゅぷす)

2000年以上前から生きている若い青年。もともとはベナレスに作られた、大型の鳥に似た合成獣「グリフィン」。「時間加速」と「合成」の能力を持つ。12年前、ベナレスが世界を浄化する儀式「サンハーラ」を目論んだ際、ベナレスの主君である鬼眼王を己の肉体に合成しようと謀反を企て、裏切りの代償として左羽根をもがれた。決別を言い渡された際に、ベナレスに「命の砂時計」を渡され、「時間加速」の能力を使い過ぎると砂の落下が速くなり、寿命が短むと告げられた。 その砂が残り僅かとなってしまった現在、心臓に病を抱える少女・甲子美智留と、たまたま知り合う。彼女を助けることに生きがいを見出し、彼女の親代わりとなって世話をしている。美智留の付き添いをしている時、生きがいを失ったゲゲネイス・ド・ギガンテスと偶然出会い、彼にも生きがいとなるものを見つけるように勧めた。

甲子 美智瑠 (きのえね みちる)

獣魔術を使うことができる女子高校生。長い髪を後ろで束ねている。あだ名は「ミチル」。生まれつき心臓が悪く、車椅子を使って生活している。工藤千夏、渡部唯華、有村沙雪とは、12年前に同じ病院に入院していたことが縁で知り合い、ノルマルテ・ウリュプスに世話をしてもらいながら、5人で生活をしている。世界の崩壊を止めるためには、不死人である藤井八雲を捕獲しなければいけない、とノルマルテに告げられ、八雲の捕獲作戦を実行する。

工藤 千夏 (くどう ちなつ)

獣魔術を使うことができる女子高校生。明るい色の長い髪を腰まで伸ばしている。あだ名は「ちな」。12年前に腕を怪我して入院していた時、同い年の甲子美智留、渡部唯華、有村沙雪と親しくなった。両親と不仲だったため、ノルマルテ・ウリュプスに美智留と唯華と沙雪とともに引き取られた。元気で真っ直ぐな性格をしている。

渡部 唯華 (わたなべ ゆいか)

獣魔術を使うことができる女子高校生。前髪を切りそろえ、黒髪を腰まで伸ばし、眼鏡をかけている。あだ名は「べっちゃん」。12年前、同い年の甲子美智留、工藤千夏、有村沙雪と同じ病院に入院していて親しくなった。両親と不仲だったため、ノルマルテ・ウリュプスに美智留と千夏と沙雪とともに引き取られた。冷静な皮肉屋でお姉さんぶっているが、非常に涙もろい性格。

有村 沙雪 (ありむら さゆき)

獣魔術を使うことができる女子高校生。小柄で帽子を被っており、ぬいぐるみを抱えている。あだ名は「さゆきん」。12年前、同い年の甲子美智留、工藤千夏、渡部唯華と同じ病院に入院していて親しくなった。両親と不仲だったため、ノルマルテ・ウリュプスに美智留と千夏と唯華とともに引き取られた。いつも悪ふざけをしている、甘えん坊で天然な性格。 険悪なムードが苦手で、仲間内での調整役を担っている。

ウコバク

顔の下半分をバンダナで覆った長髪の男性。長いコートを着用し、人型の姿をしているが、もともとはひ弱で、這いつくばって九頭龍将に媚びていた、蟲のような姿の低級妖魔。単体ではパイや藤井八雲に到底及ばない能力しか備えていないが、人が嘆き苦しむ様を見るだけで楽しいから、という自身の欲求のため、ゲゲネイス・ド・ギガンテスに協力している。

ゲゲネイス・ド・ギガンテス (げげねいすどぎがんてす)

短い髪をオールバックにした壮年男性。右目に眼帯をしている。強面で顎ひげを蓄え、常に煙草を口の端に咥えている。かつての九頭龍将の配下の1人。戦うことにしか喜びを感じない存在として、ベナレスに生み出された。しかし、世界を浄化する「サンハーラ」の儀式の際、最終決戦の地に赴くことを許されず、捨てられてしまった。その後、偶然にノルマルテ・ウリュプスに出会い、お互いベナレスに捨てられた立場の者同士のよしみで、虚無感と喪失感のみの自分を殺して欲しいと願った。 だが、ノルマルテは甲子美智留を助けるという生きがいを既に見つけており、ゲゲネイス・ド・ギガンテスにも生きがいを見つけるように説得した。

ベナレス

がっしりした体躯の壮年男性。鬼眼王に仕える不死の従者・无(ウー)で、かつては先代の鬼眼王であるシヴァ、現在は当代の鬼眼王であるカーリーに仕えている。少なくとも2000年以上前から生きており、合成獣を生み出し、无にしか使えない秘術・獣魔術を生み出した。また、自身も桁外れの多種多様な能力を持つ。どんな時にも冷静沈着で、圧倒的な威圧感と迫力に満ちた存在。 藤井八雲にとっての宿敵でもある。12年前、世界を浄化する儀式「サンハーラ」を目論んだが、八雲たちの活躍により失敗。以後は身を潜めており、その動向は知れない。

カーリー

パイにそっくりな三只眼吽迦羅の若い女性。先代の鬼眼王だったシヴァの後を継いだ、現在の鬼眼王。好戦的で血気盛んな性格だが、先代から仕えている无(ウー)のベナレスに好意を寄せている。彼に庇(かば)われたり、足手まといになることを極端に嫌う。

ガルベル

カーリーの補佐役の妖魔。同じく補佐役のウルベルとともに行動している。見た目は肩まで伸ばした髪を外はねにした若い女性だが、二の腕と太腿に特徴的な文様が入っており、ふさふさの尾を持つ。宇宙空間を彷徨っていた女王獣魔・エキドナを見つけてベナレスに報告しようとしていたが、指示を仰ぐ前に争いの気配に興味を抱いたカーリーがパリに向かったため、彼女に付き添った。 口調は荒いが状況判断は的確で、冷静沈着な性格。

ウルベル

カーリーの補佐役の妖魔。同じく補佐役のガルベルとともに行動している。見た目は金色の髪を後ろで1つのおさげに結い、眼鏡をかけた若い女性だが、頭には羊のような角を生やしている。宇宙空間を彷徨っていた女王獣魔・エキドナを見つけたが、地球の厄介事は藤井八雲とパイが解決するだろうと、あえて見過ごそうとした。 口調はおだやかで、何かと争いごとを避けたがる性格。

集団・組織

九頭龍将 (くずりゅうしょう)

かつてベナレスに選抜され、構成された戦闘専門チーム。今は舞鬼しか残っておらず、ゲゲネイス・ド・ギガンテスは九頭龍将の配下という地位にあった。ちなみに綾小路葉子などはベナレスの直属の部下であり、それぞれの特殊能力や防御能力を買われ、鬼眼王の警護などを引き受けていた。

その他キーワード

闇の怪物 (やみのもんすとるむ)

妖怪、妖精、幻獣、化け物の他、聖なる魔神・三只眼吽迦羅などを含めた幻想の世界の住人。闇の怪物からは独特の「精(じん)」の滲出が見受けられるため、藤井八雲は一目で人間か闇の怪物なのかを見分けることができる。

能力 (はびりたーず)

多種多様な強力な異能力。戦闘に向いた能力の他、神山依子のように、遠くに対象と生き写しの思念体の分身を作り出す能力、ノルマルテ・ウリュプスのように、時間を加速させる能力などもある。

ベース

3×3EYES (さざんあいず)

高田裕三の代表作。インド神話を中心に、チベット密教やエジプト神話等の要素も取り入れた伝奇長編マンガ。ヒロインはインド神話における女神パールヴァティ四世の別名を持つ三つ目の少女で、彼女の力によって不死の... 関連ページ:3×3EYES

続編

3×3EYES 鬼籍の闇の契約者 (さざんあいず きせきのやみのけいやくしゃ)

高田裕三の代表作である『3×3EYES』シリーズの第3作。『3×3EYES』の12年後の世界を描いた『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』の直接の続編となっており、藤井八雲とパイがサンハーラより続く因縁... 関連ページ:3×3EYES 鬼籍の闇の契約者

書誌情報

3×3EYES 幻獣の森の遭難者 4巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉

第1巻

(2015-06-27発行、 978-4063826197)

第2巻

(2015-11-06発行、 978-4063827057)

第3巻

(2016-04-20発行、 978-4063827675)

第4巻

(2016-10-20発行、 978-4063828672)

SHARE
EC
Amazon
logo