動乱の幕末、伊東甲子太郎の暗殺から事件が起きる
本作の題材は、動乱の幕末に実際に起きた油小路事件。史実に基づき、迫力の剣戟アクションを描く。舞台となるのは、江戸幕府15代将軍徳川慶喜が大政奉還を奏上した直後、1867年冬の京都である。御陵衛士の盟主、伊東甲子太郎は、新選組局長の近藤勇の妾宅に招かれ、新選組副長の土方歳三を交えた三人で酒を酌み交わす。しこたま酒を飲まされた伊東は、帰り道に新選組隊士らに暗殺され、七条通りと油小路の四つ辻に放置された。伊東の死は役人によって、屯所に詰めていた7名の御陵衛士に伝えられる。「死んでも仲間を見捨てない」という御陵衛士らは、罠(わな)だと承知しながら油小路へと向かう。そこには50名の新選組隊士が待ち伏せしていた。
新選組による御陵衛士の粛清
勤王思想の伊東は、同じ攘夷でありながら、佐幕派の新選組とは意見が食い違っていた。そのため、伊東は敵方の薩長の動向を探るという名目で、油小路事件の8か月前、新選組から分離。生え抜きの藤堂平助、撃剣師範の服部武雄、九番隊組長の鈴木三樹三郎を含む14名を引き抜き、御陵衛士を結成した。その後、薩長と密に関係を持った御陵衛士は、勤王という性質を露呈し始める。伊東たちに同調し、離反者が続出することを恐れた近藤と土方は、御陵衛士の粛清を計画。伊東を暗殺し、その遺体をとりにくる御陵衛士を一掃しようとする。
御陵衛士対新選組、激戦の一夜
本作の特徴は、わずか七人で50人の新選組に挑む、御陵衛士の壮絶なアクションである。北辰一刀流と天然理心流の使い手、藤堂平助は、数多の実践をくぐり抜けた元新選組八番隊組長。小柄ながら人より長い刀を用い、常に先陣をきることから「先駆け先生」の異名をとる豪傑である。仲間を逃がすために前進し続け、最期まで正面から刀傷を受けなかった。また、京洛一といわれる最強の剣士、服部武雄は、二刀流で獅子奮迅の戦いを繰り広げる。ボロ雑巾のようになりながら、一人で30人もの隊士の相手を引き付け、仲間の命を救おうとする。油小路での凄惨な一夜を生き延びた御陵衛士は、犠牲になった仲間の遺志を継ぎ、かたきを討つことを誓う。
登場人物・キャラクター
藤堂 平助 (とうどう へいすけ)
御陵衛士に所属する24歳の青年。出身は江戸(現在の東京都)と推測されている。元新選組八番隊組長。1864年の池田屋事件で受けた額の大きな傷が特徴。北辰一刀流、天然理心流の使い手。知人の伊東甲子太郎を誘い新選組に入隊させた。血気盛んな若者で、戦いでは真っ先に切り込むことから「先駆け先生」の異名で呼ばれた。同名の実在人物がモデル。
伊東 甲子太郎 (いとう かしたろう)
御陵衛士の盟主で34歳の男性。出身は志筑(現在の茨城県かすみがうら市あたり)。藤堂平助に誘われ、新選組に参加し、元新選組の参謀を務めた。北辰一刀流の使い手で、元深川の道場主。思想の違いから新選組から離れ、御陵衛士を創立する。新選組の近藤勇、土方歳三に謀られ、暗殺される。同名の実在人物がモデル。
服部 武雄 (はっとり たけお)
御陵衛士に所属する36歳の男性。出身は播州赤穂(現在の兵庫県南西部)。大柄な体格とひげが特徴。北辰一刀流の使い手で剛腕の二刀流であり、徹底した合理主義者でもある。元新選組の撃剣師範で、組でも一、二を争う腕前を持つ。油小路事件では、20~30人の敵を一人で相手にする。同名の実在人物がモデル。
クレジット
- 原作
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NUMBER 8
書誌情報
ABURA 3巻 小学館〈裏少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2023-02-10発行、 978-4098516285)
第2巻
(2023-05-19発行、 978-4098520701)
第3巻
(2023-10-12発行、 978-4098528677)