あらすじ
第1巻
所有財産のデータで階級が定められてしまう近未来では、漫画を所持する事が犯罪と定められていた。漫画を隠し持っている者を取り締まる、政府機関、カワセミ直属の焚書官のレムディ・マーシャルは、ある日、犯罪者から取り上げた漫画をうっかり持っている事に気づく。漫画を隠すために自宅へと足早に向かっている途中で、ロルカ・ビータとぶつかってしまい、漫画を持っている事を知られてしまう。しかしロルカはレムディの手を引き、漫画を隠すための場所を提供してくれる。実はロルカは漫画をこよなく愛し、カワセミに見つからないように漫画を集め続けていたのだ。そして漫画を現実化するシカーダという能力を持ち、寿命があと1年という運命にある超能力者でもあったのだ。
第2巻
レムディ・マーシャルはシカーダを持つロルカ・ビータと行動を共にするうちに、漫画の素晴らしさと、彼女の魅力に惹かれ、漫画を取り締まるべき焚書官の立場を放棄してロルカと共に生きていく事を決意する。しかし、漫画を取り締まる政府機関、カワセミの攻撃は日増しに厳しくなる一方で、レムディとロルカは時には命の危機に晒されながらも、あと1年しか生きる事ができないロルカを助けるための手段を模索していく。そんな危機ととなり合わせの毎日を送る中で、漫画愛好家達で作られた反政府組織、すずらん書房に所属しているリアルノイズと出会い、すずらん書房のアジトへと向かう事になる。
第3巻
政府機関、カワセミを脱走し、反政府組織、すずらん書房の人々と行動を共にする事になったレムディ・マーシャルとロルカ・ビータだったが、カワセミは漫画愛好家の反社会組織を駆逐するために追っ手を仕向ける。激化する闘争の中、ロルカの姉、ニケ・ビータがカワセミに捕まり、春日部刑務所に収容されてしまう。何とかカワセミの追っ手から逃げ延びたレムディとロルカは、すずらん書房の協力者が紹介してくれた、空きテナントになっていた理容室の2階で生活を始める事になった。そんな中、反社会組織との闘争で多くの部下を失ったカワセミのインディゴ・バースは、ロルカと同じシカーダの能力を持つ少年、サイファブルークと接触し、カワセミの研究所内から外へと連れ出す。
登場人物・キャラクター
レムディ・マーシャル (れむでぃまーしゃる)
政府機関、カワセミ直属の焚書官を務める男性。年齢は28歳。黒髪で、カワセミ指定の制服を着用している。「バグ」と呼ばれる貧困層の部類に分けられており、10歳の時に母親が入院したのをきっかけに施設に入れられた。施設内があまりにも劣悪な環境のために何度も脱走を試み、その結果、腹部に犯罪者の印として整理番号が刻印されている。 現在は愛猫の「マシュー」と共に一人暮らしをしている。特に秀でた才能や学力、体力はなく、周りに対して劣等感を抱いていて、あきらめが早く、心がすぐに折れやすい性格をしている。しかし、感情的で情に流されやすい一面もあり、感情が高ぶったり、仲間の危機に直面すると、平常時以上の身体能力を発揮する事がある。漫画を持つ犯罪者を取り締まる立場だったが、偶然読んだ『うる星やつら』が想像以上に面白く、漫画を愛してやまないロルカ・ビータからの影響もあり、漫画に対しての価値観が一変する。 ロルカからは「レム」という愛称で呼ばれている。好きな食べ物はおはぎで、口癖は「どうしよう」「オレだけじゃないじゃん」。
ロルカ・ビータ (ろるかびーた)
シカーダの能力が発動して間もない少女。ピンク色のロングヘアで、両耳の上にヘアピンを付け、白いチャイナ服を着用している。公安に勤務しているニケ・ビータと共に二人で暮らしている。1年しか生きられないという悲しい運命を背負ってはいるものの、明るくて元気いっぱいで、その天真爛漫な性格から誰にも愛されている。偶然に街中でレムディ・マーシャルと出会った事をきっかけに、共に行動をしていく中で、家族以上に親密な関係になっていく。 漫画をこよなく愛しており、特に『ベルサイユのばら』がお気に入り。好きな食べ物はたい焼きで、口癖は「いいの?!」「どうして?!」。
ニケ・ビータ (にけびーた)
公安の事務次官を務めている女性。ピンク色のボブヘアで、公安の制服を着用している。特権階級のチョーカーと公安のマークである「シロワシ」がデザインされたバッジを身につけている。軍隊のAK部隊として3年間戦場に赴き、無事に生還してきた過去を持つ。女性ながらに身体能力が高く、一回り以上大きな体格をした男性にも打ち負ける事のない戦闘力を誇る。 ロルカ・ビータの姉で、両親の代わりに、自分が妹をさまざまな危険から守り抜こうという強い意志を持っており、妹に近づく者に対しては過剰な反応を示す。目的の遂行のためならば、ためらいなく銃で人を撃つ事ができる冷酷な性格をしてはいるが、ザルツから借りた少女漫画『君に届け』に夢中になるなど、女子らしい一面も持っている。
インディゴ・バース (いんでぃごばーす)
政府機関、カワセミ直属の軍人の男性。年齢は44歳。長髪で、キャップ帽をかぶり、カワセミ指定の制服を着用している。まじめで現実主義的な考えの持ち主で、政府や上司の命令に忠実に従い、その冷静かつ的確な状況判断力から、周囲からも一目置かれているエリート。普段から寡黙で、感情を表に出す事が少なくい事から、傍から見るとつねに怒っているように見えてしまう。 漫画は労働意欲を失う原因の一つだと考えていて、ガキ臭い妄想ばかりを植えつける「クズ」のような物だと、漫画に対しては、ほかの政府機関の人々以上に嫌悪感を抱いている。
ジェリコ・オオザト (じぇりこおおざと)
政府機関、カワセミ直属の焚書官を務める男性。年齢は22歳。短髪で、襟足を刈り上げ、サイドをツーブロックにしており、カワセミ指定の制服を着用している。「バグ」と呼ばれる貧困層の部類に分けられており、レムディ・マーシャルとは同僚で、歳は離れているが何かと気が合い、フランクな関係を築いている。明るく気さくなお調子者で、女好きな一面も持っており、現在は自分よりも上の階級の女性と付き合っている。
アキコ・ノクターン (あきこのくたーん)
反政府組織、すずらん書房のリーダーを務める女性。長い髪を後頭部で一つにヘアバンドで束ねていて、長身で黒いドレスの上からロングコートを羽織っている。娘が一人いたが、シカーダを発現し、短い命だという事を知っておきながら、シカーダの能力を使用する事を防ぐために、1年の寿命を全うするまで家に閉じ込めてしまった過去を持つ。 冷静沈着な性格で、身体能力にも優れ、大型バイクを軽々と乗りこなす。好きな漫画は『パタリロ』で、漫画『バビル2世』に出て来る「ロプロス」という名の鳥が大好き。すずらん書房の仲間達からは「ボス」と呼ばれて慕われている。
リアルノイズ
反政府組織、すずらん書房のメンバーの男性。黒髪で、眉毛が太く、サングラスをかけていて、ジーパンとジャージを着用している。『吼えろペン』から熱い漢(おとこ)の哲学を学んだ男気あふれる熱血漢。レムディ・マーシャルに『吼えろペン』を読ませて漢の哲学を教え諭し、レムディにすずらん書房のアジトの場所が入ったデータを提供し、レムディとロルカ・ビータをすずらん書房に導いた張本人。
チナ
反政府組織、すずらん書房のメンバーの少女。ツインテールの髪型で、黒い長袖シャツの上からワンピースを着用している。寡黙であまり感情を表に出す事が少なく、突き放すような言動が多いが、それはあがり症で恥ずかしがり屋な性格をごまかすためのカモフラージュ。大好きな『あしたのジョー』をはじめ、さまざまな漫画を読破している。
ゆうふら
反政府組織、すずらん書房のメンバーの女性。ロングヘアで、前髪を中分けにしていて、胸元と立て襟に十字のマークが入った洋服を着用している。誰にでも優しく、面倒見のいい性格の持ち主。初めてすずらん書房のアジトにやって来たレムディ・マーシャルとロルカ・ビータを快く迎え入れる。好きな漫画は『バビル2世』。
バッドロマン
反政府組織、すずらん書房のメンバーの男性。背が小さく、ふくよかな体型をしている。黒髪で、頭部にバンダナを巻いており、胸元に「SP」とロゴマークが描かれている襟付き半袖シャツを着用している。誰にでも分け隔てなく話し掛けられる、気さくで明るい性格の持ち主。すずらん書房のアジトにはじめて訪れたレムディ・マーシャルに、アジトの中を案内してくれた。 ポテトチップスが大好物で、好きな漫画は『陽あたり良好!』。
ザルツ
政府機関、カワセミによって捕らえられている囚人の男性。背が高く、筋骨隆々で、小麦色の肌をしている。スキンヘッドで、もみあげから顎にかけて白い髭を生やし、白いタンクトップを着用している。粗暴で血気盛んな性格の持ち主で、刑務所内で何度も問題を起こし、何回も懲罰房送りにされている。しかし、少女漫画の『君に届け』を隠し持って愛読しているという、見た目の強面な印象とは大きくかけ離れた嗜好を持つ。
リクロ
シカーダの能力を持つ17歳の少年。長髪で、立て襟のジャケットの上からマントをまとっている。シカーダの能力で『鉄腕アトム』に登場する地上最大のロボットを発現させる事ができる事から、政府機関、カワセミの軍内部の最下層に、拘束具を嵌められて軍の最高機密として隔離されていた。普段は温厚で素直な性格をしている。漫画を読む事が大好きで、特に手塚治虫の漫画がお気に入り。
サイファ ブルーク
シカーダの能力を持つ少年。前髪を目の上で切りそろえ、耳の周りを刈り上げてツーブロックにしており、黒のハーフパンツと立て襟のジャケットを着用している。1か月前に川口で政府機関、カワセミに発見されたあと、カワセミの基地内にある研究所に、拘束具を嵌められて閉じ込められていた。しかし、反政府組織との闘争で多くの部下を失ったインディゴ・バースが、サイファブルークと同じシカーダの能力を持つロルカ・ビータを倒すために研究所から連れ出す。 純粋で好奇心旺盛な性格をしており、車が大好き。好物はベーコンバーガー。漫画のキャラクターの中で一番強いキャラクターは『三つ目がとおる』の「写楽ホウスケ」だと思っている。
集団・組織
カワセミ
日本の政府機関。東京駅の地下に基地を構え、人々を所有資産のデータで、「スーツ」と呼ばれるリッチなA層と、「バグ」と呼ばれる貧乏なB層に振り分けて国内を取り締まっている。また、漫画を所持する者を厳しく処罰している事から、すずらん書房等の漫画を愛する反政府組織と対立している。激しい闘争を繰り返しており、漫画を取り締まっている真の目的はシカーダの殲滅。 所属している人間は「魚狗」という字がデザインされたマークの入った制服を着用している。
すずらん書房 (すずらんしょぼう)
漫画を愛する者達で組織された反政府組織。日本国内にある。政府機関、カワセミが取り締まっている漫画を所持していても、殺される事のないような時代を取り戻す事を目指している有志達で作られた組織。リーダーはアキコ・ノクターンで、上野駅構内をアジトにしている。アジトの中には本棚に約3000冊もの漫画が所蔵されているほか、政府機関と戦うための銃など、殺傷能力のある武器が備えられている。 ただし、ルールにより武器を無断で持ち出す事は禁止されている。
その他キーワード
シカーダ
読んだ漫画のキャラクターや能力を現実化させる事のできる能力。この能力が発現した人間は指先が光り、光る指は2か月ごとに親指から人差し指、中指、薬指と移動し、最後の薬指が光を失うと死亡してしまう。能力の発現から生きていられる期間は約1年とされているが、シカーダの能力を使用する度に生存期間は短くなっていく。
うる星やつら (うるせいやつら)
20世紀の漫画。空を飛ぶ事ができる少女が、バカでスケベで何の取り柄もない少年「あたる」を一途に恋い慕う物語。この漫画をレムディ・マーシャルが偶然に持ち帰った事がきっかけで、ロルカ・ビータと出会う事になった。高橋留美子の漫画『うる星やつら』がモデル。
ベルサイユのばら
20世紀の漫画。フランス革命を題材にした物語で、主人公の男装をした女性「オスカル」が、貧しさに苦しむ人々のために戦う。ロルカ・ビータが最も好きな漫画の一つで、作中の登場人物の「アンドレ」の生き様にあこがれを抱いている。池田理代子の漫画『ベルサイユのばら』がモデル。
のだめカンタービレ
20世紀の漫画。性格の違いすぎるカップルが音楽家を目指す物語で、「こたつ」など、本作の世界にはもう存在しない物が多数描かれている。主人公の「のだめ」がおにぎりを作る事が得意な事から、ロルカ・ビータが「のだめ」の作るおにぎりを真似して、レムディ・マーシャルにおにぎりを握ってくれた。二ノ宮知子の漫画『のだめカンタービレ』がモデル。
吼えろペン (ほえろぺん)
20世紀の漫画。主人公の男性が極限まで自分を追い込んで、全身全霊をかけて漫画を描く事に挑む物語。リアルノイズは、己の命の限界すら突き破ろうと戦い続ける主人公の姿に生き方に「漢」を感じ、人生哲学を学んだ。島本和彦の漫画『吼えろペン』がモデル。
バビル2世 (ばびるにせい)
20世紀の漫画。超能力を持った主人公の少年「浩一」が、「3つの僕」を連れて敵と戦う物語で、アキコ・ノクターンが好きな「ロプロス」は、「3つの僕」の中の一キャラクター。横山光輝の漫画『バビル2世』がモデル。
君に届け (きみにとどけ)
20世紀の漫画。2006年から「別冊マーガレット」で連載された少女漫画で、学校で誰にも相手にされない主人公の少女「サワコ」が、同級生の「カゼハヤ」を中心とした登場人物達によって助けられながら成長していく物語。ザルツが「救いの書」と評するほどの愛読書で、ザルツに勧められて読んだニケ・ビータも、この漫画の魅力に夢中になった。 椎名軽穂の漫画『君に届け』がモデル。
火銃 (さらまんだー)
政府機関カワセミの軍人等が装備している武器。背中にリュックのように背負って装着する事から、一部では「ランドセル」と呼ばれている。タイプは2種類あり、B70型の二挺拳銃式とB15型の短銃式が存在し、それぞれ本体から銃をスライドさせたり、銃と本体をつなげているケーブルを外したりする事で、銃として使用する事が可能。また、本体の内部には医療器具等を収容する事ができる。
ドロイド
4足歩行の独立思考ロボット。政府機関、カワセミで使用されている。冷蔵庫のような立方体の形をした本体から4足の足が生えていて、足の裏にはタイヤが装着されている。偵察、街の警備、監視、情報収集等、さまざまな用途で使われているほか、武器も搭載されている事から、戦闘能力にも優れている。愛嬌のある外見から、「犬」という愛称を付けて呼ばれる事もある。
空飛者 (ぽけっとぱとろーる)
政府機関、カワセミのパトロールバイク。レムディ・マーシャルが移動手段として使用している。トランクルームにも積めて、どんな立地条件でも難なく利用できるようなコンパクトな乗り物というコンセプトで開発された。タイヤのないスクーターバイクのような形状をしていて、最高速度は80キロ。
DOGS (どっぐす)
公安の2足歩行の独立思考ロボット。時速40キロで走行し、尻尾のような形状をしたバッテリーコードが、犬のような感情表現をする事ができるほか、スタビライザーの役目も担っている。索敵を兼ね備えた耳を持ち、犬のような形状をしていて、非常に愛らしい見た目をしているが、ビーストモードになると、命令者の指令を遂行するまで喰らいついて離さないほどに凶暴になる事から、「死神」と呼ばれる事もある。
クレジット
- 原作