あらすじ
第1巻
まだ見ぬ仲間との出会いを前に、それぞれが平穏な日常を過ごしていた能力者達。乙坂有宇は妹の乙坂歩未が作る秘伝のピザソースが甘すぎる事を彼女に伝えようと決意。友利奈緒は校内で高城丈士朗に対し、恒例となる昼飯の確保を頼み、西森柚咲は姉である黒羽美砂の墓前で祈りを捧げていた。(第0回「それぞれのプロローグ」)
奈緒は他人に乗り移れる能力者の有宇を、人から姿を見えなくする特殊能力を使用して監視していた。奈緒の姿が見えない有宇は、誰もいないのにキムチ弁当の匂いがするなどの奇怪な現象に振り回され、瞬間移動の特殊能力で壁に突っ込み、血まみれになった丈士朗を見て失神する。失神した有宇の姿をビデオカメラで収めていた奈緒は、今は生徒会の一員となった有宇の情けない姿を、一人閲覧して楽しむのだった。(第1回「能力者たち」)
奈緒は、楽しみにしていたロックバンド・ZHIENDのライブのチケットをなくしてしまった。有宇や丈士朗をはじめ、学園の能力者を動員してチケットを探し続ける奈緒だったが、チケットはどこにも見当たらない。生徒会室に一人残った奈緒を置いてはいけず、いっしょにチケットを探していた有宇は、自分のカバンに紛れ込んでいたチケットを発見。有宇からチケットを手渡された奈緒は、いつものローテンションな態度とは違う、心からの安堵の表情を見せる。(第2回「友利奈緒七変化」)
能力者を探していた生徒会の面々は、超人気アイドルである柚咲のライブが行われる会場に、「激戦チケットが当選する能力」を持つ能力者がいる事を突き止める。柚咲の大ファンなため浮足立つ丈士朗をよそに、一行は該当の人物を発見する事に成功。その能力者は自分の好きなアーティストだけチケットが当たらないという能力の特性を嘆き、当たったチケットを売りさばくダフ屋となっていた。貴重な柚咲のライブチケットをないがしろにするダフ屋の行為に怒りを抱いた丈士朗は、ダフ屋に柚咲のライブを見せて感動を共有し、彼を同志とする。(第3回「高城丈士朗の情熱」)
柚咲は、自身の体に死者を憑依させる「口寄せ」の能力者だった事が判明した事から生徒会に保護され、有宇達と共に活動する事になった。奈緒は、アイドル活動に集中しすぎたせいで学校の事をあまり知らない柚咲を積極的にエスコートし、学食で「納豆バナナ」を食べさせるなど、さまざまな体験をさせる。そんな中、柚咲の姉にして故人である黒羽美砂が突如として柚咲に憑依して、丈士朗をぶっ飛ばしてしまう。(第4回「転校生ゆさりん」)
有宇は天体望遠鏡をほしがっていた歩未のために、生徒会の面子に斡旋を頼み込み、アルバイトをする事になった。しかし、コンビニでは奈緒のクレーム対応に忙殺され、ライブ会場では丈士朗の暴走を抑え込むのに必死となる。くたくたになった有宇は、3件目の公園清掃のアルバイトで男性に乗り移って財布をゴミ箱に捨てさせ、それを盗もうとする。しかし、歩未の笑顔を思い出して盗みを踏みとどまった有宇は、そのまま帰宅。家の中では、歩未と奈緒の二人が待っていた。(第5回「有宇お兄ちゃん激闘録」)
ロケで疲れて眠りこけた柚咲に憑依した美砂を連れ、能力者探しに出た生徒会一行。有宇は美砂と組み、周囲を探索するが、そこで不良の集団と遭遇してしまう。思わず逃げ出した有宇が再び現場に戻ると、美砂は不良共から「姐さん」と呼ばれ、すっかり崇拝の対象となっていた。この一件で有宇は、美砂が単なる粗暴なヤンキーではない事を知る。(第6回「ヤンキー烈風伝・美砂」)
丈士朗は、キャンペーン中の柚咲グッズを当てるため、対象商品であるコンビニの弁当を買い漁っていた。生徒会室にうず高く積まれた弁当を処理するため、全員で食事を開始するが、食べても食べても丈士朗の目当ての景品は手に入らない。(番外編1「おべんと行進曲」)
歩未の提案で、生徒会一同は山までピクニックにやって来た。しかし、有宇が少し目を離したスキに、歩未は森の中で迷子になってしまう。みんなを探していた歩未は、そこで出会った親切な青年に助けられ、ハイキングルートへと戻り、有宇達と再会を果たす。その頃、歩未からお礼としてもらったおにぎりを手にした青年は、おにぎりから漂う懐かしいピザソースの匂いを堪能していた。(番外編2「歩未と山とピザソース」)
美砂が事故死しなかった「if」世界のお話。柚咲は小さい頃から大好きな美砂の後ろをいつもついて回っていた。男勝りなうえにとても怖く、そしてとても優しい美砂との暮らしに、柚咲は幸せを覚える。(番外編3「柚咲と美砂if…」)
第2巻
乙坂有宇は、生徒会の仕事をぶっきらぼうに愛想なく指示する友利奈緒の態度に不満を示す。すると奈緒は、まるで親しい友人のような優しい口調で有宇に頼み事をし、有宇を激しく困惑させる。(番外編4「ある日の二人」)
「謎の男」こと熊耳は、いつもずぶ濡れの状態で生徒会室にやって来て、能力者の位置を知らせてくれる。彼の正体が気になった有宇は、彼を尾行。素顔を確かめたうえ、他校の友人がいる事も確認する。しかし、その正体と生徒会に協力する動機は一向につかめず、ますます謎は深まるばかりとなる。(第7回「謎の男の素顔」)
有宇の体力のなさを問題視した奈緒は、野球のトレーニングで有宇を鍛え上げる事を決意した。しかし、運動神経が鈍い有宇は、基本的なトレーニングにすら四苦八苦してしまう。メニューに音を上げた有宇は、乗り移りの能力を使い、奈緒をこらしめようと試みるが、それがバレてさらに過酷なメニューを課されてしまう。トレーニング終了後、奈緒は有宇の能力の本質が、他人の能力を奪う「略奪」である事を再確認する。(第8回「乙坂有宇育成計画」)
乙坂歩未は、ここ最近不思議な夢を見るようになった。夢の中の歩未には、有宇以外にも「乙坂隼翼」という優しくて優秀な兄がおり、三人で楽しい生活を送っていた。しかし、そんな幸せな夢も、隼翼が連れて来た友人と会った直後に目が覚めるという、毎回が同じパターンで終わってしまう。そして、目が覚めた歩未は、見た夢の記憶のほとんどを失ってしまっていた。(第9回「夢であいましょう」)
有宇は、高城丈士朗が所属する西森柚咲のファンクラブ「西森一族」の会合に、柚咲の大ファンである歩未たっての願いにより、いっしょに参加する事になってしまう。濃い面子による、密度の濃い会合に若干引き気味となってしまう有宇とは裏腹に、歩未の方は元気いっぱい。最後には柚咲のおまじないの物まねをして、ファンクラブ会員の心を奪ってしまう。(第10回「華麗なる一族会合」)
奈緒の療養中の兄・友利一希を訪問した生徒会一同。一希は、能力者を幽閉して実験する施設で廃人にされたが、「信頼できる人」に助けられ、リハビリの成果により日常会話ができるまでに回復した。奈緒はそんな一希を、いつもとは違う優しげな表情で世話をする。彼女達の絆を見た有宇と柚咲は、自分の姉妹に思いをはせる。(第11回「COMPOSER~響く兄の調べ~」)
奈緒の言うところの「信頼できる人」である隼翼は、息抜きで能力者仲間との麻雀勝負に興じていた。圧倒的な力量差で勝利を続ける隼翼に対し、能力者らしく、それぞれの能力を使った麻雀勝負を提案する七野。しかし、いずれの能力も一長一短で、なおかつ麻雀に応用しにくい事に気づき、そのルール適用はご破算となる。存分に麻雀を楽しんだ一行は、彼らの目的である能力者を守る活動を再開するのだった。(第12回「現代麻雀~能力者編」)
前泊は、隼翼率いる能力者チームの紅一点である目時が、同性の友人がいない事を寂しがっているのではないかと、勝手に推察した。前泊のアイデアで七野に女装をさせ、目時の友人として振る舞わせる事になった。しかし、羞恥に耐えられなくなった七野が、途中で協力を拒否。困った前泊は、目時に男装をさせ、自分達が同性の友人になるという最終手段に打って出る。(第13回「Cross×Dressing」)
奈緒の家まで遊びにやって来た柚咲。すっかり約束を忘れていた奈緒はやむなく柚咲を泊まらせるが、テンションの高い柚咲と、時折柚咲の体に憑依する黒羽美砂のペースに巻き込まれてしまう。就寝の際に奈緒の布団に潜り込んだ柚咲は、奈緒ともっとなかよくなるために、怒涛のガールズトークを開始する。(第14回「突撃☆れぽーと!」)
有宇の家に、親睦を深めるためにやって来た丈士朗。固いビンの蓋を軽々開けたり、冷蔵庫の位置をずらしたりして、歩未の信頼を勝ち取った丈士朗は、歩未から兄のように慕われる。兄妹のように振る舞う二人の姿を見ていた有宇は既視感を覚え、歩未もまた、忘れていた大事な何かを思い出しそうになる。(第15回「からだとカケラ」)
美砂が事故死しなかった「if」世界のお話。オフの日に遊園地へとやって来た柚咲と美砂は、朝から絶叫系のアトラクションに乗り続けるという苦行のような楽しみ方をしていた。絶叫するのに疲れた柚咲の提案で、お化け屋敷に入る事になった二人。しかし、お化けが苦手だった美砂は、数々の怖い演出の前にパニックに陥ってしまう。(番外編5「柚咲と美砂if…Ⅱ」)
第3巻
人知れず乙坂歩未達を見守っていた「乙坂隼翼」。まぎれもなく兄妹だが、この世界の歩未にとっては謎の兄にすぎない隼翼は、自分が彼女に受け入れられるかどうかを心配していた。しかし、隼翼と会った歩未は、幼い頃とまるで変わらない態度で、隼翼に接する。(番外編6「思い出は消えてても」)
友利奈緒に誘われ、ロックバンド・ZHIENDのライブに行く事になった乙坂有宇。二人きりのデートだと思い込み、現地でもなんとなくドギマギしていた有宇だったが、実はそれらはすべて生徒会の団体行動を目的とした野外活動にすぎなかった。それを知った有宇は、あからさまにショックを受け、意気消沈してしまう。しかし、楽しそうな奈緒の姿を見た西森柚咲は、二人をくっつけようと高城丈士朗に提案。柚咲といっしょにいられる事を期待して、その提案に同意した丈士朗は、黒羽美砂の力も借り、ライブ会場で二手に分かれ、有宇と奈緒を二人きりにさせる事に成功する。しかし、そのライブ中に突如して意識を失った有宇は、回復後に能力者を総べる組織のリーダーである「乙坂隼翼」と出会い、「略奪」の能力の事や、自身が能力者を収容する施設にいた事、そして隼翼が実の兄であるという衝撃の事実を思い出す。後日、歩未を連れて隼翼のもとを再訪した有宇は、能力者を救うために長年に渡って血のにじむような努力を重ねて来た隼翼に気後れしてしまい、一人施設の中でたそがれていた。有宇が寂しそうにしていたのを見逃さなかった奈緒は、彼女なりの言葉で有宇を励まそうとする。(第16回「全力少年」、第17回「きっかけ」、第18回「~芽生え~」)
有宇は、ほかの能力者の能力を奪い、自分のものにできる「略奪」の能力者である事を自覚した。それがチートを超えた最強の能力である事を証明するため、奈緒は学園から多くの能力者を呼び寄せ、有宇に彼らの能力を奪わせる。奈緒は、「頭に花を咲かせる」「時と場所を選ばずに手汗がでる」「少しのあいだ、たんを絡ませやすくする」など、数々のしょぼい能力を有宇に略奪させ、そんな能力ですら私生活に悪影響が出てしまう事を体感させたうえで、彼の持つ能力がいかに危険なものかを身をもって理解させるのだった。(第19回「ちからの自覚」)
施設内のとある一室で談笑していた奈緒と隼翼、そして熊耳の三人。隼翼から将来の夢を聞かれた熊耳は、喫茶店のマスターと答える。そこから妄想を膨らませた隼翼は、マスターとなった熊耳の詳細な設定を勝手に詰め始め、最終的に熊耳の一人娘と自分が結婚する設定まで作ってしまう。二人の会話に静かに耳を傾けていた奈緒は、あまりの気持ち悪さに我慢できず「引くなっ!?」と言い放つ。(第20回「おいしいゆめ」)
七野は柚咲にサインをもらうため、星ノ海学園の生徒会室までやって来た。しかし、柚咲の体には美砂が憑依していた。美砂を一発芸で認めさせれば、柚咲に会わせてやると言われた七野は、すり抜けの能力や柚咲の物まね、丈士朗の私物を借りた柚咲風の女装など、めいいっぱいの芸を披露する。その熱意に負けた美砂は、柚咲に体を明け渡すが、柚咲は自分そっくりの女装をした七野を、本物の女の子だと思い込んでしまう。(第21回「彼の想いと彼女の行動」)
奈緒は、過去に撮影した有宇の動画をチェックしていた際に、出会った頃に比べて有宇の性格が少し丸くなった事に気づく。再び有宇の観察を始めた結果、やはり有宇がおとなしく素直になっている事を確信した奈緒は、悩みがあれば聞くと彼に告げる。有宇は、兄である隼翼との接し方がわからないという心境を吐露するが、それを受けた奈緒は、親睦を深めるためにみんなでピクニックに行く事を提案する。和気あいあいとした雰囲気の中で食事を作ったり、テントでいっしょに寝るうちに、徐々に隼翼と打ち解けていく有宇。夜中に起きだした有宇は、同じくテントから抜け出していた奈緒に対し、素直に礼を言うのだった。(第22回「彼の変化と彼女の考え」、最終回「すべてはこれから」)
美砂が事故死しなかった「if」世界。転校先の小学校で人気者となった歩未は、その明るさとかわいらしさですぐにクラスの人気者になる。クラスメイトの小西は、思いを寄せていた男子の及川が歩未となかよくなっていく事が許せずにいた。そんなある日、屋上で一人お弁当を食べていた小西は、歩未からいっしょにお弁当を食べようと誘われる。(番外編7「あふれるきもち」)
クレジット
- 原作
- キャラクター原案
-
Na-Ga